大阪地方裁判所 昭和50年(行ウ)7号 判決 1978年4月25日
原告
武田昭夫
同
野村一夫
補助参加人
石川光蔵
被告
平野区長
田中茂
右指定代理人
三浦一夫
外二名
主文
大阪市東住吉区長が原告らに対して昭和四九年六月六日付でなした、別紙物件目録(一)記載の土地については非課税の取扱いができないとする処分のうち、同目録(二)記載の土地に関する部分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実《省略》
理由
<前略>
第二本案についての判断
一原告らの東住吉区長に対する別紙物件目録(一)記載の土地についての土地非課税適用申告書の提出、これに対する本件処分、原告らの大阪市長に対する審査請求及び同市長の裁決の経緯並びに本件土地が原告ら三五七名の共有にかかるものであることは当事者間に争いがない。
二そこで、以下本件土地が地方税法三四八条二項五号及び大阪市条例五五条二項九号に規定する「公共の用に供する道路」もしくはこれに準ずる道路に該当するか否かにつき判断するに、まず、右「公共の用に供する道路」とは、道路であつて所有者において一般的利用について何等の制限を設けず開放されている状態にあり、かつ、不特定多数人の利用に供されているものを指すと解するのが相当である。そこで、右の点につき本件土地の状況を検討する。
(一) 本件土地は本件建物(建築面積7,326.52平方米)の北側に接し、右建物敷地とともに整備され、コンクリート製舗装板によつて舗装された土地であつて、周囲の土地より約二〇センチメートル高くなつており、本件土地の北側には市道が東西に走つており、本件土地と右市道との間には高さ約五〇センチメートルの植込みが三か所設けられており、西側には右市道との境界に鉄製ガードレール及び鉄製ポールが、東側にはコンクリート製道路区分がそれぞれ設けられている。また、本件建物の二階部分の一部は本件土地上に突出して建築されており、本件建物の一階部分のうち本件土地に面する部分には、レストランその他の九店舗及び本件建物居住者用の出入口が一か所存在し、その前面(北側)にはテント状のひさしが設置されている。そして、右テント状のひさしは本件建物に沿つて西側に連続しており、西側の中央部分にはいづみや平野店の出入口がある。
以上の事実は当事者間に争いがない。
(二) <証拠>によれば、本件土地の通行者は、本件建物居住者並びにいづみや平野店及び本件建物一階北側の前記店舗への買物客が主であるが、本件土地北側の市道における自動車の通行量は多いにもかかわらず、右市道には歩道が設けられていないこと及び国鉄関西本線の南側に線路に沿つて、その東端において幅員1.6メートルの歩道が設けられているが、右は国鉄平野駅のみに通じているため、同駅を利用する通勤客専用のものであり、また、自転車の通行もできないことから、国鉄関西本線の北方から踏切を渡つてもしくは本件建物の東方から本件建物の西または南西方向へ、またはその逆方向へ向う通行者も相当多数本件土地を利用している。なお、本件土地内には、メガロコープヒラノ自治会及びいづみや平野店内名義で「自転車乗入れ禁止」の立札が立てられてはいるが、前記道路事情から事実上自転車もかなり通行している状況にある。
以上のとおり認められる。<証拠判断略>
そして、以上の事実によれば、本来本件土地は本件建物の敷地の一部であつて、本件建物居住者並びにいづみや平野店及び本件建物一階北側店舗への買物客の利用に供することを目的として設けられた通路ではあるが、現在では右居住者及び買物客に限らず、広く不特定多数人の利用に供されており、かつ、自動車以外の通行についてはその所有者である原告らによつて何らの制限も加えられていない(本件土地への自動車の進入は、東側についてはコンクリート製道路区分石が、西側については鉄製ポールがそれぞれ設けられていることにより不可能である)道路であると認めるのが相当である。
なお、本件土地の西側に近接する平野区平野宮町一丁目八一番三所在のユニチカ株式会社所有の幅員約2.5メートル、延長約一〇〇メートルのA道路が、昭和四九年度以降地方税法三四八条二項五号に基づきその固定資産税につき非課税の取扱いを受けていることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、A道の西側には一六軒の店舗、事業所及び民家が存在し、東側はコンクリート壁によつてさらにその東側の公道と区分されていること、A道路南端には二本の鉄製ポールが設けられていて自動車の進入を防止しており、北端の入口付近には、「私有地に付き諸車通行」の立札が立てられている(もつとも、事実上は自動車の進入を防止する設備はないので、同所からの自動車の進入は可能である)こと及びA道路における人及び自転車の通行量は本件土地のそれよりもかなり少いことが認められる。
そして、前記本件土地の形態、利用状況に右非課税の取扱いを受けているA道路の形態、利用状況を併せ考えるときは、本件土地は地方税法三四八条二項五号所定の「公共の用に供する道路」に該当するものであつて、非課税の取扱いがなされるべきものと解するを相当とするから、本件処分中、本件土地に関する部分は違法であり、取消を免れない。<以下、省略>
(萩田健治郎 辻中栄世 吉野孝義)
物件目録<省略>