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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)3620号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第一、請求原因一の(一)ないし(五)、二の各事実は当事者間に争いがない。

第二、傷害

<証拠>を綜合すれば、原告は本件事故前である昭和四三年五月下旬頃、勤務先で労務に従事中、落下物が当り腰部に損傷を受け、庄内病院に約二ケ月間の入院とその後約四ケ月間の通院を続けていたことがあり、また、昭和四四年四月下旬頃、勤務先で約五〇キログラムのドラム缶を持ち上げようとした際に腰部を捻挫し、同病院に同年五月中旬まで通院(実通院日数八日)して治療を受けたことがあつたが、本件追突事故により軽い衝撃を受け、事故直後に上田外科病院において頸部捻挫、腰部捻挫の病名で治療を受け、頸部の疼痛、頭重、めまい等の症状があり、徐々に軽減の状態にあつたが、同年九月二五日に庄内病院に転医し、同月二九日から昭和四五年三月三一日まで一八四日間入院し、退院後も同年七月九日までに九〇日中実通院日数七五日の治療を受け、同年一〇月六日に同病院での治療を打切つた段階において、むかつき、頭痛特に後頭部痛、肩凝り、腰痛等の愁訴が認められたこと、なお原告には本件事故前の受傷による陳旧性の第三腰椎の圧迫骨折、骨棘形成像が認められること、がそれぞれ認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果はたやすく措信しがたい。

被告らは本件は極めて軽微な追突事故であるから原告が受傷したはずがないと主張するが、なるほど<証拠>によれば、原告の乗車していた被追突車の破損個所は少く、その修理費用も僅か金二、四五〇円で、その程度が極めて軽微であつたことは認められるけれども、右認定の原告の訴える症状や傷害の部位、治療経過からすれば、原告が本件事故によつて頸部に何らかの損傷を受け、これによつて前認定の症状(その全てが本件事故によるものかどうかは別として)が生じたものと認めるのが相当であるから、被告の主張は失当である。

ところで、右の如く本件事故は極めて軽微な追突事故であるにも拘らず、原告の入・通院の治療期間が長く、症状が事故の態様に比して大きいものといわざるを得ないところ、原告には本件事故前に腰部に二度に亘つて損傷を受けていたもので、その都度それに対する治療は一応終えていたとはいえ、右受傷による何らかの身体的な欠陥やこれに基く神経症状が潜在的ないし顕在的に存し、これが本件事故を契機にその症状が発現ないし増悪したものではないかとの疑いが強く、右認定の原告の治療経過や症状(後遺症を含む)が本件事故のみによつて生じたものとみることは到底できない(なお、<証拠>によれば、昭和四五年一〇月二三日付で、淀川労働基準監督署において、昭和四四年八月二五日の受傷(本件事故)による原告の傷病に対し、労災保険の後遺障害等級の認定がなされ、外傷性頸部症候群、腰部挫傷(第三腰椎圧迫傷)の傷病名で一二級一二号に該当するものとされたことが認められるが、これによれば右認定時期における原告の後遺症の内容には第三腰椎圧迫傷(圧迫骨折)が含まれていることが明らかであり、右の腰椎の圧迫傷は陳旧性のもので、本件事故前に原告が落下物に当つて生じたものであることが前認定のとおり明らかであるから、このことからも、原告の治療経過や後遺症には本件事故前の受傷が起点となつていることが十分に窺える。但し、右の労災保険の後遺症の認定には、本件事故前に既に存した症病をも含めて認定しているので、本件事故による後遺症の認定という点では不正確であるといわざるをえない。)。さりとて、本件事故がなければ、かかる治療も要しなかつたであろうし症状の発現、増悪もなかつたであろうと考えるのが相当であるから、前記認定の原告の治療経過、症状の一部については本件事故と相当因果関係のあることは明らかである。そしてまた、一般に軽度のいわゆるむちうち症(頸部捻挫、外傷性頸部症候群)の場合には、長くとも六ケ月間程度の安静と治療によつて症状が軽快する事例の多いことが経験則上明らかであるから、以上の各点を考え合せて、原告の本件受傷による損害の認定につき、右の事情を考慮することとする。

第三 損害

一、療養関係費

(一) コルセット代金 八、〇〇〇円

<証拠略>

(二) 入院雑費

<証拠>原告の前記入院期間(一八四日)中雑費を要したであろうことは容易に推認され、前記第二末尾記載の事情を考慮しても、原告主張の金一三、三六〇円程度の入院雑費を認容するのが相当と考える。

(三) 付添費、付添人寝具費

金八、三〇〇円

<証拠略>

(四) 通院等交通費 金七、〇〇〇円

<証拠>ならびに前記第二認定の事実によれば、原告の上田外科病院への通院交通費に金二、五〇〇円(往復金一〇〇円、通院回数二五回)、庄内病院への通院交通費に金四、五〇〇円(往復金六〇円、通院回数七五回)を要したことが認められる。

(五) 診断書代 金三、五〇〇円

<証拠略>

(六) 原告は眼鏡代として金二、五〇〇円の請求をするが、本件全証拠によるもこれが本件事故と因果関係があると認めることが困難であるから認定しない。

二、逸失利益

(事故時の収入)

<証拠>によれば、原告は本件事故当時今井運輸株式会社に自動車運転手として勤務し、毎月平均金七六、五五四円の給料をえていた事実が認められる。原告は昭和四四年一二月分より金二一、一四八円昇給することになつていたと主張し、甲第一三号証にはその旨の記載があるが、原告の右の職種からして昇給の率と額が異常に高く合理性を欠いているので右の主張は採用しない。

(休業期間)

原告は昭和四四年九月より昭和四六年二月までの間就労できず、収入をえられなかつたと主張するが、たとえ原告が右の期間稼働しえなかつたとしても、前記第二認定のとおり、その全期間が本件事故による受傷によるものと認めることは困難であり、本件事故自体による受傷によつて休業を余儀なくされた期間は、第二認定の事情を綜合して事故直後より六ケ月間程度と認めるのが相当である。

(損害額)

<証拠>によれば、原告は、昭和四四年一二月分の賞与として金一一五、〇〇〇円を受けられるべきところ、休業のためその支給をえられなかつたことが認められる(なお原告は昭和四五年六月、同年一二月分の各賞与の支給をえられなかつたと主張するが、右の期間の休業が本件事故による受傷によるものと認めることが困難なことは前記各記載のとおりであるから、これを認容しない)。これと前記休業による損害を加えると、原告の本件事故による受傷のため失つた得べかりし利益は金五七四、三二四円と算定される。

(七六、五五四×六)+一一五、〇〇〇=五七四、三二四

原告は昭和四六年三月以降においても後遺症により得べかりし利益を喪失したと主張するが、前記第二認定のとおり、原告の後遺症は原告の愁訴を主とするもので、果して労働能力に低下をきたす程度に至つているものか否か疑わしく、また、その後遺症が果して本件事故によつて生じたものか否かも疑わしいので(かえつて、本件事故が極めて軽微な追突事故であり、通常は後遺症が生ずる程度のものとは考えられず、原告には陳旧性の腰椎の圧迫骨折、骨棘形成が認められるので、これを原因に種々の愁訴が生じているものと推認するのが相当である)、本件事故によつて原告に後遺症が生じたと認めるには十分でない。従つて、原告の後遺症による逸失利益の主張は認容できない。

三、慰藉料 金七五〇、〇〇〇円

前記第二および第三の二認定の事実ならびに本件に顕れた一切の事情を考慮して慰藉料を金七五〇、〇〇〇円とするを相当と認める。 (吉崎直弥)

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