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大阪地方裁判所 昭和50年(わ)1400号 判決 1979年9月17日

(一)本店所在地

大阪市大正区泉尾中通三丁目一二番地

商号

日産住宅株式会社

代表者氏名

植上ヤス子

(二)本籍

大阪市大正区泉尾中通三丁目一二番地

住居

同市浪速区稲荷町二丁目九二八番地の一桜川グリンコーポラス一一三号室

職業

会社役員

生年月日

大正一〇年一一月一日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤村輝子出席のうえ審理し次のとおり判決する。

主文

被告会社日産住宅株式会社を罰金一、二〇〇万円に、被告人植上ヤス子を懲役一〇月に各処する。

被告人植上ヤス子に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、昭和五三年一月二四日証人守山光平に支給した分を除き、被告会社および被告人植上ヤス子の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社日産住宅株式会社は、大阪市大正区泉尾中通三丁目一二番地に本店を置き、建売住宅の販売等を営んでいたもの、被告人植上ヤス子は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人植上ヤス子は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  同会社の昭和四六年四月一日から同四七年三月三一日までの事業年度における所得金額が四四、一四二、九四〇円で、これに対する法人税額が一五、一七八、一〇〇円であったにもかかわらず、公表経理上売上の一部を除外するとともに外注費を水増計上するなどし、これによって得た資金を架空名義の定期預金にするなどの行為により、右所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年五月三一日、大阪市港区磯路三の二〇の一一所在港税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一七、一四七、七〇九円で、これに対する法人税額が五、二六七、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税九、九一〇、五〇〇円を免れ

第二  同会社の昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日までの事業年度における所得金額が一四六、五九九、一一二円で、これに対する法人税額が五二、一八六、二〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和四八年五月三一日、前記港税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五八、八四九、八三九円で、これに対する法人税額が一九、九四三、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税三二、二四二、三〇〇円を免れ

たものである。(右各所得の内容および税額の計算は、別紙一、二の修正貸借対照表および別紙三の税額計算書に記載のとおりである。)

(証拠の標目)

カッコ内の一、二およびそれに続く算用数字は、別紙一、二の修正貸借対照表とその勘定科目の番号を示し、押に続く数字は当庁昭和五一年押一一七号のうちの符号を示す。

判示全般事実につき

一  被告会社の登記簿謄本(判示冒頭事実)

一  港税務署長作成の証明書三通(各期公表金額、過少申告、青色申告の事実)

一  押収してある総勘定元帳四綴(押1ないし4)(各期公表金額)

一  検察事務官松井兵二作成の昭和五〇年五月六日付報告書(港税務署の所在地)

一  被告人に対する収税官吏の昭和四九年一〇月七日付質問てん末書および被告人の検察官に対する昭和五〇年四月三〇日付供述調書(判示冒頭事実)

一  被告人に対する収税官吏の昭和五〇年二月二八日付、同年三月一七日付、同月二四日付、同年五月三日付、同月四日付、同月五日付各質問てん末書(不正行為)

別紙一、二の勘定科目別の増差額につき

一  植上正宏の検察官に対する昭和五〇年五月二日付供述調書(一、二の各2)

一  収税官吏井上次郎作成の左記日付査察官調査書

昭和四九年一一月四日(一の2)、昭和五〇年三月二〇日(一の20、21)、同月二四日(二の26)

一  収税官吏井上次郎外一名作成の左記日付査察官調査書

昭和五〇年三月二二日(二の4、5)、同月一八日(一の5、6)、同月三一日(一の5、6、20、21、二の4、5、23、25、26)、昭和四九年一一月一六日(一の22)

一  収税官吏松村実作成の左記日付査察官調査書

昭和五〇年三月二八日、同月二九日二通(以上二の20)、同月二二日(記録第二三-三六号と表示された分)(一の16、二の20)、同日(記録第二三-二五号と表示された分)(一の17、二の21)、同月二五日(二の21)、同年二月二四日(二の39)、同年三月三一日(一の33、二の39)、同年四月一日(一の33)

一  収税官吏池田基一郎作成の左記日付査察官調査書

昭和四九年一二月一八日(二の23)、同月一七日(一の22)

一  収税官吏守山光平作成の昭和五〇年四月一四日付査察官調査書(一の2、18、二の2、7、22)

一  左記の者が左記日付で作成した各回答書(一、二の各2)

幸福相互銀行九条支店長生地米蔵昭和四九月一二月九日、近畿相互銀行富田林支店長奥谷順一同年一一月二九日、住友銀行大正区支店昭和五〇年一月一一日(二通)、同支店同月九日、同支店昭和四九年一二月六日、滋賀相互銀行八幡駅前支店同月四日

一  左記の者が左記日付で作成した各確認書(一、二の各2)

大阪信用金庫大正支店長代理阿部一男昭和四九年一一月六日二通、同昭和五〇年二月三日、大阪信用金庫大正支店(作成日付なし)、大阪商業信用組合堺支店長美馬長助昭和四九年一〇月七日、大阪信用金庫大正支店森康祐前同日、幸福相互銀行九条支店長生地米蔵前同日、住友銀行大正区支店次長島三昭前同日、同昭和四九年一〇月八日

一  左記の者が左記日付で作付した各回答書

滋賀相互銀行八幡駅前支店長水野稔昭和五〇年三月三一日(二の11)、大阪信用金庫大正支店同年四月一日付(一の9、二の10)、大阪商業信用組合堺支店同月三日付(前同)、住友銀行大正区支店前同日(一の9、18、二の10、22)、幸福相互銀行九条支店長昭和四九年一二月四日(二の8)

一  村田敏絃作成の回答書(一の8、二の7、9)

一  岸本佐治郎に対する収税官吏の質問てん末書(二の20)

一  生田正夫に対する収税官吏の質問てん末書(二の21)

一  徳本澄栄作成の昭和五〇年四月三日付確認書(記録第一八-四号と表示されたもの)(一の20、21、二の23、25、26)

一  松本史郎作成の確認書(一の20、21)

一  住友銀行大正区支店長服部昌夫作成の昭和四九年一二月一九日付確認書(二の39)

一  左記の者の作成した各回答書

平田宏(一の20)、折田博、折田房子、胡興華四通、奥田計夫、八木勝治、(一の20、21)、山中幸夫、佐野本是明、安藤豊、田川武、中田勉、久保道男(以上二の23)、疋田正、(二の3、23)、山下富也(一の20、二の )、嘉田俊美(一の21)、水上隆(一の21、22)、宮城調四郎、浜野潮行、中原政彦、福田憲二(以上二の26)、関隆雄(一の22、二の26)

一  被告人に対する収税官吏の左記日付質問てん末書

昭和四九年一二月二三日(二の39)、昭和五〇年三月一七日(一の20、21、二の23、25、26)同年五月三日(一、二の各2)

一  被告人の検察官に対する昭和五〇年五月一日付および同月七日付各供述書(一、二の各2)

一  被告人作成の左記日付の確認書

昭和五〇年五月四日(一の20、二の23)、同月五日(一の2、16、17、二の20、21)、同年三月二四日(一の20、21、22、二の23、25、26)、同年四月三日(二の39)、同年五月三日(一、二の各2)

一  押収してある左記証拠物

銀行勘定帳二綴(押5、6)(一の2、20、21、33)、現金出納帳一綴(押7)(一の33)、振替伝票三六綴(押8、9、10)(一の2、8、16、17、20、21、22、33、二の3、5、7、8、9、20、23、25、26、39)買掛金八期済分と題する帳簿一冊(押11)(二の4)、不動産売買契約書一〇綴及び八通(押12、13、14、18、19、27)(一の5、6、20、22、二の3、4、5、8、23、25、26)、請求書及び領収証二六綴(押15、16)(一の6、8、16、17、22、二の4、5、20、26、39)、支払明細綴一綴(押17)(二の21)、雑書一綴(押20)(二の4、5)、決算関係書類二袋(押21、25)(一の5、6、二の4、5)、手形受払帳一冊(押22)(一の16、二の20)、ノート一冊(押23)(一の5、6)、営業締越分と題する帳簿一綴(押24)(一の20、21、22、二の8、23、26)、工事請負契約書一綴(押26)(一の20、21)、雑書一綴(押30)(一、二の各2)、金銭出納帳一冊(押31)(二の20)、領収書一綴(押32)(二の20)、領収証控一冊(押32)(二の20)、領収証半片二冊(押33、34)、売上仕入借入外注手形帳二綴(押35、36)、振替伝票一一綴(押38、39)(以上一の2、17、二の2、21)

(主たる争点に対する判断)

(1)  まず、各期の現金に関し、検察官の主張する裏資金の発生と裏預金の発生との関係は証拠上明らかでなく、かつ、検察官の主張における推論は、第一期分甚だずさんであり、第二期分も十分に合理的とはいえず、結局、検察官主張の金額の根拠となるべきものは、被告人の捜査段階における供述のみであるといわなければならない。しかるに、その供述内容をみるに、収税官吏に対するものは、昭和五四年三月三一日現在分につき「昭和四五、六年頃は団地も二つぐらいで、不正も大きくなったことはなく、また、昭和四六年四月、五月には仮名預金も発生していないので、これらの点から考えて、いつでもすぐ土地を購入できるように持っていた金が五〇万円か一〇〇万円ぐらいまではあったと思うが、一〇〇万円以上は持っていなかったと思う」といい(昭和五〇年五月二日付質問てん末書)であり、検察官に対するものは、「実のところ正確には記憶していないが、いろいろ当時の状況を思い起こし、最大限にみて、昭和四六年度末は一〇〇万円、昭和四七年度末は各五〇〇万円ぐらいだったのではないかと思う」というのも(昭和五〇年五月七日供述書)であって、いずれも確たる根拠に基づかないばく然とした内容のものというべく、被告会社においてはその営業内容からみて手持現金の額の変動が比較的激しいとみられることを併せ考えると、右のような供述をもって、かなりの年月を経た過去の一時点における被告会社の裏現金の額を認定することは困難であるといわざるを得ない。そこで、現金の額については各期とも公表金額のとおり認定することにした。

(2)  次に、各期のたな卸土地、未完成工事支出金、仮受金、売予約前受金、借入金等に関連する売上繰延の点についてみるに、たな卸資産の販売による収益の計上時期については、一般にいわゆる引渡基準がとられているが、本件公表帳簿によると、被告会社においては、問題の仮装経理だとされている分を除いては、ほぼ一貫して代金の最終分の入金時に売上の計上をしていたことが明らかであるところ、右は、販売の目的物が不動産(主に建売住宅)であること、不動産売買においては一般に代金の完済と引換に目的物の引渡がなされること等にかんがみ、妥当な基準であるというべきである。(なお、被告会社の経理担当者は売買した不動産の現実の引渡時期につきいちいち確認しておらなかったことが、証拠上認められる。)そして、右の基準に従えば、問題の仮装経理だとされている分の売上帰属年度がすべて検察官主張のとおりとなることは証拠上明らかである。弁護人提出にかかる被告会社の大阪府港税務署長に対する計算基準の届出書は、その文面自体からみて、せいぜい、売上計上するまでに支払を受けた代金は売予約前受金として計上する旨の届出というべきであり、また弁護人の「建築請負業者への工事代金の支払が完了せず、したがって、売上原価が確定しないため、売上の計上ができなかった」旨の主張は、期間計算の原則を無視するものであり、それ自体理由がないものといわなければならない。さらに、問題となっている分の入金が、まったくの別人名で、しかも、売予約前受金としてではなく、別科目たる借入金等として計上されていること等に徴すると、脱税目的で繰延をしたものと認めざるを得ず、この点に関する弁護人の主張および証人徳本の供述は、およそ不自然不合理であって採用できない。

(3)  なお、預金に関しては、被告人植上ヤス子及びその家族に相当高額の個人所得があり、その一部が預金されていたことは証拠上窺われるけれども、同被告人らの個人預金も税務当局により相当額認められているうえ、証人守山光平の供述(第七、第八回公判)、被告人植上ヤス子作成の昭和五〇年五月三日付確認書、同被告人に対する収税官吏の同日付、質問てん末書、同被告人の検察官に対する同月七日付供述調書、その他関係証拠によると、会社及び個人の預金とももっぱら同被告人が管理し、同被告人はその帰属関係を最もよく知っていたこと、本件簿外預金の帰属については、収税官吏が同被告人に何回にもわたり十分な時間を与えて検討させ、同被告人において納得のうえ被告会社のものであることを確認し、その後の検察官の取調の際もこれを自認していたこと等の事実が認められるのであって、これらの点に徴すると、右被告人の選別に基づく検察官主張の被告会社の簿外預金の金額はこれを背認すべきものと考える。

(法令の適用)

被告会社につき

法人税法一六四条一項、一五九条、刑法四五条前段、四八条二項、刑訴法一八一条一項本文、一八二条

被告人植上ヤス子につき

法人税法一五九条(各懲役刑選択)、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(判示第二の罪の刑に加重)、二五条一項、刑訴法一八一条一項本文、一八二条

(裁判官 青木暢茂)

別紙(一) 修正貸借対照表

日産住宅(株)

昭和47年3月31日現在

<省略>

<省略>

別紙(二) 修正貸借対照表

日産住宅(株)

昭和48年3月31日現在

<省略>

<省略>

別紙一、二の注記

注1. 貸倒引当金欄の当期増減金額は、犯則外である。

注2. 当期利益金及び合計欄のかっこ内は、注1.の数値を除いた犯則分を内書で示している。

注3. 48年3月期の未納事業税欄当期増減金額3,732,120円は、前期の所得金額44,248,353円により計算すれば、3,252,120円が正当額である。

注4. 48年3月期の当期利益金欄増減金額(87,749,273円)(犯則所得金額)は、注3.未納事業税正当額3,252,120円により計算すれば、(88,229,273円)が正当額である。

税額計算書

事業年度分

自 昭和46年4月1日

至 昭和47年3月31日

<省略>

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