大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)3640号 判決
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【判旨】
一請求原因(一)、(二)の事実並びに原告賃借の部屋は、窓が東側にあり、そこから日照、採光、通風を得る構造であることは、当事者間に争いのないところ、<証拠>を総合すると、本件アパートは、大阪市内国鉄環状線大正駅から南西約1.5キロメートルの住居地域に位置する木造モルタル塗り倉庫付二階建共同住宅で、附近には、二階建や平家建等の店舗、住宅が密集しており、本件建物の一階の半分(西側)は、所有者中西が材料置場に使用し、東側には、五室あるが、そのうち使用しているのは三室で、二階には、東側に五室、西側に四室の部屋があり、西側一室を除き満室となつていること、本件アパートの東側隣地には、以前訴外中塚平所有の木造瓦葺平家建居宅と木造の塀が存在し、訴外茶畑納森が居住していたが、本件アパート一階の道路寄り北端部分の、原告の居住する四畳、四畳半の二室は、夏は午前八時頃から昼頃まで、冬は午前一〇時頃から昼頃までそれぞれ日がさしていたこと、しかるに、被告が、昭和五一年一一月頃、前示中塚から木造平家建建物と敷地を購入し、右建物を取壊わして四階建の本件建物を建築し、本件アパートから0.5メートル、本件建物から1.11メートル離れた地点に、高さ1.82メートル、巾0.17メートルのブロツク塀を設置した後は、以前モータープールであつた本件建物南側の跡地に、木造二階建の建売住宅が建築された関係もあつて、四季を通じほとんど一日中日がさゝなくなり昼間でも電灯をともさなければ、日常生活に支障を感ずる程に採光が悪化し、そのうえ、本件建物の出入口と階段が原告の居住する室の前に近接している関係で、室内が人目につき易く、窓を閉める必要性が増し、そのため通風の面でも不便となり、本件建物の建築がなければ、引続き享受し得た筈の日照、採光、通風を大巾に奪われ、日のさゝない不快な生活を強いられる結果となり、他に転居する外に、回避する方法はない状態となつている事実が認められ、<証拠>中、右認定に反する部分は、前掲他の証拠と比較してたやすく措信し難く、他にはこれを動かすような証拠は存しない。
そして、右認定事実によれば、本件建物の建築により原告が蒙つている右のような生活上の障害の発生は、社会生活を営む上で、一般に受忍すべき限度を超え、建物の建築主に賠償責任を負担せしむべき違法性を具備するものと認めるのが相当である。
二そこで被告の負担すべき損害賠償の額について考察するのに、前記一、の冒頭掲記の証拠によれば、原告は、六二歳の無職の老人で、内妻が外で働き二人の生活を支えており、外に家族はなく、本件の日照問題の交渉に際し、被告代表者に本件建物一階店舗を自己の内妻に使用させるよう要求したが拒絶されるや同人を殴打するなどの暴行をなし、刑事裁判に付されたことが窺われ、前記認定にかかる諸般の事情を考慮すると、前示のような採光の悪化による電気代、暖房費の増加の点を斟酌しても、原告の精神的損害は、金一五万円を超えず、弁護士費用は、金二万円をもつて相当と認める。
(仲江利政)