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大阪地方裁判所 昭和54年(わ)3950号 判決 1982年9月28日

本店所在地

大阪府吹田市広芝町一三番地二八号メゾン広芝二〇六号

有限会社徳島商事

(右代表者代表取締役 吉村一郎)

本籍

大阪市北区梅田一丁目八番地

住居

大阪府豊中市東寺内町一一-二三緑地東グランドマンション五〇六号

賃貸業等

高橋カイ

大正九年八月一〇日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

一、被告人有限会社徳島商事を罰金一七〇〇万円に、被告人高橋カイを懲役一年に、各処する。

一、被告人高橋カイに対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

一、訴訟費用は、被告人有限会社徳島商事及び被告人高橋カイの連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社徳島商事(以下「被告会社」という。)は、大阪府吹田市広芝町一三番二八号メゾン広芝二〇六号に本店を置き、特殊浴場業等を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人高橋カイは、被告会社の実質経営者として向会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人高橋は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五一年七月一日から同五二年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が一億三九七三万八七九九円(別紙修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五二年八月三一日、大阪府池田市城南二丁目一番八号所在の所轄豊能税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇〇万円でこれに対する法人税額が五六万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五五〇五万五二〇〇円と右申告税額との差額五四四九万五二〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人高橋カイの当公判廷における供述

一、被告人高橋カイの検察官に対する各供述調書一〇通

一、収税官吏の被告人高橋カイに対する各質問てん末書一二通

一、証人吉田進の当公判廷における供述

一、公判調書中の証人奥野一義(第四回)、同太田桂子(第八回)、同徳富孝(第八回)、同古野藤男(第八回)、同宮本猛士(第九回)、同神崎勇三(第九回)、同高橋達雄(第一〇回)、同鈴木滋(第一〇、一一回)、同森山卓雄(第一二ないし第一四回)、同和田勇(第一五回)、同吉田進(第一七回)の各供述記載部分

一、証人永田京子に対する当裁判所の尋問調書

一、大阪地方裁判所第一二刑事部四係の被告人大阪産業株式会社他一名に対する各法人税法違反被告事件の第一三回、一六回、一七回各公判調書抄本

一、一井武、高田貞夫(但し、一六項を除く)、野林法親、奥野一義(四通、但し、昭和五四年八月八日付は一六項を、除く。)魚住重隆、杉本友雄の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏の奥野一義(二通、但し、同五三年二月八日付は、第六問答を除く。)、高田貞夫(三通、但し、同年三月三日付は、第三、五問答を除く。)、野林法親(二通)、三村一美、杉井功、天野昭一、魚住重隆、宮崎英雄、木下武次、嶋瀬喜久、浜田耕、杉本友雄、篠原武次、岡本京子、和田勇(謄本)に対する各質問てん末書

一、株式会社大阪リネンサプライ経理担当谷垣浩蔵、吉田薬品株式会社代表取締役嶋瀬茂、株式会社間金時堂取締役浜田耕、菱電サービス株式会社大阪支店会計課長山本育、株式会社日本樹脂肪水経理係須川靖、東邦宣伝株式会社経理部山川和子、株式会社イチネン営業係杉本友雄、一井武、尼崎浪速信用金庫梅田支店長山本昭、株式会社池田銀行梅田新道支店長千葉祐三郎、各作成の「確認書」と題する書面

一、日本電信電話公社梅ヶ枝営業所長、サントリーフーズ株式会社西部営業部長吉田茂雄、有限会社ゐびすや金物店、和泉商会酒井直人、株式会社池田家具、福助焦点南畑禮市、三陽設計工務株式会社、ウエノ工芸上野敦雄、有限会社國吉商店代表取締役国吉政敏、各作成の照会回答書

一、検察事務官作成の報告書二通

一、収税官吏作成の査察官調査書九通

一、被告会社作成の確定申告書謄本

一、大阪法務局吹田出張所登記官高田博作成の昭和五四年六月四日付法人登記簿謄本

一、押収してあるトルコ大閤入浴券二二綴(昭和五五年押第八一三号の一ないし三、一二)、同トルコ大閤入浴券の半券二綴(同押号の四)、同誓約書五綴(同押号の五)、同在庫帳一綴八同押号の六)、同ホステスリスト表一綴、一枚(同押号の七、一〇)、同日計表及び納品書二綴(同押号の八、九)、同ノート一冊(同押号の一一)、同総勘定元帳一綴(同押号の一三)、同トルコ大閤開店祝控等一綴(同押号の一四)、破った形跡のある請求書、納品書、メモ類一綴(同押号の一五)、同領収書綴じ一綴(同押号の一六)、同経費明細書一枚(同押号の一七)、同トルコ大閤請求書一綴(同押号の一八)、同売掛金入金帳一綴(同押号の一九)、同徳島商事申告書関係綴一綴(同押号の二〇)、同雑メモ綴一綴(同押号の二一)、同雑書三三綴(同押号の二二、二三、二七)、同伝票綴一綴(同押号の二四)、同支払明細書綴一綴(同押号の二五)、同納品書、請求書綴じ一綴(同押号の二六)、同領収書および請求書等一綴(同押号の二八)、同昭和五一年度火星分領収書等(同押号の二九)、同領収証一綴(同押号の三〇)、ニュー火星請求書綴り一綴(同押号の三一)、昭和五二年度領収書綴り一綴(同押号の三二)

(弁護人らの主張に対する判断)

弁護人、被告人らの争う勘定科目についての当裁判所の判断の要旨は以下のとおりである。

一、総売上高について

1、入浴料収入について

検察官は、入浴料を確定しうる物証の存する期間については、物証に基き入浴料収入を算定し、そのような物証の存しない期間については、まず入浴客一人当りの平均タオル使用数を算定し、これで各日毎のタオル使用総数を除して入浴客数を推計し、前記の物証の存する期間毎の入浴客一人当りの平均入浴料金をこれに乗じて入浴収入を計算すべきものと主張する。弁護人も、右の推計方法自体は争わず、この推計方法は推計方式、基礎となる証拠の選択いずれも合理的であり、当裁判所も合理性を有するものとして相当と解する。

問題は検察官は、入浴客一人当りのタオル使用数を、これに関する物証の存する昭和五一年七月二三日から同年八月二〇日まで、同年九月一七日から同年一一月二六日まで、同月二九日、同年一二月一日から同年一二月六日までの期間の入浴客一人当りのタオル使用数が一・四七セットであることから、これを切り上げて一・五セットとして計算すべきと主張するのに対し、弁護人は、同年一〇月の平均タオル使用数一・五三セットを基準として計算すべきものと主張する点にある。しかしながら、検察官及び弁護人の計算方法は、いずれも各日毎のタオル使用総数の判明しない期間をその計算の基礎としており、決して合理的とはいえない。当裁判所は、入浴客数とタオルの使用総数がいずれも物証により完全に確定できる期間中の入浴客一人当り平均タオル使用数を計算の基礎とするのが最も合理的と考える。

公判調書中の証人鈴木滋(第一〇、一一回)、同森山卓雄(第一二ないし第一四回)、の各供述記載部分、収税官吏の三村一美、天野昭一、魚住重隆に対する各質問てん末書、魚住重隆の検察官に対する供述調書、谷垣浩蔵作成の「確認書」と題する書面、押収してある日計表及び納品書一綴(昭和五五年押第八一三号の九)、収税官吏作成の査察官調査書二通(証拠等関係カード検察官請求書分番号11、37)によれば、一日毎のタオル使用総数が確定される。

又、前記鈴木滋の供述記載部分、収税官吏の高田貞夫(二通、昭和五二年二月二四日付、同五三年三月三日付、但し、不同意部分を除く、以下同じ)、野林法親(同五三年三月七日付)に対する各質問てん末書、押収してあるホステスリスト表一綴(同押号の七)、入浴券八綴(同押号の一、三)、入浴券の半券二綴(同押号の四)、誓約書五綴(同押号の五)、収税官吏作成の査察官調査書二通(前記番号12、13)によれば、一日毎の入浴客数が確定される。

このようにして確定された一日毎の入浴客数及びタオル使用総数は、別紙入浴客数、タオル使用総数一覧表のとおりである。

これによると、結局右期間中の入浴客一人当りの平均タオル使用数は、一・四五セットと認められる。従って検察官自身一・五セットと主張している点等をも考慮し、被告人らに有利に切り上げて一・五セットを基準として計算するのが相当である。

次に、入浴料収入は、入浴料と延長料とで構成されているが、弁護人はこのうちの延長料の計算について次のように主張する。すなわち、検察官は基本時間を四〇分とし、これを超えたときは二〇分毎に延長料を計算しているものと前提したうえで、基本時間を五〇分とし、これを超えたときは、二〇分毎に延長料を算定すべきものと主張する。

前記鈴木滋の供述記載部分、収税官吏の高田貞夫(昭和五三年一一月二四日付)、野村法親(同年三月七日付)に対する各質問てん末書、野村法親の検察官に対する供述書、押収してある在庫帳一綴(同押号の六)、ホステスリスト表一綴及び一枚(同押号の七、一〇)、入浴券及びその半券二四綴(同押号の一ないし四、一二)、収税官吏作成の査察官調査書二通(前記番号12、13)によれば、入浴券の金額欄の下の「1」ないし「6」欄の数字に赤で丸印を付したものが延長回数を表示していること、これらを転記して作成した収税官吏作成の査察官調査書(前記番号13)に基き、収税官吏作成の査察官調査書(前記番号12)記載のとおり、八七日分の現実の入浴料、延長料が算定されることが認められる。

従って、この算定方法は、基本時間を四〇分とし、これを超えたときに延長料を機械的に算定したものではなく、弁護人のこの点に関する主張は、前提を欠き、採用の限りでない。

前掲各証拠によれば、物証の存する日の入浴客数は、八四四四名、これに対する入浴料収入は、五七二九万八〇〇〇円、物証の存しない日の推計入浴客数は、一万九九二九名で、これに対する推計入浴料収入は、一億四七八九万五〇〇〇円であり、入浴客数は合計二万八三七三人で入浴料収入は、合計二億五一九万三〇〇〇円と認められる。

2、ドリンク代収入について

高田貞夫の検察官に対する供述調書、収税官吏の被告人高橋カイに対する昭和五二年一一月一〇日付質問てん末書によれば、ホステスから入浴客一人当り五〇〇円のドリンク代を徴収していたものと認められる。前記一の1で認定した入浴客数二万八三七三人に右五〇〇円を乗じた一四一八万六五〇〇円をドリンク代収入として認定する。

3、タオル使用料等収入について

弁護人は、ホステスから徴収する食事代、ミニコール代の徴収時期に関し、食事代については、開店当初からではなく、昭和五二年二月初めから徴収し、ミニコール代については、同年六月末までではなく同年五月末まで徴収した旨主張し、被告人高橋カイも当公判廷で右主張にそう供述している。

しかし、被告人高橋カイ自身収税官吏の同被告人に対する同年一一月一〇日付質問てん末書では、食事代一〇〇〇円については、開店当初より徴収していたことを認めており、何故供述を変えるに至ったか、その理由が明らかではない。高田貞夫の検察官に対する供述調書、収税官吏の同人に対する同五二年一一月二二日付、同月二四日付各質問てん末書によれば、開店当初より食費として一〇〇〇円を、同五二年四月頃よりミニコール使用料として一〇〇〇円を、同年六月末まで、各徴収していたことが認められ、右供述調書はいずれも供述者の記憶の新鮮な時期にとられたものであり、供述者自身も供述当時においては、本件と利害関係の存しなかった点を考慮すると、その供述内容は、推信でき、これに反し、被告人の当公判廷における供述は信用性が乏しいと考えられる。従って、食事代については、昭和五一年七月二三日から同五二年六月三〇日まで、ミニコール代については同年四月一日から同年六月三〇日まで、ホステス一人当り各一〇〇〇円を徴収していたものと認められる。

前記鈴木滋の供述記載部分、収税官吏の高田貞夫(昭和五二年一一月二四日付、同五三年三月三日付)、野林法親(二通)に対する各質問てん末書、収税官吏作成の査察官調査書(前記番号12)により確定された昭和五一年七月から同五二年六月までの各月毎の出勤ホステスの延人数に各月毎のタオル使用料等を乗じて総計 一九一万八三〇〇円のタオル使用料等収入が認定される。

二、厚生費について

弁護人は、ホステスから昭和五二年二月一日から同年四月三〇日までの間、食事代として一人当り一〇〇〇円を徴収していたので、簿外厚生費としては、一六四万一〇〇〇円を計上すべきと主張する。しかし、前記一の3記載のとおり、食事代は全期間を通じてホステスから徴収されていたものと認められる。収税官吏の高田貞夫に対する昭和五三年三月三日付質問てん末書によれば、被告会社がホステスに提供していた食事の原価はせいぜい五〇〇円程度であったものと認められる。

第一二回ないし第一四回公判調書中の証人森山卓雄の供述記載部分、収税官吏作成の査察官調査書(前記番号12、38)等により認められる出勤したホステスの延人数六二〇三名(前記一の3参照)に右五〇〇円を乗じた三一〇万一五〇〇円を簿外の厚生費として認定する。

三、交際費について

弁護人は、総額一一万一六五一円の簿外交際費を主張するので検討するに、まずサントリフーズ株式会社に対する一万四三五〇円については、公表計上されており、簿外の支出ではない。(押収してある総勘定元帳一綴(同押号の一三)中の交際接待費の項の一一月一二日付分、伝票綴一綴(同押号の二四)中の一一月分伝票綴中のサントリーフーズに関する出金伝票、請求書等と納品書、請求書綴じ一綴(同押号の二六)中の同社の請求書とを対比参照)ヤマキューホテルに対する七五三五円については、前記総勘定元帳一綴中の交際接待費の項の一二月一一日付け、前記伝票綴一綴中の一二月分の山久食堂に対する出金伝票、請求書と押収してある領収書および請求書等一綴(同押号の二八)中のヤマキューホテルの領収証を対比すると、飲食品目が完全に一致し、両者は同一のものと解され結局、公表計上されているものと考えるのが相当である。

奥野一義の検察官に対する昭和五四年八月一一日付、被告人高橋カイの検察官に対する同月一〇日付各供述調書によれば、クラブ、料理屋等での飲食費は、松丸元次郎の個人的経費であって被告会社の経費とは認められないので、山料理店、キャバレーハワイ、てころに関する出費は、いずれも被告会社の簿外交際費とは認定しない。

カフエシヤタンに関する一三〇〇円については、押収してある領収書および請求書一綴(同押号の二八)中の領収証自体、宛先が上様となっており、又公表計上されている交際費中にも見当らない名称であること等に鑑みると、被告会社の交際費として出損したものとは認められない。

株式会社大松に関する五万四二四六円については、被告人高橋カイは当公判廷で入浴客に対する茶菓子代と供述するが、右供述が真実であれば、毎月同社に対する出費が存する筈であるのに、押収され証拠物中には他の月の領収証は一切見当らないこと、又公表計上も一切されていないこと等に照らすと、被告人の右弁解は摘信し難く、他に被告会社の交際費として出損したとの証拠も存しないので、被告会社の簿外交際費としては認定しない。

以上のとおり、弁護人の交際費についての主張は、いずれも採用しない。

四、消耗品費について

弁護人は簿外の消耗品費として、検察官主張額以外に七万九五六〇円あるいは一万四九三〇円を主張するが、そのうちの吉田薬品株式会社に関するる分については、後述の一万一三四五円を除いては、検察官が簿外の消耗品費として主張立証しているものであり、前記森山卓雄の供述記載部分、吉田薬品株式会社代表取締役嶋瀬茂作成の「確認書」と題する書面、押収してある雑書二六綴(同押号の二三、二七)領収証および請求書等一綴(同押号の二八)、収税官吏作成の査察官調査書(前記番号36)によれば、検察官主張のとおり簿外経費として出損したものと認められ、この点に関する弁護人の主張は前提を欠き、採用の限りでない。なお、昭和五一年一一月一三日の同社に対する一万一三四五円の出費については、これを認定するに足りる証拠は何ら存しない。

盛岡結納商店に関しては、押収してある領収書および請求書等一綴(同番号の二八)中の同商店の領収証の体裁にやや不審が存するが、被告人高橋カイの当公判廷における供述も合理性が認められるので、被告会社の簿外消耗品費として認定する。

五、修繕費について

弁護人は、簿外修繕費として検察官主張の額以外に一六一万四一〇〇円を主張するので、以下検討する。

まず、椿本ロックサービスに関しては、押収してある領収証および請求書等一綴(同押号の二八)中の同社の領収書と公表処理をされている昭和五二年四月二〇日付、同年六月二〇日付の同社の領収書(前記伝票綴一綴(同押号の二四)中)とを対比すると、両者は用紙、様式も異なっており、前者は宛先、領収日付も白地で、印紙に割印も押捺されていない等の点からして、同社作成の被告会社宛の領収証とは認められない。

日邦商事、伊藤銀商店に関しては、押収してある領収書および請求書等一綴(同押号の二八)中の日邦商事作成の領収証、納品書、請求書、伊藤銀商店作成の領収証、被告人高橋カイの当公判廷における供述により、被告会社の修繕費と認定する。

大工石原武に関しては、第一五回公判調書中の証人和田勇の供述記載部分に、石原という大工が大閣入口の竹細工等の仕事をしており、昭和五一年末にそのあとを依頼されたとの供述があり、これに前記領収書および請求書等一綴(同押号の二八)中の石原武作成の領収証をあわせ考慮すれば、被告会社の修繕費と認められる。

東西電気産業株式会社に関しては、押収されている雑書一綴(同押号の二三の二〇)中の同社作成の領収証、納品書、被告人高橋カイの当公判廷における供述によれば、被告会社の電球代として出損したものであって、被告会社の修繕費と認められる。

稲垣商店に関しては、前記雑書一綴(同押号の二三の二〇)の中の同商店作成の納品書、請求書、領収証により被告会社のタイムスタンプの調整代として出損したものであって、被告会社の修繕費と認める。

大工和田勇に関しては、押収してあるニュー火星請求書綴り一綴(同押号の三一)、昭和五二年度領収書綴り一綴(同押号の三二)、収税官吏の和田勇に対する質問てん末書謄本、第一五回公判調書中の証人和田勇の供述記載部分、大阪地方裁判所第一二刑事部四係の被告人大阪産業株式会社他一名に対する各法人税法違反被告事件の第一三回公判調書抄本によれば以下の事実が認められる。すなわち、和田勇が昭和五二年三月三日から同年六月一五日までの間、被告人高橋カイの所有する新火星ビルで修繕工事に従事したこと、同年三月分の仕事は、ニュー火星に関するもの、同年四月一日から同年五月二五日までの間は、同ビル屋上の鉄骨作りの倉庫建築に関するもの、同月二六日から同年六月一日まで、同月一一日、同月一二日は、トルコ大閣に関するもの、同月二日から同月四日まで、同月九日、同月一〇日、同月一三日から同月一五日までは、同ビル屋上、地下に関する仕事であること、同ビル屋上(倉庫を含む)、地下に関する支出は、ビル所有権である被告人高橋カイが個人的に負担すべきものと認められる。前掲各証拠によると五月一六日から六月一日までの材料代についてはその明細が不明なので、日数で按分して3万5000×6/16=1万3125 一万三一二五円をトルコ大閣の出損分と認める。従って、大工手間賃合計九万円と材料代一万三一二五円を合計した一〇万三一二五円を被告会社の修繕費として認定する。

結局、修繕費については、弁護人主張額のうち三〇万八一二五円を簿外経費として認める。

六、事務費について

弁護人は、簿外の事務費として二〇二〇円を主張するので検討するに、押収してある領収書等一綴(同押号の二八)、雑書二六綴(同押号の二三、二七)、被告人高橋カイの当公判廷における供述によれば、弁護人主張の事実が認められるので、二〇二〇円の簿外事務費を認定する。

七、広告費について、

弁護人は、株式会社図南に関する九七万五〇〇〇円を簿外の広告費として主張するが、第八回公判調書中の証人太田桂子の供述記載部分によれば、同社作成名義の被告会社宛の請求書、領収証は、偽造されたものであり、弁護人主張のような取引が被告会社と株式会社図南との間にはなされなかったものと認められるので、弁護人の右主張は採用しない。

八、雑費について

弁護人は、総額一万九六四五円の簿外の雑費を主張するが、押収してある雑書一綴(同押号の二七)中のかわさき作成名義の領収書は、押印も存せず、如何なる出費に関するものであるのかについての証拠も何等存せず、到底被告会社の経費に関するものとは認められない。

次にイチヤ商事株式会社に関しては、前記雑書綴一綴(同押号の二七)中の同社作成名義の領収証に年月日の記載のないこと、及び押収してある伝票綴一綴(同押号の二四)中の十月分綴中の同社の領収証と対比すると、被告会社の雑費として出損したものとは認められない。

ナショナル花宛に関しては押収してある領収書および請求書等一綴(同押号の二八)中のナショナル花宛作成名義の領収証は、同綴中の他の領収証等と用紙が同一であること、被告人の弁解が正しければ、これ以外にもナショナル花宛の領収証が存在する筈であるのに、証拠中には見出されないこと等からして、被告会社の経費として出損したものとは認められない。

九、研修費について

弁護人は、同業者の見学費用一四七万六五四〇円、コーチ料として一〇〇万円、合計二四七万六五四〇円を研修費として主張する。しかし乍ら、右主張に沿う被告人高橋カイの当公判廷における供述、収税官吏の被告人高橋カイに対する昭和五三年二月二八日付、同年四月五日付各質問てん末書、奥野一義の同五四年八月九日付、同月一一日付各供述調書等自体によっても出張の目的、時期、人員あるいはコーチ料支払の趣旨、支払金額等が必ずしも合理的とはいえず、又右各供述証拠を裏付ける物証が何等存しないこと、更に高田貞夫の検察官に対する供述調書、収税官吏の高田貞夫に対する同五三年三月三日付質問てん末書には、トルコ大閣開業前に同業者の見学に行ったことはあるが、開業後はそのようなことはない旨の記載が存することに鑑みると、被告人らの右弁解はいずれも措信し難く、被告会社の経費としては認定しない。

(確定裁判)

被告人高橋カイは、昭和五五年一二月一二日、大阪地方裁判所において、売春防止法違反罪により懲役一年六月(執行猶予三年)、罰金三〇万円に処せられ、右裁判は、同月二七日確定したものであって、右事実は、検察事務官作成の同五六年五月一二日付前科調書によりこれを認める。

(法令の適用)

被告人の高橋カイの判示所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中懲役刑を選択し、判示の罪と前記確定裁判のあった罪とは、刑法四五条後段併合罪なので同法五〇条により未だ裁判を経ていない判示の罪につき更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人高橋カイを懲役一年に処し、情状により同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

被告人高橋カイの判示所為は、被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示の罪につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用した金額の範囲内で被告会社を罰金一七〇〇万円に処する。

訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により、被告会社及び被告人高橋カイの連帯負担とする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金山薫)

別紙 入浴客数、タオル使用総数一覧表

<省略>

修正損益計算書

自 昭和51年7月1日

至 昭和52年6月30日

<省略>

別紙 税額計算書

(株)徳島商事

自昭和51年7月1日

至昭和52年6月30日

<省略>

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