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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)5754号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

Xらの子Aは、本件事故当時、Y(大阪市)立高校一年在学中の男子(一六才)であり、水泳部員であつたが、右高校に設置されたプールの浄化装置の取水口から足が抜けなくなり溺死した。Xらは、右事故は右プールの取水口に防護網を設けなかつたこと及び同校校長らが右取水口に足を挿入して取水口をほぼ塞ぐとポンプの吸引力が増し、足が抜けなくなる危険があることを格別警告しなかつたという右プールの設置、管理に瑕疵があつたことによつて生じたものであることなどを理由に、右プールの設置、管理者であるYに対し、損害賠償を求めたものである。

(プール事故に関する参考判例)

○設置・管理の瑕疵責任肯定事例 松山地西条支判昭40.4.21(下民集一六巻四号六六二頁)、福岡地小倉支判昭47.3.30(本誌二八三号二八五頁)、京都地判昭48.7.12(本誌二九九号三三八頁)、大阪高判昭49.11.28(判時七七三号九七頁)、広島地判昭52.12.22(判時八八九号七六頁)

○設置・管理の瑕疵責任否定事例 東京地判昭43.9.10(学校事故学生処分判例集一九〇頁)大阪地判昭44.11.27(本誌二四二号二六五頁)、大阪地判昭54.1.26(本誌三八四号一四七頁)

【判旨】

一 本件プールの設置の瑕疵について

1 <略>

2 <証拠>によれば、次の事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

(一) 被告は本件プールを設置管理している。本件プールは大阪市立泉尾工業高等学校生徒の水泳授業、クラブ活動のために使用されていた。

(二) 本件プールの構造の概略は別紙記載のとおりであり、浄化装置の取水口は本件プールの北側側壁にプール底面(水深約1.3メートルの地点)に接して一個所設けられており、上下の内径16.5センチメートル、左右の内径15.5センチメートルの多少ゆがんだ円形をしている。右取水から北方にパイプが水平に配管され、約3.2メートルの地点で曲がり、循環ポンプに接続している。

(三) 成人男子が本件取水口に足を挿入すれば、その太ももで本件取水口を密閉することができる。

(四) 本件取水口の全部又は一部を閉塞した場合における本件取水口の吸引力は左のとおりである。

閉塞比(%) 吸引力(Kg)

三三      0.4

四七      0.9

五四      1.2

七五      7.0

八二     18.5

一〇〇    200.9

本件取水口のそばに立つたとしても、足を吸い込まれる事態はおこらない。本件取水口に足を挿入すると、閉塞比が七〇%程度までは足を吸い込まれる事態はないが、七五%をこえると吸引力が急速に高まり、足が吸い込まれて全閉塞状態に至る危険がある。全閉塞状態になれば、自力で足を引抜くことは不可能である。

(五) 浩之は事故当日午後三時五分ころまで本件プールで水泳部の水泳練習をし、それに引続いて同プール内に遊んでいるうちに同日午後三時二〇分ころ本件取水口の深さに興味をもち、左足を太ももまで本件取水口に挿入したところ、吸引力が増したため左足を吸い込まれ右取水口を太ももで全部密閉したため、足を引抜くことができなくなり溺死した。

(六) 泉尾工業高校の体育科教諭は、毎年六月末から始まる水泳の授業の際生徒らに対し準備運動をすること、プールサイドを走らないことなどプール使用上の一般的注意をするにとどまり、本件浄化装置の構造やプール内の穴(本件取水口など)の用途などについて説明をすることはなかつた。

また、本件プールの衛生管理に当たつていた矢野教諭は、水泳部の主将らに対し本件浄化装置の構造、プールからの入水経路などの概略を説明のうえ本件プールの清掃などを行わせていたが、浩之ら一年生が上級生や顧問教諭から本件浄化装置の概略などの説明を受けたことはなかつた。

(七) 泉尾工業高校は本件事故後本件取水口に防護カバーを設置した。

3 以上認定の事実をもとに判断するに、本件プールの使用者が高校生であるとしても、本件被害者のように義務教育修了直後で中学生と大差のない者もおり、かつ精神的発達には個人差が大きい点からすると、右の危険のある本件取水口に足が挿入できないように防護柵を設けなかつた点は、本件プールの設置に瑕疵があつたと認められる。

さらに、本件取水口の危険について格別警告することなく本件プールを使用させた点に管理の瑕疵があつたと認められる。

したがつて、本件プールの設置、管理者である被告は、国家賠償法二条一項により原告らに生じた損害を賠償する義務がある。

二 損害額<省略>

3 過失相殺

さきに認定したとおり、浩之は高校一年生でありながら好奇心から本件取水口に足を挿入したものであり、浩之のかような軽率な行為が本件事故の一原因となつている。そして、浩之の過失を七割と評価し、被告に対し損害額の三割の負担を命じるのが相当である。

(乾達彦 井深泰夫 市川正巳)

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