大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)5242号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕四 損害額

(一) 訴外人の逸失利益

金四、〇四九、二二九円

<証拠>によれば、訴外人は、昭和四三年一〇月六日生で本件事故当時は満一才の健康な男児であつたことが認められるから、もし本件事故にさえ会わなければ、なお六八年余生存し得たであろうことは第一二回生命表により明らかであり、また、そうとすれば、その間の一八才から六三才に達するまでの四五年間は稼働を続け、その間毎年少くとも稼働をはじめる年令、すなわち、一八才の一般男子労働者の平均賃金程度の収入はこれを挙げ得たものと推認することができる。ところで、一八才の一般男子労働者の年間平均賃金は、労働省労働統計調査部編の昭和四五年度賃金センサス(第一巻第一表)によれば金五一二、三〇〇円(月間のきまつて支給する現金給与額金三八、四〇〇円、年間賞与その他の特別給与額金五一、五〇〇円)と認められるところ、他方、右賃金を得るためには、生活費として毎年その半額を支出しなければならないと認められるから、訴外人の前記稼働による年間純収益は、金二五六、一五〇円と推認することができ、ひいては、訴外人死亡による逸失利益の総額は金一一、五二六、七五〇円となるところ、これからホフマン式計算方法により一年毎に年五分の割合による中間利息を控除(係数15.769)した残額金四、〇四九、二二九円(円位未満切捨、以下同じ。)がすなわち、訴外人死亡当時におけるその逸失利益の現価となる。なお、訴外人のような幼児の逸失利益の算定方法については、中間利息の控除方法も含め前認定の方式のほか、原告主張のような方式、その他の方式があるが、そのいづれの方式にも一長、一短があつて、その間ににわかに確然たる優劣をつけ難いものがあるが、当裁判所においては、最高裁判所の判例の示すところなどを考慮に入れ、前認定の方式を採用するものである。

五 過失相殺

すでに認定したところによれば、被告砂山登は、自車の進路前方の注視義務を怠り、訴外人をあらかじめ発見しないまま本件事故を惹起するに至つたのであるから、その負うべき過失の責任は極めて大であるといわなければならないが、他方、さきに認定したところによれば、訴外人も若干道路内側を歩いていた嫌いがないではなく、訴外人としても今少し道路端にいたならば、あるいは本件事故に会わなくてもすんだであろうことが窺われるのである。そして<証拠>によれば、本件事故発生地点は、近くに商店街もあり、車両の往来も比較的頻繁であつたことが認められるから、原告らは、近く満二才を迎える程度の訴外人については、交通事故から身を守るため親としてそれ相当の注意を払い、いやしくも交通頻繁な道路を適当な監護者なくして歩行させるようなことは避けるべきであつたということができるところ、<証拠>によれば、本件事故発生当時原告らは訴外人の監護を幼い前記之美、秀美両名に任せたきりで、自らはこれを怠つていたことが認められる。したがつて、これらの点は、被害者側の過失として被告らの賠償すべき原告らの損害額を定めるにつき斟酌しなければならないが、その程度は、前記事情によれば、前認定損害額の一割を減殺するのが相当と思料される。

(小酒礼)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!