大判例

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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)5849号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところでこれについては既に示談解決済である旨主張があるのでこれについて考えるのに、<証拠>を綜合すれば、

示談は事故後二ケ月半程経過した昭和四二年七月四日(原告入院中)、被告と原告の代理人訴外深谷哲夫との間に成立したこと、この示談の前提として事故の責任関係は明確でないものとしその趣旨は示談書中にも明示され、その他原告は医師の説明により症状も比較的軽微で近く回復できるものと予測しこの点も当然の前提としていたこと、しかるに症状は意外に重くその後一年以上に亘る入通院治療(その後も手術等)を要し、且事故の責任関係についてもその頃既に被告は警察に問合せて自己の責任を問わるべき地位にあることを知つていたものと疑われること、その他示談書における原告の氏名は署名(実は記名)を含めて全部誤字を以て記載されていること(隆太のところ隆夫と記載)、

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、これらの事実を綜合すれば、当事者が示談の前提としていた点、殊に事故の責任が不明であるとの点は、明らかに真相と相違し、示談月日が比較的早期であること、しかも被告においても原告氏名の記載を誤つてまで急いで示談したことなどを併せ考えるときは、本件示談契約は前提につき重大な錯誤があり、これがなければ示談をしなかつたであろうものと明らかに認められるので、この契約は無効のものと認めなければならない。<中略>

ところで前記認定事実によれば、本件事故については原告にも過失があり、これが事故の一因をなしていることは明らかであつて、双方の過失割合その他諸般の状況を斟酌して双方の負担割合を定めれば原被告それぞれ五対五とすることが相当であるが、原告の蒙つた前記損害額中治療費分については、前記のとおり健康保険によつて賄つた分が相当高額に上り、その詳細な額は明らかでないとはいえ、少くとも前記額を上廻ることは明らか(診療期間その他を対比)であると窺われ、しかも健康保険については被保険者(原告)の過失等の存否を問わずその権利として給付を受けることができ、何人もこの権利を奪うことは許されないものであり、且原告の過失割合(負担割合)に対応する部分については健康保険による加害者(被告)への求償も許されないものと解すべきであるなど健康保険法の精神(第四三条、第六〇乃至第六二条、第六七条等参照)に照せば、過失相殺の計算に当つては、右の事情の下にある本件ではこれを計算の対象外とすることが実質的な公平に資するものというべきであり、以上を斟酌して被告に負担せしむべき額を算定すれば、治療費分を除いた分については

金七〇〇、四八五円(端数調整)

とすることが相当であり、これと治療費分を合算すれば、合計は

金一一五万円

となることは計数上明らかである。

(寺本嘉弘)

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