大阪地方裁判所 昭和51年(ワ)2636号 判決 1977年2月02日
原告 河田順一
右訴訟代理人弁護士 斎藤浩
同 豊川義明
同 橋本二三夫
被告 株式会社プラザ
右訴訟代理人弁護士 中元兼一
同 中村俊輔
同 田畑佑晃
主文
一、被告会社の昭和五一年三月二九日開催の定時株主総会における
1.取締役河田順一を解任する。
2.小島勉を取締役に、久本武敬を監査役に各選任する。
3.第三期(昭和五〇年一月一日から同五〇年一二月三一日まで)の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び利益処分案を承認する。
旨の各決議を取消す。
二、訴訟費用は被告会社の負担とする。
事実
第一、当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
主文同旨の判決。
二、請求の趣旨に対する答弁
1.本案前の答弁
原告の訴を却下する、との判決。
2.本案に対する答弁
(一)原告の請求を棄却する。
(二)訴訟費用は原告の負担とする。
との判決。
第二、当事者の主張
一、原告の請求原因
1.原告は被告会社の株式四〇〇株を有する株主であり、かつ、同会社の取締役である。
2.昭和五一年三月二九日開催された被告会社の定時株主総会(以下本件総会という。)において、主文第一項1ないし3掲記の各決議(以下本件各決議という。)がなされた。
3.しかし、右各決議に関する本件総会の招集手続は法令に違反するものである。すなわち
(一)本件総会の招集についての取締役会の決議がない。
(二)本件総会の招集通知がなされたのは昭和五一年三月二五日であるから、本件総会の二週間前になされていない。
(三)本件総会の招集通知の会議の目的事項には取締役である原告の解任に関する何らの記載がない。
以上、本件総会の招集手続は商法二三一条、二三二条一項、二項に違反する。
4.よって原告は商法二四七条に基づき本件各決議の取消を求める。
二、被告会社の答弁
1.本案前の主張
原告は、被告会社の株主でもなく、また同会社の取締役の資格も有していないから、商法二四七条に基づく決議取消の訴につき原告適格を欠くものである。なお、原告は本件総会で解任されるまで被告会社の取締役であったが、この地位に基づいて本件各決議の取消を求めることはできないというべきであり、また仮に右主張が容れられないとしても、被告会社は本件総会の後である昭和五一年七月二二日に適法な株主総会を開催し、同総会において本件総会における各決議と同一事項につき重ねて決議をしたから、爾後原告は同会社の取締役の資格を有せず、従って本件訴の利益を有しないものである。
2.請求原因に対する認否
(一)請求原因1項の事実は否認する。
(二)同2項、3項の事実は認める。
第三、証拠<省略>
理由
一、先ず被告会社の本案前の主張について判断する。
原告が昭和五一年三月二九日の本件総会において取締役を解任されるまで被告会社の取締役であったことは、同会社において自認するところである。
ところで、被告会社は、右のような場合には株主総会決議取消の訴につき原告は当事者適格を有しない旨主張するのでこの点について検討するに、そもそも本件のような瑕疵ある株主総会の決議の効力を争うにつき直接の利益を有する者は前任取締役であること、また株主総会の運営の適正をはかるために決議取消の訴を認めている法の趣旨にかんがみると、この訴に関しては前任の取締役も取締役の資格に基づき訴を提起し得るものと解するのが相当である。
さらに被告会社は、本件総会の後である昭和五一年七月二二日に適法な株主総会を開催し、同総会において本件総会における各決議と同一事項につき重ねて決議をしたから、爾後原告は同会社の取締役の資格を有せず、本件訴の利益を有しない旨主張するので、この点について検討するに、仮に被告会社主張の如き第二の決議がなされたとしても、先の決議の効力が当然消滅するものと解することはできないし、また第二の決議が先の決議時に遡って効力を生じるわけではないから、原告に本件訴を提起する法律上の利益がなくなるものということはできない。
よって原告が被告会社の株主であるか否かについて判断するまでもなく、原告は本件訴につき原告適格を有するものである。
二、そこで原告の本訴請求の当否につき判断するに、原告の請求原因第2、第3項の事実は、当事者間において争いがない。右事実によれば、原告の本訴請求は理由がある。
三、よって原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 首藤武兵 裁判官 菅野孝久 大谷種臣)