大判例

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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)3761号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、被告会社の責任

<証拠>によると、次の事実が認められる。

被告久保田は夜間大学に通学し、昼間はアルバイトをしていて、昭和四三年一〇月中旬ごろからは被告会社に事務員として勤務していた。(従業員であつた点については当事者間に争いがない。)そこでは被告久保田の育て親が、被告会社の社長の姉であつた関係もあり、会社のすぐ近くに住込み勤務していた。被告久保田は同年九月一〇日普通自動車の運転免許を取得し、被告会社に入つてからは、同社の車を借りて運転したりしていたが、同年一二月九日自分で事故車を講入して運転するようになつた。しかし事故車の登録名義は、実兄久保田公一名義にしておいた。事故車はいつも会社の車と同じく会社前に置いていて、被告久保田が主として通学用に使用していた。事故当時は年末の仕事納めで、被告久保田は午前中何かと片付けをして、午後二時半ごろ社長も了知していたことで歳暮配りのため、社長の自宅へ行き、奥さんを事故車に同乗させて運転中、脇見をして前方に対する注意を欠いた過失によつて本件事故を惹起した。なお被告会社は資本金五〇万円、当時従業員三二名の小規模の会社であり、同社々長は被告久保田に弟のように接していた。

前掲証拠中、右認定に反する点は信用できず、他に右認定を動かしうる証拠はない。

被告久保田は被告会社の従業員であり、かつ右事実から同人の過失によつて本件事故が発生したことはたやすく認められるが、当時被告久保田が被告会社の業務に従事中であつたか検討を要する。

事故当時、被告会社々長の妻が被告久保田個人の事故車に同乗して歳暮配りをしていたのであるが、この場合歳暮を持参する先が会社の取引先であれば、被告会社として業務を否定しえないであろう。しかし、取引先でなくて親戚、知人方であれば業務とみなしえないであろうか。もし、自動車の運転についてその目的をとらえて職務行為を決するのであれば、明らかに外形理論に反することになり、運転していた従業員は会社側の意向に従つていても職務外行為ということになり、ときには不当な結果(労災等の適用上)をまねくことになる。要は被告会社と被告久保田の関係から決すべきものである。つまり、一般に従業員が自己の車輛を勤務時間内に運転した場合、職場を離脱し、または使用者に無断でしたときは格別、乗用者の指摘、監督が及んでいるならば、その運転は職務の執行としてなされたものというべきだからである。被告久保田は被告会社の社長と親戚のような関係にあり、住込で通学にも便宜をはかつてもらつていたこと、被告会社は小規模な会社で、社長の妻を同乗させて歳暮を届けるために出かけたことは社長も了知していたこと、事故発生時刻はまだ勤務時間内であつたと考えることからすれば、社長から頼まれたのか、社長の妻からか、判然とはしないが、被告久保田の好意のみで同人の私用と同様に事故車を運転していたとは考えられず、会社側から何らかの指示をうけていたものと推認するに難くない。従つて被告久保田は外形上被告会社の業務として事故車を運転したものと認められ、被告会社には民法七一五条により本件事故から生じた後記原告の損害を賠償する責任がある。

なお、被告会社は事故車を所有するものでもなく、またその運行について支配していた点まで認めうる証拠がないので運行供用者責任は認めることができない。 (藤本清)

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