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大阪地方裁判所 昭和46年(わ)3929号 判決 1972年6月10日

一、本籍

大阪市住吉区南加賀屋町五三〇番地

住居

堺市九間町西二丁二番二八号

会社役員

餠佳巳

昭和四年二月一一日生

二、本店の所在地

堺市九間町西二丁一六番地

商号

堺電子工業株式会社

代表者

代表取締役 餠佳巳

右餠佳巳に対する所得税法違反、右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官忠海弘一出席して審理し、次のように判決する。

主文

被告人餠佳巳を懲役一〇月および罰金六〇〇万円に、被告人堺電子工業株式会社を罰金八〇〇万円に各処する。

被告人餠佳巳においてその罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人餠佳巳に対し、この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人餠佳巳は、堺市九間町西二丁二番地において堺鉄工所の名称でプレス金型の製造プリント配線基板の加工を業としていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

(一)、昭和四三年分の所得金額が三〇、八〇九、四五九円で、これに対する所得税額が一五、七二八、五〇〇円であるのに、売上金額を過少にし、各科目の金額を増減した決算書を作成して、右所得金額のうち二八、一四九、八二一円を秘匿したうえ、昭和四四年三月一五日同市南瓦町所在堺税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が二、六五九、六三八円でこれに対する所得税額が四五七、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一五、二七〇、七〇〇円を免れた、

(二)、昭和四四年分所得金額が四三、六四一、四八六円で、これに対する所得税額が二三、五〇五、九〇〇円であるのに、仕入・外注費料目の金額を過大にし、各科目の金額を増減した決算書類を作成して、右所得金額のうち、二八、九七七、三八四円を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日前記堺税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一四、六六四、一〇二円でこれに対する所得税額が五、七六八、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一七、七三七、二〇〇円を免れた。

第二、被告人堺電子工業株式会社は堺市九間町西二丁一六番地に本店をおきプレス金型の製造プリント配線基板の加工業を営むもの、被告人餠佳巳は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人餠佳巳は同会社の業務に関し法人税を免れようと企て、昭和四四年一〇月一日から昭和四五年九月三〇日までの事業年度において、その所得金額が二一六、八四一、六〇八円でこれに対する法人税額が七八、三一〇、四〇〇円であるのに、公表経理上架空の材料費等を計上し、かつ各科目の金額を増減した決算書類を作成するなどの行為により、右所得金額のうち一二一、〇三四、四二四円を秘匿したうえ、昭和四五年一一月三〇日前記堺税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九五、八〇七、一八四円でこれに対する法人税額が三三、八三八、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税四四、四七一、六〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

判事全事実につき、

一、堺税務署長作成の証明書四通

一、室垣幸子作成の確認書二通

一、佐道卓二の収税官吏に対する質問てん末書三通

一、佐道卓二、高田修次(二通)、小林親幸の検察官に対する各供述調書

一、被告人の収税官吏に対する昭和四六年四月五日付、同月一〇日付各質問てん末書および検察官に対する供述調書二通

一、押収してある一次穴あけ日程表一綴(昭和四七年押第三六〇号の一七)、経費明細帳一綴(同押号の四〇)

判示第一の(一)、(二)の事実につき

一、高田修次(昭和四六年七月八日付)、尾高義昭(二通)武田文男、大越昇太郎(同年四月二日付)および高石文彦(同年六月七日付、同月一〇日付(請求番号一〇))作成の各確認書

一、大阪国税局査察部大蔵事務官作成の国税査察官調査書類綴一冊(請求番号一九のもの)

一、被告人作成の上申書(昭和四六年七月一五日付二通、請求番号一と二)供述書および収税官吏に対する昭和四六年五月一四日付、同月三一日付、同年六月二一日付、同年七月一五日付(二通、請求番号九と一〇)、同月一六日付(請求番号一一)の各質問てん末書

一、押収してある買掛金伝票決済綴六綴(昭和四七年押第三六〇号の七)、売上台帳一綴(同押号の一二)、請求書五綴(同押号の一五)、請求書綴一綴(同押号の一六)、納品書、仕入帳、売掛買掛帳各一綴(同押号の二三から二五)判示第一の(一)の事実につき、

一、高石文彦作成の昭和四六年六月一〇日付確認書(請求番号一一)

一、押収してある振替伝票九綴(昭和四七年押第三六〇号の三)、総勘定元帳一綴(同押号の四)、買掛金伝票決済綴六綴(同押号の八)、堺電子工業請求書二綴(同押号の一八)、コンピユーター材料受払簿一綴(同押号の二〇)判示第一の(二)および第二の事実につき、

一、押収してある買掛金伝票決済綴六綴(昭和四六年押三六〇号の九)、経費請求書領収書一四綴(同押号の二六)、

一、押収してある振替伝票一二綴(昭和四七年押第三六〇号の一)、総勘定元帳一綴(同押号の二)、買掛金伝票決済綴九綴(同押号の五、六)、納品控一綴(同押号の一九)、仕入帳一綴(同押号の二二)

判示第一の(二)の事実につき、

一、高石文彦作成の昭和四六年六月一〇日付確認書(請求番号一二)

請求書二六綴(同押号の二七ないし三三)、孔穿売上仕入帳一綴(同押号の三四)、外径板仕入売上帳一綴(同押号の三五)

判示第二の事実につき、

一、小林親幸、高田修次(三通)、島田勇蔵(二通)の収税官吏に対する各質問てん末書

一、高田修次作成の上申書

一、大越昇太郎(昭和四六年四月三日付)、青島公徳、高田修次(同年六月二八日付)、高石文彦(同月一〇日付、請求番号三一)作成の各確認書

一、大阪国税局収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書六通

一、大阪国税局査察部大蔵事務官作成の国税査察官調査書類綴一冊(請求番号四三のもの)

一、被告人作成の上申書(昭和四六年七月一五日付、請求番号一二)、確認書(同年四月一〇日付、同年六月二二日付)および収税官吏に対する昭和四六年四月一六日付、同月二六日付、同年七月一五日付(請求番号一五)、同月一六日付(同番号一六)の各質問てん末書

一、押収してある買掛金伝票決済綴一一綴(昭和四七年押第三六〇号の一〇と一一)、補助元帳一綴(同押号の三六)振替伝票一二綴(同押号の三七)、金型未払金伝票決済綴四綴(同押号の三八)、手帳一冊(同押号の三九)、仕入帳、受払帳、出納帳、日程表、棚卸表各一綴(同押号の四一ないし四五)、納品書二綴(同押号の四六)、普通穴明専用納品書八綴(同押号の四七)、請求領収書綴六綴(同押号の四八から五〇)、請求書四綴(同押号の五一)仕入請求書一綴(同押号の五二)、納品書一一冊(同押号の五三と五六)、仕入台帳一冊(同押号の五四)、売掛帳在庫帳一綴(同押号の五五)、元帳一冊(同押号の五七)、売掛買掛帳一冊(同押号の五八)

(法令の適用)

被告人餠佳巳の判示第一の各所為はそれぞれ所得税法二三八条一項に、判示第二の所為は法人税法一五九条一項に、被告人堺電子工業株式会社の判示第二の所為は同法一六四条一項、一五九条一項に該当するが、被告人餠に対する所得税法違反の罪については情状によりいずれも懲役刑と罰金刑を併科し、同被告人に対する法人税法違反の罪については所定刑中懲役刑を選択し、被告人堺電子工業株式会社につき同法一五九条二項を適用して逋脱法人税額以下の罰金額の範囲内で処断することとし、被告人餠佳巳につき、以上の罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重し、罰金刑につき同法四八条二項により各罰金額を合算した刑期および金額の範囲内で、被告人餠佳巳を懲役一〇月および金六〇〇万円に、また被告人堺電子工業株式会社を所定罰金額の範囲内で罰金八〇〇万円に処し、なお、同法一八条を適用して、被告人餠佳巳において前記罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のように判決する。

(裁判官 砂山一郎)

右は謄本である

昭和47年6月30日

大阪地方裁判所

裁判所書記官 田村剛

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