大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)4123号 判決 1971年5月28日
原告
今井悟
被告
石田明子
ほか一名
主文
一、被告らは各自
(一) 原告今井悟に対し金一三三万九、八五八円およびうち金一二〇万九、八五八円に対する昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで年六分の割合による金員
(二) 原告今井ヤヱミに対し、金二四万三、〇一八円およびうち金二二万三、〇一八円に対する昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員
をそれぞれ支払え。
二、原告今井悟、同今井ヤヱミのその余の請求および原告今井繁の請求を棄却する。
三、訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの、その余を被告らの負担とする。
四、この判決第一項は仮りに執行することができる。
事実
第一、当事者双方の申立
一、原告
(一) 被告らは、各自
原告今井悟に対し金九〇三万八、五五〇円および内金八九八万八、五五〇円に対する昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員、
原告今井繁に対し金六七万八、一〇一円および内金六〇万八、一〇一円に対する昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員、
原告今井ヤヱミに対し金二九〇万六、一八二円および内金二六四万六、一八二円に対する昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行の宣言
(二) 被告ら
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決
第二、当事者双方の事実主張
一、請求原因
(一) 事故の発生
原告今井悟は次の事故により受傷した。
とき 昭和四三年五月二二日午後六時三〇分ごろ
ところ 豊中市螢池南町一丁目二三番地先路上
事故車 普通乗用自動車(大阪五さ七〇四八)
右運転者 被告石田明子
被害者 原告今井悟(当時五才)
態様 被害者が自宅出入口から右路上に出て行つた際、西進してきた事故車に衝突され、車体下に巻き込まれたもの。
(二) 責任原因
(1) 被告石田保治は事故車の所有者であり、被告明子は被告保治の妻で、被告保治から事故車を無償で借り受けて運転中本件事故を惹起したものである。
(2) 本件事故は、被告明子の前方不注視、ハンドル・ブレーキの操作不適当、道路標識の無視、左側通行不尊守、警笛吹鳴の懈怠、および被告保治の業務の指示不適当ならびに被告両名の事故車ブレーキ装置の整備懈怠の各過失によつて生じたものである。すなわち、本件事故現場の東方約二〇〇メートルの地点には「子供飛出に注意」の道路標識(立看板)が置かれ、また現場附近の道路左側は家屋のない空地であり、被告明子は、自宅が近くなので右事情をよく承知していたはずであるから、警笛を吹鳴し、何時子供の飛出しがあつてもこれを回避できるよう道路交通法一七条に従つて道路左側を通行すべきであつたのに道路中央を走行していた。さらに、被告明子は当時時速一五キロメートルの速度で走行していたのであるから、事故車の制動装置の整備が十分になされており、急制動の措置がとられていたならば、衝突に至らなかつたはずであるのに、急制動しなかつたか、制動装置の整備が不十分であつたために停止することができず、また、被告明子はハンドルを左にきつて衝突を回避する措置もとつていない。
被告保治は、被告明子の事故車運転業務に関し、右の点について注意を怠ることのないよう被告明子に対し指示すべき注意義務があつたのにこれを怠つた。
(三) 損害
(1) 原告悟の受傷内容、治療経過および後遺症
原告悟は、本件事故により頭部外傷Ⅱ型、左大腿骨頸部皹裂骨折の傷害を受け、事故当日から昭和四三年六月一九日までの二八日間岡部外科病院に入院し、同病院退院後も引き続き昭和四五年二月一五日までの間に一一二回同病院に通院して治療を受け、さらに右通院中ナンバ・クリニツクにも通院して脳波検査および投薬治療を受け、これまでに七回の脳波検査一七五日分の投薬治療を受けたが、完治せず外傷性てんかんの後遺症を残し、右は労災障害等級第七級に該当する。
(2) 原告悟の逸失利益
原告悟は、一八才で高等学校を卒業した後、六八才まで少くとも五〇年間稼動することができ、その間に別表「悟の逸失利益計算書」記載のとおりの収入をあげ得たはずであるところ、前記後遺症によるてんかん発作のため家内労働以外は危険で就くことができず、労働能力の五六パーセントを喪失したものと認められるから、原告の喪失した得べかりし利益の現価は前同表記載のとおり六四四万七、一五六円となる。
(3) 原告ヤヱミの逸失利益
原告ヤヱミは長男である原告悟の看護のため勤務先の豊中保健所を退職することを余儀なくされた。ヤヱミは事故当時右豊中保健所に勤して一ケ月平均一万五、一六六円の給与を得ており、準看護婦の資格を有し将来五五才まで二二年間看護婦として勤務し少くとも右程度の収入をあげ、生活費を控除してもなお年間一四万七、一九四円の純益を得ることができるはずであつたが、本件事故のため原告悟にてんかん発作の危険があるので再度勤務することはできなくなり右得べかりし収入を喪失した。そこで、右逸失利益からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除し本件事故当時の現価を求めると二一四万六、一八二円となる。
(4) 療養関係費
原告繁は原告悟の治療費として、三万〇、五五一円、入院雑費として五万七、七八〇円、交通費として一万九、七〇〇円を支出し同額の損害を蒙つた。
(5) 慰藉料
原告悟の本件事故によつて受けた前記受傷内容、後遺症等を考慮すると同原告に対する慰藉料は三〇〇万円が相当であり、原告繁、同ヤヱミは一人息子である原告悟の傷害、後遺症により多大の精神的苦痛を蒙つたので、原告繁、同ヤヱミに対する慰藉料は各五〇万円が相当である。
(6) 弁護士費用
原告らは弁護士渡辺繁泰に本訴の提起と追行を委任し、同人に対しその報酬として原告悟は一〇五万円、原告繁は七万円、原告ヤヱミは二六万円の支払を約した。
(四) 損害の填補
原告悟は、安田火災海上保険株式会社から後遺症補償として一二五万円、およびその他の損害に対し二〇万八、六〇六円、合計一四五万八、六〇六円の支払を受けた。
(五) 結論
よつて、被告両名に対し、原告悟は九〇三万八、五五〇円および内弁護士費用を控除した八九八万八、五五〇円に対する本件訴状送達の翌日である昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、原告繁は六七万八、一〇一円および内弁護士費用を除く六〇万八、一〇一円に対する前同日から支払ずみに至るまで前同様の遅延損害金、原告ヤヱミは二九〇万六、一八二円および内弁護士費用を除く二六四万六、一八二円に対する前同日から支払ずみに至るまで前同様の遅延損害金の各支払を求める。
二、請求原因に対する被告の答弁
(一) 請求原因(一)の事実中、事故の態様を争い、その余は認める。
(二) 同(二)の(1)の事実中、被告保治が事故車の所有者であることは認める。同(二)の(2)の事実中、被告明子に過失があることは認めるが、過失の内容となる事実は争う。
(三) 同(三)の(1)の事実は不知、同(三)の(2)ないし(6)の事実は争う。
(四) 同(四)の事実は認める。
三、被告の主張
(一) 過失相殺の抗弁
本件事故当時、被告明子は道幅の狭い本件現場附近道路を事故車を運転し時速一五キロメートル位に減速徐行して進行していたのであるが、ちようど原告ら方自宅前路上を通過しようとしたとき、突如原告悟が道路右側の右原告ら方出入口から直角に進路にとび出してきたために、急ブレーキをかけたが間に合わなかつたもので、本件事故は原告悟の、右過失および原告繁、同ヤヱミが原告悟に対する親権者としての保護監督義務を十分に尽さなかつた過失によつて生じたものである。
したがつて、右過失は損害賠償額を定めるに当つて斟酌されるべきところ、被告らは後記のとおり原告悟の治療費等として三九万二、四四八円を支払つているので、右支払額を加えた総損害額について右過失が斟酌されるべきである。
(二) 弁済の抗弁
(1) 被告保治は、原告らに対し昭和四三年六月一九日から同四四年一〇月二二日までの間に原告悟の治療費、脳波検査費、通院交通費等として合計三四万九、三一八円を支払つた。
(2) 右の外、同被告は原告悟の治療費四万三、一三〇円を支払つている。
四、被告の主張に対する原告の答弁
(一) 被告主張の(一)の事実は否認する。
(二) 同(二)の(1)の事実は認める。
第二、証拠〔略〕
理由
一、(事故の発生)
請求原因(一)項の事実については、事故の態様の点を除いて当事者間に争いがなく、本件事故の態様は後記四に認定のとおりである。
二、(被告らの責任原因)
被告保治が事故車の所有者であることは、当事者間に争いがなく、被告明子が、被告保治の妻であり、被告保治から事故車を無償で借り受けて運転中本件事故を惹起したものであることについては、被告らは明らかに争わないからこれを自白したものとみなされ、右の各事実に被告明子本人尋問の結果を併せ考えると、被告らは事故車をいわゆるフワミリー・カーとして共同で利用していたものと推認される。
そうすると、被告らはいずれも自賠法三条により本件事故によつて生じた損害を賠償する責任がある。
三、損害
(一) 原告悟の受傷内容、治療経過および後遺症
〔証拠略〕を総合すると、原告悟は、本件事故により頭部外傷Ⅱ型、左大腿骨頸部皸裂骨折の傷害を受け、事故当日から昭和四三年六月一九日までの二九日間豊中市本町二丁目八〇番地岡部外科に入院して治療を受け、右骨折は一応治療したが右頭部外傷の治療のため退院後も引き後き同病院に通院し昭和四五年二月一五日までの間に一一二回通院して治療を受けたこと、右通院中同原告は、同病院の指示で神経科専門の大阪市浪速区河原町二丁目一〇五九ナンバクリニツクに検査のため定期的に通院し、昭和四五年九月三〇日までに七回の脳波検査を受けたほか、同年二月九日以降は専ら同クリニツクで治療を受けるようになり、同年九月三〇日までに一七五日分の投薬を受けたこと、および右治療にもかかわらず原告の頭部外傷はいぜんとして完治せず外傷性てんかんの後遺症を残し、脳波に異常があつて服薬にもかかわらず数回程度頭痛、悪心、吐き気、疲れ易い等の症状が認められ、さらに夜間睡眠中月に数回程度もうろう状態になり時にはけいれんすることがあり、右症状は不完全なてんかん発作と認められ、その程度は自賠法施行令別表等級の第七級三号に該当し、今後も引き続き月一回程度の通院と、服薬を継続することを要することが認められる。
(二) 原告悟の逸失利益
〔証拠略〕によれば、原告悟は昭和三八年四月二五日生れ本件事故当時満五才の健康な男子であつたことが認められ、昭和四一年簡易生命表によると満五才の男子の平均余命は六五・一六年であることに徴すると、同原告は満一八才から満六三才までの四五年間稼動し得るものと推認することができる。そして労働省労働統計調査部の調査による昭和四三年度賃金センサスによれば、全産業の一〇人以上の労働者を雇用する事業所における一八才から一九才までの男子労働者の平均月間きまつて支給される現金給与額は二万七、八〇〇円、平均年間特別に支払われる現金給与額は三万三、八〇〇円であることが認められ、右月間給与額を年間のそれに引き直し、右年間特別給与額を合せると年間給与総額は三六万七、四〇〇円となるから、原告が前記のような身体障害を受けなければ、前記稼動期間を通じて毎年少くとも右程度の収入を得ることができたと推認するのが相当である。
ところで、原告は本件事故による受傷のため前記のとおり後遺障害を残し、労働基準監督局長通牒(昭和三二年七月二日基発第五五一号)によると障害等級第七級該当者の労働能力喪失率は五六パーセントであるが、同原告の発作は前認定のとおり不完全発作であり、しかも主として夜間睡眠中に現れ昼間は時々頭痛、悪心、吐き気等の症状が現れるほか特異な症状は現れないこと等を考慮すると、同原告は右後遺症のため通常の身体状況の場合に比し三五パーセントの労働能力を喪失しているものと認めるのが相当である。したがつて、同原告は前記の稼動期間を通じて毎年あげ得たはずの収益三六万七、四〇〇円の三五パーセントに当る一二万八、五九〇円を失つたものというべきである。そこで、右の逸失利益からホフマン式計算により年毎に年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価算定すると二一八万円となる(一万円未満切捨)
算式 一二八、五九〇×(二六・八五一六-九・八二一一)=二、一八九、九五一円
(三) 原告ヤヱミの逸失利益
〔証拠略〕を総合すると、原告ヤヱミは本件事故当時大阪府豊中保健所に看護婦として勤務し、月平均一万五、一六六円の給与を得ていたが、本件事故により原告悟が前示認定のとおり入・通院を余儀なくされ、同原告がいまだ五才の幼児であるところから母親である原告ヤヱミが右入・通院に付添うことが必要であつたので、同原告は本件事故以来同保健所を休んで原告悟に付添い、さらに、原告悟が前記後遺症のため発作を起すおそれがあつて一人で家におくことができず、将来も長期にわたつて通院する必要があることが判明したので、同原告の退院後に事故の翌日である昭和四三年五月二二日に遡つて同保健所を退職し、その後は就労せず、専ら、家事と子供の世話に当つていることが認められる。
しかし、前示認定の原告悟の治療経過、後遺症の程度および同原告の年令、ならびに原告悟は昭和四五年四月小学校に入学し、爾来月一回程度の通院日の外は格別学校を休むこともなく通学していること〔証拠略〕を考慮すると、本件事故と相当因果関係ある休業は昭和四五年三月末日までの二二ケ月間(一ケ月未満切捨)と認めるのが相当であり、原告ヤヱミは右期間中毎月あげ得た収益一万五、一六六円を失つたというべきである。そこで、右の逸失利益から月毎に年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価を算定すると三一万八、五九八円となる。
算式 一五、一六六×二一・〇〇七四=三一万八、五九八円
(四) 療養関係費
〔証拠略〕によると、同原告は原告悟の治療費として三万〇、五五一円、入院中の雑費として五万七、七八〇円、通院交通費として一万九、七〇〇円、合計一〇万八、〇三一円を支払い同額の損害を蒙つたことが認められる。
(五) 原告悟の慰藉料
前認定の原告悟の傷害の部位程度、入・通院、後遺症の程度、および今後も長期にわたつて服薬を要すること等諸般の事情を考慮すれば、原告悟に対する慰藉料は一八〇万円をもつて相当とする。
(六) 原告繁、同ヤヱミの慰藉料
原告悟の前記傷害の程度に鑑み、原告繁同ヤヱミはいまだ生命を害された場合あるいはこれに比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けた場合に該当するものとは認められないから、同原告らの慰藉料請求は認められない。
四、過失相殺および弁済の抗弁について
〔証拠略〕を総合すると、本件事故現場附近は、北側に住宅が密集し、南側が空地となつている幅員四メートルの東西に通ずる車両の通行の稀れな見透しのよい未舗装の道路で、当時東から事故現場に達するまでの道路脇には「子供飛出しに注意」と書かれた立看板が置かれていたこと、被告明子は事故車を運転し時速約二〇キロメートルの速度で西進中、本件事故現場である当時の原告方住居出入口前から一〇メートル余り東側に停車中の車両があつたので一旦停止したが、右車両が避譲したので再び発進し、右原告方出入口の東方四ないし五メートルの道路北側に子供が二人立つているのに気がつき、その動向に注意してその前を通りすぎた直後、前方約三・八メートルの右原告方出入口から飛び出すように出てきた原告悟を発見し、危険を感じて急停車の措置をとつたが間に合わず、事故車前部をさらに道路中央へ進んできた同原告に衝突させたうえ、同原告を車体下に巻き込み衝突地点から約二メートル進行して停止したことが認められ、〔証拠略〕中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定に反する証拠はない。
右事実によると、本件事故は原告悟が通行中の車両の前へ飛び出すように出て来たことに基因するところ大であるといわざるを得ない。しかしながら、右認定事実によれば、被告明子は事故現場の手前にいた他の子供に気をとられていたことが窺われ、前方に対する注意を十分に尽したといいきれない面があり、また被告明子の衝突回避のための措置が万全であつたともにわかに断じ難いこと、および前示認定のような原告悟の年令および道路事情を考慮すると、原告らが被告から賠償を求め得べき額は損害額の七割とするのが相当である。
ところで、原告繁の損害は先に法定したように一〇万八、〇三一円であるから、その七割に相当する七万五、六二一円が被告らの賠償すべき額であるところ、被告保治が原告悟の治療費、通院交通費等として三四万九、三一八円を支払つていることは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば同被告は右の外に原告悟の治療費として四万三、一三〇円を支払つていることが認められる。さらに、〔証拠略〕によれば、原告繁は右一〇万八、〇三一円を一旦支払つたが、被告保治からその支払を受け領収書も同被告に交付済であり、右一〇万八、〇三一円は被告主張の三九万二、四四八円に含まれていることが認められる。
したがつて、被告保治の右支払額合計三九万二、四四八円のうち七万五、六二一円は原告繁の右損害賠償請求権に充当されたと認めるのが相当であり、同原告の損害賠償請求権は全額弁済により消滅しているというべきである。
また、原告悟の損害は前示認定のとおり逸失利益の損害が二一八万円、慰藉料が一八〇万円の合計三九八万円であるが、前記被告の支払額三九万二、四四八円のうち原告繁の損害として認定された一〇万八、〇三一円を控除した残額二八万四、四一七円は原告悟の損害と認めるのが相当であり、これを加えると同原告の総損害額は四二六万四、四一七円と考えられる。よつて、その七割に相当する二九八万五、〇九一円が被告らの賠償すべき額であるが、前記被告の支払額から原告繁の損害賠償請求権に充当された七万五、六二一円を控除した残額三一万六、六二七円および当事者間に争いのない自賠責保険金の受領額一四五万八、六〇六円を差引くと残額は一二〇万九、八五八円となる。
五、弁護士費用
以上により被告らに対し原告悟は一二〇万九、八五八円、原告ヤヱミは二二万三、〇一八円の損害賠償請求権を有するものというべきところ、〔証拠略〕によれば被告らがこれを任意に弁済しないこと、および同原告ら訴訟代理人に本訴の提起と追行を委任し、その主張どおりの債務を負担したことが認められるが、本件事案の内容審理の経過、前記認容額等諸般の事情を勘案すると、本件事故と相当因果関係のある損害として被告らに負担させるべき弁護士費用としては右のうち原告悟につき一三万円、原告ヤヱミにつき二万円とするのが相当である。
なお、原告繁の弁護士費用の請求については、前記のとおり被告の抗弁に理由があり同原告の被告に対する請求が認められない以上、同原告の負担した弁護士費用は本件事故と相当因果関係ある損害ということはできないので、その余の点について判断するまでもなく同原告の弁護士費用の請求は理由がない。
六、結論
以上の次第で、被告は、原告悟に対して一三三万九、八五八円およびうち弁護士費用を除く一二〇万九、八五八円に対する本件不法行為の日以後であり本訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、原告ヤヱミに対し二四万三、〇一八円およびうち弁護士費用を除く二二万三、〇一八円に対する右昭和四四年八月二二日から支払ずみに至るまで右同様の遅延損害金を支払う義務があるから、同原告らの本訴請求は右の限度で認容し、同原告らのその余の請求および原告繁の請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 本井巽 笠井昇 伊藤武是)
今井悟の逸失利益計算書
<省略>