大判例

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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)5405号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(一) 被告有澤所有地は、原告所有地より高く、その間に3.8メートルの段差があるというだけでなく、全体が周囲より高い位置にあるため、その地盤の四方が擁壁により支持されていること、

(二) 本件建築物は、右地盤のうち原告所有地側の擁壁に沿つて、その内側を三メートル以上も掘り下げて同部分の土砂を取除き、擁壁側には鉄筋コンクリート製の支柱を四・五本設けたこと、それら支柱のうち最も原告所有地に接近したものは、擁壁基底部の一部を取除き、同擁壁内側へ添わせるようにしてあること、支柱と対向する側は鉄筋コンクリート製の側壁とし、天井と底面もコンクリート製にした構造物であること、なお、原告所有地側を支柱にとどめたのは、その外側に擁壁があつて空間を区画するのに利用しえたからであること、そして、右擁壁の安全を期するため、それと支柱は鉄筋により結合され、その間にコンクリートが入れられており(両者の間にコンクリートが入れられていることは当事者間に争がない)、原告も指摘するように両者は構造上不可分の状態になつていること、このようにして完成された本件建築物上に掘削前とほぼ同じ高さまで覆土され、建築確認どおりに地下車庫及び倉庫とされていること、

以上の事実を認めることができ、この認定を動かすに足る証拠はない。

四右認定事実によれば、本件建築物の空間を区画されるのに利用された擁壁部分が、支柱と不可分の状態にあるだけに、原告も指摘するように支柱と同じ機能をも営むであろうことは推測するに難くない。しかし、被告有澤所有地の地盤構造に徴すると、同擁壁部分は他の擁壁部分と合体し、依然として地盤支持及び隣地との区画の機能を果しており、土地の構成部分であることも動かし難い事実というべきである。

そうだとすれば、この擁壁の収去を求める原告の請求部分は失当というべきである。

そして、本件建築物は、この擁壁の内側で被告有澤所有地の従来の地盤面下を利用した地下構築物とみるのが相当である。

そこで、民法二三四条一項の注意を考慮すると、同条項は相隣関係における土地利用の調和の理念に立脚し、境界に近接する士地や建物などのため隣地の利用を不可欠とする場合のあることに鑑み、相互に境界に近接する土地につき空間を確保する趣旨に出たものと解するのが相当であり、このことが相対的且つ副次的にもせよ、空気の流通や日照阻害による衛生上の悪影響を防止することに寄与しうることを考慮したものというべきであろう。もつとも隣地の利用といつても、そこには自ら限界が存するのであつて、一時的にもせよ無断で、例えば隣地を掘削するとか、隣地の擁壁を取り壊すといつたことまでが許される理はないというべく、せいぜい隣地の地表面など現状のままで利用しうるにとどまると解するのが相当である。

この見地からすれば、地盤面下に設置さた本件建築物については、右条項による制限は機能しないといわなければならない。

(石田眞)

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