大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)528号 判決
【主文】一 被告は、別紙イ号の一ないし三、ロ号の一ないし三、ハ号の一ないし三の各図面記載のスノーポールを製造し、販売し、販売のために展示してはならない。
二 被告は、その占有にかかる第一項記載のスノーポールの製品・半製品及びその製造用金型・テープ巻着機を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金五五七万四四〇〇円及びこれに対する昭和五四年三月六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用はこれを五分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
六 この判決は、第一ないし第三項につき仮に執行することができる。
【事実】
第二 請求の原因
一1 、原告は、左記意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という)を有する。
記
出願 昭和四三年六月一〇日(意願昭四三―一七〇五九)
登録 昭和四五年一〇月一三日(第三二二三六一号)
意匠に係る物品 スノーポール
登録意匠 別紙登録意匠図記載のとおり
2 本件意匠には左記(一)、(二)の類似意匠が附帯している(以下「類似意匠(一)、(二)」という。)。
(一) 類似意匠(一)
出願 昭和四三年六月一〇日(意願昭四三―一七〇六〇)
登録 昭和四五年一〇月一三日(第三二二三六一号の類似一)
意匠に係る物品 スノーポール
登録意匠 別紙類似意匠図(一)記載のとおり
(二) 類似意匠(二)
出願 昭和四三年六月一〇日(意願昭四三―一七〇六一)
登録 昭和四七年一一月一七日(第三二二三六一号の類似二)
意匠に係る物品 スノーポール
登録意匠 別紙類似意匠図(二)記載のとおり
【理由】
一請求原因一1(本件意匠権の存在)、2(類似意匠の附帯)の事実は、いずれも当事者間に争いがない。
二被告がかつてイ号の二、ロ号の二・三、ハ号の一ないし三の各物件を製造・販売したことは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、被告は、右各物件のほかにもイ号の三物件を製造しており、また、被告発行の「ナカジマの交通安全施設用品」と題するカタログ中においてロ号の一物件の写真を掲載していること、更に、被告発行の「交通安全施設用品」と題するカタログ中において、ロ号の一物件の写真を掲載すると共に、上下二本のポールを連繁してなる円柱二段状のスノーポールであつて、上段ポールは下段ポールより若干短くかつ細い形状であつて、その周面に斜め方向に赤テープを巻着し、右の上段又は下段ポールの上端部の側部に扁平円盤状視線誘導反射盤が取り付けられているものを図示していること、被告物件の構造は、上端に同反射盤を有する上段ポールとこれを有しない上段ポール、上端に同反射盤を有する下段ポールとこれを有しない下段ポールの上下各二種のポールのいずれかの組合せによつて形成されているうえに、上段ポールに施された模様は、テープ巻着機を用い、又は手巻でテープを巻着することによつて形成されることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
右で認定のとおり、被告は、これまでにイ号、ロ号の各一物件を除く被告物件を製造・販売しているのみならず、ロ号の一物件の写真を掲載したカタログ、更には扁平円盤状視線誘導反射盤の装着された上下二段のスノーポール図面入りのカタログを配布していたこと、イ号の一物件は、ハ号の一物件における上段ポールのテープ模様に代え、テープを螺施状に巻着し、又はイ号の二物件における上段ポール上端面の円盤状冠体に代え同反射盤を取り付けることにより製造し得るものであり、ロ号の一物件も同様、ハ号の一物件におけるテープ模様を変え、又はロ号の二物件における上段ポール上端部材を同反射盤に代えることによつて製造し得るものであり、イ号・ロ号の各一物件とその余の被告物件との相違は、単に構成部材の組合せの相違にすぎないことが明らかである。
そうすると、被告は、少なくとも過去の一時期製造・販売していたことの明らかなイ号・ロ号の各二・三物件、ハ号の一ないし三物件のみならずイ号・ロ号の各一物件についても、本件意匠の類似範囲に属することを争つている以上、右各物件を製造・販売するおそれがあるものといわなければならない。
三被告は、本件意匠が冒認出願に係り、又は出願前公知の意匠であり、或いは、出願前公知の意匠の単純な結合にすぎず、したがつて本件意匠が無効であるから、右権利に基づく禁止権の行使が許されないか、右権利行使が権利濫用にわたると主張するところ、右冒認出願については、これを認めるに足りる証拠がないし、およそ意匠権の付与、無効等の処分は特許庁の専権に属するところであつて、いつたん特許庁がその専権に基づきある意匠に意匠権を付与した以上、それが意匠法所定の無効審判手続(及びこれに続く行政訴訟)で無効にすべき旨の審決がなされその審決が確定しない限り、侵害訴訟裁判所においてみだりにこれを無効と判断し、無効を前提として禁止権の行使が許されないとし、或いは権利行使が権利濫用であるなどとして訴えを断ずることは許されないというべきである。
しかるに、本件意匠権について無効審決が確定したことの主張立証はないのであるから、被告の前記主張は採用できない。
四被告物件が本件意匠に係る物件と機能及び用途を同じくする「スノーポール」であることについては、前記一・二の事実と弁論の全趣旨により認められるので、以下被告意匠と本件意匠の類否について検討する。
1 <証拠>を総合すると、本件意匠は次の構成を有することが認められる。
(一) 基本的態様
(1) 周側面を無模様とした下段ポールと、周側面に二色分けした広幅の濃淡模様を表わした上段ポールとの上下二本のポールを連繋した細長い円柱二段状ポールであつて、
(2) 下段ポール上端部と上段ポール上端部に、各々扁平円盤状の視線誘導反射盤を横向きに装着した構成よりなるスノーポール
(二) 具体的態様
(1) 下段ポールは全長の約二分の一強の長さとし、周側面全体を無模様としており、
(2) 上段ポールは下段ポールより短く、わずかに細径として周側面に濃淡各々同幅に二色分けとした広幅の左流れの螺施模様を略三周分表わしており、
(3) 下段ポール上端部に装着した視線誘導反射盤は、下段ポール直径より極くわずかに太径とし、長さを直径よりわずかに長くした短円筒形の反射盤取付金具を下段ポール上端に装着し、その取付金具周側正面部に取付金具よりわずかに太径とした扁平円盤状の中央に円形レンズを嵌合した反射盤を横向きに突設しており、
(4) 上段ポール上端部に装着した視線誘導反射盤は、上段ポール直径よりわずかに太径とした短い円筒を直角に彎曲させたエルボ型管継手状の反射盤取付金具を装着し、その正面に下段と同形の肩平円盤状の中央に円形レンズを嵌合した反射盤を横向きに突設した
態様からなる。
2 意匠の類否を判断するに当たつては、両意匠を全体的に観察し、意匠の要部を対比しなければならない。
そして、登録意匠の要部は、当該意匠の出願前にその分野における公知公用の意匠(以下「公知意匠」という)が存する場合には、これを参酌して当該意匠における創作性の存否・程度を把握して定められなければならない。
また、類似意匠が附帯している場合には、これを参考にしたうえで要部ないしは、類似範囲が定められねばならない。
そこで以下、これら本件意匠の要部ないし類似範囲決定のための参考となる事実についてみることとする。
3(一) <証拠>を総合すると、
(1) 昭和四〇年一〇月二六日発行の登録番号第二五二一三三号の意匠公報(甲第一八号証に添付第四号資料)には、長い単柱式のスノーポールであつて、その周側面に濃淡模様を表わしたものが表示されている。
(2) 昭和四二年一二月一二日発行の登録番号第二七五七四〇号の意匠公報、昭和四二年九月二五日公告の実公昭四二―一六五九三の実用新案公報、昭和四二年一〇月三日公告の実公昭四二―一七一六三の実用新案公報、昭和四一年頃訴外日本道路興業株式会社(以下「訴外日本道路興業」という)発行のカタログには、上段ポール周側面に濃淡模様を表わした円柱二段状伸縮式のスノーポールを内蔵した道路用標識柱が示されている。
(3) 昭和四一年九月六日発行の登録番号第二六二二二三号意匠公報には、扁平円盤状の反射盤が示されている。
(4) 昭和四二年一〇月三日発行の登録番号第二七三七四〇号の意匠公報には、上端に反射盤を装着した道路用標識柱が示されている。
(5) 前掲(2)のカタログには、円柱上端に扁平円盤状の反射盤を装着した視線誘導標(デリネーター)が示されている。
以上のとおり認められる。
(二) 被告は、右のほかにも①訴外日本道路興業が昭和四二年一二月中に本件意匠と同一のスノーポールを京都府下の公道に設置し、更に②原告が本件意匠出願前、本件意匠の実施品を訴外大信商事株式会社などに対し宣伝・販売することにより公知ならしめたと主張するので、その当否につき検討する。
(1) 証人中田清士の証言中には、これらの主張に副うかの如き証言部分、とりわけ、訴外大信商事株式会社の代表取締役であつた同人が、昭和四二年、原告(但し前商号「積水アドへア工業株式会社」)富山営業所長佐藤静から、乙第一四号証の原告カタログの配布を受け、同年末原告製品である上下二段の伸縮式スノーポールに反射盤の装着してある見本品の交付を受け、取引先である建設省富山工事事務所に持参し、翌四三年三月右スノーポールを納品したと述べる部分がある。
また、前記被告らの主張に副うかの如き次のような書証が存在する。
すなわち、乙第二号証の五の五は、本件意匠、類似意匠(一)、(二)の形状のスノーポール図、及び上段が横縞模様で中間に反射盤の装着された上・下二段式スノーポールの写真が掲載されたパンフレットである。
乙第二号証の五の六は、上段が横縞模様で、上端及び中間に反射盤の付いた上下二段式スノーポールの写真・図が掲載されたパンフレットである。
乙第三号証の一は、類似意匠(二)の形状のスノーポールの写真が掲載された訴外日本道路興業発行のカタログである。
乙第六号証の一ないし一二及び同第一一号証の一、二の各一・二、同号証の四ないし六は、いずれも類似意匠(二)の形状のスノーポールが撮影されている写真である。
乙第一四号証は、類似意匠(一)の形状のスノーポールの写真が掲載されている原告のカタログである。
乙第一〇号証は、右乙第六号証の写真のスノーポールと同一製品の写真二葉が添付された「確認書」と題する書面で、その本文には、右写真の製品は、京都府周山土木工営所が訴外日本道路興業から購入し所管の国道に設置した二段式スノーポールの一部である旨の記載がなされ、末尾に「南佐一」の署名押印がある。
乙第二五号証は、昭和四二年九月六日付の、類似意匠(一)の形状のスノーポール設計図であり、それは原告枚方工場の用紙が使用されており、その表面には訴外大信商事株式会社のゴム印が押捺されている。
(2) しかしながら、右の各書証・人証は、以下の理由により公知資料としてにわかに採用し難い。
<反証判断略>
(三) そこで、前記(一)で認定した公知の意匠に基づいて本件意匠の創作性の存否・程度をみると、まず基本的態様において、本件意匠の出願前、上段ポールの周側面に濃淡模様を表わした上下二段の伸縮式スノーポールであつて、扁平円盤状の視線誘導反射盤を装着したものは存在しなかつたのであるから、本件意匠の創作性はこの点に存するということができる。次に、具体的態様において、構成(3)のとおり、下段ポール上端部の視線誘導反射盤を、短い円筒形の反射盤取付金具を下段ポール上端に装着し、その周側正面部に扁平円盤状の中央に円形レンズを嵌合した反射盤を横向きにした態様、及び、構成(4)のとおり、上段ポール上端部の視線誘導反射盤を、短い円筒を直角に彎曲させた反射盤取付金具を装着し、その正面に扁平円盤状の中央に円形レンズを嵌合した反射盤を横向きに突設した態様のものは、本件意匠の出願前には存せず、本件意匠はこの点において創作性を有するといわなければならない。
そして、本件意匠の基本的態様のうち上段ポールの周側面に二色分けした広幅の濃淡模様を表わしている点は、前記(一)(1)(2)のとおり本件意匠出願前この種道路標識において公知であつたことが窺われるから、商品識別機能上看者の眼を惹きつける特異性は少ないと考えられ、このことに、後記認定のとおり、下段ポール上端部のみに扁平円盤状の反射盤を装着した意匠が類似意匠(一)として、また、上段ポール上端部のみに扁平円盤状の反射盤を装着した意匠が類似意匠(二)として登録されていることを合わせ考慮すると、結局、本件意匠の要部は、上下二段式スノーポールに扁平円盤状の視線誘導反射盤を装着した点に存すると認めるのが相当である。
被告は、本件意匠が出願前の公知意匠の単純な結合にすぎないと主張するところ、前記(一)(1)ないし(5)の公知意匠を参酌しても、当業者にとつて、本件意匠の基本的態様(1)、(2)の組合せが推考容易とはいえないし、ましてや本件意匠の具体的態様(3)、(4)の構成が創作性を有する以上、右構成のものに想到することが容易であるとは到底いえない。
したがつて、被告の、この点に関する主張は採用の限りでない。
4 そこで、被告意匠の構成をみることとする。
A イ号の一意匠の構成
前記二で認定のとおり被告に製造・販売のおそれが認められる別紙イ号の一図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
(一) 基本的態様(1)'、(2)'は、それぞれ本件意匠の基本的態様(1)、(2)に同じ。
(二) 具体的態様
(1)'(3)'(4)'は、それぞれ本件意匠の具体的態様(1)、(3)、(4)に同じ。
(2)' 上段ポールは、下段ポールよりは短く、わずかに細径として、周側面に濃淡各々同幅に二色分けとした広幅の右流れの螺施模様を略三周分表わしており、
B イ号の二意匠の構成
イ号の二意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙イ号の二図によれば、同意匠は次の構成を有することが認められる。
基本的・具体的態様は、イ号の一意匠における基本的、具体的態様のうち、上段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤に代えて、同ポール上端部に円盤状の冠体を装着しているほかは、右イ号の一意匠における各態様に同じ。
C イ号の三意匠の構成
前記二で認定のとおり被告に製造・販売のおそれが認められる別紙イ号の三図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
基木的・具体的態様は、イ号の一意匠における基本的・具体的態様のうち、下段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤を欠いているほかは、右イ号の一意匠における各態様に同じ。
D ロ号の一意匠の構成
前記二で認定のとおり被告に製造・販売のおそれが認められる別紙ロ号の一図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
(一) 基本的態様(1)"、(2)"は、それぞれ本件意匠の基本的態様(1)、(2)に同じ。
(二) 具体的態様
(1)"、(3)"、(4)"は、それぞれ本件意匠の具体的態様(1)、(3)、(4)に同じ。
(2)" 上段ポールは、下段ポールよりは短く、わずかに細径として、周側面に濃淡各々同幅に二色分けした広幅の横縞模様を、濃淡濃と一・五組分表わしており、
E ロ号の二意匠の構成
ロ号の二意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙ロ号の二図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
基本的・具体的態様は、ロ号の一意匠における基本的・具体的態様のうち、上段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤に代えて、同ポール上端面に円盤状の冠体を装着しているほかは、右ロ号の一意匠における各態様に同じ。
F ロ号の三意匠の構成
ロ号の三意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙ロ号の三図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
基本的・具体的態様は、ロ号の一意匠における基本的・具体的態様のうち、下段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤を欠いているほかは、右ロ号の一意匠における各態様に同じ。
G ハ号の一意匠の構成
ハ号の一意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙ハ号の一意匠図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
(一) 基本的態様(ⅰ)、(ⅱ)は、それぞれ本件意匠の基本的態様(1)、(2)に同じ。
(二) 具体的態様
(ⅰ)(ⅲ)(ⅳ)は、それぞれ本件意匠の具体的態様(1)、(3)、(4)に同じ。
(ⅱ) 上段ポールは、下聞段ポールよりは短く、わずかに細径として、周側面に濃淡各々同幅に二色分けした広幅の横縞模様を、濃淡三・五組分表わしており、
H ハ号の二意匠の構成
ハ号の二意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙ハ号の二図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
基本的・具体的態様は、ハ号の一意匠における基本的・具体的態様のうち、上段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤に代えて、同ポール上端面に円盤状の冠体を装着しているほかは、右ハ号の一意匠における各態様に同じ。
I ハ号の三意匠の構成
ハ号の三意匠を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙ハ号の三図によれば、同意匠は、次の構成を有することが認められる。
基本的・具体的態様は、ハ号の一意匠における基本的・具体的態様のうち、下段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤を欠いているほかは、右ハ号の一意匠における各態様に同じ。
5 本件意匠と被告意匠とを対比する。
(一) まず本件意匠とイ号・ロ号・ハ号の各一意匠を対比する。
(1) イ号・ロ号・ハ号の各一意匠の基本的態様(1)'(2)'、(1)"(2)"、(ⅰ)(ⅱ)の構成はいずれも本件意匠の基本的態様の構成(1)(2)と同一である。
(2) イ号・ロ号・ハ号の各一意匠の具体的態様(1)'(3)'(4)'、(1)"(3)"(4)"、(ⅰ)(ⅲ)(ⅳ)は、いずれも本件意匠の具体的態様(1)(3)(4)に同じである。
ところが、本件意匠の具体的態様(2)において上段ポール周側面に濃淡各々同幅に二色分けとして広幅の左流れの螺施模様を略三周分表わしているのに対し、イ号の一意匠の具体的態様(2)'では、上段ポール周側面に濃淡各々同幅に二色分けとした広幅の右流れの螺施模様を略三周分表わしている点において相違し、ロ号の一意匠の具体的態様(2)"では、上段ポール周側面に濃淡各々同幅に二色分けした広幅の横縞模様を濃淡濃と一・五組分表わしている点において相違し、ハ号の一意匠の具体的態様(ⅱ)では、上段ポール周側面に濃淡濃各々同幅に二色分けした広幅の横縞模様を濃淡三・五組分表わしている点において相違する。
(3) 右共通・相違点をもとに、イ号・ロ号・ハ号の各一意匠が本件意匠に類似するか否かをみるに、前記のとおり本件意匠の要部は、上下二段式スノーポールに扁平円盤状の視線誘導反射盤を装着した点に存するところ、イ号・ロ号・ハ号の各一意匠が右要部を備えていることは、右(1)、(2)で対比検討したところにより明らかであるから、右各意匠は本件意匠の類似範囲に属するというべきである。
もつとも上段ポール周側面の濃淡模様において両意匠は相違するところ、<証拠>を総合すると、本件意匠出願前、(イ)東北地方建設局建設技術協会発行の「土木工事標準設計図集」(甲第一六号証、昭和三七年五月制定、昭和四〇年一〇月改訂)には、「スノーポール」I形として、濃淡各々同幅に二色分けした螺施模様と横縞模様を表わしたスノーポールの図面が掲載されており、(ロ)意匠登録第二一一九九〇号「危険防止用標識具(甲第一八号証の添付資料一一号の一、昭和三七年一二月一一日発行の意匠公報)及びその類似第1号(甲第一八号証の添付資料一一号の二、昭和三八年一月八日発行の意匠公報)において、濃淡各々同幅に二色分けした螺施模様を表わしたものと横縞模様を表わしたものが類似とされており、(ハ)意匠登録第二二七三六五号「道標」(甲第三号証の一、昭和三九年一月二二日発行の意匠公報)及びその類似第1号(甲第三号証の二、昭和四〇年一月一二日発行の意匠公報)並びにその類似第3号(甲第三号証の三、昭和四〇年一月一二日発行の意匠公報)において、濃淡各々同幅に二色分けした右流れの螺施模様を表わしたものと、同様左流れの螺施模様を表わしたものと、横縞模様を表わしたものが類似とされており、(二)意匠登録第三一六一三六号「道路用安全さく」(甲第一五号証の一、昭和四五年一一月二八日発行の意匠公報)とその類似第1号(甲第一五号証の二、昭和四六年七月一九日発行の意匠公報)、並びにその類似第2号(甲第一五号証の三、昭和四六年七月一九日発行の意匠公報)において、濃淡各々同幅に二色分けした斜縞模様を濃淡三・五組分表わしたものと、同斜縞模様を濃淡五組分表わしたものと、縦縞模様を濃淡四・五組分表わしたものとが類似とされていることが認められる。
右で認定のとおり、道路標識などの交通標識に関連する物品の意匠において、濃淡各々同幅に二色分けした螺施模様、斜縞模様、横縞模様などが一般に見られる態様であり、しかも、その形状が同一である限り螺施模様の方向を逆流れに変更したもの、殆んど同幅の横縞模様に変更したもの、模様の幅を小さくして濃淡模様を密としたものなどの間には、特許庁の意匠登録において類似関係が認められていることに鑑みると、本件意匠の如き柱状体の標識において、その表面に螺施模様を表わすか、横縞模様を表わすか、またその幅をどの程度にするかは、看者の眼を惹くことの少ない部分的な変化にすぎないというべきである。
そうすると、前記のような、本件意匠とイ号・ロ号・ハ号の各一意匠における相違があるからといつて、前記上下二段式スノーポールに扁平円盤状の視線誘導反射盤を装着した点に本件意匠の要部が存すると認められる以上、後者が前者の類似範囲に属する旨の前記結論を左右しない。
(二) イ号・ロ号・ハ号の各二・三意匠と本件意匠の類否につき検討するに、前記4で認定のとおり、イ号・ロ号・ハ号の各二意匠がそれぞれイ号・ロ号・ハ号の各一意匠における上段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤を欠き、それに代えて同ポール上端面に円盤状の冠体を装着しているほかはイ号・ロ号・ハ号の各一意匠と同一の構成であり、またイ号・ロ号・ハ号の各三意匠がそれぞれイ号・ロ号・ハ号の各一意匠における下段ポール上端部の扁平円盤状の視線誘導反射盤を欠いているほかは、イ号・ロ号・ハ号の各一意匠と同一の構成である。
ところで、それぞれ類似意匠(一)、(二)を表わしたものであることにつき当事者間に争いのない別紙類似意匠図(一)、(二)によれば、類似意匠(一)は、本件意匠の基本的態様の構成(2)、具体的態様の構成(4)における上段ポール上端部の扁平円盤状の反射盤を欠き、それに代えて円盤状の冠体を同上端面に装着したものであつて、類似意匠(二)は本件意匠の基本態様の構成(2)、具体的態様の構成(3)における下段ポール上端部の扁平円盤状の反射盤を欠く構成を採るものであり、これらの構成のものも又本件意匠の類似範囲に属することが明らかである。
右で説示したところと、前記(一)で説示のとおりイ号・ロ号・ハ号の各一意匠が本件意匠の類似範囲に属することを合わせ考慮すると、イ号・ロ号・ハ号の各一・三意匠も又本件意匠の要部を備え、その類似範囲に属するというべきである。
(三) なお、別紙イ号・ロ号・ハ号の各一ないし三図によれば、イ号・ロ号・ハ号の各一・三意匠では、上段ポール上端部に装着した取付金具の角部をわずかに略半球状に膨出させていること、イ号・ロ号・ハ号の各一・二意匠では、下段ポール上端部に装着した円筒形取付金具の下部に細い環状模様を表わしていること、イ号・ロ号の各三意匠では下段ポール上端部に細い環状模様を表わしていること、イ号の二意匠では、螺施模様に接続して上段ポール上部に細い環状模様を表わしていること、ハ号の三意匠では、下段ポール上端部に同ポール直径よりわずかに太径とした環状金具を装着し、その下部に細い環状模様を表わしていることが窺われ、これらの点においても被告意匠は本件意匠と相違するけれども、本件意匠における要部すなわち上下二段式スノーポールに扁平円盤状の視線誘導反射盤を装着している態様が被告意匠にもみられ、看者の眼を惹きつける美観を形成しているといえるのに比べて、右の各相違点は微細にわたるもので、両意匠における、かかる共通点に由来する類似性を否定するほど顕著なものとはいい得ないのみならず、類似意匠(一)には螺施模様に接続して上段ポール上端に環状模様が存し、類似意匠(二)には下段ポールの上端に二列の細い環状模様が存する(別紙類似意匠図(一)、(二)による)ところから、右被告意匠における環状模様のものも又本件意匠の類似範囲に属すると認められるので、前記判断に消長を来たさない。
五以上説示のとおりであつて、被告は、業としてイ号・ロ号の各一物件を除く被告物件を製造・販売することにより、原告の本件意匠権を侵害したということができる。
そして、被告において、右製造・販売をしたことのある物件についてのみならず、イ号・ロ号の各一物件についても又製造・販売のおそれがあることは前記二で説示のとおりであるから、結局、被告製品の総てを製造販売することによる本件意匠権侵害のおそれがあることになる。
被告による右侵害行為が不法行為法上の違法行為でだあることはいうまでもなく、右違法行為は、過失によつてなされたものと推定される(意匠法四〇条)。
したがつて、被告は原告に対し、右不法行為によつて原告の蒙つた後記損害を賠償する義務がある。
六そこで、損害額について検討する。
1 被告は、被告物件の販売数量、右販売による利益額について被告が昭和五二年四月から昭和五六年三月までの間イ号の二、ロ号の二・三、ハ号の一ないし三の各物件を合計一万一五二九本製造・販売し、合計三七六万六三〇〇円の利益を得た限度において認めている。
2(一) 原告は、被告の昭和五一年二月から昭和五六年三月までの製造・販売数量が合計一万七九一六本であり、被告の販売単価が四〇〇〇円、その利益率が三〇パーセントであるとして、利益額二一四九万九四二〇〇円が原告の損害額となる旨主張する(但し請求額は二一〇四万九二〇〇円)けれども、被告による被告物件の製造・販売の期間、数量が被告の前記自認するところを超えることを認めるに足りる証拠はない。
(二) この点につき原告は、右損害立証のため、別紙「文書提出命令の申立」記載のとおり、被告を相手方として、当裁判所に文書提出命令の申立をし(当庁昭和五五年(モ)第五一〇三号事件)、昭和五六年八月三一日右命令が発出されたのに、被告が右提出命令に従わなかつたのであるから、原告の損害に関する主張(請求原因六)は民訴法三一六条により真実と認められるべきであると主張するので検討する。
原告が、右別紙の申立をし、右主張の日時、当裁判所が右別紙申立二(一)のうち(1)総勘定元帳、(2)得意先別元帳(売掛台帳)、(3)仕入先別元帳(買掛台帳)、(6)売上伝票(納品伝票控、請求明細書、納品書、受領書、出庫伝票)、(14)確定申告書控(添付書類一切を含む)について右提出命令を発出したこと、これに対して、被告が昭和五六年一〇月二日の第一四回口頭弁論期日において、昭和五〇年四月一日から昭和五六年三月三一日までの間の総勘定元帳六冊及び第一二期から第一七期までの決算報告書を提出したのみで、文書提出命令の対象であるその余の文書については本件口頭弁論終結日である昭和五八年八月三一日に至るも、これを提出しなかつたことは当裁判所に顕著な事実である。
しかして、原告の右申立は意匠法四一条・特許法一〇五条に基づくものであるが、同法条は民訴法三一一条の適用につき同三一二条の要件を緩和した規定と解し得るから、その不提出に対し同三一六条の適用を求める原告の主張はひとまず理由がある。
(三) ところで、民訴法三一六条によつて真実と認めることができるのは、申立人が当該文書の記載によつて証明しようとする要証事実(民訴法三一三条四号「証すべき事実」に該る)そのものではなく、文書の性質・内容・成立に関する申立人の主張(前同条二号「文書の趣旨」に該る)であり、右文書の趣旨としての申立人の文書の性質・内容・成立に関する主張が真実と認められても、これによつて要証事実それ自体が証明されたものとするか否かは、更に裁判所が当該訴訟における他の証拠、弁論の全趣旨、経験則などを総合して、自由心証によつて決めるべきこととされている。
しかるに本件申立(別紙)によれば、右「文書の趣旨」の記載は概括的に、「対象物件の取引の記載ある」とのほか、「文書の表示」の記載(前同条一号)と兼ねる形で、唯文書の標目だけを記載したもので、その内容についての具体的記載は存しないのであるが、本件申立の如く、要証事実が原告の損害額、従つて意匠法三九条一項で推定される被告の利益額にして、具体的にはこれを構成する被告物件の或る期間の販売数量、単価、利益率にあるような場合には、その証明に用いようとする文書もいきおい右文書の表示に掲げるような、相手方の所持する、しかも多数種類かつ長期間にわたる帳簿類に及び、且つ申立人においてはその内容を具体的には知り得ず、これを明らかにすることも不可能であるから、前記のように「文書の趣旨」の記載が「文書の表示」の記載を兼ねる形で実質上文書の標目を示すに止り、その記載内容の具体的表示を欠くことも止むをえないものとしなければならない。しかして、その場合、民訴法三一六条の適用に当り裁判所は、申立書の「証すべき事実」欄、更には申立人の要証事実に関する弁論上の主張を参酌して、文書の趣旨に関する申立人の主張の具体的内容を推定すべきこととなるが、その際、申立人の主張においてはそれが要証事実の主張と一致すると思われる場合においても、右推定の範囲を容易に要証事実そのものに直結することなく、申立人主張の範囲内において、提出を命じられた文書の記載から具体的にその把握がなし得ることが合理的に推認し得る事項にその推定範囲を限定するのを相当と考える(そうでなく、要証事実そのものの記載が推定されることになると、本件のような帳簿類にあつては、文書の性質上、その記載内容が推定されれば、通常反証のない限りこれに副う事実が認められるであろうから、前記真実推定の対象を「文書の趣旨」に止め、「要証事実」に及ぼさない民訴法三一六条の法意に副わない結果を招来する)。
(四) そこで、これを本件についてみると、右申立の「証すべき事実」欄には「イ号の一ないし三、ロ号の一ないし三、ハ号の一ないし三物件の被告会社における製造・販売の事実及びその数量」と記載され、要証事実が「数量」に限定されるように読めないでもないが、右記載と右申立の「文書の表示、文書の趣旨(一)」欄の冒頭にある「昭和五一年二月以降現在に至るまでの被告会社の本件対象物件の取引の記載ある左記帳簿類」との記載並びに同所に列挙してある文書の標目を合せ考慮すると、原告は右「証すべき事実」を必ずしも「販売数量」に限定したものではなく、単価、利益額に及ぼしたものと認められ、且つ弁論の全趣旨に徴すれば、その具体的数額は、原告が請求原因六項に主張する数額によることは明らかであるから、原告は右提出を求め被告がこれを拒否した文書の趣旨としても、その内容に右請求原因六項の原告主張の販売数量、単価、利益率の記載があるとの主張をなすものと認められる。
そこで、右原告主張の範囲内において右不提出文書にその記載がある(或いは一部提出文書の記載と合わせこれを読みとり得る)との推定が許されるかどうかを検討するに、請求原因六記載の販売数量については、各期間における製品別の主張が具体的になされているし、その対象とされる事項の性質上、提出命令にかかる各文書中被告が提出を拒むものに右内容の記載がなされていると認めるのが相当であるが、被告物件の単価と利益率については、それぞれ「四〇〇〇円」、「三〇パーセント」なる抽象的な主張があるのみであり、本件の如き長期にわたる製品の販売単価は年を経るにつれて上昇するのが通例であり、利益額、したがつて利益率も各年度毎に区々であるのが通例であることに鑑みると、前記提出命令の対象たる文書に右のような概括的記載がなされているとは到底認め難い。
3 右の判示をもとに被告の利益額につき検討するに、前記二で認定のとおり過去における製造・販売の事実が認められるイ号・ロ号の各二・三、ハ号の一ないし三の物件の右販売数量については、右提出命令の対象となつた文書に記載があるものと認められる以上、右文書はいずれも記載自体に高い信憑性が認められるものばかりであるから、請求原因六記載どおりの販売数量を認めることができる(なお、イ号・ロ号の各一物件については、侵害の事実が認められない以上文書提出命令違反の効果は及ばない)。
しかしながら、販売価格、利益率については原告の主張を認めることができないので、結局、被告の自認する別紙「被告主張の販売数額一覧表」記載のとおり年別被告物件の利益額(一個当たり)によるほかない。
イ号の三物件について被告の自認はないけれども、それらがロ号・ハ号の二・三物件と同等の単価と利益率を有するであろうことは、右各物件の構成自体より推認できるから、後者の各年月における自認額をもつて前者の該当年月における利益額と推認してさしつかえない。
昭和五一年二月から昭和五二年三月までのロ号の二・三、ハ号の二・三物件の販売単価については被告の自認がないので、昭和五二年四月から昭和五三年八月までの自認額二〇〇万円を採用することとする。
そこで別紙「被告販売状況一覧表」の各販売期間におけるイ号・ロ号の各一を除く被告物件の数量に、別紙「被告主張の販売数額一覧表」記載の右各販売期間に対応する被告の利益単価(但し昭和五一年二月から昭和五二年三月までは右のとおり二〇〇円)を乗じて被告の利益額を算出すると、別紙「被告の利益額計算表」記載のとおり合計五五七万四四〇〇円となり、原告は、右同額の損害を蒙つたものと想定される(意匠法三九条一項)。
七以上のとおりとすると、原告の本訴請求は被告に対し、被告物件の製造・販売・販売のための展示の差止め、その占有にかかる被告物件・半製品及びその製造用金型・テープ巻着機の廃棄、並びに、損害金五五七万四四〇〇円及びこれに対する本訴状送達の翌日である昭和五四年三月六日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し<た。>
(潮久郎 鎌田義勝 德永幸藏)
文書提出命令の申立
一 証すべき事実
イ号の一乃至三、ロ号の一乃至三、ハ号の一乃至三物件の被告会社における製造・販売の事実及びその数量
二 文書の表示・文書の趣旨
(一) 昭和五一年二月以降現在に至るまでの被告会社の本件対象物件の取引の記載ある左記帳簿類
(1) 総勘定元帳
(2) 得意先別元帳
(3) 仕入先別元帳
(4) 売上元帳
(5) 仕入元帳
(6) 売上伝票
(7) 仕入伝票
(8) 製造原価報告書
(9) 製造指図書
(10) 出庫伝票
(11) 製品受払台帳
(12) 在庫表
(13) 経費明細表(一般管理費及製造原価)
(14) 所轄税務署に提出した確定申告書控(添付書類一切を含む)
(二) 前記取引に当つて、販売先に提示した左記(1)から(5)の書類
(1) カタログ
(2) パンフレット
(3) 設計図
(4) 見積書
(5) 注文請書
三 文書の所持者
被告会社
四 文書提出義務の原因
意匠法第四一条・特許法第一〇五条