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大阪地方裁判所 昭和52年(わ)371号・昭52年(わ)4981号・昭53年(わ)371号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(罪となるべき事実)

被告人趙萬石は福岡県下の高等学校を中退し、自動車運転手等をした後、通信土木業の下請業を自営していたが、昭和五〇年八月に倒産したため、昭和五一年二月ころより密輸品のブローカーをしている弟の被告人趙万吉の手伝いをしていたもの、被告人趙万吉も福岡県下の高等学校を中退した後、ガソリンスタンド店員、自動車整備工、電話線埋設工事業等を転々とし、昭和五〇年ころから密輸品の運び屋である中国人の通称ミスターサニー、韓国人のミスターキム等の組織と接触、宝石、時計、覚せい剤、けん銃等の日本国内における売却斡旋等に手を染めていたものであるが、

第一 被告人両名は共謀の上、法定の除外事由がないのに、昭和五一年五月一日ころ、東京都千代田区紀尾井町四番ホテルニユーオオタニ内において、二二口径自動式けん銃三丁、三八口径回転弾倉式けん銃二丁および実包八一発を所持した

第二 被告人両名は共謀のうえ、鍋谷正史らが前同年同月三日ころ、大阪市南区九右衛門町三八番地タイムマンシヨンブリツジ内において、ミスターサニーから三二口径回転弾倉式けん銃一丁等および実包二九発を買い受けた際、右取引の斡旋等をし、右鍋谷らが法定の除外事由がないのに、同日ころ、同市西成区天下茶屋一丁目一八番二二号富士ハイツ一〇四号室の右鍋谷方において右けん銃一丁および実包二九発を所持した犯行を容易ならしめてこれを幇助した

第三 被告人趙万吉は、法定の除外事由がないのに、昭和五一年五月一日ころの午後七時ころ、東京都千代田区紀尾井町四丁目四番の前記ホテルニユーオオタニ内において二二口径自動式けん銃二丁を所持した

ものである。<中略>

(弁護人の主張に対する判断)

一弁護人の主張<中略>

3 第三の罪に関し

起訴にかかる二二口径けん銃二丁は第一事業の同口径銃三丁とともに被告人万吉が一たんホテルニユーオータニ地下駐車場から五階の部屋まで運び、さらに前田敏則らに売却したものである。されば、右けん銃二丁の所持は第一事実のけん銃五丁と一個の所持罪を構成するものであり、右にかかる起訴については、二重起訴として公訴棄却の裁判がなされるべきである。

二当裁判所の判断<中略>

3 二重起訴の主張について

第一、第三事実に関する証拠の標目中の前記証拠を総合すると、被告人趙万吉は、昭和五一年五月一日午後七時ころ、前記ホテルニユーオオタニの一室で大阪の土井純臣組組員北田隆治、桜木理仁に対し、けん銃五丁実包八一発を売り渡す取引の仲介をしたことは判示第一事実認定のとおりである。しかして右証拠によると、被告人万吉は前記上甲厚らの口利きでけん銃を買いに来た右北田、桜木らを右ホテルの一室に待たせたうえ、北田からけん銃代金として二七〇万円を受け取り、同ホテル地下駐車場で待ち合わせたミスターキムに右二七〇万円を渡して七連発二二口径自動式けん銃五丁(西独製ワルサー三丁、スペイン製アストラ二丁)を受け取り、これを前記北田らの待つていた同ホテルの一室で実包三五発くらいとともに同人に手交したこと、ところが、右北田が当初の約束では三八口径銃二丁、二二口径銃三丁を売買する約束であつたのに、二二口径銃ばかりで約束が違うと言い出したため、被告人万吉は右五丁のうちアストラ、ワルサーの各一丁を矢張り同ホテル内の数段上の一室でけん銃の取引を待つていた前田敏則、松村大三郎は実包各七発とともに代金合計九五万円で売り渡したこと、そして万吉は右の九五万円を持つて再度前記地下駐車場に赴き、右金員と引換に同人から三八口径回転弾倉式けん銃二丁をこれに適合する実包六〇発とともに受取つてこれを北田らに引き渡したこと、以上の事実を認めることができる。しかして、昭和五三年一月三一日付起訴にかかる被告人万吉の二二口径けん銃二丁の所持がホテルニユーオオタニ内で同人が前田敏則、松村大三郎に売り渡した前記二二口径けん銃の所持を指していることは証拠上明らかであり、被告人万吉は右けん銃二丁を前記三丁の二二口径銃とともに右ホテルの地下駐車場でミスターキムから受け取り、これを前記北田隆治らのいる部屋まで運搬したことは前認定のとおりであるから、右けん銃二丁の所有が二重起訴に該当するとする弁護人の主張も一理があるように思われる。しかしながら、右認定によると、被告人万吉は北田隆治から前記二二口径けん銃二丁を三八口径けん銃と交換するよう求められ、仕方なく一たん引渡したワルサー、アストラの各一丁の返還を受けこれを数段上の部屋に待機していた前田敏則、松村大三郎方に持参し、売却しているのであるから、右のけん銃二丁については、所持の目的と場所の異る点においてむしろ新たな所持が開始されたものと解するのが相当であろう。してみると、第一事実のけん銃の所持と第三事実のけん銃の所持は別個の犯罪事実と解すべきであり、右が二重起訴に該当するとする弁護人の主張は結局理由がないこととなる。 (平井和通)

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