大阪地方裁判所 昭和49年(わ)1907号 判決 1974年10月30日
主文
被告人を懲役二月に処する。
この裁判の確定した日から一年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
罪となるべき事実
被告人は、昭和四九年四月一四日午後八時三五分ころ、大阪府公安委員会が道路標識によって最高速度を六〇キロメートル毎時と定めた大阪市旭区生江町一丁目大阪府道高速大阪守口線守上四、七キロポスト付近路上において、右最高速度をこえる一四〇キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転したものである。
証拠≪省略≫
指定制限速度違反の故意犯を認めた理由
前掲証拠によると、本件道路は、大阪府公安委員会が道路標識によって最高指定速度を時速六〇キロメートルと定めた場所であるが、被告人は右道路標識を看過し、本件道路の指定制限速度が時速六〇キロメートルであることを知らずに時速約一四〇キロメートルで本件道路を進行中、交通取締中の警察官に検挙されたものであるところ、被告人は高速道路の法定最高速度が時速一〇〇キロメートルであることを十分知りながら、右法定速度を越える一四〇キロメートルで走行したものであるから、本件のように法定速度より低い指定制限速度の規制がある場合には、特段の事情のないかぎり、法定速度を無視してこれに違反する者は、指定制限速度の規制をも無視する意思を有しているものと認めるべきである。蓋し、一般に指定制限速度は法定速度より低く規制されているのが通常であり、もともと法定速度に違反していることを認識している者が、それより低い指定制限速度の標識を看過したという理由で、反って法定刑の軽い指定制限速度違反の過失犯でしか処罰できないということは、明らかに刑の権衡を失し、実情にそぐわず納得できない。従って、本件については指定制限速度違反の故意犯の成立を認めるのが相当であり、この点に関する弁護人の主張は採用しない。
法令の適用
道路交通法二二条一項、一一八条一項二号(懲役刑選択)、刑法二五条一項、刑事訴訟法一八一条一項本文
(裁判官 荒石利雄)