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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)6930号・昭44年(ワ)1986号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>を総合すると、次のような事実が認められる。

(一) 被告は、昭和二三年に建設大臣から宅地建物取引業者の許可を受けて、じ来この営業をなしているところ、大阪市内に本社を、東京、名古屋、大阪市内梅新に各営業所を、大阪府茨木市西駅前町四番一一号に茨木出張所を有していた。白田は、昭和四二年一一月に新聞広告の募集に応じて被告に雇傭せられて、被告の営業部員として茨木出張所に配属させられたが、昭和四三年頃茨木出張所には、白田より他に取引責任者田中憲三、社員上西勝治と女事務員が勤務していたが、右田中は一月に三回ばかり顔を出す程度で、他の日はもつぱら本社の方で働き、右上西は主として会計事務にあたり、したがつて、茨木出張所における宅地建物売買の仲介等の営業はもつぱら白田が担当していた。なお、被告の常務取締役高橋敏行が茨木市内に自宅を有していた関係で、朝、夕本社への出、退勤の途上茨木出張所に立寄り、その日の社員の日報等を閲読し、適宜指示を与えていた。

(二) 原告は、昭和四三年七月頃被告(茨木出張所)の仲介で原告所有の高槻市内の土地を他に売却したことがあつたが、その際被告の仲介事務を担当した白田や右高橋敏行に右売却土地の代替土地として茨木市内でアパートを建築できる適当な土地を買いたいので、これにつき被告が仲介斡旋するよう依頼し、その承諾を得た。その後同年八月頃白田から原告に、高橋、上田所有の本件土地が右代替地として適当なので、これを買受けるよう話が持込まれたので、原告は即刻白田の案内で現地を見分して、買取ることを決意し、同月一七日頃被告茨木出張所において、原告、白田、高橋、上田、その仲介人の熊川英夫、らが会合し、本件土地売買の代金等につき折衝したが、最終的な合意にいたらず、その際本件土地は、公道に面しておらず、公道に出るためには飯島所有の茨木市上中条一丁目四一四番地の九の土地を通行する要があるが、これにつき飯島と紛争中であることが判明した。そこで、原告は、右の点が解決しなければ本件土地を買取れない旨述べたところ、白田や高橋敏行は、被告の方で飯島と交渉し、責任を持つて、本件土地の公道へ出る道路を確保する旨言明したので、この交渉を依頼することになつた。そして、その後白田の方で飯島と交渉を重ね、昭和四三年一〇月頃には、後記のとおり通路を確保できる目どがつき、一方、原告が本件土地を高橋、上田から代金八、二〇〇、〇〇〇円で買受ける、ことについて双方内諾していた。

(三) 白田は、被告に就職する以前に堺市役所に勤務していたが、その頃競輪に通つて多額(金一、〇〇〇、〇〇〇円位)の借金が出来たため昭和三六年同市役所を退職して、妻子とも離別し、その後転職を重ね、その間競輪通いがやまらず、そのため昭和四一年三月頃再び多額(金四、〇〇〇、〇〇〇円位)の借金ができ、内妻の実家等にこの返済をしてもらつたため、今後は競輪通いをやめることを決意したが、昭和四三年六月頃多額(金四〇〇、〇〇〇円位)の収入を得た際再び競輪通いが始まり、その後これにふけるようになつていた。そこで、白田は、原告から被告が本件土地の売買の仲介を依頼されていることを奇貨として、本件土地の売買契約書を偽造して、原告にこれを示して信用させ原告から手附金名下に金をだまし取つて、この金で競輪に行つて勝負をし、勝つたあとで原告には判らんようにして売主の高橋らに支払つておけばばれることはないだろうという気になつた。そして、白田は、昭和四三年一〇月七日頃、原告に対し、電話で真実そのような事実はないのに、「売主の高橋と代金八、二〇〇、〇〇〇円で話が決まり先方から契約書を預つて来ている。契約日は一〇月一一日になつているから、その日に手附金一、〇〇〇、〇〇〇円を持つて来てくれ」と虚偽の事実を告げて、右金員を提供するよう申し向け、早速売買契約書案を作成して待つていた。原告は、白田の右言を信用して、同年同月一一日午前一一時頃被告の茨木出張所に来訪したので、白田は、原告に対し、高橋、上田が原告に本件土地を代金八、二〇〇、〇〇〇円で、売り、手附金一、〇〇〇、〇〇〇円を契約締結と同時に支払い、残代金は同年一一月二〇日所有権移転登記を受けると同時に支払う、なお、原告において契約不履行のときは右手附金を高橋、上田が没収する旨記載した右売買契約書を示したところ、原告は、通路の問題は被告の方で責任を持つて解決決する旨言明されていたので、これで解決できるものと確信し、右契約書により高橋、上田と売買契約を締結することを承諾し、これに押印した。そこで、白田は、原告に対し、真実は競輪で費消するつもりであるのに、これを秘し、手附金を先方に届けて契約書に印をもらつて来る旨嘘を云つて、その旨誤信した原告から、即時右手附金として高橋、上田に手渡すことを委託する趣旨の下に現金一、〇〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取り、翌日頃愛知県方面の競輪に行つて、右金員を全部費消して負けてしまつた。

(四) 白田は右負けた金員をまた競輪で取返してやろうと思い、そのために必要な元手の金を、原告が全面的に白田を信頼しているのに乗じて再び原告からだまし取つて、つくろうと考え、昭和四三年一〇月一四日、原告に対し、電話で、真実そのような事実はないのに、「先方に契約書と手附金を届けたところ売主は二人おるので二人とも一、〇〇〇、〇〇〇円づつ手附金を出してほしいと云つているので、一週間以内に追手附金として一、〇〇〇、〇〇〇円を出してやつてくれ」と虚偽の事実を告げて、右金員を提供するよう申し向けたところ、同年同月一六日原告がこれを信用して被告の茨木出張所に右金員を持参したので、白田は、即時、白田の右言を誤信した原告から、右追手附金として高橋、上田に手渡すことを委託する趣旨の下に現金一、〇〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取つた。白田は、原告に、その際、かねて、勝手に、売主欄に、高橋、上田の記名をしてこれに偽造した高橋、上田の印章を押捺し、追手附金一、〇〇〇、〇〇〇円を七日以内に支払う旨書き加えて売主作成名義を偽造した同年一〇月一六日付の前記売買契約書(甲第二号証)および被告の茨木出張所の白田作成名義の右金員を右追手附金として領収した旨記載した領収証を渡し、ついで、翌一七日白田が偽造した高橋作成名義の右金員の領収証(甲第三号証の二)を渡して、原告を一層誤信させた。そして、白田は、同年同月一八日頃右騙取した金を再び競輪に費消して負けてしまつた。

(五) 白田は、競輪で勝負することが忘れられず、またもやその元手の金を原告からだまし取つてつくろうと考え、昭和四三年一一月頃原告に対し、「隣地の飯島との通路の問題が解決出来ていないからそれを解決するのに日にちがかかるから、契約期限の延長をしてもらう書類をもらつておかねば契約流れになつたらいかん」と告げたところ、原告は、通路の問題が解決しない間に代金を全額払うとあとに問題が残り困ると思い、先方に行つて延長の承諾をもらつて来てくれと返事した。そこで、白田は、即刻、金二、〇〇〇、〇〇〇円の入金により最終取引期限を一ケ月間延期することを承諾する旨記載した高橋作成名義の承諾書(甲第四号証の一)を偽造(字を白田自身が書くと発覚するおそれがあると考え、情を知らない知人の松井行雄に字を書いてもらい、白田が高橋の偽造印を押捺)し、同日、電話で、原告に対し、真実そのような事実はないのに、「先方から、あと二、〇〇〇、〇〇〇円出してくれたら二ケ月間延期するという承諾書をもらつて来た」旨虚偽の事実を告げ、右金員を提供するよう申し向けたところ、原告は、これを信用して、「手附流れになつたらいかんからその金はつくつて行く」と返事し、同年同月一七日頃被告の茨木出張所に右金員を持参したので、白田は、即時、白田の右言を誤信した原告から、右承諾金として高橋、上田に手渡すことを委託する趣旨の下に現金二、〇〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取つた。白田は、原告に、その際右偽造の承諾書および被告の茨木出張所の白田作成名義の右金員を中間金として領収した旨記載した領収証を渡し、ついで、同月二一日頃白田が偽造した高橋作成名義の右金員の領収証(同年同月一八日付、甲第四号証の二)を渡して、高橋に右金員を渡して来たと虚偽の事実を報告した。そして、白田は、即刻右騙取した金を競輪に費消して、負けてしまつた。

(六) 原告は、かつて大阪府庁に勤務して、土地買収の仕事にたづさわつたことがあつたが、原告は、昭和四四年一月一六日に公示の茨木市会議員に立候補することを決意してこの準備にかかつたり、当時長女が病死したりしたためこれらに気をとられて毎日忙しく、本件土地の売買の件については、以前に高槻の土地を被告の仲介で有利に売却処分できたことからすつかり被告や白田を信用して、何らの疑念もいたがずまかつせきりの状態であつたところ、白田は、さらに、これに乗じて、もう一度原告から金をだまし取つて、その金で競輪に行つて勝負に勝ち、これまで負け続けて来た金を取り戻してやろうと考え、昭和四三年一二月九日頃、原告に対し、「通路の問題は折渉中だが、あと二ケ月だから売買契約の期限を延期してもらうことにしたい」と告げたところ、原告は、市会職員の選挙がすんだあとに解決すればよいと思つて、右提案を承諾する旨返事した。そこで、白田は、即刻、昭和四三年一二月二〇日に延期した本件土地の売買最終取引について金二、〇〇〇、〇〇〇円を入金してもらうことにより再度昭和四四年二月二〇日まで延期することを承諾する旨記載した高橋作成名義の承諾書(甲第五号証の一)を偽造(再び、発覚をおそれて情を知らない前記松井行雄に字を書いてもらい、白田が高橋の偽造印を押捺)し、昭和四三年一二月一〇日頃、電話で、原告に対し、真実そのような事実はないのに、「高橋から二ケ月延期の承諾書をもらつて来たが、やはりあと二、〇〇〇、〇〇〇円出してくれと云つておる」と虚偽の事実を告げ、右金員を提供するよう申し向けたところ、原告は、いずれ買取る本件土地の代金だから延長の条件としてなら仕方ない支払いしておこうとも考え、右支払いを承諾する旨返事した。そして、同年同月一三日頃、原告が被告の茨木出張所に右金員を持参したので、白田は、即時、白田の右言を誤信した原告から、右承諾金として高橋、上田に手渡すことを委託する趣旨の下に現金二、〇〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取つた。白田は、原告に、その際、右偽造の承諾書を渡し、ついで、同年同月一六日頃、白田が偽造した高橋作成名義の右金員の領収証(同年同月一六日付、甲第五号証の二)を渡した。そして、白田は、売主の高橋、上田の方に一応手附金だけでも入れておけば他に売却処分されないと考え、先に原告に渡した売買契約書とは、期日および手附金の記載が異なり、その他は同じである売買契約書を作成して、同年同月一六日頃前記仲介人熊川英夫を通じて、高橋、上田に右契約書および右騙取金のうち金一、〇〇〇、〇〇〇円を手附金として渡したところ、高橋、上田は右契約書により売買契約することを承諾して、右契約書に各署名、押捺して返戻して来たので、白田が右契約書の買主側の原告の署名、押印を偽造して、再びこれを高橋らに交付した。白田は、右騙取金の残金一、〇〇〇、〇〇〇円をその頃競輪に行つて全部費消し、負けてしまつた。

(七) 白田は、期日は、延びても取引をすませるには競輪で勝負してこれまで費消した金を取り戻すより他に方法はなく、そのためには、その元手の金を原告からさらにだまし取つて、つくろうと考え、昭和四四年二月一〇日頃、被告の茨木出張所において、その後の本件売買の経過を聞きに来た原告に対し、真実そのような事実はないのに、全部問題が解決して登記出来るから、原告の住民票一通もらつて来るよう虚偽の事実を告げたところ、原告は早速右住民票を取寄せ、被告の茨木出張所へこれを届けた。そして、同年同月一五日頃白田は、電話で、原告に対し、真実そのような事実はないのに、「先方から登記書類をもらつて来て登記をするのに残りの金を持つて行かねば出してくれんから残金をくれ」と虚偽の事実を告げ、右残金を提供するよう申し向けたところ、原告は、白田の右言を信用して、これを承諾した。そして、同年同月一八日頃原告が右残金(九二五、〇〇〇円、白田の計算により、その内訳は、原告は、本件土地の売買残代金二、二〇〇、〇〇〇円、後記の飯島に対する交換差金残一七五、〇〇〇円、被告に対する報酬金一五〇、〇〇〇円、および前記熊川英夫に対する報酬金一〇〇、〇〇〇円、以上合計二、二六五、〇〇〇円を支払うべきところ、原告が昭和四四年二月一四日白田に貸与した貸金二〇〇、〇〇〇円および後記のとおり、当時桐原と転売買契約をする予定であつたため、白田から要請されて世話になつていると考えて桐原から入るその手附金一、五〇〇、〇〇〇円を右支払いに当てることにして、これを差引き、残九二五、〇〇〇円となる)を被告の茨木出張所に持参したので、白田は、右残金を支払つても高橋、上田から本件土地の所有権移転登記を受け得ないのに、これを秘し、右登記を受け得るものと誤信した原告から、即時右清算支払いを委託する趣旨の下に現金九二五、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取つた。そして、白田は、その際白田名義の本件土地の売買残代金二、二〇〇、〇〇〇円、仲介手数料金一〇〇、〇〇〇円、右熊川の謝礼金一〇〇、〇〇〇円の各領収証(甲第六号証、第七号証の一ないし三)を原告に渡し、ついで、右交付を受けた金のうちから、昭和四四年二月一八日頃飯島に右交換差金の残金として金一七五、〇〇〇円、その頃右熊川に右報酬金として金五〇、〇〇〇円、その頃高橋、上田に本件土地の売買代金の内金として金六〇〇、〇〇〇円(ただし、内金一〇〇〇、〇〇〇円は罰金払い名義)をそれぞれ払い、その残金一四五、〇〇〇円をその頃競輪で全部費消した。

(八) 白田は、なおも競輪で勝負をしたく、そのためにその元手の金を原告からさらにだまし取つて、つくろうと考え、昭和四四年二月二四日頃、原告に、「桐原が初めの手附金一、五〇〇、〇〇〇円のうち一、〇〇〇、〇〇〇円だけしか持つて来ないので、高橋に払う残代金二、二〇〇、〇〇〇円が不足するから、原告の方で五〇〇、〇〇〇円出してくれ」と申し向けたところ、原告はこれを承諾して、同年同月二五日被告の茨木出張所に右金員を持参したので、白田は、真実は競輪で費消するつもりで、高橋、上田に対する残代金の支払いにあてる意思はないのに、これを秘し、即時、右残代金の支払いにあてるものと誤信した原告から、右残代金として高橋、上田に手渡すことを委託する趣旨の下に現金五〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取つた。そして、白田は、その頃右金員を競輪で費消した。

(九) 原告は、白田から被告に対する本件土地売買仲介の報酬金の半額金一五〇、〇〇〇円を前払いするよう云われたため、昭和四三年一〇月三日白田に右金員を交付したところ、白田は同年同月一七日被告(茨木出張所)にこれを右報酬金として入金した。そして、白田は、日付を昭和四三年一〇月一六日とする本件土地の売買契約書(内容は先に原告に渡した本件土地の売買契約書と同じ。ただし、追手附金一、〇〇〇、〇〇〇円の支払い約定の記載はない)を偽造作成(売主、買主の署名、押印を偽造)して、これ(乙第二号証)を被告に提出して、被告に対しては、同日右契約が締結され、同年一一月二〇日右取引は一切終了した旨嘘の報告をした。

(十) 本件土地の通路の件については、白田が飯島と折衝の結果、昭和四三年一〇月五日頃一応、原告と飯島が本件土地の一部と飯島所有の土地の一部とを交換する話合がついたので、同年同月一一日頃原告は、白田を介して飯島に、右契約の手附金として金二〇〇、〇〇〇円を支払つた。しかし、その後さらに白田と飯島が折衝を重ねた末、同年一一月一五日頃、原告と、飯島は、原告が本件交換差金として金四七五、〇〇〇円を飯島に支払い、そのうち右手附金として支払つた金二〇〇、〇〇〇円を控除した残金二七五、〇〇〇円は交換土地の所有権移転登記と同時に支払うこと、双方は、たがいに、昭和四三年一二月二〇日までに各土地の分筆、移転登記をなしたうえ引渡すこと、原告において本件契約不履行の場合は、右手附金の返還請求権を失なうこと等を内容とする契約を締結した。そして、原告は、白田を介し、飯島に同年一二月二七日頃右残金の内金一〇〇、〇〇〇円を支払つた。

(十一) 建築業を営む桐原は、昭和四四年二月初め頃、アパートの建築用地を探していたところ、知人の山田正典から、宅地の取引についてよく知つているとして被告の茨木出張所の白田を紹介されたので、被告の茨木出張所に出向いて、被告の茨木出張所の係員である白田に右用地の買取斡旋を依頼した。これに対し、白田は、本件土地はまだ原告に所有権移転登記がなされておらず、その頃の状態では、前記のとおり白田が原告から交付させた金をほとんど競輪で費消していたため、原告に右登記がなされる見とおしはなかつたが、原告や桐原に、本件土地は原告に右登記ができると嘘を云つて、原告が桐原に本件土地の一部を売る契約を締結させれば、その代金の受渡のために白田が桐原から金を預つて、これで競輪に行けるので、桐原から金をだまし取ろうと考えた。そこで、白田は、右売買の話を進めることをきめ、桐原や原告に対し、こもごも、本件土地はもうすぐ同年同月二〇日までに原告のものに登記ができるからその土地のうち90坪(297.52平方メートル)を原告が桐原に売り、桐原が原告から買受けるよう強力に勧めたところ、原告も桐原も白田の右言を誤信した結果、被告の茨木出張所の係員としての白田の仲介のもとに、昭和四四年二月二〇日原告と桐原は、原告が桐原に、本件土地のうち90坪(297.52平方メートル)を、代金五、八五〇、〇〇〇円、手附金二、五〇〇、〇〇〇〇円を契約締結日に、追手附金五〇〇、〇〇〇円を同月末日までにそれぞれ支払い、残代金の支払期日は双方話合いのうえで定める旨の約定で売る契約を締結した。そして、昭和四四年二月二〇日、白田は、被告の茨木出張所において、早急に原告が本件土地の所有権移転登記を受け得ず、したがつて、桐原も原告から右買受土地90坪(297.52平方メートル)の所有権移転登記を受け得ないおそれがある実情であり、また、白田において桐原から交付を受けた金を競輪で費消するつもりでもあつたのに、これらを秘し、右登記が確実にでき、また右交付金を原告に手渡してくれるものと誤信した桐原から、右手附金の内金として原告に手渡すことを委託する趣旨の下に現金一、〇〇〇、〇〇〇円を交付させて、これをだまし取り、その後ただちに、この金を競輪で費消した。ついで、同年二月二二日頃白田は、桐原から右手附金の内金として原告に支払うよう金一、五〇〇、〇〇〇円を預つたので、その頃これを原告に渡したが、その後同年三月一日頃、前同様の事情を秘し、前同様誤信した桐原から右手附金の残金として原告に手渡すことを委託する趣旨の下に現金五〇〇、〇〇〇円の交付を受けて、これをだまし取り、その後ただちにこの金を競輪で費消した。

(十二) ところが、昭和四四年三月五日頃、前記知人松井行雄を介しての白田の原告に対する告白により、原告は、はじめて白田の以上の悪事を確知したので、とりあえず他から金策して、高橋、上田に残代金を支払つて損害の発生を防止しようと考えたが、この金策が出来なかつたところ、その後同年同月頃高橋、上田は原告に対し本件土地の売買契約を原告の不履行を理由に解除する旨通知して、既に原告から白田を介し受領していた前記(六)の手附金一、〇〇〇、〇〇〇円を没収し、他の前記(七)の受領金六〇〇、〇〇〇円は右解除にともなう損害賠償金と相殺する旨主張して、これら金員を原告に返還しないので、原告は、本件土地の所有権移転登記を受け得なくなつた。そこで、原告は、飯島に対し前記交換契約を履行できなくなつたので、その頃、やむを得ず、飯島と前記交換契約を合意解除したところ、飯島は、既に原告から白田を介し受領していた前記(十二)の手附金二〇〇、〇〇〇円を約定に基づき没収し、他の前記(七)および(十二)の受領金合計金二七五、〇〇〇円は原告に返還した。そして、同年五月一日、原告は、同じくやむを得ず、桐原と前記売買契約を合意解除し、原告が桐原に対し右解除による損害賠償金等として金三、〇〇〇、〇〇〇円を支払い、桐原が原告に対し桐原が白田に昭和四四年二月二〇日金一、〇〇〇、〇〇〇円を前記のとおり騙取されたことに基づき白田の使用者である被告に対し有する不法行為の損害賠償債権金一、〇〇〇、〇〇〇円を譲渡する旨約したので、原告は、昭和四四年五月一日桐原に右金三、〇〇〇、〇〇〇円を支払い、ついで、桐原は、同年同月二日到達の書面をもつて、被告に対し、右債権譲渡の通知をなした。なお、桐原は、前記売買契約締結後買受土地上にアパートを建築すべくその建築材料を買入れ、これに木組み等を施していたため、これにより多額の損害をこうむつていた。

二、<反証排斥―略>。

三、そこで、以上の認定事実を総合して考察する、次のとおり認定、判断するのが相当である。すなわち、

(一) 白田の原告に対する前記一の(三)ないし(八)、桐原に対する前記一の(十一)の各金員騙取行為は、いずれも詐欺の不法行為に該当する。

(二) ところで、成程、宅地、建物売買取引の仲介業務については、右業者の仲介斡旋の結果、これを依頼した顧客と取引の相手方との間に、売買契約が成立すればこれをもつて右業者の顧客に対する仲介をなす債務は完済されたものといわねばならないが、右仲介の主たる仕事に付随して、右業者が、顧客と取引の相手方間の手附金や代金の授受を仲介代行したり、顧客や取引の相手方から提示された契約成立後の約定変更の申入を仲介斡旋することは、顧客の十分な満足を念顧とするいわゆるサービス業の一種である右仲介業務としては、当然行われ、けつして禁止されていない事柄であるといわなければならない。そうだとすると、白田は、右業者である被告の被傭者(白田が被告の被傭者であつたことは当事者間に争いがない)で、かつ営業係員であつたから、白田がなした原告および桐原に対する前記詐欺の不法行為は、客観的、外形的には、被告の業務の範囲に属し、かつ白田の担当職務にあたるものと認められる(なお、証人高橋敏行の証言、後記措信しない部分を除く、および同証人の証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証の一ないし四一―被告に提出した白田の営業報告書―によると、桐原に対する仲介について白田は被告に報告していないことが認められるが、前記のとおり、桐原は、被告の茨木出張所の係員である白田に土地買取の仲介斡旋を依頼したもので、被告の職務と離れて、全く私人たる白田にこれを依頼したものでないから、右報告のないことは単に白田が内部的にこれを被告に秘していたものにすぎず、桐原との間においては、客観的、外形的には、白田の行為は被告の担当職務を遂行したものと認められる。また、証人高橋敏行は、被告は、その係員各自が代金の授受に関与し、これを預ることを禁止していた旨供述しているが、前記認定の経緯に照し、右供述部分は措信できない)ので、被告の事業の執行につきなされたものといわなければならない。してみれば、被告は、民法第七一五条に基づき、白田の使用者として、原告および桐原に対し、両者が白田の前記詐欺の不法行為によつてこうむつた各損害を賠償する義務があるといわなければならない。

(三) 原告が右不法行為によつてこうむつた損害は次のとおりであることが認められる。

(イ) 前記詐欺の不法行為による直接の損害、合計金五、六五〇、〇〇〇円

すなわち、前記一の(三)の騙取金一、〇〇〇、〇〇〇円、前記一の(四)の騙取金一、〇〇〇、〇〇〇円、前記一の(四)の騙取金二、〇〇〇、〇〇〇円、前記一の(六)の騙取金二、〇〇〇、〇〇〇円のうち高橋、上田に交付された金一、〇〇〇、〇〇〇円を控除した残金一、〇〇〇、〇〇〇円、前記一の(七)の交付金九二五、〇〇〇円のうち飯島に交付された金一七五、〇〇〇円(前記一の(十二)のとおりこれは後日原告に返還された)および高橋、上田に交付された金六〇〇、〇〇〇円を控除した残騙取金一五〇、〇〇〇円(前記一の(七)の交付金のうち、前記熊川に交付された謝金五〇、〇〇〇円については、原告は、この支払を認めているが、前記一の(七)のとおり白田が原告を疑罔しなければこの分の金を原告は白田に渡さなかつたであろうと考えられ、また、白田の詐欺行為により結局本件土地の売買契約が解除(あるいは不成立に確定)されたため、原告としては右謝礼金は無益な出費となつたものであるから、右謝礼金分も損害にあたる)、前記一の(八)の騙取金五〇〇、〇〇〇円、以上総合計騙取損害金五、六五〇、〇〇〇円である。

(ロ) 高橋、上田との売買契約解除による損害、金一、六〇〇、〇〇〇円

前記一の(六)、(七)のとおり原告は、白田を介し、高橋、上田に合計金一、六〇〇、〇〇〇円を交付しているが、前記認定のとおり白田は、原告と高橋、上田とにそれぞれ内容の異つた売買契約書を示して押印させておるので、原告と高橋、上田間には売買契約につき意思の合致がない、したがつて、右契約は成立していないとの疑問が持たれる。そうすると、高橋、上田は、原告に対し、売買契約を解除して手附金を没収あるいは、解除にともなう損害賠償を請求できないので、原告は、高橋、上田に対し右交付金の返還を求めることができると考えられないでもない。しかし、前記認定の経緯をみると、高橋、上田が売買契約書に押印した昭和四三年一二月一六日当時においては、白田を介して、原告と高橋、上田間には、本件土地を原告が高橋、上田から、少くとも、代金八、二〇〇、〇〇〇円、その手附金一、〇〇〇、〇〇〇円(原告が契約不履行のときはこれを没収する)で買う契約を締結する合意にたつしていたと認められないでもない。果してそうだとすると、後者の認定を前提とすると、前記一の(十二)のとおり高橋、上田が右売買契約を解除して、右交付金一、六〇〇、〇〇〇円を手附金(一、〇〇〇、〇〇〇円)として没収、また損害賠償金(六〇〇、〇〇〇円、前記認定の当時の諸般の事情を考慮すると、右損害賠償金額はけつして不当な金額でない)と相殺したため、原告が右交付金の返還を求め得なくなつたのは白田の前記不法行為と相当因果関係のある事柄であることは明らかであり、したがつて、右不法行為により原告は、右交付金一、六〇〇、〇〇〇円相当額の損害をこうむつたといわねばならず、また、仮に前者の認定のとおり実体上前記売買契約が成立していないとしても、このような事態(契約の成否の認定が困難)においては、原告が、右交付金を手附金として没収または損害賠償金と相殺すると主張して現にこれを返還しない高橋、上田から、これを取戻すことは至難な事柄であるから、結局、原告には右交付金相当額の損害が生じているものといわねばならず、右売買契約を仲介した加害者の白田としては、このような事態になることは十分予見できた筈であるから、右損害は白田の前記詐欺の不法行為に基因し、これと相当因果関係のある損害であるといわねばならない。そうすると、いずれにしても、原告は、白田の前記詐欺の不法行為により右受付金一、六〇〇、〇〇〇円相当額の損害をこうむつたことが認められる。

(ハ) 契約解除による損害、金一五〇、〇〇〇円

原告は、前記一の(九)のとおり高橋、上田との売買の仲介の報酬金一五〇、〇〇〇円を被告に支払つているが、前記のとおり右売買は成立して解除、あるいは不成立に確定されたため、これにより原告は右報酬金相当額の損害をこうむつておるところ、右売買の解除等は白田の前記詐欺の不法行為により生じたものであるから、結局、右損害は右不法行為に基因し、これと相当因果関係のある損害であるといわなければならない。

(ニ) 契約解除による損害、金二〇〇、〇〇〇円

前記一の(十二)のとおり原告は、飯島との前記交換契約を解除して手附金二〇〇、〇〇〇円を没収され、同額の損害をこうむつたが、これは高橋、上田との前記売買契約が解除(あるいは不成立に確定)されたためであるところ、この解除等は白田の前記詐欺の不法行為により生じたものであり、これら一連の事態の発生は、右交換契約等を仲介した加害者の白田としては十分予見できた事柄であるから、結局、右損害は右不法行為に基因し、これと相当因果関係のある損害であるといわなければならない。

(ホ) 契約解除による損害、金五〇〇、〇〇〇円

前記一の(十二)のとおり原告は、桐原との前記転売買契約を合意解除して桐原に損害賠償金等として金三、〇〇〇、〇〇〇円を支払つているが、当時桐原がこうむつたものと推認される損害額を考慮すると、右支払金額はけつして過大でなく、相当であり、そのうえ、右合意解除は、高橋、上田との前記売買契約が解除(あるいは不成立に確定)されたためであるところ、この解除等は白田の前記詐欺の不法行為により生じたものであり、これら一連の事態の発生は、桐原との右転売買契約を仲介した加害者の白田としては十分予見できたところであるから、結局、原告が桐原との右転売買契約の合意解除によりこうむつた損害は、右不法行為に基因し、これと相当因果関係のある損害であるといわなければならない。ところで、原告は、前記一の(十一)、(十二)のとおり桐原から内金一、五〇〇、〇〇〇円の支払いを受けたうえ、金一、〇〇〇、〇〇〇円の損害賠償債権の譲渡を受けながら、これらを桐原に対する右支払金三、〇〇〇、〇〇〇円から控除した残金五〇〇、〇〇〇円が右不法行為によりこうむつた原告の損害額である。

(四) 桐原は、前記一の(十一)の昭和四四年二月二〇日の白田の詐欺の不法行為によりその騙取金一、〇〇〇、〇〇〇円相当額の損害をこうむつたことが認められるところ、桐原の被告に対する右損害賠償債権金一、〇〇〇、〇〇〇円は前記一の(十二)のとおり原告に譲渡されているから、これにより原告が右債権を取得したものといわねばならない。

四 次に被告の抗弁について判断する。

(一) 抗弁一について

前記一に認定のとおり、白田は被告に就職前からその私生活が乱れ、就職後も競輪通いを続けてこれにふけつていたものであるから、かかる者を上司の監視の十分行き届かないものと推認される被告の茨木出張所に配属して、信用が重視される同出張所での仲介業務の仕事を前記一に認定のとおりほとんど独断、専行的に行わせていたことは、被告においてその選任が杜撰であつたというべきであり、また、前記一に認定のとおり白田は嘘の報告を被告にしておるものであるところ、本件全証拠によるも、被告においてこれを点検して見破る内部体制をととのえていたことは認められないので、被告は、白田の云いなりにその仕事を任せ、放置していたものではなかろうかとの疑問が持たれるところであるから、被告において、被傭者である白田の選任、監督につき相当な注意をし、この点につき過失がなかつたとは到底認められない。してれみれば、被告の抗弁一の主張は採用できない。

(二) 抗弁二について

本件は、前記一に認定の事実によると、原告のような経歴と社会的地位を有する者にしては、まことににつかわしくなく、著しくうかつに被害にかかつた事件であるというより他なく、原告は、白田を余りにも信用しすぎ(前記のとおり金を貸したりなどもしている)、白田の要求のままに再三にわたつて疑いもせず多額の金を預けているものであるから、原告のこのようなうかつな態度が前記二回め以降の白田の不法行為(前記一の(四)ないし(六)を誘発したと考えられないでもないこと、前記一に認定のとおり、本件土地の通路の件は昭和四六年一〇月五日頃には飯島の土地と交換することで一応の解決にこぎぎつけ、ついで、同年一一月一五日頃にはその契約の細部取決めがなされたものであるから、飯島がさらにこの解決あるいはその実行に難色を示しているため高橋、上田との本件土地の売買の期限の延長の必要があると云う白田の前記嘘の供述については、原告において当然疑念を抱き、白田に金を預ける前に飯島や高橋らに問い合せるべきであつたのに、原告はこれにいささかの疑念を抱かず、右の措置もとらなかつたこと、不動産売買取引については買受不動産の移転登記と引換、あるいはその実行が確実になされることの保証がある段階において買主は残代金を支払うものであることは一般通例であり、このことはかつて大阪府庁において土地買収の職務にあたつていた原告も知悉していたと推認されるのに、原告は単に白田の嘘の言を信用して本件土地の移転登記が確実になされることをたしかめないで、白田に残代金を預けたこと、原告の桐原への本件土地の転売買についても、本件土地の所有権移転登記がなされるか、またはその実行が確実なことをたしかめてのち、右転売買契約をなすべきであつたのに、単に白田の右登記が確実になされるとの嘘の言を信用してなされたこと等の点が認められ、これらの点はいずれも原告の本件被害の発生、あるいはその損害の増大に原因を与えているものであり、(なお、原告と飯島との本件土地等の交換契約については、これが本件土地の通路の確保のためになされたたものであるから、原告が本件土地の所有権移転登記を受ける前に右交換契約がなされたことはやむを得なかつたところで、原告のこの契約の締結およびその手附金支払いを非難すべきでない。もつとも、原告がその交換差金を飯島に支払つたことは、約定期限よりも前に支払つておるから、この点は原告の手落ちとして非難に価するが、この支払金は原告に返還され、本件損害として認定されていない)、また、桐原についても、本件土地の所有権移転登記が原告にいまだなされていない段階に、この登記実現の確実なことをたしかめないで、単にこれに関する白田の嘘の言を信用して原告と転売買契約を締結したもので、右契約の履行については危惧がもたれるべきであつたというべきであるから、この点は桐原の手落であると認められるところ、の白田の不法行為責任とは別に、いわゆる報償責任、あるいは危険責任の見地から負わされる使用者としての被告の民法第七一五条の損害賠償義務の程度を認定する場合においては、原告および桐原の右にあげた各諸々の落度を被害者である原告らの過失として過失相殺をなすべきであると解するを相当とする。しかし、前記一に認定の事実によると、原告の側においては、被告はある程度規模の大きい、宅地建物取引業を営む会社で、白田はその社員であることや、原告が以前に被告(担当者白田)の仲介で高槻の土地を無事、不利に売却処分できたことのため、原告は、被告および白田を信用するにいたつたこと、白田の原告に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、その手口も巧妙で領収証等を偽造して原告にこれを交付する等をして原告の誤信を一層深めたこと、原告は当時長女の病死や茨木市会議員の選挙に立候補してこれに忙殺されていたため、白田の巧妙な口車に乗せられて、つい同人に対する警戒を怠る結果になつたこと、桐原との転売買契約については、白田が桐原からの預り金を詐欺するためにこの契約を仕組み、これを原告らに強力に勧めたために原告が締結したもので、原告としては積極的にこのんで締結したものでないこと等の点があり、また、桐原の側においては、原告同様、桐原が右のとおりの信用ある被告やその社員の白田を信用したこと、白田に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、桐原が白田の巧妙な口車に乗せられ、強力に原告からの転買を勧められたためにこれを締結して手附金を預けたこと等の点があり、これらの点を考え併すと、原告および桐原のこうむつた損害中、いずれも、その三分の一を減じた残余の損害を被告に賠償さすをもつて相当とする。

(山崎末記)

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