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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)2970号 判決 1972年3月30日

原告

梶岡藤義

原告

梶岡文子

右二名代理人

青木永光

被告

株式会社久本組

右代表者

久本繁友

代理人

佐々木敬勝

塚口正男

主文

一、被告は、原告両名に対し、各金三二四、六八八円およびうち各金二九四、六八八円に対する昭和四五年六月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らのその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを九分し、その八を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四、この判決は原告らの勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(原告ら)

一、被告は、原告両名に対し、各金二、七五〇〇、〇〇〇円およびうち金二、四五〇、〇〇〇円に対する訴状送達の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言。

(被告)

一、原告らの請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

第二  請求の原因

一、事故

訴外梶岡直樹は次の交通事故により死亡した。

(一)日時 昭和四四年三月一三日午後三時ごろ

(二)場所 大阪市住吉区南住吉町二丁目八八番地の一先道路上

(三)加害車 普通貨物自動車(松本一や二三九二号)

右運転者 訴外金本秀光こと金秀光

(四)態様 訴外金秀光は本件事故現場の西方約一〇〇メートルの工事現場へ右加害車(以下本件事故車という)を搬入させるため、東西道路を東から西へ後退していたところ、道路上にいた訴外梶岡直樹(当時満二才、以下亡直樹という)の頭部顔面を左後車輪で轢過したもの

(五)死亡 頭蓋骨骨折による脳挫滅により同日午後三時一五分死亡した。

(六)権利の承継 原告らは亡直樹の両親で同人の権利を各二分の一づつ承継した。

二、責任原因

被告は、昭和四三年一〇月頃、大阪市土木局より発註を受けて本件事故現場近くの千躰町の下水管築造工事を請負い、事故当日、工事のあとかたづけ作業のため被告の下請業者である訴外金島組こと金島忠夫から本件事故車を傭車し、同訴外人方従業員である訴外金秀光に同車を運転させて作業に従事中、被告会社の従業員である訴外柏木某の誘導によつて本件事故現場道路を後退させはじめた際に本件事故を発生させたものである。右の工事現場には被告会社の社員が派遣され、工事の業務一切は被告会社工事担当者の指揮監督のもとにあり、本件事故車の運行も被告会社社員の指示のもとになされていたものである。このように本件事故車の運行支配、運行利益は被告に帰属していたものであつて、被告に運行供用者責任があり、また、被告会社の下請業者の従業員が被告会社の業務の執行中、後方不注視の過失により本件事故を発生させたものであるから、使用者責任がある。

三、損害

(一)亡直樹の逸失利益亡

直樹は死亡当時満二才で健康体であつたから、本件事故がなければ平均余命である69.64才まで生存しえたと考えられるので、右余命年数の範囲内で満二〇才より満六三才まで四三年間は稼働でき、その間全産業常用労働者の男子の一ケ月の平均給与である月収金五七、八〇〇円の収入を得られるはずであり、控除すべき生活費を五割とし、ホフマン複式年別計算によりその現価を算定すれば、金五、二〇〇、〇〇〇円(一、〇〇〇円末満切捨)となる。従つて、原告両名の相続分は各金二、六〇〇、〇〇〇円となる。

(二)原告らの慰藉料

原告らの長男である亡直樹を失つた原告らの精神的苦痛は甚大であり、慰藉料は各金一、五〇〇、〇〇〇円を下らない。

(三)損害の填補

原告らは自賠責保険金として金三、〇〇〇、〇〇〇円を受領し、また、訴外金秀光より金三〇〇、〇〇〇円の支払いを受けたので、各金一、六五〇、〇〇〇円を右各損害金の内金に充当した。

(四)弁護士費用 各金三〇〇、〇〇〇円

四、よつて原告らは、被告に対し、前記三、(一)、(二)、(四)の合計各金四、四〇〇、〇〇〇円から前記三、(三)の各金一、六五〇、〇〇〇円を控除した各金二、七五〇、〇〇〇円およびうち前記三(四)の金三〇〇、〇〇〇円を除く各金二、四五〇、〇〇〇円に対する本件訴状送達の日の翌日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三  請求原因に対する答弁および主張

一、請求原因一、三、の(三)は認めるが、二、を否認し、三、の損害額は不知。

二、被告に運行供用者責任はない。

被告は昭和四三年一〇月頃、大阪市土木局より住吉区千躰町の下水管築造工事を請負い、右の請負いに係る工事のうち土工事一切を梶岡組なる名称で土木業を営んでいた原告梶岡勝義に下請けさせた。そして、同原告はその保有するダンプカーが二台だけで不足ぎみであつたため、訴外金島組こと金島忠夫より傭車し、被告より下請けした土工事作業に従事させていた(但し傭車料は原告梶岡に信用のないことから元請けである被告が立て替え払いをなし、これを被告が同原告に支払う下請け代金より控除する方法を探つていた)。事故当時、同原告は工事現場の整地作業を行つており、訴外金島より本件事故車を傭車し、同訴外人方従業員である訴外金秀光に運転させて右工事にあたらせていたところ、工事現場の近くにある梶岡組(原告梶岡勝義)宿舎北側の路上を訴外金秀光が事故車を運転して後進中、同路上で一人で遊んでいた亡直樹を左後輪で轢過したものである。このように、本件事故は原告梶岡勝義が下請けした土工事のため傭車した本件事故車(ダンプカー)を土工事の整地作業にあたらせていた際に発生したもので、本件事故車の運行支配と運行利益はもつぱら原告梶岡勝義に帰属していたものであり、事故の責任は同原告が負担すべきものである。そして、被告には事故車に対する運行支配も運行利益も帰属していなかつたので、被告には運行供用者責任はなく、また、被告は訴外金や訴外金島の使用者ではないので、使用者責任もない。

三、仮りに元請けである被告にも本件事故車に対する運行利益が認められるとしても、本件事故による責任はまず原告梶岡勝義が負担し、被告の責任は補充的なものであるが、原告らは亡直樹の両親で被害者ではあるが同時に加害者であるから、権利と責任が同一主体に帰属し、原告らには損害賠償請求権は発生しないので、被告が原告らに対し賠償義務を負担することはない。そうでないとしても、本件事故の責任は、運転者の使用者である訴外金島、原告梶岡勝義、被告の三者が平等に負担することになり、原告らは全損害額の三分の一の責任を負担すべきである。また、原告梶岡勝義は事故の加害責任当事者であるから慰藉料請求権はない。

四、過失相殺

本件事故現場道路には工事用の車輛が通行し、幼児を一人で道路上に放置しておくことが極めて危険であることは原告らにおいても容易に認識しうるものであるのに、原告らはその子供である満二才の亡直樹を監護者もつけずに一人で路上で遊ばせていたものであり、監護義務を怠つていたことは明らかであるから、大幅な過失相殺がなされるべきである。

五、損益相殺

被告は、原告梶岡勝義が事故の前後に被告より下請けした工事を施行しなかつたため、他の業者にこれを施工させ金六七三、五〇〇円の出捐を要したので、右金員を同原告に支払う請負代金より差し引くべきところ、本件事故の見舞金の趣旨で、これを控除しなかつたので、右は、原告らの損害金の内金に充当されたものとみるべきである。また、被告は葬儀費用として金二六四、一〇〇円を支払つた。

第四  右主張に対する答弁

一、原告梶岡勝義が被告より住吉区千躰町の下水管築造工事の土工事の下請けをなしていたことは事実であるが、同原告には本件事故車の運行については何ら指揮監督権限はなく、同原告に運行支配、運行利益は帰属していなかつた。従つて、同原告に運行供用者責任のあることを前提にしてなす被告の主張は失当である。

二、原告らに監護義務違反があるとの点および損益相殺の点を争う。原告勝義が事故発生日以後下請工事を中断したことはあるが、工事はほとんど完成し、あとかたづけ作業が残つていたにすぎず、他の業者に工事の施工を続行させたとしても、主張の如き支払いを要したものとは考えられず、仮に主張どおりとしても本件損害賠償とは無関係であるから、損益相殺される筋合いはない。

第五  証拠<略>

理由

第一事故

請求原因一、の事実は当事者間に争いがない。

第二責任

<証拠>を綜合すれば、次の事実が認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果はたやすく措信しがたい。

被告は土木建築業を営むもので、昭和四三年一〇月頃、大阪市土木局より同市住吉区千躰町の下水管築造工事を請負い、このうち土工事を梶岡組なる名称で土建業を営んでいた原告梶岡勝義に下請けさせた。右下請け業務の内容は、工事現場に鉄矢板を打ち込んで堀削し下水道管を埋設して残土を排出、運搬することおよびこれに関連する鳶工事、大工工事、機械土工事で下請け総代金は金九、三五〇、〇〇〇円であつた。同原告は人夫約一〇名とダンプカー二台を擁してもつぱら土工事の下請けを専門になしていたが、被告の下請けをなすことに決まるや工事現場の東方約一〇〇メートルの被告借用地上に宿舎(飯場)を建て、輩下の人夫や同原告の妻文子および長男亡直樹らと共に居住するようになつた。ところで、同原告には被告より下請けした土工事の残土処理に必要なダンプカーが不足していたため、同年一一月頃、被告会社の現場主任である訴外小倉正毅と同原告との間で、被告会社がかねてよりダンプカーの傭車の際に利用していた傭車業を営む訴外金島組こと金島忠夫よりダンプカーを傭車して残土処理をなすことになつた。そして残土処理代金は前記下請け代金の中に含まれてはいたが、そのうちの傭車代金は、被告の指定により訴外金島方がダンプカーを使用することになつたことや下請け業者では信用のないことから、訴外金島の要求により被告においてこれを立て替えて支払い、被告が同原告に支払う下請け代金から差し引く方法がとられ、右約旨に基づき被告より同原告に支払われる下請代金合計金九、三五〇、〇〇〇円から被告が立替え支払つた傭車料金一、四九五、〇八〇円が差し引かれて支払われた。また、同原告の土工事には被告会社の土工事機械を使用することになつていたため、傭車の手配や工事の際の車輛の運行に関する指示は工事現場に派遣されていた被告会社の現場主任その他の社員がこれにあたつていた。本件事故車は訴外金島方に専属的に雇われていた訴外金秀光の所有にかかるもので、訴外金は訴外金島の指示により指定された工事現場に赴き車輛の使用料も含めて一日金六、五〇〇円の日当の支払いを受けていたが、昭和四四年三月上旬頃より前記千躰町の工事現場で作業するようになり、本件事故当日、訴外金は、訴外金島からの連絡により右工事現場に赴き、被告会社社員らの指揮のもとに土砂を運搬し、その後工事現場から前記原告梶岡勝義の宿舎(飯場)裏の道路上に水道管を運搬し東西道路に本件事故車を東向きに停車させたのち、工事現場に後進して戻る途中、本件事故を発生させるに至つた。

二、右事実によれば、本件事故は、被告が請負い原告に下請けさせた工事現場付近で、右工事に従事していた訴外金運転の本件事故車によつて惹起されたものであり、訴外金は右工事を監督するため派遣されていた被告会社社員の指揮のもとに作業に従事中であつたものと認められるので、そうならば、被告は本件事故車の運行を支配し、運行の利益をえていたものと認められ、運行供用者責任を免れることはできないものというべきである。一方、本件事故車は原告梶岡勝義が被告より下請けした同原告の業務のためにも運行されていたものであり、同原告においても元請けである被告会社社員の指揮を通じて事故車の運行を支配していたものと認められる(同原告本人は訴外金とは面識がなく同人に対する業務の指揮、監督をなしたことはない旨の供述をするが、前記認定のとおり同原告の下請け工事に関しダンプカーが不足し傭車しなければならないことは同原告の知悉していたところであり、本件事故車は同原告の下請け工事のために傭車されて運行に供され、元請けの社員によつて指揮監督されていたものと認められるので、同原告において直接、具体的に訴外金を指揮、監督していなかつたからといつて、同原告が事故車に対する運行供用車責任を免れるものではない。また、同原告は、同原告の下請けした業務の中には残土処理は含まれていない旨の供述をするが、右は前記認定の事実に照してとうてい措信することができない)。以上によれば、被告および原告梶岡勝義は本件事故車の共同運行供用者と認めるのが相当である。

第三損害

一、亡直樹の逸失利益

亡直樹が死亡当時満二才の男児であつたことは当事者間に争いがなく、第一二回完全生命表によれば満二才の男子の平均余命は67.31年であることが認められるので、亡直樹はその範囲内で少くとも満一八才時より六三才時まで四五年間は稼働しうるものと推定するのが相当であり、その間、控え目に見積つて、男子全労働者の一八才時の平均賃金程度の収入を得られるものと推認するのが相当であるところ、労働省労働統計調査編賃金構造基本統計調査報告昭和四四年度「賃金センサス」第三表によれば、男子労働者の一八才ないし一九才時の平均月間きまつて支給を受ける現金給与額は金三二、三〇〇円であり、平均年間賞与その他の特別給与額は金四〇、七〇〇円である事実が認められるので、控除する生活費を収入の五割とみて、ホフマン複式年別計算により得べかりし利益の現価を算定すれば、金三、四四〇、三一九円(円未満切捨、以下同じ)となる。

二、原告らの慰藉料

原告らの長男である亡直樹を失つた原告らの精神的苦痛の大きかつたことは容易に推認されるので、慰藉料を各金一、五〇〇、〇〇〇円とするを相当と認める。

三、過失相殺と相続

<証拠>によれば、訴外金は本件事故車を運転して本件事故現場道路を西方に向つて後退するにあたり後方の安全を確認することなく発進させたため、同車の直後で遊んでいた亡直樹を同車の左後車輪で轢過したものであることが認められるので、同訴外人に後方不注視の重大な過失のあつたことが明らかであるが、右各証拠および前記各認定の事実によれば、本件事故現場は、原告勝義の宿舎(飯場)のすぐ裏(北)で、同所より西方約一〇〇メートルの地点には同原告の下請工事現場があり、かつ、同所より右宿舎裏にかけて下水道管埋設工事およびそのあとかたづけなどのため工事関係用の車輛の通行が多かつたのであるから、亡直樹の両親で監護義務者である原告らとしては満二才の幼児をこのような道路上で付き添いなしに歩行ないし遊ばせてはならないのに、原告両名において監護義務を怠り亡直樹を一人で宿舎裏の本件事故現場路上に出していたため本件事故に遇つたものであるから、原告らにも不注意があつたものと認められる。以上の点を総合して、右一、二、の各損害額につき二割の過失相殺をなすを相当と認める。しかして、原告両名が亡直樹の両親で相続人であることは当事者間に争いがないので、右一、につき原告両名は各金一、三七六、一二七円を相続したことになり、慰藉料を加えると、各金二、五七六、一二七円となる。

四、損害の填補

原告らが自賠責保険金として金三、〇〇〇、〇〇〇円、訴外金秀光より金三〇〇、〇〇〇円の支払いを受けたことは当事者間に争いがないので、各金一、六五〇、〇〇〇円づつ右各損害金の内金に充当されたものとみるべきである。また、<証拠>によれば、原告勝義が被告より下請けした前記工事に関し、本件事故の前後、右工事の施工にあたれなかつたため、被告は他の下請業者に下請けさせた同原告の施工できなかつた部分の工事をさせ、これに合計金六七三、五〇〇円の支出を要したが、同原告方に生じた不幸を慰さめる趣旨で右の支出分を同原告に支払うべき下請け代金より差し引かず同額の金員を原告らの損害金に充当させたことが認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は措信しがたいので、各金三三六、七五〇円づつ原告らの右各損害金の内金に充当されたものとみるべきである。被告は以上のほか葬儀費用を支払つたと主張するが、右は原告らの本訴請求外の損害金に充てられたもので本訴において請求していないことが原告らの主張自体に照して明らかであるから、右の主張を採用しない。

以上によれば、原告らの損害金は合計各五八九、三七七円となる。

五、ところで、第二認定のように原告梶岡勝義と被告とは本件事故車の共同運行供用者と認められ、また、同原告が被害者でもあるので、このような場合、原告らの被告に対する請求が許されるか否かについて判断するに、自賠法第三条にいう「他人」とは当該自動車の運行供用者および運転者を除くそれ以外の者をいうと解されているので、共同運行供用者であるということは賠償義務者側に属することになり、賠償権利者たりえないという考え方が成り立たないわけではない。しかしながら、権利者、義務者というも必ずしも排他的なものではなく、相対的なものであり、対外的に対第三者との関係で義務者となつても、対内的に運行供用者相互間では権利者となりうる場合もあるものと解される。共同運行供用者の一人が第三者と同じような立場(たとえば、たまたま歩行中であつた)で当該自動車によつて負傷した場合を考えれば明らかといえよう。従つて、共同運行供用者間においても直接事故に関与していない限り対内的には相互に自賠法第三条の「他人」として保護が与えられてしかるべきである。しかし、このような場合、全額の損害賠償を認めるのは不合理であり、後に求償の問題が起ることが明らかであるから、共同運行供用者間の損害負担の割合は、当該加害自動車の運行に対する支配・利益の割合をもつて、その負担の割合とするを相当と考える(野村好弘・交通民集第二巻索引解説号二二七頁、龍前三郎・判例タイムス〔編注:原文ママ 「判例タイムズ」と思われる〕二六八号九二頁参照、なお、吉岡進・実務民事訴訟講座二三頁参照)。

これを本件についてみるに、前記認定のように、本件事故車は、被告が請負いこれを原告梶岡勝義に下請けさせた工事に従事させるため傭車業者からチャーターされ、被告から派遺された社員の指揮監督のもとで運行に供されていたものであり、右社員の指揮監督も被告の元請けのためのみならず原告梶岡勝義の下請けのためにもなされていたもので、その支配の型態、利益の帰属の面を考慮し、その他以上認定の事実を綜合して、右両者の運行支配・利益の割合は五対五と認めるを相当と考える。しかして、前記のように原告文子は亡直樹の母親で、原告勝義の妻であり、かつ、弁論の全趣旨によれば、現に夫勝義と同居して平穏な家庭生活を営んでいるものと認められるので、いわゆる被害者側にあたり、夫勝義に対し損害賠償請求権を行使することはありえず、填補清算関係が現実化することはありえないものと推認されるので、原告両名の被告に対する本訴損害賠償請求は、原告勝義の負担部分を控除した前記損害額の二分の一の範囲内においてこれを認容することとする。

六、弁護士費用

本件事故と相当因果関係にある損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用は本件事案の内容、認容額等を考慮して各金三〇、〇〇〇円とするを相当と認める。

第四従つて原告らは、被告に対し、各金三二四、六八八円およびうち弁護士費用の金三〇、〇〇〇円を除く各金二九四、六八八円に対する本件訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな昭和四五年六月一四日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めうるものであるが、原告らのその余の請求は理由がない。

よつて原告らの請求は主文第一項掲記の限度でこれを認容し、その余の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(吉崎直弥)

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