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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)6458号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、原告が不動産取引業者であること、昭和四五年八月四日原、被告間において、被告が原告に対し本件土地、店舗を代金八〇〇万円で取得できるよう買受方仲介の依頼をするとともに、売買契約が成立したときは報酬金二〇万円を支払う旨の仲介依頼契約ならびに停止条件付報酬契約が成立したことは当事者間に争いがない。そして原告本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨に徴し、そのころ、原告と訴外李有淑との間においても、同訴外人が原告に対して本件土地、店舗の売却方の仲介依頼をするとともに、売買契約が成立したときは報酬金二〇万円を支払う旨の停止条件付報酬契約が成立したことを認めることができる。

二、そこで、被告が、条件成就を妨害したと認められるかどうかの点について検討することになるが、この点については、一方で被告の本件土地、店舗の取得と原告の仲介との間に因果関係があるか否かが問題になり(両者間に因果関係がなければ妨害したことにはならない)、他方被告が原告の仲介を故意に排除したか否かが問題となる。

まず、被告が本件土地、店舗を買い受けた経緯について考えてみるに、<証拠>を総合すると、本件土地、店舗の所有者である訴外李有淑は、同四五年三、四月ころ、訴外松原孝に対し本件土地、店舗の売却方あつせんの依頼をしたこと、訴外松原孝は、同四五年六月末か七月初めころ、訴外李永文から、喫茶店の出物があれば世話するよう依頼されたため両者の間に立つて売買の話を進め、同年七月末ころには代金七八〇万円で売買が成立し、同四五年八月一〇日ころ手附金一〇〇万円が援受されたこと、そのころ被告は、後記認定のとおり、原告の仲介による本件土地、店舗の取得を断念して、別の店舗を物色中であり、そのことを訴外李申春に相談したところ、訴外李永文を紹介されたこと、訴外李永文は、同四五年八月一六日ころになつて、本件店舗とは別に「みのり」という店舗を入手できることになつたため本件店舗を被告に譲つてよいと言い、什器等については同訴外人において責任をもつというので、被告これを信用して、同四五年八月二五、六日ごろ、同訴外人から本件土地、店舗を買い受けたこと、ところが訴外李永文の訴外李有淑に対する残代金が未払であつたことから、残代金は、同四五年八月二九日、被告が訴外李有淑に支払い、登記も訴外李有淑から直接被告に所有権移転登記をしたこと、以上の各事実を認めることができ右認定を覆えすにたりる証拠はない。

右認定事実によると、形式的には、訴外李有淑と被告との間に直接売買契約が成立し、また時期的にも、被告の原告への仲介依頼と被告の本件土地、店舗の取得とは近接しているところから一見原告の仲介との間に因果関係があるようにみえるけれども、実質的にみれば、訴外松原孝の仲介の労によつて訴外李有淑と訴外李永文との間にまず売買契約が成立し、その後訴外李永文と被告との間に売買契約が成立して被告が本件土地、店舗を取得するに至つたものであつて、しかも、訴外松原孝の仲介活動は、被告の原告に対する仲介依頼よりも早くからなされていたのであるから被告が本件土地、店舗を取得したことと原告の仲介との間に因果関係があるとは認め難いというほうほかない。

次に、被告が、原告の仲介を故意に排除したと認められるかどうかの点について考えてみるに、証人松原孝の証言、被告本人尋問の結果および原告本人尋問の結果(但し後記信用しない部分を除く)を綜合すると、被告は、本件土地店舗で喫茶店を営業することを目的としており、本件店舗に備えつけてある営業用什器等備品について特に関心をよせ、原告に対し種々備品の明細書を交付するが、売主に会つて直接確認するなどして什器等の明細を明らかにするよう要求していたこと、これに対して原告は、被告を納得させるだけの対応策をとらないまま、契約書調印の前日である同四五年八月八日被告に対して手附金一〇〇万円を基準するよう連絡したため、被告は、什器等の明細が明らかにされないのなら手附金を払わないといつて売買契約を締結する意思がないことを表明したこと、これに対し原告は、「そんなこまかいことを言うのならやめとけ、登記簿謄本を返してもらいに行く」と答えたこと、そして翌日ころ、原告は被告方へ赴いて、被告に翻意するよう説得したが果たさず、結局あきらめて預けていた本件土地、店舗の登記簿騰本を持ち帰つたこと、そこで被告は、原告の仲介によつて本件土地、店舗を取得することを断念して他の店舗を探すようになつたこと、以上の各事実を認めることができ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はたやすく措信できない。

ところで、被告は、本件店舗に備えつけてある什器等備品をそのまま使用して喫茶店を営業しようと考えていたのであるから、本件店舗に備えつけてある什器等の備品について心配するのは当然のことである。そうであるにもかかわらず売主側が什器等の明細を明らかにしなかつたのは、成立に争いのない乙第四、五号証ならびに被告本人尋問の結果によつて明らかなように、当時本件店舗の備品の一部が差押を受けていたためではないかと推認される。それはともかく、被告が什器等の明細について再三不安の念を表明しているのに原告がこれに対して、納得のいくような対応策をとらず、被告の不安を解消しないまま手附金の準備を要求したのは、受任者としての誠実義務の完遂に欠けるところがあつたといわざるをえない。このような状況の下にあつては、被告が、原告の仲介による売買契約の締結を拒否したのも無理からぬ面がある。また、原告も被告に翻意を説得したにもかかわらずこれが成功せず、最後には原告も仲介を断念しているのである。また原告は、訴外李有淑から依頼されていた売却仲介を自ら断念していることは自認しているところである。このような事情からみて、被告が、原告に対する報酬支払を免がれるため原告の仲介を故意に排除したとは認め難い。

(増田定義)

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