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大阪地方裁判所 昭和49年(わ)3066号 判決 1980年2月21日

本店

大阪府東大阪市西堤本通西一丁目四四番地

商号

株式会社 コーヨー

代表者

代表取締役 柳山一郎

本籍

大阪府八尾市山本高安町二丁目一二一番地

住居

右同町二丁目一番一五号

会社役員

柳山一郎

昭和七年九月一七日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官上野富司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社コーヨーを罰金一、一〇〇万円に、被告人柳山一郎を懲役一〇月に各処する。

被告人柳山一郎に対し、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社コーヨーは、東大阪市西堤本通西一丁目四四番地に本店を置き、金属挽物製造及び販売等の事業を営むものであり、被告人柳山一郎は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人柳山一郎は、被告人株式会社コーヨーの右業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  同会社の昭和四五年一二月一日から昭和四六年一一月三〇日までの事業年度において、その所得金額が三五、八一三、六〇四円で、これに対する法人税額が一二、七二四、六〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、売上、期末たな卸の一部を除外するなどの行為により、右所得金額のうち二四、三二三、二〇三円を秘匿したうえ、昭和四七年一月三一日東大阪市所在東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一一、四九〇、四〇一円で、これに対する法人税額が三、七八五、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税八、九三八、七〇〇円を免れ、

第二  同会社の昭和四六年一二月一日から昭和四七年一一月三〇日までの事業年度において、その所得金額が三八、一〇五、三九四円で、これに対する法人税額が一三、四四三、六〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、売上、期末たな卸の一部を除外し、架空仕入を計上するなどの行為により、右所得金額のうち一七、五一四、三四四円を秘匿したうえ、昭和四八年一月三一日前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二〇、五九一、〇五〇円で、これに対する法人税額が七、〇一一、九〇〇円である旨の、虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税六、四三一、七〇〇円を免れ、

第三  同会社の昭和四七年一二月一日から昭和四八年一一月三〇日までの事業年度において、その所得金額が九三、五七七、八九〇円で、これに対する法人税額が三三、六三七、六〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、売上、期末たな卸の一部を除外し、架空仕入を計上するなどの行為により、右所得金額のうち八二、七五八、六八三円を秘匿したうえ、昭和四九年一月三一日前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一〇、八一九、二〇七円で、これに対する法人税額が三、二四一、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税三〇、三九六、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき、

一  第二一回ないし第二四回公判調書中の被告人柳山一郎の各供述部分

一  同被告人の昭和四九年一一月一五日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二二日付、同月二四目付、同月二七日付、同月二八日付(全四丁分)、同月二九日付検察官に対する各供述調書

一  同被告人の同年七月二五日付、同月二九日付、同年八月一二日付、同月一九日付、同年九月二四日付、同年一〇月二一日付収税官吏に対する各質問てん末書

判事冒頭の事実につき、

一  登記官作成の昭和四九年一一月一二日付登記簿謄本

判示第一ないし第三の各事実につき、

一  第三回公判調書中の証人松本孝、同松本吉隆、第四、五回公判調書中の証人李相浩、第五回公判調書中の証人大石照雄、第六回公判調書中の証人西村俊男、同井上晴作、第七回公判調書中の証人北沢友作、同小林正道、第一〇回公判調書中の証人井上輝夫、第一一回ないし第一四回公判調書中の証人宮崎寿、第一七、一八回、第二三ないし第二五回公判調書中の証人寺井諦一、第一九回公判調書中の証人永沢重蔵、第二〇回公判調書中の証人中西正安の各供述部分

一  証人寺井諦一の当公判廷における供述

一  小川峰造、朴忠弘(昭和四九年一一月一六日付但し全四丁のもの、同月二〇日付)、和田恵一郎、李健次(二通)、任完祐、金良夫、辻井勝美、大川敏行、岡田明、好藤好之、柳山良子の検察官に対する各供述調書

一  小川峰造(同年九月二六日付)、千葉栄一、前中研、道之前由志一、善元忠弘、和田恵一郎(二通)、木村健次、豊川完佑、方山竹雄(二通)、茨木昇、田路秀敏、小山彰、磯野勇、長田利喜作成の各確認書

一  衣笠義信作成の供述書

一  収税官吏金坂明是(二通)、望月明ら(二通)、菊池和夫作成の各調査てん末書及び同丸田昭和作成の調査報告書

一  小林恒甫作成の「黄銅棒相場推移表回答」と題する書面

一  押収してある手形受払帳一冊(昭和五〇年押第二八二号の一一)決算書綴二綴(同号の一五)、ダライ粉専用売上伝票控一冊(同号の二二)、製造原価計算表一綴(同号の二四)、ゴルフ会員証取得関係書類一綴(同号の三五)、手帳一帖(同号の五七)

判示第一の事実につき

一  第九回公判調書中の証人岩堀登志男の供述部分

一  東大阪税務署長作成の証明書(但し昭和四六年一一月期分)

一  小川峰造作成の昭和四九年九月二七日付確認書

一  株式会社住友倉庫オオサカコウ支店アジガワ営業所作成の出庫指図票二通及び保管料及び荷役料計算書

一  押収してある総勘定元帳一綴(昭和五〇年押第二八二号の一)、元帳一綴(同号の四)、金銭出納帳一冊(同号の一〇)、試算表綴一綴(同号の二〇)、たな卸原票一綴(同号の二六)、在庫帳四綴(同号の二九)、物品出納帳一綴(同号の三〇)、仕入商品帳二綴(同号の三六、三七)、領収証八綴(同号の四〇、四一)、仕入元帳一綴(同号の四四)、看貫表綴二四綴(同号の四五、四六)、仕入伝票一二綴(同号の四七)、売上帳七綴(同号の五一)、仕入帳一綴(同号の五五)

判示第二、第三の各事実につき、

一  被告人柳山一郎の昭和四九年八月八日付収税官吏に対する質問てん末書

一  第九回公判調書中の証人高橋文男の供述部分

一  広田喜久子、朴忠弘(同年一一月一五日付、同月一六日付但し全一四丁のもの)、安炳根(同月一六日付、同月一八日付三通)、吉本昭一の検察官に対する各供述調書

一  押収してある金銭出納帳一冊(昭和五〇年押第二八二号の九)、仕入帳一綴(同号の一三)、領収書、請求書、納品書一綴(同号の一七)、売上帳と題する日別売上仕入額帳二冊(同号の一八)、現場連絡表五綴(同号の二一)、納品書綴一綴(同号の二五)、仕入商品帳二綴(同号の三八)、領収書四綴(同号の四二)

判示第二の事実につき、

一  被告人柳山一郎の昭和四九年一一月二八日付(全三丁分)検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(但し昭和四七年一一月期分)

一  東大阪税務署長作成の証明書(右同)

一  小川峰造作成の昭和四九年一〇月二日付確認書

一  検察事務官林公雄作成の「所在捜査結果について(報告)」と題する書面

一  山田良雄の検察事務官に対する供述調書

一  検査事務官高村直作成の同年一二月六日付報告書

一  押収してある総勘定元帳一綴(昭和五〇年押第二八二号の二)、元帳一綴(同号の五)、銀行帳一綴(同号の七)、破棄分原材料元帳一枚(同号の一六)、物品出納帳一綴(同号の三一)、在庫表一綴(同号の三四)、仕入商品帳一綴(同号の三七)、領収証四綴(同号の四一)、仕入元帳一綴(同号の四四)、看貫表綴一二綴(同号の四六)、仕入伝票一二綴(同号の四七)、売上帳六綴(同号の五二)

判示第三の事実につき、

一  被告人柳山一郎の昭和四九年一二月七日付検察官に対する供述調書

一  李熙健、朴忠弘(同年一一月二六日付)、安炳根(同月二一日付、同月二五日付)の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(但し昭和四八年一一月期分)

一  東大阪税務署長作成の証明書(右同)

一  検察事務官高村直作成の昭和四九年一一月二二日付報告書

一  検察事務官多田光尋ら作成の「居住の有無の捜査結果について(報告)」と題する書面三通

一  検察事務官鳴坂脩作成の「住民登録並びに現住の有無について報告」と題する書面

一  押収してある総勘定元帳一綴(昭和五〇年押第二八二号の三)、元帳一綴(同号の六)、銀行帳一綴(同号の八)、手形受払帳一冊(同号の一二)、経費帳一綴(同号の一四)、ダライ粉に関する伝票綴一綴(同号の一九)、納品書綴一綴(同号の一九)、納品書綴一綴(同号の二三)、製品元帳四綴(同号の二七)、製品受払簿四綴(同号の二八)、物品出納帳一二綴(同号の三二、三三)、仕入商品帳一綴(同号の三九)、領収証四綴(同号の四三)、売掛帳二綴(同号の五三)、売上帳五綴(同号の五四)

(争点に対する判断)

弁護人は、被告人会社の昭和四五年一二月一日から昭和四六年一一月三〇日までの事業年度(以下昭和四六年一一月期という。)の期首において、検察官主張以外に少なくとも一五、二三六・四キログラムの原材料(黄銅棒)の簿外在庫が存在した旨主張する。

よって検討するに、前掲証拠によれば、(1)被告人会社は、万国博開催などによる原材料の暴騰を見越して、昭和四四年ころ、多量の原材料(黄銅棒)の思惑買いをし、その一部分である一五、二三六・四キログラムを大阪市内の株式会社住友倉庫大阪港支店安治川営業所に預けていたこと、(2)その後同年あるいは翌年度中に右一五、二三六・四キログラムの原材料が同倉庫より出庫、使用されたとの形跡はなく、被告人会社の昭和四六年一一月期の期首(昭和四五年一一月期の期末)においてもなお引きつづいて存在し、そしてこれが右期首の原材料在高から除外されて簿外在庫となった可能性があること、(3)被告人会社の本件各事業年度における期首、期末の原材料等の在高の確定は、実地たな卸しに基づいて作成された正規の各期在庫一覧表がすでに廃棄されて存在しないため、たな卸し高の一部除外の際それぞれ作り直された各期の在庫一覧表と被告人柳山や同会社の経理担当者宮崎寿ら関係者の供述によってなされており、したがって検察官の主張の昭和四六年一一月期の期首原材料(黄銅棒)在高の確定も絶対的に正確なものとはいい難く、これ以外に簿外在庫の存在する余地もあったことなどが認められ、これらの諸点を総合すると、疑わしきは被告人の利益にとの原則にしたがい、被告人会社の昭和四六年一一月期の期首において、弁護人主張のとおり、一五、二三六・四キログラムの原材料(黄銅棒)の簿外在庫が存在したものと認めるのが相当である。そして、右一五、二三六・四キログラムの簿外原材料(黄銅棒)の品名等の内訳は明確でないので、前掲証拠によって認められる右期首(四五年一一月期の期末)における黄銅棒の平均単価トン当り三三三、〇〇〇円に、右数量を乗ずると、五、〇七三、七二一円の金額が算出される。

また、弁護人は、右昭和四六年一一月期の期首における原材料(鍜造品)の在高についても、検察官主張以外に五一、七一九個の認容洩れが存する旨主張しているところ、検察官も右認容洩れはこれをすべて認めているので、前記同様に右期首における鍜造品の平均単価一個当り七二円に、右数量を乗ずると、三、七二三、七六八円の金額が算出される。

結局、被告人会社の昭和四六年一一月期の期首において、検察官主張の金額以外に、原材料(黄銅棒)の在庫五、〇七三、七二一円と同(鍜造品)の在庫三、七二三、七六八円、合計八、七九七、四八九円が存在するので、右合計金額を同期の製造原価に加算し、同期の所得金額を算出すると、判示第一のとおり三五、八一三、六〇四円となりこれに対する法人税額は一二、七二四、六〇〇円となる(なお、別紙(一)の昭和四六年一一月期の修正損益計算書及び別紙(二)の同期の税額計算書を参照)。

(法令の適用)

法人税法一五九条一項(被告人柳山一郎につき懲役刑選択)、一六四条一項、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項、二五条一項、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条

(裁判官 森下康弘)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和45年12月1日

至 昭和46年11月30日

<省略>

<省略>

別紙(二) 税額計算書

自 昭和45年12月1日

至 昭和46年11月30日

<省略>

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