大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)2053号 判決
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〔判決理由〕原告が被告に対し本件土地を賃貸したことは当事者間に争いがなく、右賃貸借については、建物所有の目的で、期間は昭和三六年九月一日から昭和五六年八月三一日まで二〇年間賃料は3.3平方米当り年額一八〇円(月額一五円)の割合とし、別に固定資産税(都市計画税を含む)を加算して支払うとの約定があつことは、被告において明らかに争わないから自白したものとみなすべきである。
<証拠>によれば、原、被告協議の結果、昭和四〇年五月一二日昭和三九年九月一日に遡つて本件土地の賃料を3.3平方米当り月額金四五円に増額する旨約定したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
そして、原告が昭和四二年八月二三日被告に到達した内容証明郵便をもつて賃料を同年九月一日以降3.3平方当り一カ月金六八円とする旨の増額の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。
ところで、鑑定人木口勝彦の鑑定結果は、昭和四二年九月一日現在における本件土地の賃料月額一万八、五〇〇円(3.3平方米当り月額四八円)とし、その理由の要旨は、次のとおりである。即ち、本件土地賃貸借契約締結当時本件土地は田で、接面道路もなく、被告が工場用地の一部として自己の出捐(金額四一万五、一四〇円)をもつて埋立工事をなし、かつ保証金(金額一〇〇万八、〇〇〇円)を入れてその賃借を開始したもので、その後近隣の発展と相俟つて地価も急激に上昇し今日に至つているが、これを仔細に観察すれば、賃借権設定当初における土地の改良並びに土地の効率利的利用による爾後の土地の発展等は殆んど賃借人である原告の功績に負うところであり、本件土地についての借地権は年々強固になり、借地権価格も逐次高騰して来たものであることを考慮すると、昭和四二年九月一日現在本件土地の価格は金九二一万六、〇〇〇円と評価されるところ、借地権価格割合は六割が相当であるから底地価格は右時価の四割金三六八万七、〇〇〇円で、右底地価格に期待利廻り年六パーセントを乗じてこれに必要経費年額一、一七〇円(賃借当初より農地の税額は据置である)を加算して、同日現在における本件土地の賃料は年額金二二万二、三九〇円(月額金一万八、五三〇円)であること、次いで、前記借地権設定時及び賃料改訂時における賃料額が当事者の合意による適正額であることに着目し、爾後底地価格の値上りに伴ない賃料も同率に推移すべきものと考えると、設定時並びに改訂時の各底地価格と当時の賃料額の比率即ち底地利廻りを求めると、いずれも月間設定時は0.00211、改定時は0.005であり、昭和四二年九月一日現在の底地価格三六八万七、〇〇〇円に右底地利廻り比率を乗じて算定すると、設定時の比率によれば月額賃料金七、七八〇円、改訂時の比率によれば月額賃料金一万八、四三〇円となること、前記精算方式による賃料額と改訂時における底地利廻りによるスライド方法による賃料額との間には殆んど差がないので本件土地に関する昭和四二年九月一日現在の月額賃料は金一万八、五〇〇円が相当であるというにある。
しかしながら、借地法第一二条による地代増額請求権を行使するためには、経済事情の変動のもとで、従来の地代を維持することが公平の理念からみて不合理であることが必要であり、従つて地価が上昇しても従来の地代と客観的相当賃料との間に平衡を失つていなければ地代の増額を請求できないと解されるところ、右客観的相当賃料額の算出方法はいわゆる底地価格に、期待利廻りを乗じてこれに当該土地の公租公課、土地管理費を加算した額をもとに、契約当事者の特殊事情、賃借人の土地利用方法等を勘案して右額を修正して算出すべきものと考えるので、前記鑑定結果による本件土地の賃料月額一万八、五〇〇円(3.3平方米当り四八円)は相当というべく、右賃料と従前の地代月額3.3平方米当り四五円との差額は従来の地代の一割にも満たず、両者の間に未だ平衡を失つているとは云い難く、従来の地代を維持することが不合理であるとは認めることができないから、原告の本件賃料増額請求は許されないといわねばならない。(鐘尾彰文)