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大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)3434号 判決 1983年3月30日

原告

株式会社タイトー

右訴訟代理人

浅野承治

柳井義郎

破産者株式会社フジコロム

破産管財人 被告

山元眞士

被告

株式会社ワールドベンディング

右訴訟代理人

米田宏己

岩崎昭徳

浅野省三

主文

一  大阪地方裁判所昭和五七年(フ)第七五号破産事件において、原告の破産者株式会社フジコロムに対する破産債権が金五二七万五〇〇〇円及びこれに対する昭和五四年六月一日から昭和五七年三月二四日まで年五分の割合による金員であることを確定する。

二  被告株式会社ワールドベンディングは原告に対し、金五二七万五〇〇〇円及びこれに対する昭和五四年六月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを三分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

五  この判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判<省略>

第二  請求の原因

一1  原告は、昭和二八年八月二四日設立された各種娯楽機械の輸出入・製造・販売・賃貸等を目的とする会社で、昭和五三年四月一日現在、払込資本金四五〇〇万円、従業員約一〇〇〇名、日本国内における営業所及び出張所合計七〇か所、昭和五二年における年商約一二八億円、昭和五三年における年商約二九三億円の規模を有して営業を行つている。

そして、娯楽機械であるゲームマシンの開発・企画・設計・施工及びその製造は、原告及び原告会社の代表者個人がその資本の全額を出資した訴外パシフィック工業株式会社(以下「訴外パシフィック工業」という)において行われ、訴外パシフィック工業の開発製造した製品は、すべて原告の商品として「タイトー」の名を冠して日本国内、国外へ販売されている。

2  原告は、昭和五三年七月以降、別紙第一、第二目録記載のテレビ型ゲームマシン(商品名スペース・インベーダー、以下「原告商品」という)を、国内七〇か所に所在する営業所及び出張所並びにオペレーター(卸売業者)を介して、ゲーム場・喫茶店その他の需要者に販売又は賃貸し、あるいは、国内各所に所在する原告の直営するゲーム場において一般の入場者の使用のために展示している。

二1  破産者フジコロムは昭和四七年一〇月一六日に、被告ワールドベンディングは昭和五三年七月四日にそれぞれ設立され、ともに各種娯楽機械の製造・販売・貸付等を目的とする会社である。

2  被告ワールドベンディング及び破産者フジコロムは、昭和五三年一一月上旬頃から商品名を「ワールド・インベーダー」とする別紙第五目録記載のテレビ型ゲームマシン(以下「被告商品」という)を共同して製造し、それぞれ一般市場に販売又は賃貸している。

三  不正競争防止法関係

1  原告商品の構成

(一) 原告商品は、マイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体として、遊戯者が一定の操作をすることによつて遊戯するテレビ型と称せられるゲームマシンの一種で、このようなテレビ型ゲームマシンは昭和四八年七月頃から我が国において製造発売され、現在ゲームマシンの主流となつているが、その受像機に映し出される影像、その変化の態様及び遊戯方法は、商品の生命ともいうべき重要性を有し、その構成要素として特徴づけられるもので、右構成要素によつてこれら機械の個別性が識別される。

(二) 近時宇宙に対する人類の関心は、単なる学問的分野にとどまらず、文学・映画あるいは雑誌・テレビ等において顕著に認められるところである。原告商品は、この社会的関心を基礎として、人類の生活圏たる地球を含む宇宙空間へ侵入する空想上の生物をインベーダー(侵入者)として表現した別紙第四目録(一)ないし(三)の各(イ)、(ロ)記載の原画(以下「原告商品の原画」という)に基づく別紙第三目録(一)及び(二)記載の影像(以下「原告商品の影像」という)を主体とし、これを受像機面上に五段一一列に配置し、ジグザグコースをたどりながら進攻してくるインベーダーの発射するミサイルを避けつつ、その前面のビーム砲基地としての四基のバリヤの後方に位置するビーム砲によつて、遊戯者がインベーダー及びその後方に時々出現し受像機面上を横断通過するUFOを爆破・消滅させることによつて得点を競うゲームマシンで、その詳細は別冊(一)説明書上段に記載のとおりである。右のような遊戯方法及び受像機に映し出される影像・その変化の態様は、従前のテレビ型ゲームマシンに皆無の特殊性と新規性を備えており、不正競争防止法一条一項一号における出所表示の機能を有する。

2  原告商品の周知性

(一) 原告商品は、訴外パシフィック工業が昭和五二年一一月その開発に着手し、昭和五三年六月一三日に完成され、同月一六日に原告肩書本店所在地タイトービル一階ショールームにおいて、同月二三日に大阪市中之島所在国際貿易センターにおいて、それぞれ開催された原告の新製品発表会に出展され、その後同年七月以降、全国に所在するゲーム場施設、喫茶店その他に設置され、あるいは原告の直営ゲーム場において使用されてきた。

(二) 原告商品は、右新製品発表会に参会した東京における約五五〇名の、大阪における約四〇〇名のオペレーター及びゲーム場・喫茶店等の経営者、その他ゲームマシンの需要者を主とする業界関係者の絶賛を浴び、その特殊性・新規性は業界の話題となり、その後昭和五三年中に国内全域に頒布されている業界誌等において原告の新製品として紹介されるとともに、これに呼応して原告においても右業界誌等へ広告を掲載し、更に同年七月から同年末までの間、原告商品のパンフレット合計約四万枚を原告営業所、オペレーターを介して全国のゲーム場・喫茶店その他ゲームマシンの需要者に配布した。

(三) 昭和五三年一〇月二二日(日曜日)午後四時から放映された東京12チャンネルの「ビジネス・ナウ」と題する三〇分のテレビ番組において、ゲームマシンの設置されている喫茶店マネージャーが「現在人気のあるマシンはインベーダーである」旨発言しているが、右は、テレビ型ゲームマシンの需要者の間での原告商品の好評さを端的に物語つている。

(四) 右(一)ないし(三)記載の新製品発表会、業界誌等による紹介及び宣伝行為並びに前記のような特殊性・新規性により、昭和五三年一〇月中には、インベーダーの影像を主体とする影像及びその変化並びに遊戯方法は、原告の商品であることを示す表示として、ゲーム場・喫茶店等の経営者を含むゲームマシン関係業者・一般需要者に広く認識されるに至つた。

3  被告商品の構成

被告商品の外形的形態は、別紙第五目録記載のとおりであつて、上面に長方形の厚板ガラスが張られ、二本の脚柱によつて支えられているから、喫茶店等で顧客に飲食物を供するために使用されるテーブルと同様の機能を有するとともに、その厚板ガラス面の下部は、マイクロ・コンピューター・システムの機器及び受像機を収納するためのボックスとなつていて、同ボックスの両側面の左側にコイン投入孔、中央部に遊戯のための操作装置がそれぞれ設けられ、同ボックスの上部は、前記厚板ガラスに接し、厚板ガラスの中央部において受像機の受像面が上方に向け設置され、またその受像面の両側に遊び方の説明書が置かれている。

被告商品の構成は、その受像機に映し出される別紙第六目録(一)及び(二)記載の影像(以下「被告商品の影像」という)を主体とし、その詳細は別冊(一)説明書下段に記載のとおりである。

4  原告商品と被告商品との混同

被告商品の前記構成を原告商品のそれと対比すると、外形的形態が類似している上に、受像機に映し出される「被告商品の影像」が「原告商品の影像」と、個々の形態・配列・変化の態様において同一あるいは極めて類似しているのみならず、その遊戯方法が原告商品のそれと基本的に同一である。

そのために、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムの被告商品の製造・販売・賃貸行為によつて、被告商品が原告商品であるかのような誤認混同を需要者及び遊戯者に生じさせている。

5  被告ワールドベンディング、破産者フジコロムの責任

被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、被告商品の製造・販売・賃貸行為によつて、需要者及び遊戯者をして被告商品が原告商品であるかのような混同を生ぜしめることを知りながら又は過失により知らないで、右行為をして原告の営業上の利益を害したものであるから、不正競争防止法一条の二、一条一項一号に基づき、連帯して原告に対し、右行為により原告が蒙つた後記損害を賠償すべき義務がある。

四  著作権法関係

1  インベーダーの著作物性

(一) 原告商品の受像機に映し出される影像は、別紙第三目録(一)・(二)記載の「原告商品の影像」のとおりであるが、これらの影像は、別紙第四目録(一)ないし(三)の各(イ)・(ロ)記載の「原告商品の原画」を原告商品のコンピューター・システムの記憶装置に情報として記憶させ、これをアウトプットすることによつて映し出されるもので、その詳細は次のとおりである。

すなわち、原告商品は、マイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつてその影像機に映し出される影像を主体とし、遊戯者の操作によつて遊戯するゲームマシンであるが、このコンピューター・システムは、LSI素子で構成されるCPU(中央演算装置)を中心とし、数個のLSI素子による記憶装置その他により構成されている。その受像機の影像及びその変化の形態は、すべてソフトウェア・プログラムに従つてコンピューター・システムの記憶装置たる六個のROM(リード・オンリー・メモリー)に電子的に格納され、電源スイッチを入れることにより、CPUがROMに格納された情報を読み順次命令を実行するよう設計されている。ROMから読み出された命令及び情報はデータ・バスを経由してCPU内のレジスタへ入り、そこで命令に従つた処理がなされた後、一時的記憶装置たるRAM(ランダム・アクセス・メモリー)に格納され、このRAMに格納された情報がデータ並直列変換器を経由して、受像機のスクリーン面上において影像として構成される。

(二) 「原告商品の原画」のインベーダーは、前記のとおり宇宙に対する社会的関心を基礎として、人類の生活圏たる地球を含む宇宙空間へ侵入する空想上の生物インベーダー(侵入者)として創作し、絵画化したもので、著作者の思想感情を表現した著作権法上の絵画たる著作物に当たる。

しかも、原告商品の受像機に映し出される「インベーダー」、ビーム砲、ビーム砲基地、U・F・O等の影像の連続変化の状況は別冊(一)説明書上段に記載のとおりであり、それらは、著作権法二条三項に規定する映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法による表現に該当し、かつプログラムとしてROMへの収録によりこれが固定されていることからして、映画の著作物であることが明らかである。

(三) 右の著作物としての絵画あるいは映画としてのインベーダーは、昭和五三年六月一六日、原告の本店所在地たるタイトービル一階ショールームで行われた新製品発表会において、原告商品を出展し、その受像機に映し出されるインベーダーの影像を参会者に提示したことによつて公表された。

2  著作権の帰属

インベーダーの絵画及びこれに基づくソフトウェア・プログラムの著作権は、訴外パシフィック工業が有していたところ、原告は、昭和五三年七月三一日訴外パシフィック工業から右著作権の譲渡を受けた。

3  被告ワールドベンディング、破産者フジコロムの著作権侵害行為

(一) 被告商品は、原告商品と同様マイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体とし、遊戯者の操作によつて遊戯するゲームマシンであり、両商品の記憶装置たるROMに格納される情報は、命令に関する情報及び影像に関する情報を含み、いずれの情報もコンピューターに理解しうる一六進数の機械語によつて格納されている。

(二) 原告商品の影像に関する情報の一部をそのソフトウェア・プログラムに従つて可視的に表現すると別紙第七目録(一)記載のとおりで、被告商品のそれは同目録(二)記載のとおりであるが、被告商品の影像はこれを合成することによつてその受像機に映し出されるので、映像化される際の形態は同目録(三)記載のものとなる。

(三) 右のように原画をコンピューター・システムに対する情報としてプログラム化し、これをその記憶装置に格納する行為は、音楽著作物をレコード又は磁気テープへ録音する行為と法的評価において同等であつて、複製について定義する著作権法二条一項一五号の「その他の方法により有形的に再製する」ことに該当する著作物の複製行為である。そして、「原告商品の原画」を変形して別紙第七目録(一)記載のとおり可視的に表現されている「原告商品の影像」に関するソフトウェア・プログラムの一部は、著作権法二条一項一一号の二次的著作物に該当し、これによつて再製される原告商品の影像は複製された著作物というべきである。

(四) 「被告商品の影像」が「原告商品の影像」を模倣したものであることは影像自体から明らかであるのみならず、前記のとおり原告商品のROMに格納されている影像に関する情報の一部である別紙第七目録(一)記載のものと被告商品の同様の情報の一部である同目録(三)記載のものを比較対照することにより一層明らかである。

更に、被告商品の受像機面上における「インベーダー」その他の影像の連続変化の状況は、別冊(一)説明書下段に記載のとおりであるが、これは、同説明書上段に記載の原告商品のそれに酷似している。

したがつて、被告商品の製造に際し、同説明書下段の影像を映し出すためのプログラムを被告商品のコンピューター・システムのROMに収録した被告ワールドベンディング及び破産者フジコロムの行為は、原告が著作権を有する絵画としての「インベーダー」すなわち「原告商品の原画」及び第二次的著作物たる別紙第七目録(一)記載の「インベーダー」並びに映画の複製行為に当たるから、著作権法二一条に基づき原告が専有する著作物複製権の侵害行為であり、更に、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムによる被告商品の販売又は賃貸行為は著作権を侵害する行為によつて作成された物を情を知つて頒布する行為として、同法一一三条一項二号に該当する違法な行為である。

4  右のとおり、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、共同して故意又は過失により原告の有する「インベーダー」の絵画及び映画の著作権を侵害したものであるから、連帯して原告に対し、右不法行為によつて原告が蒙つた後記損害を賠償する義務がある。

五  損害

被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、共同して昭和五三年一一月上旬から昭和五四年五月末までの間に被告商品を六〇〇〇台製造し、これを販売又は賃貸することによつて一台当たり二万五〇〇〇円の利益を得た。

ところで、著作権法一一四条一項の損害の推定に関する規定は、不正競争防止法違反行為による損害についても適用されるべきであるから、前記期間内における被告ワールドベンディング、破産者フジコロムの不正競争防止法及び著作権法違反行為による原告の損害の額は、合計一億五〇〇〇万円と推定される。

六  そうすると、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、不正競争防止法違反又は著作権法違反の不法行為に基づき、原告に対し、各自、損害賠償金一億五〇〇〇万円及びこれに対する不法行為日の後である昭和五四年六月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

しかして、破産者フジコロムは、大阪地方裁判所昭和五七年(フ)第七五号破産事件について、同裁判所において同年三月二五日午後一時破産宣告を受け、被告山元眞士がその破産管財人に選任された。そこで、原告は、同破産事件において右損害賠償金、遅延損害金を破産債権として届出たところ、同年五月三一日の債権調査期日において、被告山元眞士は原告の右届出の破産債権全額につき異論を述べた。

七  よつて、原告は、被告山元眞士との関係において、前記破産事件において、破産者フジコロムに対する原告の破産債権が一億五〇〇〇万円及びこれに対する昭和五四年六月一日から破産者フジコロムが破産宣告を受けた日の前日である昭和五七年三月二四日まで年五分の割合による金員であることの確定を求め、被告ワールドベンディングに対して、一億五〇〇〇万円及びこれに対する前同昭和五四年六月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める。

第三  請求原因に対する認否

一  被告ワールドベンディング

1  請求原因一の事実は不知。

2  同二1のうち被告ワールドベンディングが昭和五三年七月四日に設立され、各種娯楽機械の製造・販売等を目的とする会社であることは認め、その余の事実は不知。

同2のうち被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが昭和五三年一一月上旬頃から被告商品を共同して製造したことは否認し、被告ワールドベンディングがその頃から被告商品を一般市場に販売・賃貸していることは認める。被告商品は被告ワールドベンディングが製造したものである。

3  同三1(一)は争う、同(二)のうち「原告商品の原画」がインベーダーとして表現されていることは不知、その余は争う。原告商品のゲームマシンとしての詳細は別冊(二)説明書上段記載のとおりである。

同三2(一)ないし(三)の事実は不知、同(四)のうち昭和五三年一〇月中に、インベーダーの影像を主体とする影像及びその変化並びに遊戯方法が原告の商品であることを示す表示として、ゲーム場・喫茶店等の経営者を含むゲームマシン関係業者、一般需要者に広く認識されるに至つたことは否認し、その余の事実は不知。

同三3のうち被告商品の外形的形態が原告主張のとおりであること、被告商品の構成がその受像機に映し出される「被告商品の影像」を主体としていることは認め、その余の事実は否認する。被告商品の構成の詳細は別冊(二)説明書下段記載のとおりである。

同三4の事実は否認する。

同三5は争う。

4  同四1(一)のうち原告商品の受像機に映し出される影像が「原告商品の影像」のとおりであり、原告商品がマイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつてその受像機に映し出される影像を主体とし、遊戯者の操作によつて遊戯するゲームマシンであり、このコンピューター・システムがLSI素子で構成されるCPU(中央演算装置)を中心とし、数個のLSI素子による記憶装置その他により構成されていることは認め、「原告商品の影像」が「原告商品の原画」を原告商品のコンピューター・システムの記憶装置に情報として記憶させ、これをアウトプットすることによつて映し出されることは不知、その余の事実は否認する。同(二)は争う。同(三)の事実は不知。

同四2の事実は不知。

同四3(一)のうち被告商品が原告商品と同様マイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体とし、遊戯者の操作によつて遊戯するゲームマシンであることは認め、その余の事実は否認する。同(二)(三)(四)は争う。

同四4は争う。

5  同五のうち被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが共同して製造したとの点、製造・販売・賃貸数量が六〇〇〇台であるとの点は否認し、一台当たり二万五〇〇〇円の利益を得たとの点は認め、その余は争う。

6  同六は争う。

7  同七は争う。

二  被告山元眞士

1  請求原因一の事実は不知。

2  同二1のうち破産者フジコロムが昭和四七年一〇月一六日設立されたことは否認し、破産者フジコロムが各種娯楽機械の製造・販売等を目的とする会社であることは認め、その余の事実は不知。

同二2のうち被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが昭和五三年一一月上旬頃から被告商品を共同して製造し、それぞれ一般市場に賃貸していることは否認し、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムがその頃からそれぞれ被告商品を一般市場に販売していたことは認める。但し、破産者フジコロムは、現在は販売していない。

3  同三1(一)のうち原告商品がマイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体として、遊戯者が一定の操作をすることによつて遊戯するテレビ型と称せられるゲームマシンの一種であることは不知、その余は争う。同(二)のうち原告主張の遊戯方法及び受像機に映し出される影像、その変化の態様が、従前のテレビ型ゲームマシンに皆無の特殊性と新規性を備えているとの点、不正競争防止法一条一項一号における出所表示の機能を有するとの点は争い、その余の事実は不知。原告商品のゲームマシンとしての詳細は、別冊(二)説明書上段記載のとおりである。

同三2(一)ないし(三)の事実は不知、同(四)の事実は否認する。

同三3のうち被告商品の外形的形態が原告主張のとおりのものであることは認め、その余の事実は否認する。被告商品の構成の詳細は別冊(二)説明書下段記載のとおりである。

同三4の事実は否認する。

同三5は争う。

4  同四1(一)の事実は不知、同(二)は争う、同(三)の事実は否認する。

同四2の事実は不知。

同四3(一)、(二)の事実は不知、同(三)、(四)は争う。

同四4は争う。

5  同五のうち被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが共同して製造したこと、製造・販売・賃貸数量が六〇〇〇台であることは否認し、一台当たり二万五〇〇〇円の利益を得たことは認め、その余は争う。破産者フジコロムが被告ワールドベンディングから仕入れ販売した被告商品は、昭和五三年一一月六日から同月一四日までの間に合計二一一台のみである。

6  同六のうち、その主張のとおり、破産者フジコロムが破産宣告を受け、被告山元眞士が破産管財人に選任されたこと、原告が破産債権の届出をし、同被告が異議を述べたことは認め、その余は争う。

7  同七は争う。

第四  被告らの主張

一  不正競争防止法関係

1  原告商品の出所表示機能の不存在

(一) 原告が原告商品につき出所表示機能を有すると主張するもののうち、形態の変化は単にゲームマシンの遊びに必要な影像の変化であり、遊戯の方法も各種マイコン・ゲーム機の一部を変化させたにすぎないから、商品の出所表示となりうるほどの特殊性を有しない。

(二) 被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、原告が原告商品を発表したと主張する昭和五三年六月、販売したと主張する同年七月の三、四か月後の同年一〇月一八日に被告商品を発表し、同年一一月にその販売を開始しており、両者の販売開始時期に大差がないから、原告主張の頃、原告商品を利用する需要者・取引業者において商品出所が問題になるほど長期間「原告商品の影像」などが継続して排他的に使用されたことはないから、「原告商品の影像」などが商品出所表示の機能を有するまでには至つていなかつた。

(三) 原告商品の名称「インベーダーゲーム」中の「インベーダー」の文言は、昭和五三年一〇月の時点で、後記のとおり、一般に「宇宙ないし地球外世界からの侵略者」を意味すると解されていたから、ゲームの種類を示す程度の意味しかなく、右文言自体出所表示の機能を有するものではない。

2  原告商品の周知性の不存在

前記1(二)の事実及び左記各事実をあわせ考慮すると、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが被告商品を展示発表した昭和五三年一〇月までに、原告主張の影像、その変化、遊戯方法が原告の商品たることを示すべき表示として、周知となつていたとはいえない。

(一) 昭和五三年一〇月の時点では、原告商品に関する紹介記事・宣伝広告等の殆んどがゲーム機の販売賃貸業者を対象とする業界誌(紙)に掲載されたにすぎないから、後日インベーダーゲーム機の設置された多数の喫茶店・軽飲食店の経営者及び遊戯者らには原告商品の存在すら知られていなかつた。

(二) 業界誌(紙)の原告商品の紹介記事・宣伝広告においても、その遊戯方法の記載があるものは、コインジャーナル昭和五三年八月号、ゲームマシン昭和五三年八月一五日号より後に発売されたものであり、また、その記事・広告中の遊戯方法の記載は簡単であつて、受像機の映像、その変化の態様及び具体的な遊戯方法については記載されていない。ましてや、一般遊戯者にとつては、ゲームマシンで遊戯して初めてゲームマシンの受像機の映像、その変化の態様及び遊戯方法を知ることができるにすぎない。

(三) 被告ワールドベンディング、破産者フジコロムは、昭和五三年一〇月一八・一九の両日、ホテル「デン晴海」においてレセプションを行い、被告商品を公表・展示し、その後も種々の手段を用いて宣伝活動を行つてきたもので、現在においては、インベーダーゲームが人気を博しているが、それは、原告のみならず被告ワールドベンディング、破産者フジコロム及び多数の業者らの宣伝・販売活動により、もたらされたものである。

3  原告商品と被告商品の混同のおそれの不存在

原告商品と被告商品とは、その名称がそれぞれ「インベーダー」の上に「スペース」と「ワールド」の言葉を冠していることによつて明確に識別されること、外形上の差異があること、被告商品の遊戯方法及び影像の変化と原告商品のそれらとが、別冊(二)説明書上段に記載された原告商品の説明と同説明書下段に記載された被告商品の説明との対比によつて明らかなように全く異なつていること、原告商品・被告商品の直接の需要者が専門的知識を有するゲーム場経営者等であることからすると、両商品を混同するおそれは全くない。

二  著作権法関係

1  インベーダーは原告の創作にかかるものではない。

すなわち、SF小説の古典であるH・Gウェルズ著「宇宙戦争」を始め、最近ではアメリカテレビ映画「宇宙大作戦」(我が国での放映開始は昭和五〇年頃)など、SF小説・映画・漫画等において、種々の「インベーダー」と称する生物が考案されている上に、右生物の形態をとつてみても、ウェルズがその作中のインベーダーを海中の生物である蛸様のものと表現して以来、「原告商品の原画」同様の生物類似のものは、原告商品の発表以前から無数に存在していた。

2  原告は「原告商品の原画」をもつて絵画としての著作物に当たると主張するけれども、著作物たる絵画は鑑賞の対象たりうるほどの内容を有するものでなければならず、「インベーダー」である「原告商品の原画」に鑑賞の対象たりうるほどの美術性があるとはいえない。

3  したがつて、「原告商品の原画」をもとに、コンピューターに記憶せしめられた情報であるソフトウェア・プログラム(別紙第七目録(一)はこれを可視的に表現したもの)、及びそれを映像化した「原告商品の影像」は先人の模倣であり、かつ単なる模様・図案とみるべきであるから、著作権法上の著作物たり得ない。

4  原告が著作物と主張する「原告商品の原画」は、「原告商品の影像」として受像機上に映し出される。そして、第三者に公表されている「インベーダー」は、受像機に映し出されている「原告商品の影像」である。ところが第三者が「原告商品の影像」から「原告商品の原画」を想像することは、両者の相違が大きいために不可能である。それゆえ「原告商品の影像」が「原告商品の原画」の複製物とはいえないし、「原告商品の原画」をもつて著作権法上保護される著作物に当たるとすることはできない。

第五  原告の反論

一  被告らの主張二1について

原告は、「インベーダー」を空想上の生物であるから創作的であると主張しているわけではなく、宇宙空間へ侵入する空想上の生物を「原告商品の原画」の各「インベーダー」として絵画化して創作的に表現したものであるから、右「インベーダー」は著作権法上の著作物であると主張しているのである。

被告ら主張のように過去に蛸様のものとして表現された漫画等が存在していたとしても、著作物の同一性の有無は、抽象的な概念又はアイデアの同一あるいは類似性によつてではなく、この抽象的概念等が具体的に表現されたものについて判断決定がなされるべきであるから、「原告商品の原画」が創作的であることに変わりはない。

二  同二2について

著作物の定義に関する著作権法二条一項一号の「文芸・学術・美術又は音楽の範囲に属するもの」とは、文芸・学術・美術・音楽という知的文化的包括概念に属するものであることを意味し、人間社会の価値に関する精神活動たる思想又は感情を創作的に表現するものである限り、文芸・学術・美術又は音楽のいずれかの範囲に属する著作物と解すべきであつて、これに該当する以上、当該著作物が評価の対象、あるいは鑑賞の対象となりうるか否かは著作物性の有無を決定する要件となるものではない。

第六  証拠<省略>

理由

一<証拠>によれば、原告の目的、営業内容、原告商品(商品名スペース・インベーダー)に関する請求原因一の事実を認めることができる。

二請求原因二1のうち、被告ワールドベンディングが昭和五三年七月四日に設立され、各種娯楽機械の製造・販売・貸付等を目的とする会社であること、同被告が昭和五三年一一月上旬頃から被告商品を一般市場に販売・賃貸し、破産者フジコロムとの共同であるかどうかしばらくおき、被告商品を製造してきたことは、原告と同被告との間に争いがなく、破産者フジコロムが各種娯楽機械の製造・販売・貸付等を目的とする会社であり、昭和五三年一一月上旬頃から被告商品を一般市場に販売していたことは原告と破産者フジコロムとの間に争いがない。

そして、<証拠>によると、被告ワールドベンディングの目的、被告商品の製造についての前記事実は被告山元眞士との関係においても、破産者フジコロムの目的、被告商品の販売についての前記事実は被告ワールドベンディングとの関係においても認められ、また、被告ワールドベンディングと破産者フジコロム(昭和四七年一〇月一六日設立)とは、昭和五三年九月頃同被告が被告商品を製造してフジコロムがこれを販売する旨の合意をし、同年一〇月一八、一九の両日東京晴海において、右両者が共同で開催した破産者フジコロムの顧客対象の謝恩レセプションの席上で被告商品を発表し、同年一一月から、同被告が被告商品を製造して破産者フジコロムに売渡し、破産者フジコロムがこれを全国各地の業者に販売又は賃貸したことが認められる。右認定を左右するに足りる証拠はない。

三まず、原告商品の構成とその周知性の有無について検討する。

前記一で認定の事実に、<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  訴外パシフィック工業は、原告及びその代表取締役の全額出資にかかるゲームマシンの製造等を目的とする会社であるが、同社で製造されたものは、すべて原告を通じて原告の製品として販売されている。原告商品は、訴外パシフィック工業において昭和五二年一一月頃その開発に着手して昭和五三年六月一三日に完成され、同年六月一六日に東京の原告本社ビル(原告の肩書本店所在地)、次いで同月二三日大阪市中之島の国際貿易センターで行われた原告の新製品発表会に出展され、その後同年七月以降、全国に所在するゲーム場施設、喫茶店その他に設置され、あるいは原告の直営ゲーム場において使用されてきた。

原告は、昭和五三年七月三一日訴外パシフィック工業との間で、原告商品の製造に関して訴外パシフィック工業の有するすべてのノウハウ(インベーダーの絵画としての著作権を含む)を譲り受け、原告商品の販売権を原告が専有し、これを原告の商品として販売する旨の契約をした。

2  原告商品は、マイクロ・コンピューター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される「原告商品の影像」を主体として遊戯者が一定の操作をすることによつて遊戯するテレビ型と称せられるゲームマシンの一種で、別紙第一目録記載のテーブル型のものと、別紙第二目録記載のアップライト型のものとの二種類がある。

原告商品受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれらの影像の変化の態様は、別冊(三)説明書上段記載のとおりであつて、従来のテレビ型ゲーム機にはみられない特殊性と新規性を有するものであつた。特に、従来のゲーム機が遊戯者からの一方的攻撃により得点を競つていたのに対し、原告商品においては、「原告商品の影像」を主体とするインベーダー群を、遊戯者がバリヤ後方に位置するビーム砲により射撃・消滅させるのみならず、左右に移動するインベーダー群からも遊戯者のビーム砲・バリヤに対するミサイル攻撃を仕掛けてくるので、遊戯者には回避操作が要求される、という対戦形式が採られていること、得点が増すにつれてインベーダーの左右への移動速度、インベーダーからのミサイルの発射頻度も増してくることなどの点に新規性と特殊性がみられた。

3  前記原告の新製品発表会の際、東京会場には五〇〇名位の、大阪会場には四〇〇名位の同業者卸売業者遊戯場経営者等の来場者があり、原告商品が会場で直ちにかなりの注文を受けるほどの注目を浴びた。原告は、訴外パシフィック工業の製造する原告商品を、全国約七〇箇所ある原告営業所・出張所を通じて、昭和五三年七月から販売・賃貸を開始したが、その数量は同年九月末日までに合計約三〇〇〇台、同年一〇月末日までに合計約七〇〇〇台(テーブル型とアップライト型の比率はおおよそ二対一)、同年一二月末日までに合計二万三〇〇〇台(テーブル型とアップライト型の比率はおおよそ三対一)に達し、その後昭和五四年七月までに逐次増加し、ほかに、原告は、昭和五三年一二月頃から昭和五四年八月頃まで、対価を得て他社に対して原告商品と同一のインベーダーゲーム機の製造許諾をしたが、その数は約一〇万台に達した。

原告は、右販売・賃貸開始以後昭和五三年一〇月末日までの間に、原告商品の外形的特徴、インベーダーの影像(「原告商品の影像」)、影像の変化の態様、遊戯方法の概略に関し、パンフレットを全国の遊戯機需要者等に配布し、別紙宣伝雑誌等一覧表記載のとおり雑誌等に宣伝広告を掲載して宣伝に努めたが、業界誌等でもこれらの紹介記事が掲載され、テレビ番組でも原告商品の人気の様子が紹介された。

4  原告商品は、ゲーム場に備えつけられるや前記の特殊性及び新規性から、東京・大阪等の大都市を中心に遊戯者の人気を集め、昭和五三年一〇月頃からは大流行となつたこと、これに前記3のとおりの昭和五三年一〇月末までの販売・賃貸等の態様及び数量、業界誌等による紹介、原告による宣伝活動等も加わつて、遅くとも昭和五三年一〇月末日には、日本全国にわたつてゲーム場・喫茶店の経営者・遊戯者等の需要者に、原告商品の受像機に映し出される別紙第三目録(一)・(二)及び別冊(三)説明書上段記載のインベーダーを主体とする各種影像と、ゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は、原告の商品であることを示すものとして、広く知られるようになつた。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によると、原告商品の受像機に映し出される前記インベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は、それ自体商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、遅くとも昭和五三年一〇月末日には、取引上二次的に原告商品の出所表示の機能を備えるに至つたことが認められるのであつて、不正競争防止法一条一項一号の規定にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」として、その頃我が国において周知になつたものということができる。

四次に、被告商品の構成及び原告商品との混同のおそれの有無について判断する。

被告商品の外形的形態が原告主張のとおり(請求原因三3)であることは当事者間に争いがなく、被告商品の構成がその受像機に映し出される「被告商品の影像」を主体としていることは原告と被告ワールドベンディングとの間で争いがなく、原告と被告山元眞士との間では弁論の全趣旨によりこれを認めることができるところ、右事実に<証拠>によると、被告商品の受像機に映し出される各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は、別冊(三)説明書下段記載のとおりであることが認められる。

右の各種影像と影像の変化の態様を前記三で認定の原告商品のそれと対比すると、プレイオフ時において、原告商品は、「TAITO CORPORATION」「SPACE INVADERS」と表示されるのに対し、被告商品は、「WORLD VENDINGCORP」「WORLD INVADER」と表示される点が相違するほか、デモンストレーションの内容、点数表示等に多少の相違がみられる。

更に、プレイ時において、被告商品では高得点となるに従つてミサイルの速度が増すように設定されているのに対し、原告商品のミサイルにはこのような設定がされていないこと、原告商品では、全部のインベーダーが消滅すると新たに前と同形・同数の一隊が前より一段基地寄りの位置に出現して戦闘が続行され、そのためインベーダーの隊列が再出現する度にビーム砲基地との間隔が狭まり、ゲームの進行に伴い次第に高度の技量が要求される設定となつているのに対し、被告商品では、全部のインベーダーが消滅すると、一段基地寄りの位置にインベーダー群が出現し(再プレイ)ゲームが続行されることは原告商品と同じであるが、それを消滅させても原告商品のように更に一段基地寄りの位置にインベーダー群が出現するのではなく、再プレイ時と同位置に出現するよう設定されていること、被告商品の方がミサイルの発射速度のばらつきが目立つこと、その他両商品には、UFOの出現方向、その撃墜時の点数、ビーム砲追加のための得点、ビーム砲の移動範囲等について若干の相違が認められる。

しかしながら、被告商品の受像機に映し出される影像は、その主体をなす三種のインベーダーをはじて、UFO・三種のミサイル・ビーム砲・バリヤ等の各種影像がすべて原告商品のそれと同一であるか、又は酷似しているものである。のみならず、被告商品におけるこれらインベーダーが、一列一一個の五列横隊で左右に移動しつつビーム砲等に対してミサイル攻撃を仕掛けてくるのを、遊戯者が回避しつつビーム砲でインベーダー群及びインベーダーの後方に時折出現するUFOを撃破するという対戦形式も含めて、ゲームの進行に応じて現われる各種影像の変化の態様は、原告商品におけるそれと基本的に同一である、と認められる。

右事実によれば、被告商品は、前記原告商品であることを示す表示としての、その受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様と同一又は酷似の各種影像と影像の変化の態様をその受像機に映し出すものであつて、被告ワールドベンディングが被告商品を製造・販売し、破産者フジコロムが被告ワールドベンディングからこれを買入れ販売・賃貸した行為は、被告商品を原告商品と混同させるものというべきである。

五進んで、被告ワールドベンディング及び破産者フジコロムに不正競争防止法に基づく損害賠償義務が認められるかについてみる。

<証拠>によると、原告は、昭和五三年一〇月一六日到達の内容証明郵便による書面で破産者フジコロムに対して、原告商品が原告の考案したものであることはアミューズメント(娯楽)業界等に周知であること、破産者フジコロムを製造発売元と印刷してある「フジ・スター・インベーダー」の商品名の記載されたパンフレットを入手したが、右パンフレットから窺われる商品は原告商品と極めて類似していること、原告商品のインベーダーの映像及び原告商品の機械的動作が原告商品の特徴を示しており、右映像の形態自体が原告商品の出所表示の機能を営んでいること、したがつて、原告商品に類似する右映像を主体とする商品の製造販売行為は不正競争防止法一条一項一号に当たるので、右パンフレットに記載された商品の製造・販売をしないようにとの警告を発していること、原告は、同じく前同日到達の内容証明郵便による書面で被告ワールドベンディングに対して、破産者フジコロムに対してなしたのと同一内容のものに加えて、同被告が「ワールドインベーダー」の名称で「フジ・スター・インベーダー」と同一の商品を発表しようとしている情報を得ているが、同被告が右商品の製造・販売に関与すると不正競争防止法違反となる旨の警告を発していることが認められる。

右で認定のとおり、被告ワールドベンディング及び破産者フジコロムは、原告から警告書の送付を受けながら、昭和五三年一一月以降被告ワールドベンディングが被告商品を製造し、破産者フジコロムがこれを買受けた上全国にわたつて販売・賃貸したのであるから、少なくとも過失により、前記のとおり原告商品との混同を生ぜしめる行為をしたものと認められる。

したがつて被告ワールドベンディング及び破産者フジコロムは原告に対し、連帯して、原告の蒙つた後記損害を賠償すべき義務がある。

原告は、前記のとおり、第三者に対し対価を得て原告商品の製造を許諾しており、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムの右行為により右許諾料相当額の利益を喪失したものということができる。そして、いずれも<証拠>を総合すると、被告ワールドベンディングは、昭和五三年一一月六日から同月一四日まで九回にわたり、その製造にかかる合計二一一台の被告商品を破産者フジコロムに売渡し、破産者フジコロムは、これらを、大部分は全国の遊戯機需要者に販売し、一部はゲーム機からあがる収入を設置場所の提供者と折半する約定で遊戯場等に設置したこと、原告が第三者に対して原告商品の製造を許諾する際の通常の許諾料は二万五〇〇〇円であつたことが認められる。

<反証判断略>

そうだとすると、原告が喪失した得べかりし利益は、許諾料相当の二万五〇〇〇円に右製造・販売台数二一一を乗じて得られる五二七万五〇〇〇円となる。(なお仮に本件原画等の複製権侵害の事実が認められるとしても、被告商品の製造販売台数は前認定のとおりであり、被告ワールドベンディング、破産者フジコロムが右製造・販売又は販売により得た利益が一台二万五〇〇〇円であることは当事者間に争いがないので、結局原告の蒙つた損害額は前認定の額を超えることはない。)

破産者フジコロムが大阪地方裁判所昭和五七年(フ)第七五号破産事件について、同裁判所において同年三月二五日午後一時破産宣告を受け、被告山元眞士がその破産管財人に選任されたこと、原告が同破産事件において損害賠償金元本として一億五〇〇〇万円、遅延損害金として右金員に対する昭和五四年六月一日から昭和五七年三月二四日まで年五分の割合による金員を破産債権として届出をし、同年五月三一日の債権調査期日において同被告が右届出の破産債権全額につき異議を述べたことは、原告と同被告の間で争いがない。

六以上のとおりとすると、前記破産事件において、原告の破産者フジコロムに対する破産債権は、損害賠償金元本として五二七万五〇〇〇円、及び遅延損害金として右元本に対する右不法行為の日の後である昭和五四年六月一日から破産者フジコロムに対する前記破産宣告日の前日である昭和五七年三月二四日まで民法所定年五分の割合による金員があると確定すべきであり、被告ワールドベンディングは原告に対し、右同五二七万五〇〇〇円及びこれに対する右同昭和五四年六月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある、というべきである。

よつて、本訴請求は、右の限度で理由があるので認容し、これを超える部分は理由がないので棄却することと<する。>

(金田育三 鎌田義勝 若林諒)

別冊(一) 説明書<省略>

別冊(二) 説明書<省略>

第一目録、第二目録、第四目録、

第七目録<省略>

宣伝雑誌等一覧表<省略>

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