大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)1394号 判決
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〔判決理由〕一、職権により調査すると、原告両名の主張する公正証書には、次のような記載が存することを認めることができる。
(一) 訴外会社は、被告に対し昭和四三年一〇月一日手形貸付割引、引受、裏書、保証または金銭貸借証書により負担する現在および将来の債務を、以下の条項にしたがい履行することを約した。
(二) 右取引は反復されるものとし、訴外会社の負担する債務元本額は、現在および将来の債務を合し常時金一〇〇万円を最高極度とする。
(三) この取引の存続期間はあらかじめ定めない。ただし被告から相当の日数を歩いて取引終了の予告があれば、訴外会社は異議なくこれに応じる。
(四) 訴外会社は、債務を不履行したときは、(二)項の債務に代るものとして違約金一〇〇万円を直ちに被告に支払うことを約諾した。被告は、この受領金を二項の債務の弁済に充当する。もし剰余あるときは、これを訴外会社に返還する。
(五) 訴外会社は、前項の支払を遅滞したときは、日歩金八銭二厘の割合の遅延損害金を支払う。
(六) 原告両名等が訴外会社の債務につき保証し、訴外会社と連帯して保証債務の履行の責に任ずる。
(七) いわゆる執行認諾条項。
二、ところで民訴法五五九条三号但書によつても明らかなように、公正証書が執行証書として執行力を有するためには、公正証書上、給付すべき金額が一定していなければならない。しかもこの給付すべき金額の一定性が、公権力発動の一つの契機をなし且つ給付義務の終局的実現に結びつく制度の建前からしても、その給付すべき金額は、確定的且つ終局的なものでなければならないとの内在的要請が存するというべきである。したがつて、すくなくとも公正証書上給付すべき金額が確定的且つ終局的なものでないと認められるときは、執行証書としての適格を有しないとしなければならない。
三、そこでこれを本件公正証書についてみると、一項(二)の表示は、単に最高限度額を画したにとどまり、具体的給付義務の裏うちのある金額の表示とみることはできないし、また同項(四)の表示は、その前段だけを捉えるならば、給付すべき金額は一定しているというべきであるが、本来その前段は後段と統一的に理解しなければならない事柄であり、前後段を統一的に理解する限り本件公正証書に記載された給付すべき金額は、仮定的なものであることが明らかである。すると本件公正証書は、結局、給付すべき金額の一定性の要件を欠き、執行証書としての適格性を有しないというべきである。(石田真)