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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)6800号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、損害

<証拠>を綜合すると、本件追突事故は軽度のもので、加害車の前部には損傷が生じたが、追突された貨物自動車にはほとんど損傷はなかつたこと、原告は、本件事故当時加害車の運転席の後方に設けられた幅三〇ないし四〇センチメートルの寝台上に頭は車体の左側に、足を車体の右側に向けて仰向きに寝て仮眠中であつたが、本件事故の際にも右寝台から転落することもなく、事故にも気がつかずに睡眠を続けていて、他人に起されて始めて事故の発生を知つたこと、原告は事故時には身体に何らの異常もなく、翌日の昭和四二年一一月四日から同年一二月四日までは勤務先の被告会社で従前どおりに貨物自動車の運転手としての職務に従事し、その間数回にわたつて東京、秋田、福岡など長距離の運送業務に当つていたこと、ところが原告は、同年一二月五日から左腕と左肩にしびれを訴えて被告会社を欠勤し、同月七日、伊藤病院で診察を受けたところ、外傷性頸部症候群との診断を受け、同月九日から昭和四三年三月二〇日まで同病院に入院し、更に同月二一日から同年四月二〇日まで関西医科大学附属香里病院に頸椎捻挫後遺症の病名のもとに通院し、同月二七日から同年六月一五日まで伊藤病院に再入院したこと、原告は、症状として左腕および左肩部の痛みとしびれを訴えているけれども、X線検査の結果には何らの異常もなく、他に他覚的な所見が認められないことが認められ、前記甲第五号証および原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は前記乙第一号証および被告田原本人尋問の結果に照らしたやすく措信し難く、他に右認定を左右しうべき証拠はない。

以上認定の事実によれば、原告の症状は本件追突事故による外傷性頸部症候群である旨の診断がなされてはいるけれども、外傷性頸部症候群、いわゆるむち打ち損傷は頸部が急激に前後ないし側方に運動することによつて生ずるものと考えられるところ、原告は、本件事故当時加害車の進行方向とは直角になつた寝台上に仰向けになつて睡眠中で、本件事故発生によつても目覚めることもない程度の衝撃しか受けておらず、頸部の急激な運動があつたとは考えられないこと、原告は、事故後一ケ月間は身体に全く異常がなかつたのに、一ケ月経過後突然左腕と左肩のしびれを訴え始めたのであるが、事故発生後一ケ月も経過して始めて当初のいわゆるむち打ち損傷が発生するとは考えられないし、右医師の診断も事故後一ケ月以上経過してからの診察で、かつ何ら他覚的所見もないに、原告本人の追突事故があつた旨の自訴のみにより、安易に診断されたものと認められるから、原告が本件事故によつて傷害を受けたものとは認め難く、他に原告の症状が本件事故によつて生じたものと認めるに足る証拠はない。 (山本矩夫)

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