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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)3057号 判決 1973年8月09日

原告 長谷川トク

<ほか六名>

右七名訴訟代理人弁護士 宮崎乾朗

同 滝井繁明

同 滝井朋子

右宮崎乾朗訴訟復代理人弁護士 川崎寿

被告 石原利介

右訴訟代理人弁護士 鎌倉利行

右訴訟復代理人弁護士 中山哲

主文

一、被告は、原告長谷川トクに対し金六、七九九、三九二円、同長谷川直樹、同長谷川まり子、同長谷川達也に対しそれぞれ金四、五三二、九二八円、同家門敦子、同家門直也、同家門睦子に対しそれぞれ金三、六六一、六八八円およびこれらに対する昭和四二年九月一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らのその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用中長谷川トク、同長谷川直樹、同長谷川まり子、同長谷川達也と被告間に生じた分はこれを二分し、その一を同原告らの、その余を被告の、各負担とし、原告家門敦子、同家門直也、同家門睦子と被告間に生じた分はこれを二分し、その一を同原告らの、その余を被告の各負担とする。

四、この判決は第一項に限り仮りに執行することが出来る。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告ら

(一)  被告は原告長谷川トクに対し金一二、五三〇、五八四円、同長谷川直樹、同長谷川まり子、同長谷川達也に対し各金八、一二五、四三九円、同家門敦子に対し金八、〇四二、四八〇円、同家門直也、同家門睦子に対し各金七、九二〇、五九〇円、およびこれらに対する、いずれも昭和四二年九月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする、

との判決および(一)につき仮執行の宣言。

二、被告

(一)  原告らの請求を棄却する、

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする、

との判決。

第二、当事者の主張

一、請求原因

(一)  被告は池田市城南町三の二二において石原医院の名称で医院を開業する外科医である。

(二)  長谷川金之助関係

1 債務不履行

(1) 長谷川金之助(大正一四年三月一五日生、男子、以下単に金之助という)は昭和四一年一一月頃から北野病院で受診し、慢性胃炎と診断されていたが、同四二年七月三〇日、同年八月四日被告の診察を受け、被告から胃の一部切除の必要を説かれた結果、同月二四日被告との間で金之助の慢性幽門前庭部胃炎治療のため開腹手術を含む医療行為を目的とする契約を締結し、同日被告方へ入院した。

(2) ところで被告は、それ程緊急を要しなかったにもかかわらず、金之助の手術に際して十分手術前の検査を為すべきであるのにこれを為さず、僅かに問診と、体温、脈搏を測定し、血圧検査、透視検査を為しただけで、金之助が手術に耐え得ると速断し、また同月二五日朝金之助が痔による大量出血をしたので、貧血とこれによる術中出血時の抵抗力の低下を防ぐため輸血の必要を考えるべきであったにもかかわらず、これに思いを致さねまま、当日開腹のうえ、胃切除に際して一般に採用されるビルロート第二法の術式を用いず、同術式より縫合箇所が二箇所多く従って外科的侵襲が大きくなる石原方式と称する術式を採用して金之助の胃の下部三分の二を切除し、残部を空腸に吻合する手術を行ない、同時に、何等緊急の必要性のない虫垂切除手術と内痔核切除手術(同手術はその部位が不潔になり勝ちであるから他の手術と併行して為すことを避けるものである。)とを施行したため、金之助に過重の負担を加えるに至った。そのため金之助は外科的侵襲に耐え得ず胃機能に障害を来たし、手術の翌日(二六日)僅かに五〇CC排尿しただけであったにもかかわらず、被告は充分に金之助の体液の補充を為さず、僅かにリンゲル五〇〇CCを注射しただけで、治療を為さなかったため、金之助はその後も無尿状態が続き、同月二八日頃から腹部膨慢著しく、一見して尿毒症を併発していることが明らかであったのに、被告は同金之助の同意を得ないまま病室において金之助の手術部位を八糎開腹し吻合部位などを確めるなどして新たに侵襲を加え、且つホリタミンなどの代謝性排泄物を増加する薬品を投与して、金之助の腎機能に過重な負担を加え、ついに腎機能を廃絶させ同月三〇日被告方において急性腎不全、尿毒症により金之助を死亡させるに至った。

2 損害

被告の金之助に対する債務不履行によって生じた損害。

(1) 金之助は、死亡当時満四二才で日本放送協会報道部長の職に在ったが、被告の右1、の所為によって死亡するに至り次のとおり合計金三六、五六四、四七三円の損害を蒙った。

イ、逸失利益

金之助の所得は昭和四一年中には金二、四三一、四八〇円であり、毎年金二〇〇、〇〇〇円の割合で昇給するが、同人の経費は年収の五分の一であるから、年収から同経費分を控除したうえ金之助が死亡せず停年である満五五才(昭和五六年三月一五日)まで稼働したとすれば得られた筈の利益を年毎ホフマン式計算方法により年五分の割合による中間利息を控除し現価として算出すれば、別紙(一)のとおり金三二、〇六四、四七三円となり、金之助は同額の利益を失なった。

ロ、慰藉料

金之助は四二才の若さでありながら有能な報道部長として将来を嘱望されており、他方家族においては三児の父親として一家の大黒柱であったにもかかわらず、被告の所為により突如死に至ったものである。右による金之助の精神的苦痛を慰藉するには少くとも金四、五〇〇、〇〇〇円を要する。

(2) 原告トクは金之助の妻、同直樹、同まり子、同達也はいずれも金之助の子であるから、右(1)の金之助の被告に対する損害賠償請求権金三六、五六四、四七三円を法定相続分に従って相続した。即ち

イ、原告トクは同請求権の三分の一である金一二、一八八、一五九円、

ロ、原告直樹、同まり子、同達也は各同請求権の九分の二である金八、一二五、四三九円、

をそれぞれ相続により承継取得した。

(3) 原告トクは金之助の死亡により同人の葬儀費用として金三四二、四二五円を支出し、同額の損害を蒙った。

(三)  家門一夫関係

1 債務不履行

(1) 家門一夫(昭和八年九月二七日生男子。以下単に一夫という)は昭和四二年八月一四日頃急に腹部に痛みを感じ、同日夕刻被告方に来院し、被告との間で腹部痛の原因についての正確な診断とその原因除去の為の適確な治療を求める契約を締結した。

(2) 被告は、同日一夫を診察した結果問診だけで虫垂から来る腹痛と診断し、ストプニン注射と次硝酸倉鉛、セデスを投与したが、腹痛が止まらなかったため翌一五日再び被告方を訪れた一夫に対し、急性虫垂炎であり早急の開腹手術を要すると告げ、同日午後七時頃一夫の虫垂切除手術を為すべく右側腹部を切開したところ、これが誤診であり虫垂に異常がなく、腹痛の原因は腸管癒着であることが判明するに至った。斯かる場合被告は、医師としてレントゲン撮影をして腸管癒着乃至閉塞の実情を正確に把握したうえ最も効果的であり、且つ患者に対する外科的侵襲の少い術式を選択すべき義務があるにもかかわらずこれを怠り、また一夫が腸管癒着部分の剥離、吻合の手術の侵襲に耐え得るか否かについて十分の術前検査を為さないまま、同日直ちに慢然一夫の左側腹部を切開したため、剥離、吻合手術が不完全となった。

そのため、被告は腸管の剥離吻合のため同月二八日一夫に対し正中切開手術を為すに至った。しかるに一夫は同手術の前既に身体が衰弱し、腎機能に障害が生じ同手術後僅かに八〇CC排尿しただけであったのに、被告は一夫に対し同手術後補液として僅かにスーパーミン五〇〇CCを点滴したのみで、腎機能の異常に対する治療を全く為さなかったため、同月三一日に尿毒症により一夫を死亡させるに至った。

2 損害

被告の一夫に対する債務不履行によって生じた損害。

(1) 一夫は死亡当時満三三才であって株式会社仲井好洋紙店に勤務していたが、被告の右(一)の所為によって死亡するに至り次のとおり合計金二三、六七一、七七〇円の損害を蒙った。

イ、逸失利益

一夫の昭和四二年八月までの年収は金六四八、八二八円であり毎年六二、〇〇〇円の割合の昇給があるが、同人の経費は年収の四分の一であるから右経費分を控除したうえ、一夫が死亡せずに停年である満六〇才(昭和七〇年)まで稼働したとすれば得られた筈の利益および退職金収入を年毎ホフマン式計算方法により年五分の割合による中間利息を控除して、現価として算出すれば別紙(二)のとおり金一九、二六一、七七〇円となり、一夫は同額の利益を失った。

ロ、慰藉料

一夫は三三才の健康な男子であり、妻と二児と共に平和な楽しい家庭生活を営み人生はこれからが花というときに、被告の行為によって突然死亡するに至ったものである。右による一夫の精神的苦痛を慰藉するには少くとも金四、五〇〇、〇〇〇円を要する。

(2) 原告敦子は一夫の妻、同直也、同睦子はいずれも一夫の子であるから、(1)の一夫の被告に対する損害賠償請求権金二三、七六一、七七〇円を相続分に従って相続し、原告敦子、同直也、同睦子はいずれも右請求権の三分の一である金七、九二〇、五九〇円をそれぞれ相続により承継取得した。

(3) 原告敦子は一夫の死亡により、同人の葬儀費用として金一二一、八九〇円を支出して、同額の損害を蒙った。

(四)  結論

よって被告は、金之助に対する債務不履行による損害賠償として、原告トクに対し(二)の2の(2)のイと(二)の2の(3)の各金員合計金一二、五三〇、五八四円、同直樹、同まり子、同達也各自に対し(二)の2の(2)のロの金八、一二五、四三九円および、これに対する金之助死亡の日の後である昭和四二年九月一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、一夫に対する債務不履行による損害賠償として、原告敦子に対し(三)の2の(2)と(三)の2の(3)の各金員合計金八、〇四二、四八〇円、同直也、睦子各自に対し(三)の2の(2)の金七、九二〇、五九〇円、およびこれ等に対する一夫死亡の日の翌日である右同日から同割合による遅延損害金を、支払うべきである。

二、請求原因に対する認否

(一)  請求原因(一)の事実は認める。

(二)1(1) 同(二)の1の(1)の事実のうち、金之助が大正一四年三月一五日生れの男子であり、昭和四二年七月二〇日、同年八月四日被告の診察を受け、同月二四日開腹手術およびそれに附随する医療行為のため被告医院に入院したことは認めるが、その余は争う。

(2) 同(2)の事実のうち、被告が同月二五日金之助の開腹、胃、虫垂の各切除手術を行い、内痔核切除手術を行ったこと、右手術の翌朝金之助の排尿は五〇CCでその後殆んど排尿を見なかったこと、被告が八月二九日金之助の腹壁縫合部の糸を約八糎はずしたこと、ポリタミンが代謝性排泄物を増す薬品であること、金之助が同月三〇日被告方において尿毒症により死亡したこと、は認めるがその余は争う。

2(1) 同2の(1)の事実のうち金之助が死亡当時満四二才であったことは認めるが、その余は争う。

(2) 同(2)の事実のうち、原告トクが金之助の妻、同直樹、同まり子、同達也がいずれも金之助の子であることは認めるが、その余は争う。

(3) 同(3)の事実は争う。

(三)1(1) 同(三)の1、の(1)の事実のうち、一夫が昭和八年九月二七日生れの男子であることは認めるが、その余は争う。

(2) 同(2)の事実のうち、被告が一夫を診察したこと、被告が開腹手術が必要であると診断し、一夫の右側左側の各開腹手術を行なったこと、被告が同月二八日一夫の腹部中央の開腹手術を行ったこと、スーパーミンプラスが代謝性排泄物を増す薬品であること、一夫が同月三一日尿毒症により死亡したこと、は認めるが、その余は争う。

2(1) 同2の(1)の事実のうち、一夫が死亡当時三三才であり株式会社仲井好洋紙店に勤務していたことは認めるが、その余は争う。

(2) 同(2)の事実のうち、原告敦子が一夫の妻、同直也、同睦子がいずれも一夫の子であることは認めるが、その余は争う。

(3) 同(3)の事実は争う。

三、被告の主張

(一)  手術後の急性腎不全による尿毒症の場合にはも早患者を救う手段のないのが現状であり金之助や一夫の死を避けることは不可能であり、被告に責任がない。

(二)  本件は被告の過誤によるものではなく、腰椎麻酔とロートナンバーの欠けた規格に合わないトライレンとを併用したことにより、その副作用が原因で死亡するに至ったものと考えられるので被告に責任がない。

四、被告の主張に対する原告らの認否被告の主張事実は争う。

五、証拠≪省略≫

理由

一、(一) 請求原因(一)記載の事実は当事者間に争いがない。

(二) 金之助関係

1  債務不履行

(1)  金之助が大正一四年三月一五日生れの男子であり、昭和四二年七月三〇日、同年八月四日被告の診察を受け、同月二四日開腹手術およびそれに附随する医療行為のため被告医院へ入院したことは当事者間に争いがない。次に≪証拠省略≫を総合すると、金之助は昭和四一年六月頃から胃部に異和感を覚え勤務先である日本放送協会において胃カメラによる写真撮影を受けたり、また同年一一月七日、同四二年三月八日、同年七月八日の三度に亘り北野病院において胃および十二指腸部位について精密検査としてレントゲン消化管検査を受けた結果、医師から直ちに手術する要はないにしても要心した方が良い旨聞かされたので、手術を受ける気になったが、大病院では親切に面倒を見て貰えないので、個人で開業している医師にかかった方が良いと考え、職務上の部下である亀井紀昭がその姻戚に当る被告を紹介してくれたことから、同月三〇日、同年八月四日の再度に亘った被告の診察を受けたが、同人から被告が東京大学医学部出身であり経験年数が長く、これまでに八〇〇〇件程の手術を行い失敗例が殆んどないなどと聞かされるに至ったこと、被告は同年七月三〇日に金之助が被告方へ来た後、亀井が被告方へ持参した北野病院で診察された金之助の胃部十二指腸部のレントゲンフィルムを読影し、また同年八月四日金之助の胃をレントゲンにより透視したところ、同病院の医師が右レントゲンフィルムに記載していた「幽門部胃炎、胃の所見は大変治癒し難い、悪性に変り易い懸念があり、手術した方が安全である」旨の診断結果と同じ結論に達したので、早目に手術した方が良い旨金之助に伝えたところ、金之助も右手術を受ける気になったこと、金之助と被告は同月八日頃手術日程の打ち合わせを為し、金之助は同月二四日被告方へ入院するに至り、胃部の手術のみならず虫垂切除、内痔核切除の各手術を同時に施してもらうことを希望していたこと、が認められ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。右認定事実と争いなき事実とを総合すると、遅くも昭和四二年八月二四日頃には金之助被告間で被告が金之助の胃、虫垂、内痔核の各切除のために開腹手術を含む医療行為を目的とする契約を締結したことが認められる。

(2)  被告が昭和四二年八月二五日金之助の開腹、胃、虫垂、内痔核の各切除手術を行ったこと、右手術の翌朝金之助の排尿は五〇CCでその後殆んど排尿を見なかったこと、被告が同月二九日金之助の腹壁縫合部の糸を約八センチメートルはずしたこと、ポリタミンが代謝性排泄物を増す薬品であること、金之助が同月三〇日被告方において尿毒症により死亡したことはいずれも当事者間に争いがない。≪証拠省略≫を総合すれば、金之助は同月二四日被告方へ入院したが被告を当日までのレントゲンによる胃部の透視、視診、問診、打診、聴診の結果金之助が手術に充分耐え得ると判断し、同月二五日早朝金之助に痔出血があったことを聞いていたが、同日午后二時頃から被告方医院手術室において、先ず島田瑞身医師の介助の下に、金之助の胃の三分の二切除、虫垂切除の手術を、右手術後引き続き被告単独で内痔核切除手術を、それぞれ行ったこと、右全手術所要時間は二時間三〇分程度であったこと、被告は右手術を行うに当り腰椎麻酔と共に全身麻酔としてトライレンを用い、胃切除を、ビルロート第二法の術式によらず、被告の創出にかかる石原方式(先ず胃の患部を切除する際に空腸の一部を切除し、次いで十二指腸断端を縫合閉鎖すると共に空腸の断端(別添図面A点)を上げ、その断端を縫合閉鎖し、且つ右空腸の側壁部分と胃の断端を吻台し、更に空腸の他の断端(同図面B点)を空腸の側壁部分と吻合する方法)を用いて行ったこと、同月二六日金之助は茶を飲んだりしていたが同人の尿は五〇CC程出ただけであり、その後死亡に至るまでの間導尿によって一度四〇〇CC程出たことがあったが、その他は導尿によっても二〇CCとか一〇CC程出ただけであり、殆んど無尿状態であったが、被告は金之助に腎不全がが起っているとは考えなかったこと、同月二九日金之助はその腹部膨満し、苦しみ出し腹部手術前から液汁が出ていたので、被告は、十二指腸断端の縫合部位が破れて胆汁が流出しているのではないかとの想定の下に、金之助の病室において同人の腹部縫合糸を二本程抜糸して確認したが胆汁は出て居なかったので、同部を再び縫合したが、金之助の搏動数は一分間につき一二〇回程になっていたこと、同月三〇日金之助の腹部は増々膨満し、同日午前二時三〇分頃嘔吐し、死亡したこと、金之助の死因は尿毒症であること、金之助に対する輪液や導尿は、

同月二四日 五〇〇CCスーパミンプラス点滴一回

同月二五日 五〇〇CCスーパミンプラス点滴四回、導尿二回

同月二六日 五〇〇CCスーパミンプラス点滴二回、導尿二回

同月二七日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴二回、五〇〇CCリンゲル氏液注射一回

同月二八日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴二回、五〇〇CCリンゲル氏液注射一回、導尿二回

同月二九日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴一回、導尿二回

同月三〇日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴一回

右のとおり為されていること、被告は金之助に利尿剤を投与していないこと、以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

右認定の事実によれば、金之助は昭和四二年八月二五日被告が金之助を手術するまでは、胃部の異和感と内痔核による苦痛を訴えるだけの健康体であったのであるが、右手術後僅かに五〇CC、四〇〇CC、二〇CC、一〇CC程度の排尿があっただけでその後は無尿状態を継続し、尿毒症により死亡したことが明らかである。

(3)  以上認定の事実のもとにおいて被告に果して診療上の債務不履行があったか否かについて判断する。

外科手術はその大小を問わず生体に対して侵襲となることは避けられないものであるから、外科医はその侵襲を最小限にとどめると共に、手術によって起った生体反応をできるだけ早く回復に向けるような措置を構ずべき義務があるものというべく、もし不幸にして不測の機能障害を生じた時には、直ちにそれに対しての適切な治療行為をすることも医師の義務であると解するのが相当であるが、一方医師の治療はその性質上相当高度な専問的知識と技術を必要とすると共に、患者の治療に当っては多少自由裁量の余地を認めなければ、時宜を得た適切妥当な処置を期待しえないものと解すべきであり、現代医学の学理に反し、当然とるべき措置をとらず、もしくは当然とるべからざる処置をとった等顕著な治療上の義務違反を犯した場合でなければ一応適正な診療行為と評価せざるをえないものと解するのが相当である。

(イ) 術前の検査

術前の検査は、手術による侵襲の程度を判断する上から必ず要請せられるべきもので、ただ疾患の種類や緊急性の有無によりこれを一律に律しえないにすぎないところ、その範囲、程度等は現今の臨床医学界において一般的に実施せられている術前検査の現状に照して検討しなければならないところ、≪証拠省略≫によると、近代の臨床医学界においては、いわゆる一般開業医においても、単なる問診、打診、聴診等による理学的検査のみをもっては足らず、胸部レントゲンの写真撮影、血液、尿、肺機能、肝機能、腎機能等の検査室における検査が要請せられているものと解せられ、被告のなした問診、打診、聴診による理学的検査のみをもってしては未だ術前の検査としては十分な診療上の義務を果しているものとはいい難い。しかし、右術前の検査の不備が、金之助の死亡と因果関係があったことを認めるに足る証拠はない。そして、金之助が貧血のため術前に輸血を要する状況にあったことを認めるに足る証拠もない。

(ロ) 手術中の措置

胃の切除手術の際に虫垂の切除をなすことは臨床医学上しばしば行われていることと解せられ、また胃の切除手術後引続いて内痔核切除手術を行うことも現代医学の学理に反してなされた処置とは解せられず、当該医師の自由裁量の範囲に属するものと解せられるから、右手術をもって、前記診療上の債務を適法に履行しなかったものとすることはできない。

また、手術の方法が一般多数の医師がとっているような術式によらず、自己の創出した方式によってなされても、被告本人尋問の結果によると、被告は自己の創出した方式の方が従来からの知識と経験からより適切であると考えて施行したものであることが明らかであり、右方式が特に不適当なものとも考えられないから右手術方法の差異は要するに治療についての見解の相違に帰着するものというべく、これがために被告が責を負わねばならぬ理由はない。

(ハ) 術後の処置

ところで≪証拠省略≫を総合すると、普通一日の排尿量は二、〇〇〇CC程であること、急性腎不全は著明な乏尿を以って始まるが、全く無尿となることはなく少くとも五〇CCから一〇〇CCの排尿があること、急性腎不全のうち腎前性急性腎不全(急激な腎循環不全、あるいは腎臓に急激な酸素欠乏を起こすような病変によるもの)は、外科手術などのショックによっても起り、その治療法は発現期と乏尿期とでは異なり、発現期においては輸血または水と電解質のいずれかを適切に用いて乏血状態を解消させ、乏尿期においては患者が急性腎不全の危険を切り抜けるまで身体の内部環境を出来る限り正常に近い状態に保つ為に、水や電解質の摂取制限をする保存的療法を行うとか、人工腎臓法や、小腸讙流法や、腹膜讙流法の人工透折法を行うとかすべきであると解されていること、斯様に治療法が全く変ることから、急性腎不全の治療に当ってはその存在を出来る限り早く発見することが必要とされていること、そして普通は手術の翌日の排尿量が少なければ患者への輸液が不足しているとの想定の下に大量に輸液し翌日の排尿量を見たうえ、これが少なければ術後腎不全であると考えて輸液を減らし、不感蒸泄水に相当する液を与え且つ必要カロリーを与える為に葡萄糖を与えて暫く様子を見たり、利尿剤を与えたりするものであること、急性腎不全に罹っている場合にはアミノ酸輸液を行ってはならないこと、が認められるところ、被告は、金之助が手術の翌日から僅少の尿を排出しただけであったにもかかわらず、八月二八日に至るまで同人が手術後急性腎不全に罹っていることに思い至らず、またその後も急性腎不全治療のための措置をとらなかった(却って金之助に対してはリンゲル氏液の注射の他、アミノ酸系のESポリタミンの点滴が為されている)ことによって金之助を尿毒症により死亡させるに至ったことが推察される。

そうすると被告は金之助との間の前示診療契約の不完全履行によって同人を死亡させるに至ったものであると言うべきである。

2  被告の主張につき、

(1)  被告は術後腎不全による尿毒症の場合にはも早患者を救済し得ないのが現状である旨主張する。そして、≪証拠省略≫によれば外科手術などのように他に気を取られる重大なことがある場合などには急性腎不全になっているかどうかを明確に決定することは実際問題としてはかなり困難である旨記載されているが、未だ被告の主張を肯認するに足りず、他に被告の右主張を肯認するにたる証拠はない。従って被告の右主張は採用し得ない。

(2)  被告は金之助の死亡が腰椎麻酔と規格外のトライレンを併用したことによるものと主張し、被告本人尋問の結果によれば右主張に副う部分があるが、右部分は、鑑定証人恩知裕の証言のうち腰椎麻酔、トライレンが腎臓に毒性をもっているという報告がない旨の部分、同本人尋問の結果のうちのトライレンを府の衛生研で調べたが異常はなかった旨の部分などに照らし当裁判所の心証を引くに足りず、他にこの点についての被告の主張事実を肯認するに足る証拠はない。そうすると被告の金之助の死が不良薬品によって不可抗力的に招来されたものである旨の主張は理由がない。

3  損害

(1)  金之助が死亡当時満四二才であったことは当事者間に争いがない。

イ 逸失利益

≪証拠省略≫を総合すれば、金之助(大正一四年三月一五日出生)は日本放送協会に勤務し、昭和四一年中には金二、四三一、四八〇円の年収を得ていたこと、金之助には原告トク、同直樹、同まり子、同達也の四名の扶養家族があることが認められる。右認定の事実によれば、金之助は少なくとも右年収と同額の年収を得る程度の稼動能力を有するものと推認され、また金之助自身の生活費は年収の四分の一と推定するのが相当である。そして厚生大臣官房統計調査部編昭和四二年簡易生命表によれば満四二年の男子の平均余命年数は三〇・七六年であるから、金之助は右平均余命の範囲内である満五五才迄(一二年一九六日)充分稼動能力を有するものと推定される。そうすると金之助の本件死亡による逸失利益を右年収、生活費、稼動可能年令を基礎として年別ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して金之助死亡当時の現価として算出すれば金一七、三九八、一七六円(但し一円未満切り捨て)となる(なお金之助の年収の増加額については、これを肯認するに足りる確証がない)。

右算式(但し九・二一五一は一二の、九・八二一一は一三の各ホフマン係数)

2,431,480円×(1-1/4)×{9.2151+(9.8211-9.2151)×196/365}17,398,176円

ロ 慰藉料

金之助が被告の所為によって精神的打撃を受けたことは充分推認し得るところであり、被告は金之助に対し慰藉料を支払うべき義務があるというべきところ、その額は前認定の通り、金之助が死亡当時満四二才であったこと、日本放送協会に勤務していたこと、妻と三人の子があったこと、その他本件に現われた全事実を斟酌すると、金三、〇〇〇、〇〇〇円をもって相当と認める。

(2)  相続

原告トクが金之助の妻、原告直樹、同まり子、同達也はいずれも金之助の子であることは当事者間に争いがない。従って右原告らは金之助の相続人として金之助に属する権利義務を法定相続分に従い相続により承継取得することとなるから、金之助が被告に対して有する(1)の損害賠償請求権につき、原告トクがその三分の一相当の金六、七九九、三九二円を、原告直樹、同まり子、同達也はいずれも九分の二相当の金四、五三二、九二八円を、それぞれ承継取得することとなる。

(3)  葬儀費用

原告トクは金之助の葬儀費用を支出し、これを原告トクの損害として請求する旨主張するが、原告らの本件請求原因は被告と金之助との間の診療契約上の債務の不履行であり、契約当事者ではない原告トクが右葬儀費用を被告の債務不履行を原因として請求し得ないことは明らかであるから、原告トクの葬儀費用相当の損害金請求は失当である。

(三) 一夫関係

1  債務不履行

(1)  一夫が昭和八年九月二七日生れの男子であることについては当事者間に争いがない。≪証拠省略≫を総合すれば、一夫は昭和四二年八月一四日被告方を訪れ、被告に対しては腹部の痛みを訴え、昭和三二年頃盲腸が破れ腹膜炎のため手術を受けたが膿を出しただけに留まり虫垂を切除せずに終ったことがあった旨を述べ、腹部の痛みを除去することを依頼したこと、これに対し同日被告は後記(2)認定のとおり説明し投薬などするに至ったこと、が認められ(る。)≪証拠判断省略≫ 右認定の事実によれば昭和四二年八月一四日一夫は被告との間で被告が一夫の腹部痛除去のため診療を為す契約を締結したことが認められる。

(2)  被告が一夫を診察したこと、被告が開腹手術を要すると診断し、一夫の右側、左側の各開腹手術を行ったこと、被告が昭和四二年八月二八日一夫の腹部中央の切開手術を行ったこと、一夫が同月三一日尿毒症で死亡したことはいずれも当事者間に争いがない。右争いのない事実前(1)認定の事実と≪証拠省略≫を総合すれば、被告は同月一四日一夫を問診、触診した結果、腸管癒着、腸閉塞と判断し一夫に対し虫垂切除、腸管癒着剥離、腸吻合の手術を要する旨説明し、ストプニン皮下注射を行い、一〇日分の次硝酸蒼鉛と五日分のセデスとを与えて帰宅させたこと、翌一五日一夫が再び腹部の痛を訴えて被告方へ来院したので、被告は問診、聴診、触診を行ったうえ、急性腸症であり早急に手術を要し、且つ被告の経験上一夫の体力が手術に耐えられると判断したこと、被告は同日午後七時頃から一夫の手術に着手し同人に腰椎麻酔とトライレンを用いて麻酔を施したうえ同人の右側腹部を切開して虫垂を切除し、次いで左側腹部を切開して腸管癒着部分を剥離する手術を所用時間約一時間四五分かけて行ったこと、被告は一夫が右手術後二時間程で退院し得ると考えていたこと、右手術後一夫は同月一七日にはガスが出、また自ら便所へ行ったりなどし、同月一八日には原告敦子に対し鳩尾の辺りがむかつく旨訴え、同月一九日には腹が張り食が進まず浣腸によって少量の便が出、同月二〇日頃には腹が張り食が進まずガスは出るが便が出なかったが、同月二二、三日頃には便が出るなどして楽になっていたところ、同月二七日には食事をせず胃部に膨満感が出て来たこと、そこで同日夜、被告は原告敦子らに腸管癒着部分を充分剥離するなどのため再手術を要する旨告げ、一夫があまり食事していなかったとしても再手術の危惧はない旨説明したうえ、同月二八日(当日一夫は腹部膨満著しく、全く食事せず嘔吐していた)事前に一夫の体重と体温を計り、午後七時頃から、午後八時頃迄の間に腰椎麻酔とトライレンを用いて麻酔を施したうえ、完全に癒着を剥離するため一夫の腹部中央を切開したところ、小腸が非常に大きくなり腸閉塞状態を呈し、小腸下行結腸吻合部を切除し、小腸の癒着を全部剥離し、再び小腸下行結腸吻合を行うなどの手術を行ったこと、同日午後九時頃一夫は導尿によって約八〇CC、排尿しただけであること、同月二九日午前五時頃一夫は意識を回復し、導尿により二〇CC程尿が出ただけであるが、被告は尿毒症であるとは考えなかったこと、同月三〇日には一夫は導尿によっても排尿なく、全身だるさを訴えていたところ同月三一日午前七時頃から数回ひきつけを起すに至ったので被告は酸素吸入を施すなどしたこと、同日午前一一時頃一夫は被告方の近所に在る市立池田病院へ転院し、治療を受けたが、同日午前一一時四五分頃同病院において尿毒症に因り死亡したこと、同病院においては一夫の尿毒症が同月二八日頃から生じている旨診断していること、被告が一夫に施した輸液と導尿は、

同月一五日から二〇日まで毎日 五〇〇CC、スーパーミンプラス点滴二回

同月二一日から二七日まで毎日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴一回

同月二八日 五〇〇CC、スーパーミンプラス点滴四回、導尿二回

同月二九日 五〇〇CC、スーパーミンプラス点滴二回、導尿二回

同月三〇日 二〇〇CC、ESポリタミン点滴二回、導尿二回

であったこと、そして、右スーパーミンプラスは代謝性排泄物を増す薬であること(この事実は当事者間に争いがない)、

以上の事実が認められ(る。)≪証拠判断省略≫

以上認定の事実のもとにおいて被告に果して診療上の債務不履行があったか否かについて判断する。

被告が原告主張のように腸管癒着、腸閉塞を虫垂炎と誤診したことはこれを認められないが、一般に医師が腸管癒着と診断した場合、レントゲンで撮影し、その癒着ないし閉塞の実情を正確に把握し、手術の際に最も効果的であり、かつ患者に対する外科的侵襲の少ない術式を選択決定すべき義務があるものというべきで、手術に先立ちその範囲、方法を確知するためにレントゲンを撮影することは今日の医学の常識と解すべきところ、被告は右処置をとらず、ために腸の癒着の部位程度について術前に正確な診断を下すことができず、右事前診断の欠如と開腹後の癒着部分の看過等により十分な剥離、吻合手術をすることができず、再手術のやむなきに至ったものであり、しかも一夫の如く腸管癒着剥離の開腹手術をし全身の衰弱も顕著であると思われる患者に対しては一層慎重な検査が要請せられることは多言を要しないところ、被告は全く科学的検査をなさず、再手術前わずかに体重と体温を計ったにすぎないものであり、特に再手術当日にはすでに一夫が尿毒症の症状を呈していたにもかかわらず、これに気付かず、尿毒症に対する何等の治療方法をもとらなかったため、一夫が尿毒症により死亡したことが明らかであるから、被告はすでにこれらの点について診療上の義務を十分果していなかったものというべきであり、たとえ一夫の再手術後の腎不全による尿毒症の症状が現代医学上救済する余地のないものであったとしても、被告の右診療契約上の不完全履行を左右するものではない。

また被告は規格外のトライレンが一夫の死因である旨主張するが、その然らざることは前示のとおりであるから、被告の右主張も採用し難い。

3  損害

(1)  一夫が死亡当時満三三才であり株式会社仲井好洋紙店に勤務していたことは、当事者間に争いがない。

イ 逸失利益

≪証拠省略≫を総合すれば、一夫は仲井好洋紙店に経理担当員として勤務し、昭和四一年九月から同四二年八月迄一ヶ年間に合計金六四八、八二八円の年収を得ていたこと、一夫には原告敦子、同直也、同睦子の三名の扶養家族があること、が認められる。右認定の事実によれば、一夫は少なくとも右年収と同額の年収を得る程度の稼動能力を有するものと推認され、また一夫自身の生活費は年収の四分の一と推定するのが相当である。そして厚生大臣官房統計調査部編昭和四二年簡易生命表によれば満三三才の男子の平均余命年数は三八・九七年であるから、一夫は右平均余命の範囲内である満六〇才迄(二六年二六日)充分稼動能力を有するものと推定される。そうすると一夫の本件死亡による逸失利益を右年収、生活費、稼動可能年令を基礎として、年別ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して一夫死亡当時の現価として算出すれば、金七、九八五、〇六五円(但し一円未満切り捨て)となる(なお一夫の年収の増加額および退職金収入については、これを肯認するに足る確証がない)。

各算式(但し一六・三七八九は二六の、一六・八〇四四は二七の、各ホフマン係数)648,828円×(1-1/4)×{16.3789+(16.8044-16.3789)×26/365}7,985,065円

ロ 慰藉料

一夫が被告の所為によって精神的打撃を受けたことは充分推認し得るところであり被告は一夫に対し慰藉料を支払うべき義務があると言うべきところ、その額は前認定のとおり、一夫が死亡当時満三三才であったこと、仲井好洋紙店に勤務して稼動していたこと、妻と二人の子があったこと、その他本件に現われた全事実を斟酌すると、金三、〇〇〇、〇〇〇円を以って相当と認める。

(2)  相続

原告敦子が一夫の妻、原告直也、同睦子はいずれも一夫の子であることは当事者間に争いが無い。従って右原告等は一夫の相続人として一夫に属する権利義務をいずれも三分の一の割合で相続により承継取得することとなるから、一夫が被告に対して有する(1)の損害賠償請求権を金三、六六一、六八八円宛承継取得することとなる。

(3)  葬儀費用

原告敦子は一夫の葬儀費用を支出し、これを原告敦子の損害として請求する旨主張するが、原告らの本件請求原因は被告と一夫との間の診療契約上の債務の不履行であり、契約当事者ではない原告敦子が右葬儀費用を被告の債務不履行を原因として請求し得ないことは明らかであるから、原告敦子の葬儀費用相当の損害金請求は失当である。

四、結論

よって原告らの本訴請求は、被告が金之助に対する債務不履行による損害賠償として、原告トクに対し金六、七九九、三九二円、同直樹、同まり子、同達也各自に対し金四、五三二、九二八円宛、およびこれらに対する金之助死亡の日の後である昭和四二年九月一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、また一夫に対する債務不履行による損害賠償として、原告敦子、同直也、同睦子各自に対し金三、六六一、六八八円宛、およびこれらに対する一夫死亡の日の翌日である右同日から同割合による遅延損害金を、それぞれ支払う限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言については同法第一九六条第一項を、各適用して、主文のとおり判決する。

図面

(裁判長裁判官 大野千里 裁判官 斎藤光世 竹江禎子)

<以下省略>

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