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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)6405号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第三、損害

一、英幸の逸失利益金七、四三二、九八九円

(一)、職業および収入

<証拠>を総合すると、英幸は、事故当時、大宝建設株式会社に勤め現場監督、車の運転等を担当し事故前一年間の給与所得は五八九、五六二円であつたことが認められる。

そこで原告らは、英幸が事故に遭遇せずに生存していたならば、事故後毎年五%を下らない昇給が予定されていたから昇給分も逸失利益算定の基礎となる収入に含めるべきであると主張するので判断するに、前掲甲第六号証および証人森本幸治の証言によれば、大宝建設株式会社は従業員六名の土木建築請負を業とする小会社であり、事故当時には給与規定・昇給規定等がなかつたこと、同社従業員の給与額が昭和三七年から同四六年まで毎年五〜七%位づつ増加していたことが認められ、他に右認定事実を覆すに足りる証拠はない。右認定事実によれば右会社の従業員の給与増加分は昭和三七年から同四六年まで、毎年約五〜七%であつたところ、同時期における一般労働者のベースアップ率は約五〜一〇%であつたことおよび土木建設関係の小企業における肉体労働者の給与は通常、勤在年数に関係なく定められ、昇給することが少いことが当裁判所に顕著な事実であることをも考慮すれば、右会社の従業員の前記給与増加分はベースアップに相当するものであると、認めるのが相当である。

そして将来の経済変動により左右される将来のベースアップは、名目賃金指数の上昇に基く名目賃金の修正のほかに、実質賃金の増加をも予期することは困難であり、かりに、これが認められても生活費の増加分との相殺が必要となり、また死者の逸失利益による損害額は現在の時点において全額受領し、これを利用する点をも考えれば逸失利益算定につき将来のベースアップを考慮することは妥当でない。

なお、狭義の昇給についても、明確な昇給規定の定めがありしかも、これらの規定によつて昇給するなど高度の蓋然性があると認められる場合は格別、本件の如く、昇給が高い蓋然性をもつて予定されているとも認められない場合は昇給を逸失利益算定の基礎たる収入に加味することは相当でない。

(二)、生活費

<証拠>によれば、英幸は事故当時、満一九才一〇月余(昭和二五年九月一〇日生れ)の独身であり、一人アパートを借りて生活していたことが認められ、右事実および前記英幸の収入額をも考慮すると英幸の生活費は同人の前記収入の四五%と認めるのが相当である。

(三)、就労可能年数

前段(二)掲記の証拠によれば英幸は満一九才一〇月余の普通健康体の男子であつたことが認められ、第一一回生命表によれば満一九才の男子の平均余命は49.99年であるから英幸は右平均余命の範囲内で四四年間は就労することが可能であつたことが推認できる。

(三)、逸失利益額

右(一)ないし(三)の事実を基礎に英幸の逸失利益の本件事故当時における現価を年毎ホフマン式計算方法(ホフマン係数22.923)により年五分の中間利息を控除して算出すると金七、四三二、九九一円となる。算式589,562×0.55×923=7,432,991円

二、慰藉料

原告森本ツネカ本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合きすると、英幸は云うまでもなく、原告らにおいても本件事故により突然末子の英幸を失つた精神的苦痛は甚大であつたことが認められ、これを慰藉するには、英幸には二、〇〇〇、〇〇〇円、原告両名には各一、〇〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(本井巽 中辻孝夫 菅英昇)

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