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大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)10112号 判決 1973年4月24日

原告

福山建設鉄工株式会社

右代表者

福山武太郎

右訴訟代理人

達本伊三男

被告

株式会社和田工業所

右代表者

和田繁夫

右訴訟代理人

野村清美

田中恭一

主文

当裁判所が昭和四六年手(ワ)第二一三〇号約束手形金請求事件につき同年四月二〇日言渡した手形判決を取消す。

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は異議の前後を通じ原告の負担とする。

事実《省略》

理由

第一、請求原因事実

原告主張の請求原因事実は当事者間に争いがない。

第二、相殺の抗弁の検討

一、被告主張の抗弁事実中その1(1)(2)の手形が原、被告間で相互に振出されたこと、同事実2の(1)(2)記載のとおり被告の交換手形は支払ずみであるが、原告の交換手形は支払われていないことについては当事者間に争いがない。

二、そして、本件の争点は原告および被告の前記交換手形が被告主張の如く原告に金融の便を与えるため融通手形として振出されたものであるが、原告主張の如く被告の交換手形が製造工事の前払代金の支払のために振出され、原告の交換手形が工事の出来高を保証するため振出されたものであるか否かにあるので、この点につき判断するに、<証拠>を総合すると、被告会社は昭和四一年頃から原告会社に製罐の加工を依頼し、出来高を確認のうえ後払で約束手形をもつて支払をなしていたこと、昭和四二年一二月二七日頃原告会社の従業員横田清が被告会社から右の加工賃の支払いのため受取つて来た本件約束手形を手形割引のため中小企業保証協会へ赴く途中紛失したこと、このため原告会社は資金繰りに窮し、原告会社の代表取締役福山武太郎は右横田に金策を迫つたので、両名は被告会社へ赴きその代表取締役和田繁夫に対し、横田の伊丹市字金岡所在の土地家屋を担保に融資を依頼したが、和田はこの申入れ断つたこと、その後原告の依頼により原告に金融の便を与えるため被告および原告が互に相手方を受取人として金額二〇〇万円の約束手形をいわゆる融通手形として交換的に振出したこと、それは右交換手形の満期の日が原告の約束手形の方が昭和四三年五月二二日であつて、被告の約束手形の満期の日である同月二六日より四日前であること、被告会社は複式簿記を採用しているが、加工代金の支払の場合には(借方)買掛金(貸方)支払手形と仕訳しているのに、右金二〇〇万円の交換手形の場合には(借方)受取手形(貸方)支払手形と仕訳して融通手形としての処理がされていることからも推測し得ることの各事実を認定することができ、この認定に反する証人横田清、福山照子の各証言部分、原告会社代表者福山武太郎本人尋問の結果は拠かに採用し得ないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

三、そして、いわゆる融通手形として互に相手方を受取人として交換的に約束手形を振出した場合、金融依頼人として先に満期が到来する手形を振出した側が借主となり、他方が貸主となつて手形授受の時点において、貸主側の手形の支払拒絶を解除条件とする消費貸借が成立し、借主側の手形はその貸金債務支払のため振出されているものと解すべきであるから、前認定のとおり、満期の早い交換手形の振出人である原告は、右交換手形授受の時点で被告からその振出にかかる約束手形金二〇〇万円を借受けて、両者の間にその消費貸借が成立しており、かつ前記のとおり被告の交換手形が書替後その満期に支払われたが、原告の交換手形は結局全額支払がなされていないことは当事者間に争いがないから、原告は被告に対し右消費貸借上の債務として金二〇〇万円の支払義務がある。したがつて、原告に対する被告の右消費貸借上の金二〇〇万円の債権をもつて本訴約束手形金残金と対等額につき相殺の意思表示をする被告の抗弁は正当であるといわねばならない。

第三、結論

以上のとおりであるから、原告の被告に対する本訴約束手形残金の請求権は被告の前記相殺により全部消滅したるものというべきであつて、被告に対し右約束手形金残金の支払を求める原告の本訴請求は理由がないことが明らかである。よつて、原告の本訴請求を棄却し、これと符合しない本件手形判決を民事訴訟法四五七条第二項に従い取消すこととして、訴訟費用につき同法八九条、四五八条二項、一九五条三項を適用し主文のとおり判決する。 (吉川義春)

約束手形目録<略>

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