大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)6153号 判決
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〔判決理由〕(8)、過失相殺
<証拠>を総合すると、本件事故現場は東西に通ずる車道の幅一八メートルの坂道と車道の区別のある道路上の北から南への幅六、〇五メートルの横断歩道上であつたこと、山崎は、加害車を運転して東から西に向つて時速約三〇キロメートルで中央線の幅〇、九メートル左側を進行し、三〇ないし四〇メートル前方に横断歩道の設けられていることを認めていたこと、山崎は、右横断歩道の手前にさしかかつた際、右前方一二、六メートルのところを右から左にくさりをつけたままの犬が走つて出てくるのを発見し、アクセルから足をはずしてブレーキの上におき、時速約二〇キロメートルに減速して進行し、横断歩道にかかろうとしたとき右前方三、五メートル、北側歩道から約八メートル南の横断歩道上を小走りで北から南に向つて横断中の原告博子を始めて発見し、急ブレーキをかけたが、間に合わず、更に三、五メートル進行して道路の中央線から〇、九メートル南側の横断歩道上で加害車の右側サイドバンバーに原告博子が接触させて転倒させたこと、原告博子は犬が車道に走り出た約二メーートルあとから横断歩道上を小走りで北から南に道路を横断しようとしたものであること、本件事故の直前に加害車の対向車線上を普通乗用車と自動三輪貨物自動車が西から車に向つて併進していたが、いずれも原告博子が歩道から右横断歩道に出ようとする直前に、右横断歩道の西側で停止してその前を原告博子が横断するのを待つていたことが認められ、右認定に反する証拠はない。以上認定の事実によれば、本件事故は加害車の運転手山崎が、横断歩道にさしかかつた際、前方左右を十分注視して、横断歩道を横断しようとする者があるときにはその横断を妨げないよう横断歩道の手前で一時停止するべき注意義務があるのにこれを怠り、右前方を走つてくる犬に一瞬注意を奪われて左右の安全が十分でなかつたため、対向車が横断歩道の手前で停止しているにもかかわらず横断歩道上を横断しようとした原告博子が北側の歩道から横断歩道上に八メートル進行してくるまでこれに気づかなかつた過失によつて生じたものであつて、原告博子が東進車の停止している前を通つて車道上に出てくるのを発見して直ちに停止すれば本件事故は発生しなかつたものと認められる。原告博子が左方をみて加害車の手前で停止していれば本件事故は発生しなかつたであろうということは全くの結果論にすぎず、横断歩道を横断しようとする者が横断歩道上に出た際にこれを発見しえた車両が横断歩道の手前で停止しえたと認められる場合には横断歩道には道路横断につき損害額の査定についてしんしやくすべき過失は存しないものというべきである。従つて本件事故についての過失相殺の主張は理由がない。(山本矩夫)