大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和44年(借チ)4号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕 申立人が新東洋ビル株式会社(本店大阪市北区兎我野町七九番地)に対し、別紙目録(一)記載の土地の賃借権を譲渡することを許可する。

本件借地契約の存続期間を昭和六〇年一〇月末日まで延長し、かつ、右譲渡後の賃料(別紙目録(三)記載の建物の賃料をも含めて)を月金二六、〇〇〇円と定める。

申立人は相手方に対し、金一、六〇〇、〇〇〇円の支払をせよ。

〔決定理由〕一、申立人の本件申立の要旨は次のとおりである。

(1) 申立人は、昭和二〇年一〇月頃別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)を、当時の本件土地の所有者であつた申立外寺沢徳治郎より、木造その他の堅固でない建物を所有する目的で、存続期間の定めなく賃借し(以下「本件借地契約」といい、これに基づく賃借権を「本件賃借権」という。)、爾来本件土地上に別紙目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有しているところ、その後、本件土地の所有権は、同三〇年頃申立外栗山芳三郎に、さらに、同三三年頃相手方に、順次移転し、本件借地契約も順次引継がれて現在にいたつている。

なお、本件土地上には相手方の所有にかかる別紙目録(三)記載の建物(以下「本件倉庫」という。)があり、申立人は相手方から本件土地の賃貸借に附随して本件倉庫をも一括して賃借しているものである。

(2) しかして、賃料は逐次値上げされて、同四一年四月に月一五、〇〇〇円と定められた(ただし、この賃料の額は、本件倉庫の賃料をも含めて一括して定められているものである。)が、相手方において、申立人に対し、同四三年四月三日到達の書面をもつて、右賃料を月五〇、〇〇〇円に増額する旨の請求をなし、従来の額による賃料の受領を拒むので、申立人は同年三月以降月一五、〇〇〇円の割合による賃料を供託している。

(3) なお、申立人は、本件土地を賃借するにあたつて、寺沢徳治郎に敷金四、〇〇〇円を支払つている。

(4) ところで、申立人は本件建物につき、代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権仮登記を有する申立外株式会社大昌商事との間に訴訟が係属して和解が進行中であり、右紛争解決のためには、本件建物を他に売却し、その処分代金をもつて、解決金の支払に充てる他はないとの合意に達した。

(5) そこで、申立人は本件建物並びに本件賃借権(本件倉庫の賃借権をもともに)を、大阪市北区兎我野町七九番地に本店を有する申立外新東洋ビル株式会社に譲渡することの契約を取りつけたが、同会社は、貸ビル等を目的とする資本金二〇〇万円の会社で、右本店所在地に八階建のビルを所有していて、資力もあり、同会社が本件賃借権を取得しても相手方に不利となる虞はない。

(6) しかるに、申立人と相手方との間で、本件賃借権譲渡の承諾に関する条件の一致を見ないので、右本件賃借権の譲渡につき、相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(二) これに対する相手方の陳述の要旨は次のとおりである。

(1) 申立人の主張する(一)の(1)、(2)記載の事実は認める。

(2) 相手方は、申立人が本件賃借権(並びにこれに附随する本件倉庫の賃借権)を新東洋ビル株式会社に譲渡すること自体については異議はないが、本件土地は大阪市の一等地といわれる繁華街に存し、その地価は少くとも3.3平方米当り一、五〇〇、〇〇〇円を下らないものであるから、右譲渡に当つては、申立人より相手方に三、〇〇〇、〇〇〇円の給付をさせるとともに、同四三年四月一日以降の賃料を月五〇、〇〇〇円(ただし、本件倉庫の賃料をも含めた金額)と定め、かつ、相当額の敷金の預託をさせるのが相当である。

二、右申立に対する鑑定委員会の意見の要領は別紙記載のとおりであるが、これに対する申立人の陳述の要旨は(一)記載のとおりであり、相手方の陳述の要旨は(二)記載のとおりである。

(一)、鑑定委員会の意見は相当である。

(二)、鑑定委員会の意見中、本件借地契約の存続期間を延長することについては異議はないが、申立人が相手方に給付すべき金額並びに本件土地の賃料額に関する部分は低きに過ぎる。すなわち、本件土地の固定資産税並びに都市計画税の合計額も鑑定委員会の評価当時の同四三年度は三六、一七〇円であつたものが、同四四年度は四四、四二〇円と増額になつており、財産上の給付額並びに賃料額は相手方の主張する金額が適当である。

三、申立人の申立に対する当裁判所の判断は次のとおりである。

(一)、本件記録編綴の各資料によると、前記一の(一)の(1)ないし(5)記載の事実が認められるのみならず、相手方においても、申立人が本件賃借権(並びにこれに附随する本件倉庫の賃借権)を新東洋ビル株式会社に譲渡すること自体については異議がないので、右譲渡につき相手方の承諾に代わる許可の裁判をなすべきである。

(二)、そこで、進んで、本件記録に表われた各資料に基づく諸般の事情に鑑みると、当事者間の利益の衡平を計るためには、右許可に伴い、次に述べるとおりの附随の裁判をなすのが相当であり、かつ、これをもつて足りると認められる。

(1) 存続期間について

本件借地契約の存続期間は同五〇年一〇月に満了し、あと約六年を残すのみであるところ、本件建物は建築後約二四年を経過しているが、適当な補修を施すことにより、向後一五年ないし一七年の経済耐用年数を有するものと認められるのみならず、当事者双方とも本件借地契約の存続期間を一〇年程度延長することについては異議がないので、本件借地契約の存続期間を、昭和六〇年一〇月末日まで延長することとする。

(2) 財産上の給付額について

申立人は、本件賃借権の譲渡により、地価の値上りに伴つて高騰している借地権の価格に相当する対価の取得をするうえ、右譲渡に伴い、前記のように、存続期間が延長されるものであるから、本件賃借権の譲渡による利得を申立人にのみ帰属せしめることは妥当でなく、申立人より相手方に財産上の給付をさせるべきであるが、その金額は本件賃借権の価格(この点は鑑定委員会の意見を相当と認め、本件土地の更地価格(3.3平方米当り一、一〇〇、〇〇〇円と評価する。)二〇、〇二〇、〇〇〇円よりその一〇パーセントを控除した建付地価格一八、〇一八、〇〇〇円の六〇パーセントと見積る。)一〇、八一〇、八〇〇円の約14.8パーセントにあたる一、六〇〇、〇〇〇円が適当であると認められる。

(3) 賃料について

本件借地契約の賃料は、同四一年四月に月一五、〇〇〇円(ただし、本件倉庫の賃料をも含めて)と定められたものであるところ、右賃料額は、その後本件土地に対する租税その他の公課の増額並びに本件土地の価格の昂騰により、比隣の土地の賃料に比較して不相当となつているものと認められるので、これを適正な賃料額に改めるべきであるが、その金額は月二六、〇〇〇円(本件倉庫の賃料をも含めて)(その算定方法は、当事者間において賃料を月一五、〇〇〇円と定めた同四一年四月当時の同四一年度分の本件土地の固定資産税額一八、七五〇円と、現在の同四四年度分の本件土地の固定資産税額三二、四三〇円との上昇率によるスライド式評価法によることとし、一五、〇〇円に一八、七五〇(円)分の三二、四三〇(円)を乗じ、その端数を切上げた金額)が相当であると考えられる。

(三) よつて、申立人の申立にかかる本件賃借権の譲渡につき、相手方の承諾に代わる許可を与うるとともに、以上記載の附随の裁判をなすこととし、主文のとおり決定する。(松下寿夫)

別紙

本件申立はこれを認容するのが妥当であり、その場合には、附随の裁判として、(一)、本件借地契約の存続期間を一〇年延長すること、(二)、申立人より相手方に対し、財産上の給付として一、五〇二、〇〇〇円の支払をなすこと、(三)、本件借地契約の賃料を月二四、〇〇〇円とすることを命ずる必要があり、かつ、これをもつて足りる。その根拠ないし算定方法は次のとおりである(ただし、鑑定評価額の価格時点は昭和四四年三月二八日でああり、本件土地についての公租公課は同四三年度のそれによつている。なお、この意見は、当事者間において本件借地契約の賃料を月一五、〇〇円と定めた時期が同四二年三月であることを前提としているものである。)。

(一)、存続期間について

本件建物の経済耐用年数は向後一五年ないし一七年あるところ、本件借地契約の残存期間は六年七月であるので、存続期間を一〇年間延長するのが相当である。

(二)、財産上の給付額について

(1)、本件土地の更地価格(3.3平方米当り一、一〇〇、〇〇〇円)

二〇、〇二〇、〇〇〇円

(2)、本件土地の建付地価格((1)の九〇パーセント)   一八、〇一八、〇〇〇円

(3)、本件賃借権の価格((2)の六〇パーセント)     一〇、八一〇、八〇〇円

(4)、本件賃借権譲渡による財産上の給付額((3)の約一〇パーセント)

一、〇八一、〇〇〇円

(5)、存続期間延長による財産上の給付額((3)の五パーセント)  五四〇、五四〇円

(6)、右金額の補正額((5)の約七八パーセント(この補正率は、(5)の金額が本件借地契約の残存期間満了の際に支払われるべきものであるので、借地契約の存続期間三六〇ケ月より残存期間七九ケ月を控除した月数を存続期間三六〇ケ月で除して算出した割合)

四二一、〇〇〇円

(7)、財産上の給付額合計((4)と(6)との合計額)      一、五〇二、〇〇〇円

(三)、賃料について

(1)、本件土地の底地価格((二)の(2)から(二)の(3)を控除した額(一、〇〇〇円以下切捨))

七、二〇七、〇〇〇円

(2)、積算式評価法により算出した賃料月額((1)に六パーセント(年間収益利廻り)を乗じ、これに本件土地についての年間の公租公課三六、一七〇円並びに年間の維持管理費一二、九七〇円((1)の約0.18パーセント)を加えた金額の一二分の一の金額)

四〇、一三〇円

(3)、右金額の補正額((2)の約六〇パーセント(本件の賃料変更は、従来より継続されている借地契約の賃料の増額であるので、その所要の減価修正率))  二四、〇〇〇円

別紙目録(一)

大阪市南区九郎右衛門町七二番一

一、宅地 60.06平方米(一八坪一合七勺)

別紙目録(二)

大阪市南区九郎右衛門町七二番地一所在

家屋番号同町一三八番三

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺地下一階付二階建居宅兼店舗

一階 57.45平方米(一七坪三合八勺)

二階 35.17平方米(一〇坪六合四勺)

地下 28.33平方米(八坪五合七勺)

別紙目録(三)

大阪市南区九郎右衛門町七二番一所在

家屋番号同町一三七番

一、土蔵造瓦葺二階建倉庫

一階 9.91平方米(三坪)

二階 8.26平方米(二坪五合)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!