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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)3661号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一 請求原因(一)の賃貸借契約の存在に関する事実および同(二)の賃料に関する事実のうち本件土地の賃料が昭和三九年一二月三一日当時七、九五〇円(3.3平方メートル当り一五円)であつたことは当事者間に争いがないので、その後本件土地の賃料が原被告の合意により原告主張のとおり増額されたか否かについて判断する。

原告本人尋問の結果中には原告主張のとおり本件土地の賃料を昭和四〇年一月一日から月一万〇、六〇〇円(3.3平方メートル当り二〇円)に増額する旨の意思表示をなしたとのその主張にそう部分があるが、右は被告本人尋問の結果と原告の増額賃料額についての主張が転々と変つているなどの弁論の全趣旨を考慮すると到底措信することはできないものである。

かえつて、<証拠>を総合すると、原告が昭和三九年一二月末ころになした賃料増額の意思表示は月一万五、九〇〇円(3.3平方メートル当り三〇円)というものであり、被告はこの増額に応ずることはできず昭和四〇年一二月末にも従前の賃料である年九万五、四〇〇円(月3.3平方メートル当り一五円)を原告方で現実に提供したが、原告は年一九万〇、八〇〇円(月3.3平方メートル当り三〇円)の賃料でなければ受領できないと主張し、その受領を拒否したことが認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は措信することができない。

したがつて、本件土地の賃料が原告主張のとおり合意のうえ月一万〇、六〇〇円(3.3平方メートル当り二〇円)に増額されたとはいえないのであつて、本件土地の賃料は現在においても従前のとおり月七、七五〇円であるといわざるをえない。

二 請求原因(三)の解除に関する事実のうち被告が本件土地に対する昭和四〇年一月一日から昭和四二年一二月三一日までの月七、九五〇円の割合による賃料について弁済期を経過したこと、および原告主張の延滞賃料の支払催告と解除の意思表示がなされたことは当事者間に争いがない。

ところで、被告のなした延滞賃料の支払催告は月額賃料の明示を欠いているから特定性を欠き無効であると主張するので、この点について判断すると、成立に争いのない甲一号の一によると、原告のなした延滞賃料の支払催告には延滞期間と延滞賃料の合計額についての記載があるにすぎず、月額賃料についての記載がないことが認められるが、月額賃料の記載がないからといつて延滞期間と延滞賃料の合計額の記載のある本件においては延滞賃料の支払催告が特定性を欠くものとは到底いえない。

したがつて、延滞賃料の支払催告が特定性を欠くとの被告の抗弁は前提を欠き失当である。

なお、原告のなした延滞賃料の支払催告は月七、九五〇円(3.3平方メートル当り一五円)を超過する意味では過大催告であるが、超過する程度が著しいものでないことは計算上明らかであり、延滞期間と延滞賃料の合計額の記載があるところから、債務の同一性に影響を与えるようなものでもないので、著しい過大催告ということはできず、したがつて、原告のなした延滞賃料の支払催告は過大催告ではあるが、被告が支払うべき月七、九五〇円の限度においては有効な催告であるというべきである。

三 そこで、つぎに被告の主張する受領遅滞の抗弁について判断すると、<証拠>を総合すると、被告は前記認定のとおり昭和四〇年一二月末ころ原告方に同年分の賃料九万五、四〇〇円(月3.3平方メートル当り一五円)を持参し、現実の提供をなしたが、原告からその倍額である年一九万〇、八〇〇円の賃料でなければ受領できないとしてその受領を拒否され、その後も昭和四一年一二月末には二年分の、昭和四二年一二月末ころには三年分の年九万五、四〇〇円の割合による賃料を原告方に持参し、原告の娘で賃料の受領事務を担当していた訴外大村昌子に現実に提供したが右と同一の理由でいずれもその受領を拒否され、また、原告から延滞賃料の支払催告を受けるや直ちに内容証明郵便で年九万五、四〇〇円の割合による賃料ならばいつでも支払う意思がある旨を表示し、この意思表示は原告が解除の意思表示をなす以前に原告に到達したことが認められ、原告本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は措信することができない。

そして、右認定事実によると、被告に支払うべき年九万五、四〇〇円の割合による賃料について昭和四〇年から昭和四二年までの毎年一二月末ころに右のとおりの賃料を原告方に持参して現実の提供をなし、また、延滞賃料の支払催告を受けた後にも解除の意思表示がなされる以前に口頭の提供をなしているのであるから、原告はその主張する延滞賃料について受領遅滞にあるというべきである。

ところで、受領遅滞にある賃貸人が賃料の不払を理由として解除の前提をなす延滞賃料の支払催告をなすに当つては、まずこれまでなしてきた賃料の受領拒否の態度を改め、以後賃借人から提供される賃料を確実に受領する意思がある旨を表示し、受領遅滞の状態を解消し、そのうえで支払催告をなすべく、かつ、この意思表示は一通の書面でなしえると解すべきであるところ、本件においては受領遅滞の状態にある原告において延滞賃料の支払催告をなすに当り、受領遅滞の状態を解消するに足る措置をとつたことについてはなんら主張がないのであり、むしろ、<証拠>によると、原告は延滞賃料の支払催告をなすに当り、受領遅滞の状態を解消する措置をとらなかつたことが認められる。

そうすると、原告のなした延滞賃料の支払催告は受領遅滞の状態を解消する措置をとらずになされたものであるから無効であり、その効力を生じないものというべく、したがつて、有効な支払催告がなされたことを前提とする原告の本訴請求は前提を欠き失当として棄却すべきである。(中山博泰)

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