大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)2564号 判決
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原告 旭化成工業株式会社
右訴訟代理人 山中隆文
被告 株式会社
旭化成研究所
右訴訟代理人 赤沢博之
【主文】一、被告は、その営業上の施設および活動について「株式会社旭化成研究所」「旭化成」その他これと同一の呼称を生ずる商号又は標章(以下「商号等」と云う)を使用してはならない。
二、被告は、右商号等を使用している看板、化粧品、製品、容器、包装、印刷物その他の物件から「旭化成」その他これと同一の呼称を生ずる商号等を抹消せよ。
三、大阪法務局堺支局昭和五二年一二月一五日付をもつてした設立登記中、「株式会社旭化成研究所」の商号の抹消登記手続をせよ。
四、被告は、大阪読売新聞、大阪サイケイ新聞ならびに日本経済新聞の各近畿版に、各一回づつ別紙目録記載の文案により、標題はゴジツク体二倍活字、その他はゴジツク体一倍活字を使用した広告を掲載せよ。
五、訴訟費用は被告の負担とする。
【判旨】
〔自白とみなされた請求原因〕
一、(原告の営業並びに商号の周知性)
(一) 原告は、肩書所在地の所謂新大ビル内に本店並びに大阪営業所を有し、外に東京、名古屋、広島、仙台、福岡、札幌、金沢、福井、新潟、倉敷市水島、宮崎県延岡、川崎、静岡県富士、滋賀県守山等に営業所を、延岡、川崎、水島、富士、大分、筑紫、和歌山、岐阜、北海道、千葉、山口、静岡等に工場を有し、年間売上高約四七三四億三〇〇〇万円、従業員一万五六八〇名を擁する資本金四七〇億五八八七万九五五〇円(但し、昭和五三年三月現在)の株式会社である。
(二) 原告の主たる営業は、化学繊維及びその他の繊維、化成品、プラスチツク、有機・無機の工業薬品、香料、医薬品、食品、発酵化学、建材、住宅その他多岐にわたつており、原告の事業は総合化学工業であるといえる。
(三) 原告の商号又は標章である「旭化成」は、フジテレビ系で放映されている「スター千一夜」なるテレビ番組その他で全国に宣伝され、一般大衆に広く認識されているものである。
二、(被告の営業並びに商号)
(一) 被告は、本店を大阪府松原市田井城一丁目六番二二号に置き、営業所を大阪市福島区福島五丁目一三番一八号、福島駅前・福島ビル六階、門真市大池町一四番三四号喫茶フレンド内、(尚、被告は門真市の営業所を大和田営業所と称しているが、現状は喫茶店となつている。)および大阪市阿倍野区阪南町五番一一号、長生ビル三階に置く、資本金一〇〇万円、設立日昭和五二年一二月一五日の株式会社である。
(二) 被告の営業目的は、「化粧品の卸売および小売業」であり、商号として「株式会社旭化成研究所」を称している。
三、(不正競争行為)
(一) 被告は、昭和五三年一月一九日付大阪読売新聞朝刊七頁七段、読売案内欄に
「男・女(美容コンサルタント)
今度当社はTVでおなじみの旭化成とタイアツプし関西総発売元として発足します。
中略
福島区福島5丁目13番18号
福島駅前・福島ビル六階
(株)旭化成研究所(451)4018
フアンタジー化粧品販売総本部」
なる広告文を掲載した。右広告文に使用した活字は、表題の一部(男・女(美容))を除いてすべて六号活字を使用しているが、被告商号(旭化成研究所)なる部分は五号活字を使用し「旭化成」なる部分を特に強調しているものである。勿論、「TVでおなじみの旭化成」とは原告を指すものであるが、原告と被告の間には提携関係など全く存在しないものであり、被告の前記広告は虚偽広告であり、被告の前記商号使用行為は、不正競争の目的をもつて為すものであること明白である。
(二) 更に被告は、「第一期生所長営業部員募集!!!」なるチラシ広告を印刷し、これを化粧品小売業者並びに一般需要者に多数頒布しているが該チラシ広告文中には、左記の如き文言が印刷されている。
「 旭化成
スター千一夜(旭化成)が化粧品業界に新登場
株式会社旭化成研究所
フアンタジー化粧品販売総本部
電話代表四五一―四〇一八」
しかも、表題に「旭化成」なる標章を使用し、看者をして注目させる様に意図している。その上、「スター千一夜が化粧品業界に新登場」なる文言は、悪質極りない虚偽事実であり、被告の諸宣伝活動よりに第三者は恰も原告が化粧品事業に進出したかの如く認識し、被告の該行為は原告の営業上の施設又は活動と混同を生ぜしめるものである。
(三) その上被告の販売員は、発売元旭化成研究所と印刷したパンフレツトを持参し、「今般、旭化成(原告のこと)が化粧品を製造販売することになつた。近日中に新聞・テレビ等で大々的に宣伝するが、今回それに先立つて営業所長や営業部員を募集している。今の間にフアンタジー化粧品を買つておけば、旭化成と顧客関係が出来るので大いに利益を得ることになる。
従つて是非フアンタジー化粧品を買つて欲しい。尚、取引保証金として買入価格の三分の一程度を前払いして欲しい。」と広言している。しかも、被告の営業所である福島ビル六階のフアンタジー化粧品販売総本部並びに前記大和田営業所や阿倍野区阪南町所在、長生ビル内営業所に一般消費者が電話した場合、被告従業員は、「上場している旭化成が化粧品を発売することになつたので近日中にテレビで大きく宣伝する」旨明言している。
(四) 前記(一)(二)(三)記載の事実よりみて、被告の所為は明らかに原告の著名周知な商号若しくは標章の存在を意識し、態々原告の商号と類似する株式会社旭化成研究所なる会社を設立し、営業所も原告本店所在地に近い福島駅前に設け、現在まで永年にわたつて培つてきた原告の信用、声価の表現を無断・無償で利用し、不正な利益を得ることを企てたものである。右の所為は、一般大衆をして、恰も原告が化粧品を販売している如き感を与えるものであり、これにより被告は営業上の利益を得る反面、原告の名誉・信用・経済的利益を害する危険を生ぜしめていることは明白である。これは自由競争の限界を逸脱し、取引秩序を乱す反倫理的行為として信義則に反する行為でもある。
四、以上のとおり、被告は、不正の目的および不正競争の目的をもつて原告の登記商号たる「旭化成工業株式会社」および標章たる「旭化成」のいずれにも類似する商号を使用し、現に第三者をして原告の営業との混同誤認を生ぜしめて原告の営業上の利益を害している。
謝罪広告
当会社は、世上一般に広く認識されている「旭化成」なる呼称並びに商号又は標章を使用して化粧品の販売を行ない、一般人に貴社の営業行為によるものとの誤認・混同を起させ、よつて貴社に御迷惑をおかけしたことに対し、真に申し訳なく衷心より御詫び申し上げます。
昭和五三年 月 日
大阪府松原市田井城一丁目六番二二号
株式会社旭化成研究所
清算人 大石政一
大阪市北区堂島浜一丁目二番六号
新大ビル内
旭化成工業株式会社 御中
(但し、日付は広告の日を記入するものとする。)
(畑郁夫 中田忠男 小圷真史)