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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)5818号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一本件建物のうち二号建物が原告清川の名義で、三号建物が原告山口の名義で、別紙図面記載の位置にそれぞれ建築されたこと、被告は右各建物が八分ないし九分どおり完成した昭和五一年一一月二二日、ABEHDCGAの土地(以下「係争地」という。)が自己の所有であることを主張して、奈良地方裁判所に右原告らを債務者とする本件仮処分を申請し、同年一二月六日に右仮処分決定を得たうえ、同月七日その執行をなしたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

二そこで、右仮処分が違法なものであるか否かについて判断する。

1 <証拠>を総合すると、以下の事実を認めることができる。

(一) 本件係争地付近は、昭和四一年当時、中本友一が従前から継続して占有し所有していた土地であるが、地番は明らかではなく、北側のABICGA部分は主として雑木林で、その南側に中本の居宅が存した。

(二) 広沢は、昭和四一年八月ころに右土地の東側に隣接する四〇二四番一〇の土地(AGCDJFAの部分)を前所有者坂上豊吉から買受けたが、その際、中本からも前記ABICGA部分の土地約四〇坪を買受け、A、B、I、Cの各点を順次結んだ線上に杭を打つて鉄条網を張り、その範囲を明示しておいた。

(三) 他方、被告は、昭和四五年ころ、池淵から三九〇六番、三九一〇番ほか数筆の土地約八〇〇坪を買受けたが(この事実は当事者間に争いがない。)、右被告が買受けた土地の中には、従前中本の占有していた地番の明らかでない土地約六〇坪が含まれていた。

(四) ところで、被告が池淵から買受けた土地は、係争地の西側にある幅約九〇センチメートルの里道に通じているのみであつたので、被告は当初から買受けた土地を開発するため右里道を係争地側に拡張して北側の公道からの進入路とすることを希望しており、更に被告の買受けた土地は、北側の広沢が所有する四〇二四番一〇の土地やその東側に隣接する林所有の四〇二四番一九の土地に比べて低地となつていたため、被告は右広沢、林の土地を削つてその土砂で自己の土地を嵩上げする計画を立て、信用組合大阪興銀(被告は、同組合が必要とする不動産を所有させるために設立したいわゆる子会社である。)の専務理事で被告代理人の神林祥熹及び造成工事業者の金田直己を通じ、広沢と林に対し、三者の土地を共同して造成したい旨申入れ、また、広沢に対しては前記里道の東側に進入路を設けたい旨申入れたところ、広沢から、同人が中本より前記のとおり係争地のうちの北側ABICGA部分を買受けていたことを知らされたので、両者が話合のうえ、広沢が里道を東側に拡張して道路を作るのに必要な土地を提供し、被告はその交換条件として、前記ABICGA部分の土地について広沢が権利を有することを認め、道路に提供する分に見合う面積の被告の土地を広沢に譲渡することで概ね合意に達した。

そして、被告は、右造成の件について林からも一応の了解を得たので、昭和四七、八年ころ、被告の依頼を受けた金田が造成に着手したが、その途中で林が態度を翻し、その後当事者間で何度か話合がなされたものの最終的に同人の同意が得られなかつたため、工事は中断し、それとともに被告と広沢の間でなされた進入路設定と土地の交換の話も確定しないまま頓挫した状態となつていた。

(五) しかるところ、広沢は四〇二四番一〇の土地を使用する必要がなくなつたため、昭和五〇年一一月ころ、これを原告山口に売却することになつたが、被告との間の従前のいきさつから、原告山口に対して売渡す土地の範囲を確定するため、被告に対し、道路にすべき部分とその交換として広沢が被告から取得することになる土地の範囲を明確にするように申入れた。そこで、昭和五一年二月二一日、広沢と原告山口、それぞれの仲介人堤繁蔵と有山虎之助及び被告の代理人神林、被告の監査役で被告土地の実質的所有者浅井光男、被告土地の造成工事を委されていた金田及び金田に依頼されて被告土地の測量関係の仕事をしていた株式会社三友測量設計事務所(以下「三友測量」という。)の代表者中前猛らが信用組合大阪興銀本店で会合し、話合の結果、係争地の西側の里道に接してその東側に、被告所有地から北側公道に至るまで幅六メートル(里道を含めて)の道路をつけること、広沢はそのために必要となる自己所有土地を提供し、これを私道として両者の共同使用に供する代り、被告は広沢に同人所有地の南側の土地のうち右道路部分を除く同人所有地の実測面積が二四六坪となるまでの範囲を無償譲渡することを合意し、三友測量が用意していた係争地付近の実測図面に右道路と被告が広沢に譲渡する土地の範囲を右合意のとおりの面積となるように記入し、後日その位置を現地で確認することとした。

そして、右話合の数日後、原告山口と有山、広沢から依頼を受けた堤、被告の代理人として金田が立会のうえ、被告側の依頼した三友測量の担当者が前記図面に記入された道路部分(ABEHIGFAの部分)及び被告が広沢に譲渡する土地の範囲(H及びD点を結ぶ線より北側)を現地で杭を打つて確定し、これに基づいて広沢所有となる範囲の土地(同図面FGIHDJFの部分)と道路部分に提供される土地の各面積を実測し、四〇二四番一〇の土地の地積更正登記等に要する地積測量図を作成した(右図面上道路部分を除く広沢所有地の面積は813.355平方メートル、約246.04坪で、前記合意に沿うものとなつている。)。

(六) 広沢は、右のとおり杭打もなされて道路部分と自己が被告から取得する土地の範囲が確定したので、その直接これに基づいて右FGIHDJFの土地を原告山口に売渡し、同原告は昭和五一年三月一〇日これを原告会社に転売した。

以上の事実を認めることができる。

2 右事実によれば、広沢と被告の間においては、昭和五一年二月二一日に信用組合大阪興銀本店でなされた合意及びこれに引続いて右双方の代理人が立会のうえ現地でなされた杭打作業により、広沢は、前記里道を東側に拡張して六メートル幅の道路を設置するために必要な自己所有地ABIGFA部分を提供し、これを私道として両者の共同使用に供すること、他方被告はこれと交換にH、Dの各点を結ぶ線以北の自己所有地(道路部分を除く。)IHDCI部分を広沢に譲渡して道路を除く広沢所有地の範囲をFGIHDJF部分とすることを内容とする交換契約が成立したものと認めることができる。

被告は、右昭和五一年二月二一日の話合では未だ交換契約の具体的内容が確定しておらず、現地での杭打、測量や図面作成は、右内容を決めるための前提作業である旨主張し、<証拠>をなしている。

しかしながら、前認定の右話合に至る経緯によると、本件交換契約の眼目は、被告側にとつては、自己所有地を開発するうえで必要不可欠な進入道路を設定するという点にあり、広沢側にとつては、道路にしなければならない範囲とその交換に被告から一部土地をもらつた結果原告山口に売却しうることになる土地の範囲を確定することにあるのであつて、この内容は右話合の結果に基づいて被告側が依頼した三友測量が双方代理人立会のうえ現地で杭打した段階で十分確定し、三友測量はこの時定めた境界に従つて被告の土地の実測図面を作成していることや、前記昭和五一年二月二一日の話合の席で右測量後に改めて交換契約の内容を協議するための手筈等について何らかの発言がなされたり、或いは右話合や現地での測量の際、更にはこれに基づく実測図面作成後本件仮処分申請に至るまで、被告側が本件交換契約内容について具体的に条件を付し不満や異議を申立てる等の態度を示したりした形跡は全くうかがわれず(もつとも、有山証言によると、右実測図面作成後原告山口らがこれに基づいて被告側に地積訂正するについての同意を求めたのに対しては、被告側では結局これに応じなかつたことが認められるが、その際もこれに応じない理由については、一切説明がなされていないのであつて、被告側が実測図面作成後になつてから示した右態度は理解できず、この事実は契約不成立を裏づけるというよりも被告の契約に基づく義務の不履行を示すものといわざるを得ない。)、有山証言によれば、被告が本件仮処分異議事件係属中被告の土地売却の仲介を依頼して不動産仲介業者に前記三友測量作成の実測図面を交付し、前記交換契約による進入道路付の土地であることを前提としてその売込をはかつた形跡すらうかがわれること、また前記交換契約の内容自体も、被告の土地にとつてその開発を可能とする道路の存在が土地の価値を大きく左右するものであつてみれば、被告にとつて不利なものであるとか特に不合理なものとは思われず、むしろ被告側の得る利益の方がより大であると考えられること等の事情よりすれば、本件交換契約の成立を否定する前記証人らの各供述はいずれも措信することができない。もつとも、本件交換契約では、道路部分の土地の所有権の帰属について明示の合意はなされていないが、これは右土地部分を道路とし、双方の共同使用に供することについて合意がある以上その所有権の帰属自体は当事者が重視していなかつたためと考えられるのであり、この点は契約の内容その他の事情から合理的に解釈すべきことがらであつて、これが明示されていないからといつて右契約の成立が左右されるものではないというべきである。

3 そうすると、被告は、本件交換契約により、IHDCI部分の土地所有権を広沢に移転し、GICGの部分の土地所有権が広沢に帰属することを承認したものであつて、本件仮処分当時GIHDCGの土地について被保全権利たる所有権を有しておらず、かつこのことを十分知りながら、(なお、被告は、広沢から原告山口を経てこれを転得した原告会社が右土地につき所有権移転登記を経由していないからその所有権を主張し得ない旨主張するけれども、被告は右土地の順次承継の前主であり、民法第一七七条にいう第三者に該当しないから、右主張は失当である。)、あえてこれあるものとして右仮処分申請に及んだものであるから、本件仮処分は被告らに対する不法行為に該当するというべきである。

(山本矩夫 矢村宏 三代川三千代)

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