大阪地方裁判所 昭和43年(わ)781号 判決 1979年3月19日
被告人
本籍
大阪府八尾市陽光園一丁目一八番地
住居
大阪府枚方市宇山町七番一号
会社役員
坡山幸一、坡山幸市、尹ト夏こと葉山幸治
昭和三年一二月二九日生
被告法人
本店所在地
大阪府寝屋川市香里南之町二七番地
商号
不二商事株式会社
代表者
代表取締役 葉山幸治
出席検察官
上野富司
主文
被告人葉山幸治を懲役八月および罰金二、五〇〇万円に、
被告法人不二商事株式会社を罰金一五万円に、
それぞれ処する。
被告人葉山幸治に対し、この裁判確定の日から二年間その懲役刑の執行を猶予する。
被告人葉山幸治においてその罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人葉山幸治の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
〔
被告人葉山幸治は、大阪府寝屋川市木田六八六番地等において市場店舗の賃貸並びに店舗付住宅の建売りを業としているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一、昭和三九年分の所得金額は七六、五五〇、九二〇円、これに対する所得税額は四八、二二三、〇五〇円であるにも拘らず、収入金の一部を仮名預金口座に預入し、市場店舗の賃貸借契約にあたり架空の不二興業株式会社の名義の営業名義を用いて自己の営業でないように仮装し、不動産売買の売買代金額を圧縮する等の不正行為により、右所得を秘匿したうえ、右所得税の申告期限である昭和四〇年三月一五日までに所轄税務署長に所得税確定申告書を提出せず、よつて、同年分の所得税四八、二二三、〇五〇円を免れ、
第二、昭和四〇年分の所得金額は六九、五〇四、八四三円、これに対する所得税額は四二、八〇一、六〇〇円であるにも拘らず、前同様の不正行為並びに店舗付住宅の建売りにあたり従業員名義の営業名義を用いて自己の営業でないように仮装する等の不正行為により、右所得を秘匿したうえ、右所得税の申告期限である昭和四一年三月一五日までに所轄税務署長に所得税確定申告書を提出せず、よつて、同年分の所得税四二、八〇一、六〇〇円を免れ、
第三、昭和四一年分の所得金額は一七、九一六、四〇〇円、これに対する所得税額は八、〇六一、五九〇円であるにも拘らず、前記第一と同様の不正行為により、右所得を秘匿したうえ、右所得税の申告期限である昭和四二年三月一五日までに所轄税務署長に所得税確定申告書を提出せず、よつて、同年分の所得税八、〇六一、五九〇円を免れ
たものである。
なお、右各年度の税額計算は別紙(1)(2)(3)に記載のとおりである。
〔
被告法人不二商事株式会社は大阪府寝屋川市香里南之町二七番地に本店を置き小売市場の経営等を業とする法人であり、被告人葉山幸治は同社の代表取締役として右業務全般を統轄しているものであるが、被告人葉山幸治は、同社の業務に関し、大阪府知事の許可を受けないで、小売商業調整特別措置法所定の「指定地域」である大阪府寝屋川市大利町一一番三三号に建築した鉄骨モルタル塗平家(一部二階)建一棟(店舗数七〇)の建物について、これを小売市場とするため、昭和四二年三月一五日から昭和四三年五月二九日までの間、別紙(4)貸付一覧表記載のとおり、同建物内の野菜商四店舗・生鮮魚介類商四店舗を営む五七店舗をそれぞれの店舗の用に供する小売商人壺井忠夫外五六名に貸しつけたものである。
(被告人の所得額減額について)
一、土地勘定について
被告人の所有地(京阪トツプ商店街および銀座商店街の売却済建物の敷地)につき、更地価格で評価するのではなく、借地権価格(更地価格の五一%相当額と認定)を控除した底地価格(更地価格の四九%相当額)で評価するのが相当と認められるので、これに応じ、各年度とも検察官主張の事業所得額を減額修正することとなつた。その具体的内容は別紙(5)および前掲各税額計算書に記載のとおりである。
二、保証金勘定につき
被告人が市場に入店した各小売商人より受領した契約金につき、検察官が権利金として扱つているもののうちには、権利金としてではなく、預り保証金(返還不要額である二〇%相当額を控除した残余の八〇%相当額を負債として計上すべきもの)として扱うのが相当と認められるものがあるので、これに応じ、判示第一、第二の両年度につき、検察官主張の不動産所得額を減額修正することとなつた。その具体的内容は別紙(6)、(7)および前掲各税額計算書に記載のとおりである。
(法令の適用)
〔被告人葉山幸治につき〕
一、判示所得税法違反第一の所為
昭和四〇年法律三三号附則三五条により同法による改正前の所得税法六九条一項、二項(懲役と罰金を併科)
一、同第二、第三の所為
各所得税法二三八条一項、二項(いずれも懲役と罰金を併科)
一、判示小売商業調整特別措置法違反の所為
昭和五二年法律七五号附則二項により同法による改正前の小売商業調整特別措置法三条一項、二二条一号(包括一罪)
一、併合罪処理
刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(判示所得税法違反第一の罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法四八条二項
一、懲役刑の執行猶予
同法二五条一項
一、労役場留置
同法一八条
一、訴訟費用の負担
刑事訴訟法一八一条一項本文
〔被告法人不二商事株式会社につき〕
一、判示小売商業調整特別措置法違反の所為
昭和五二年法律七五号附則二項により同法による改正前の小売商業調整特別措置法三条一項、二二条一号、二四条(包括一罪)
以上のとおり判決した。
昭和五四年三月三一日
裁判所書記官 上田隆敏
(裁判官 栗原宏武)
別紙(1)
税額計算書
39年分
葉山幸治
<省略>
別紙(2)
税額計算書
40年分
葉山幸治
<省略>
別紙(3)
税額計算書
41年分
葉山幸治
<省略>
別紙(4)
貸付一覧表
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(5)
土地勘定から減額する借地権相当額の計算
<省略>
別紙(6)
預り保証金(39年度分)
Ⅰ 京阪トップセンター店舗
<省略>
<省略>
Ⅱ 京阪トップセンター二階居室
<省略>
Ⅲ 交野トップセンター店舗
<省略>
Ⅳ 交野トップセンター二階居室
<省略>
39年度
預り保証金合計 38,045,000円
うち返還不要額(20%) 7,609,000円
差引預り保証金勘定の期中増加額 30,436,000円
<省略>
別紙(7) 預り保証金(40年度分)
Ⅰ 大東トップセンター店舗
<省略>
Ⅱ 大東トップセンター二階居室
<省略>
Ⅲ 京阪トップセンター店舗
<省略>
Ⅳ 京販トップセンター二階居室
<省略>
40年度
預り保証金合計 18,450,000円
うち返還不要額(20%) 3,690,000円
差引預り保証金勘定の期中増加額……<1> 14,760,000円
39年分預り保証金の期中減少額……<2> 600,000円(竹渕分 750,000×80%)
<1>-<2> 14,160,000円
<省略>