大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)6572号 判決
原告
宇根田万吉
被告
泉尾工芸株式会社
ほか二名
第一主文
一、被告らは各自原告に対し、五七〇、七六四円および内金五二〇、七六四円に対する昭和四三年一一月二二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告のその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担、その余を被告らの連帯負担とする。
四、この判決一項は、かりに執行することができる。
第二請求の趣旨
被告らは各自原告に対し、七二八、一八四円および内金六七八、一八四円に対する昭和四三年一一月二二日(訴状送達翌日)から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。
との判決ならびに仮執行の宣言。
第三請求の原因
一、傷害交通事故発生
とき 昭和四二年一月三一日午後一〇時ごろ(晴天)
ところ 東大阪市吉田二八番地の一先路上
事故車 軽四輪貨物自動車(六大阪い三九二一号)
運転者 被告高橋
受傷者 原告
態様 西から東進中の事故車が、進路前方を左から右(北から南)に向け足踏み自転車に乗つて横断中の原告の右側面に衝突し、これをはね飛ばした。
二、被告らの責任原因
(1) 被告会社(自賠法三条)
事故車を所有し、これを営業用として運行の用に供していたが、当時被告高橋は、被告会社の従業員として業務のため事故車を運転していた。
(2) 被告高橋(民法七〇九条)
自動車運転者としては、公安委員会が道路標識により指定した最高速度四〇キロメートル毎時を順守することはもとより、運転中絶えず前方左右を注視し進路上の安全を確認しつつ進行し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、右指定最高速度を越える六〇キロメートル毎時で、しかも前照灯の光を下向きにして漫然と進行した過失により、右事故を起こした。
(3) 被告大梅(民法七一五条二項)
被告会社の代表取締役であつたが、同社はその個人企業と同視しうる程度の会社であり、かつ同社の業務につき直接被告高橋を指揮監督していた。被告高橋は被告会社の業務のため事故車を運転中、前記過失により事故を起こした。
三、原告の損害
(1) 受傷部位・程度、後遺症
右脛骨腓骨開放性骨折。昭和四二年一月三一日から六月一四日まで一三五日間入院。退院後九月六日まで通院および自宅療養し、その後もマッサージのため通院した。
現在、右膝および足関節の運動に軽度の障害を残している。
(2) 数額
(イ) 療養費
(A) 治療費 五四、九五〇円
(B) 通院交通費(タクシー)一一、四〇〇円
(ロ) 逸失利益 二八七、九〇〇円
訴外株式会社旭金型製作所に金型工として勤務し、基本日給は一、四五〇円であり、そのほかに月額三、〇〇〇円の家族手当を支給されていた。前記受傷により、昭和四二年二月一日から九月六日まで欠勤したが、その間の可働日数は一八二日であるから、逸失利益は左のとおり。
1 給与 一、四五〇×一八二
2 家族手当 三、〇〇〇×八
(ハ) 慰謝料 六〇〇、〇〇〇円
前記受傷部位・程度、後遺症。この後遺症により、金型工としての労働に従事するうえで、重量物をかかえたり、あるいは敏捷な動きができないなど、労働能力に相当な影響を受けている。さらに原告は、妻子四人の世帯主であるところ、被告らは治療費さえ満足な支払いをせず、原告の生活を脅かしている。
(ニ) 弁護士費用 五〇、〇〇〇円
四、損害のてん補(自賠責保険金の受領)二七六、〇六六円
右は、治療費五四、九五〇円および逸失利益内金二二一、一一六円に充当した。
五、本訴請求
右損害残額七二八、一八四円および弁護士費用を除く内金六七八、一八四円に対する前記遅延損害金。
第四答弁および抗弁
一、答弁
(1) 被告会社および被告大梅
請求原因一項のうち態様以外の事実、二項(1)、(2)のうち被告高橋が被告会社の業務に従事中運転上の過失により事故を起こしたとの点以外の事実は認める。右事故の態様および運転上の過失は不知。被告高橋は私用で事故車を運転していたものである。請求原因三項の事実は争う。
(2) 被告高橋
請求原因一項、二項(2)の事実は認めるが、三項の事実は争う。
二、抗弁(被告ら)
本件事故の発生については原告にも過失がある。すなわち、無灯火で飲酒のうえ、道路右側を自転車に乗り通行し、かつ事故車の前方で突然左折したものである。
第五証拠〔略〕
第六当裁判所の判断
一、傷害交通事故発生
請求原因一項のとおり(原告と被告高橋間では争いがなく、原告とその余の被告ら間では甲一、二号証)。
二、被告らの責任原因
(1) 被告会社(自賠法三条)
被告会社が事故車の所有者である以上、抽象的一般的に、事故車に対する運行支配と利益は被告会社に帰属すると解すべきところ、〔証拠略〕によると、本件事故は、被告高橋が被告会社の設計係として事故車を運転して翌日の仕事現場「食堂ビル道頓」の下見に赴き、下見をすませて帰宅の途中発生したものであることが認められるので、事故当時被告会社の事故車に対する右運行支配と利益は失われていなかつたというべきである。
(2) 被告高橋(民法七〇九条)
請求原因二項(2)のとおり(争いがない)。
(3) 被告大梅(民法七一五条二項)
請求原因二項(3)のとおり(〔証拠略〕)。
三、原告の損害
(1) 受傷部位・程度、後遺症
右脛腓骨々折。昭和四二年一月三一日から六月一四日まで喜馬病院に入院。退院後マッサージ等のため昭和四三年三、四月ごろまで通院。現在、長時間の正座やあぐらは不能(〔証拠略〕)。
(2) 数額 計一、三二八、〇五〇円
(イ) 療養費
(A) 通院治療費 五四、九五〇円(〔証拠略〕)
(B) 入院中家族通院交通費および退院後通院交通費(タクシー)一一、四〇〇円(〔証拠略〕)
(ロ) 逸失利益 二六一、七〇〇円
訴外株式会社旭金型製作所に金型仕上工として勤務し、基本日給は一、四五〇円であり、そのほかに月額三、〇〇〇円の家族手当を支給されていた。前記受傷により、昭和四二年二月一日から九月六日まで欠勤したが、その間の推定可働日数は一六六日である(日躍日公休、二月から八月までは一か月平均三日欠勤)から、逸失利益は左のとおり(〔証拠略〕)。
1 給与 一、四五〇円×一六六
2 家族手当 三、〇〇〇円×七(二月から八月まで)
(ハ) 精神的損害 一、〇〇〇、〇〇〇円
右算定につき特記すべき事実は左のとおり。
(A) 前記受傷部位・程度(とくに入院一三五日間)。
(B) 前記後遺症のため、重量物の運搬に不自由を感じている(〔証拠略〕)。
(C) 被告高橋は、原告の入院中の治療費のほか若干の生活費を原告に支払つた(〔証拠略〕)。
四、原告の過失(過失相殺四〇パーセント)
〔証拠略〕によると、原告は酒五合を飲んだのち無灯火のまま道路右側を自転車に乗り、西進中、時速約六〇キロメートルで対向してきた事故車に注意を払わず、その約三〇メートル前方を左折しようとしたため、事故車にはね飛ばされたものであることが認められるので、本件事故発生については原告にも過失があり、被告らの賠償額は前記損害の六〇パーセントたる七九六、八三〇円(療養費三九、八一〇円、逸失利益一五七、〇二〇円、慰謝料六〇〇、〇〇〇円)にとどめるべきである。
五、自賠責保険金の原告受領 二七六、〇六六円
右の事実は、被告らにおいて明らかに争わないので、これを右七九六、八三〇円から控除すると、原告の損害賠償請求権の残額は五二〇、七六四円となる。
六、弁護士費用 五〇、〇〇〇円
(〔証拠略〕)
七、結論
被告らは不真正連帯債務の関係で原告に対し、右残額五二〇、七六四円と弁護士費用五〇、〇〇〇円の計五七〇、七六四円および弁護士費用を除く内金五二〇、七六四円に対する昭和四三年一一月二二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 谷水央)