大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和48年(わ)340号 判決 1973年8月13日

本籍

大阪市住吉区苅田町七丁目一五番地

住居

大阪市住吉区苅田町七丁目五六番地

会社役員

松本英彰

昭和一三年五月一五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官村上秀夫、弁護人渡辺義次各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月および罰金五五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に喚算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市住吉区苅田町七丁目二九番地において、建築請負業(昭和四五年二月一五日まで)ならびに建て売り業を営んでいたものであるが、不動産取得の資金獲取、貯蓄等のために自已の所得税を免れようと考え、

第一、 昭和四四年分の所得金額が二八五三万六五一一円でこれに対する所得税額が一四一七万八四〇〇であるのにかかわらず、売上収入金の一部を架空名義預金口座に預け入れるなどの行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四五年三月一四日大阪市住吉区住吉税務所において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が七〇二万四四七三円で、これに対する所得税額が二〇三万四〇〇〇円であを旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一二一四万四四〇〇円を免れ、

第二、 昭和四五年分の所得金額が三七三一万七七一円で、これに対する所得税額が一八七〇万九四〇〇円であるのにかかわらず、前第一同様の行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年三月一五日前記住吉税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一三九六万七六九七円で、これに対する所得税額が四九〇万八三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一三八〇万一一〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき、

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

右のほか、

判示冒頭の事実につき、

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書(昭和四七年一月二五日付)

判示第一および第二の各事実につき、

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書(一一通、昭和四七年五月二二日付、同二五日付、同三〇日付、同年六月一六日付、同年七月二八日付、同年八月二三日付、同二五日付、同二九日付、同年九月二日付、同六日付、同年一〇月六日付)

一、被告人作成の確認書(六通)および上申書

一、被告人外一名作成の供述書

一、松本清子、中村康雄および松本茂造の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏作成の次の者に対する質問てん末書

谷本智康(二通)、吉田英数、栗尾信行、西田正雄、藤田幸子、里見和好、松永キヌ、野村トミエ、安井繁、中村康雄、山田政欣、稲谷勝、一郎、中平勝、石村秀雄、赤松彰一、鳥越武雄、大島清(昭和四七年五月一九日付)、松本茂造、松本清子(昭和四七年四月二八日付)、南野一雄

一、次の者の作成した確認書

梅本博寛(昭和四七年一月二六日付三通、同年五月一二日付一通、同年九月一一日付二通)、谷本智康山本義文、山本義文外一、山本義文外二、藤本登久夫(二通)、松田啓助、杉原正一郎、西田正雄、山中茂樹、河崎弘、山田政欣、藤井芳勝、中西和夫、多気常男、大島清(二通)、岩崎千代子

一、次の者の作成した供述書

武井司郎、手賀英雄、小松豊(二通)、竹谷弥豊、中村康雄、池田武夫、和美千代子、藤原鶴松、久保武夫、吉田美智夫、前田好子、柴峠正夫

一、照会に対する次の者の作成した回答書

中辻丑之助、手賀英雄、井政治、藤野富美子、西尾雅夫、山田節夫(二通)、藤田忠清、松本好央、住吉税務署長、西成府税事務所長(三通)、大阪市住吉区長、大村みさ子、木戸昇一、坂辺清美、堺府税事務所長、南河内府税事務所長、泉北府税事務署長、堺市財政局税務部固定資産税課、小林忠雄、中垣内登、笠谷敏夫、高松登代子、能代則男、柴峠正夫、美農坂造、房本芳夫、西村栄二、鳥武雄

一、収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書(二通)

一、収税官吏作成の調査書 (三冊)

判示第一の事実につき、

一、収税官吏作成の松本清子(昭和四七年八月五日付)、原好郎(二通)、増井音松、辻勇、黄信子(二通)に対する各質問てん末書

一、葛間建次郎、武井司郎、平野正義、森井登美雄各作成の各確認書

一、増井音松、辻浦勇、矢倉清、奥野達夫、土岐栄次郎各作成の照会に対する各回答書

一、住吉税務署長事務代理認証の昭和四四年分所得確定申告書謄本

判示第二の事実につき、

一、収税官吏作成の成子芳昭および大島清(昭和四七年一月二五日付)に対する各質問てん末書

一、梅本博寛作成の昭和四七年二月一四日付確認書

一、笠谷克子および寺町清二各作成の各供述調書

一、帝国シヤッター株式会社および高石市長各作成の照会に対する各回答書

一、住吉税務署長事務代理認証の昭和四五年分所得税確定申告書謄本

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいづれも所得税法第二三八条第一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で、被告人を懲役八月および罰金五五〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとしたうえ、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 堀内信明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例