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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)7617号 判決 1981年11月30日

原告

株式会社日本デキシー

右代表者

清水重亮

右訴訟代理人

坂井秀行

高島信之

藤本英介

右訴訟復代理人

奥山量

遠藤一義

被告

山崎産業株式会社

右代表者

山崎正三

右訴訟代理人

邑本誠

水石捷也

主文

一  原告と被告との間において、別紙目録の供託金欄記載の番号一、三の供託金の全部及び同番号二の供託金のうち金一六九万六〇九九円につき、原告がそれぞれその還付請求権を有することを確認する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告と被告との間において、別紙目録の供託金欄記載の番号一ないし三の各供託金につき、原告がその還付請求権を有することを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張<省略>

理由

一証人栗原健之の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告は紙コップ等の紙製品を日本国内において製造、販売することを目的とする株式会社であることが認められる。

また、被告が、日用品雑貨等の販売を業とする株式会社であること、訴外三松産業株式会社が、被告、その他から雑貨類を仕入れ、これを大手スーパーマーケットを中心とする顧客に販売することを業とする株式会社であることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告もかねてから右三松産業に紙コップ等の雑貨類を売却していたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

二そこでまず、原告が本件一ないし三の各債権を取得したか否かにつき検討する。

1  原告は、昭和五四年六月八日及び一〇日締結の訴外三松産業との契約により、原告の三松産業に対する現在及び将来の債権を担保するために、三松産業は、同月八日現在の売掛代金債権及び在庫商品並びに将来取得する商品を集合物として原告に対して譲渡したもので、原告は三松産業に商品の販売及び代金の回収を委託しているだけであるから、もともと本件一ないし三の各債権は、実質上原告のものであつた旨主張しているところ、<反証排斥略>。却つて、後記2の冒頭に掲記の各証拠によると、右原告主張の如き内容の契約が締結されたことはないと認めるのが相当であるから、右内容の契約が成立したことを前提とした原告の主張は、その余の点につき判断するまでもなく失当である。

2  <証拠>を総合すると、次の事実が認められる。すなわち、

(一)  原告は、訴外三松産業と長年に亘り紙コップ、紙皿等の雑貨類を販売する等の取引を行なつてきたが、その後右三松産業の経営は不振となり、昭和五四年五月二五日頃、右三松産業から、手形決済資金として金八〇〇万円の融資の依頼を受け、その際は、原告において三松産業の経理調査をすること、及び、必要があれば担保の提供を受けることを条件として、金八〇〇万円を同額の手形と引換えに無利息で融資したこと、

(二)  その後原告が、同年五月三一日及び同年六月一日の両日に、三松産業の経理調査をしたところ、同社は、継続的に赤字傾向(月間約金五〇万円の赤字)にあり売上に比して人件費等の経費の占める割合が高いこと、帳簿類の記載があまり明確でないこと、しかし人員及び経費の削減をして合理化を図れば再建の可能性はあること等が判明したこと、

(三)  昭和五四年六月五日頃、原告は、再び三松産業より金三五〇万円位の融資の要請を受けたが、原告としては、三松産業の右経営状態に鑑み、三松産業が人員及び経費の削減に努め、原告が月々金五、六〇万円位の資金の援助をすれば、遅くとも一年位の間には黒字経営に変わるのではないかとの見込みの下に、三松産業から担保の提供を受けて右融資に応ずることとし、その後一年位の間原告において被告に対し資金援助をするとともに経営のアドバイス等をして、三松産業の再建に協力することとしたこと、

(四)  そこで、原告は、昭和五四年六月八日及び一〇日の両日に亘り三松産業との間で、継続的に取引及び融資をすることを前提として、右取引及び融資により三松産業が原告に対し現在及び将来負担する一切の債務を担保するために、三松産業から、同社が現に有し又は将来取得する在庫商品及び右商品の売掛代金債権をその取得と同時に担保的に譲り受け、これをもつて原告の三松産業に対する債権の返済に充てるものとし、現実には、三松産業が回収した右商品の売掛代金のうち、必要費用を除いたその余をすべて原告の方にそのまま入金し、また、未回収の売掛代金債権については、原告がこれを担保的に譲り受けているところから、原告において、その適当と認める時期に、その担保権の実行として、三松産業に代り、右三松産業の名において各債務者に対し右債権譲渡の通知を発送して、その取立をし、これをもつて原告の三松産業に対する債権の弁済に充当することができる旨の契約を締結したこと、なお、当時在庫商品及び売掛代金債権だけが三松産業において担保に供することができる主要な資産であつたこと、しかし原告の三松産業に対する債権額の如何に拘らず、原告において右在庫商品及び売掛代金債権のすべてを取得できるというわけではなく、原告の訴外三松産業に対する総債権額を超える分については後日清算することが当然予定されていたこと、

そして、右契約締結の頃、訴外三松産業は、原告に対し、債務者、譲渡債権額、日付等を空白にした三松産業代表者石川忠二社長の記名捺印のある債権譲渡通知書数通(甲第二ないし五号証の各一はその一部である)を予め交付したこと、

(五)  右契約の下に、原告は、三松産業に対し、その後その必要とする事業資金の大半を無利息で融資した外、紙コップ等の商品を売渡し、他方三松産業より同社の回収した売掛金の一部(現金、手形、小切手等)を入金させて右融資金や売掛金等の回収をはかるとともに、人員及び経費の削減、新規の借入、借入金の返済、固定資産の購入、支払先への支払条件の変更、長野営業所の閉鎖等経営合理化につき種々アドバイスをするなどして、三松産業の再建に援助、協力をしたこと、

(六)  しかしながら、このような原告の援助、協力、三松産業の努力などにもかかわらず、昭和五四年一〇月、一一月頃には、石油ショックによる諸経費の高騰、三松産業の合理化の不徹底(長野営業所を廃止しなかつたこと等)、原告からの融資金を他からの借入金の返済にあてていたこと等により、原告の当初の予測(与信残高は金二〇〇〇万円位が限度と考えていた)に反し、昭和五四年一一月末頃には、原告の三松産業に対する無利息の融資金だけでもその残高は金三〇〇〇万円を超えるようになつていたこと(なお同年一〇月末にも一時金三〇〇〇万円を超えていたこと)、

(七)  そして、更にそれ以降も、各金融機関が、三松産業に対して行つていた融資の借換えに容易に応じなくなつてきたこと、三松産業の取引先が現金決済を要求しだしたこと、売上も伸び悩みで依然として赤字経営が続いていたこと、原告としては昭和五五年五月頃金二億円前後の設備投資を控えていたこと等の状況にあつたが、原告は、その後もしばらくは取引及び融資を続け、昭和五五年三月六日現在の原告の三松産業に対する債権額は、売掛代金債権として約金一〇〇〇万円、貸付金債権として約金二四〇〇万円、合計金三四〇〇万円余であつたこと、

(八)  一方、三松産業は、昭和五五年一月二一日頃以降、訴外株式会社西友ストア外二名に対し、日用品雑貨等を販売して本件一ないし三の各債権を取得したところ、右各債権は、前記(四)の契約により、その取得と同時に原告に担保的に譲渡されていたこと、

(九)  ところで、原告は、その後三松産業に対する支援を継続してもこれを再建させることは不可能であると判断し、昭和五五年三月七日、三松産業に対し、同社に対する支援を打切る旨申入れると共に、本件一ないし三の各債権について担保権を実行することとしたところ、前記契約においては、原告は、右担保権の実行として、右担保的に譲受けた債権については何時でも何等の催告の手続を要しないで、三松産業に代つて譲渡通知を発送した上、その取立をして自己の債権の弁済に充当することができるように約定されていたが(甲第一号証の一の五条)、原告は、右同日、改めて前記石川社長に対し、原告が三松産業に対する融資打切をせざるを得なくなつた事情を説明し、右債権譲渡の通知をするについての了解を得た上、前記約定に従い、前記三松産業に代つて、その代表者石川忠二社長の記名捺印のある債権譲渡通知書に、別紙目録番号一ないし三の各譲渡債権債務者欄記載の各債務者名、同金額欄記載の各金額、同発生期間欄記載の各発生期間及び同譲渡通知発信日欄記載の各日付をそれぞれ記載して、番号一、二の(一)、(二)、三に対応する各債権譲渡通知書(甲第二ないし五号証の各一)を作成し、右一、二の(一)、三の各債権の譲渡通知には、昭和五五年三月七日に公証人の確定日付を受け、また二の(二)の債権の譲渡通知については同年三月一三日に公証人の確定日付を受け、これらを三松産業に代り、三松産業の名において右各債務者に対し、それぞれ配達証明郵便をもつて発送し、右各債権譲渡通知は、別紙目録の譲渡通知到達日欄記載の番号一、二の(一)、(二)、三の日にそれぞれ右各債務者に到達したこと、

以上の事実が認められ<る。>

してみれば、三松産業は、昭和五四年六月八日及び一〇日に、原告に対し、三松産業が原告に対して現在及び将来負担する債務の支払を担保するため、三松産業が現在有し、また将来取得する一切の商品及び商品の売買代金債権を、その取得と同時にすべて原告に担保的に譲渡する旨の契約を締結したものというべきである。

もつとも、被告は、甲第一号証の一の契約書に、三松産業の有する右同日付(六月八日付)の在庫品金一六八五万三三一四円相当分及び債権金四一一一万九八二六円を原告に譲渡する旨記載されているところから、三松産業は、原告に対し、昭和五四年六月八日当時有していた在庫商品及び売掛代金債権を譲渡したものに過ぎないと主張しているけれども、前掲甲第一号証の一によれば、同号証には、右以外にも、三松産業が将来取得する在庫商品及び売掛代金債権も原告に譲渡する旨記載されていることが認められるから(甲第一号証の一の五条参照)、右契約において、三松産業は将来取得する商品及び売掛代金債権も原告に譲渡したものというべく、従つて、右の点に関する被告の主張は失当である。

3  次に、被告は、右契約において、三松産業が原告に譲渡する債権は、右契約締結後三松産業が取得する全債権とされているところ、このような契約では、譲渡される債権が特定されているとはいえないから、右契約は無効であると主張している。しかし、右契約において、原告に譲渡される債権は、三松産業が現在有し将来取得する全債権とされていることは前記の通りであるから、これによつて譲渡される債権は明確に特定されているものというべきであるから、右の点に関する被告の主張も失当である。

4  次に、被告は、原告と訴外三松産業とは、真実は、本件一ないし三の各債権を譲渡し又は譲受ける意思がないのに債権譲渡をなしたものであるから、本件各債権の譲渡は、通謀虚偽の意思表示であつて、無効である旨主張するが、これを認め得る証拠はないから、この点に関する被告の主張は失当である。

5  さらに、被告は、原告と三松産業との間において締結された前記契約は、原告の三松産業に対するわずかの債権のために、三松産業が右契約締結時以降取得する莫大な全資産(売掛代金債権等)を、原告に全部譲渡するというものであり、しかも右契約は三松産業の窮迫に乗じてなされたものであり、また、右債権の譲渡については公示方法もなく労働債権や一般債権を完全に排除するものであつて、公序良俗に反し、無効である旨主張する。

しかし、原告の三松産業に対する債権額が、その担保として譲渡される三松産業の商品及び売買代金債権の額に比し著しく低額であるとか、右契約が三松産業の窮迫に乗じて締結されたとか等の事実を認め得る証拠はなく、また、債権譲渡については、その対抗要件として通知があるのであつて、他に右契約が公序良俗に反することを認め得るような証拠はない。却つて、さきに認定したところから明らかな通り、右契約は、原告が、三松産業の要請により、将来継続的に三松産業に融資をするなどして三松産業を支援することとし、そのために生ずる原告の三松産業に対する債権を担保するために締結されたものであり、また、原告の三松産業に対する債権額が三松産業から譲渡を受ける商品及び債権の額よりも著しく多いようなことはなく、むしろ最終的に原告に譲渡された債権額は、原告の三松産業に対する債権額よりも少ないのであつて、これらの事実や、その他前記2に認定の事実を照らして考えれば、右契約は、何ら公序良俗に反するものではないというべきである。

よつて、この点に関する被告の主張も失当である。

6  そうだとすれば、本件一ないし三の各債権は、前記2の(四)に認定した契約に基づき、三松産業が右各債権を取得すると同時に、原告に担保的に譲渡されたものというべきである。

7  そして、右債権譲渡については、別紙目録の譲渡通知到達日欄に記載の日に到達した債権譲渡通知により、その各債務者に対して右各債権譲渡の通知がなされたことは、前記2に認定した通りである。

被告は、右債権譲渡の通知は、原告があらかじめ三松産業から預つていた債務者、金額、日付等を空白にした未完成の債権譲渡通知書(甲第二号証ないし第五号証の各一)に所要事項を檀ままに記載して右債権譲渡通知書を偽造し、これを各債務者に発送してなしたものであつて、三松産業が右債権譲渡の通知をしたことはないと主張しているところ、前記2に認定した通り、右債権譲渡の通知は、原告が三松産業から預つていた甲第二号証ないし第五号証の各一の三松産業名義の債権譲渡通知書のうち、空白になつていた債務者名、金額、日付等所要事項を原告において記載の上、右債権譲渡通知書を発送するなどして、三松産業に代り、三松産業の名において右債権譲渡の通知をしたものであるが、原告には、前記2の(四)に認定の契約により、右の如く予め預つていた未完成の債権譲渡通知書の空白部分を補充して記載するなどして、三松産業の名において右債権譲渡の通知をする権限を与えられていたものというべきであるのみならず、原告は、右通知書を完成してこれを発送する直前にも、三松産業の代表者の承諾を得てこれを完成し発送したのであるから、甲第二ないし五号証の各一の債権譲渡通知書は、偽造文書ではなく適法に作成されたものであり、従つてまた、右債権譲渡通知書による債権譲渡の通知も適法有効であるというべきである。

よつて、右の点に関する被告の主張も失当である。

三次に、<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。すなわち、

1  三松産業は、昭和五五年三月七日に事実上倒産し、同月一一日、第一回目の債権者集会が開催され、被告が、原告を除く債権者団の代表に選任されたこと、

2  そして同日、同債権者集会において、被告は、債権者団の代表として、三松産業から、本件一ないし三の各債権を含む、昭和五五年三月六日付貸借対照表上の三松産業の全資産の譲渡を受けたこと、

3  そして三松産業は、昭和五五年三月一三日付の内容証明郵便をもつて本件各債務者宛に、被告に右各債権を譲渡した旨の通知をそれぞれ発送し、本件一、二の各債権については同月一四日に、本件三の債権についてもその頃それぞれの債務者に到達していること、

以上の事実が認められ<る。>

もつとも、原告は、右債権者集会の際になされた全資産を被告に譲渡する旨の三松産業の代表者石川忠二社長の意思表示は、被告を中心とする出席債権者ら(原告関係者を除く)の集団の勢威を背景とする怒号糾弾の下になされたものであつて、強迫によりなされたものであると主張しているが、強迫による意思表示でもそれが取消されない限り有効であるところ、本件においては、右取消の意思表示のなされたことについては何らの主張立証がないのみならず、右原告の主張に副う証人栗原健之、同加藤博の各証言はたやすく措信できず、他にこれを認め得る証拠はない。よつて、この点に関する原告の主張は失当である。

四ところで、

1 前記二、三に認定の事実によれば、本件一、二の(一)、三の各債権については、被告がその譲渡を受ける以前に原告がその譲渡を受け、原告に対する債権譲渡の通知は、被告に対する債権譲渡の通知がなされた昭和五五年三月一三日(発送の日)よりも以前の確定日付のある証書(債権譲渡通知書)をもつてなされ、かつ、右三月一三日以前に各債務者に到達していることが明らかであるから、本件一、二の(一)、三の各債権については、原告が被告に優先するものというべく、従つて、原告は、右各債権の取得をもつて被告に対抗し得るものというべきである。

2  次に本件二の(二)の債権についてみるに、<証拠>によれば、確定日付のある証書をもつてなされた原告に対する右債権譲渡の通知も、被告に対する債権譲渡の通知も、郵便に付されて、同一の日である昭和五五年三月一四日にその債務者に到達していること、原告に対する右債権譲渡の通知は、右一四日の午後零時から午後六時までの間に送達されており、また、被告に対する債権譲渡の通知は、三月一三日の午後零時から午後六時までの間に東京都内の郵便局に提出されて長野市内の債務者宛に発送されているから、経験則上右通知は早くとも翌一四日の午後に債務者に送達されていると推認されることが認められるから、他に特段の立証のない本件では、右各通知はいずれも同時に債務者に到達したものと推認するのが相当である。従つて、被告に対する債権譲渡の通知の到達した日時が不明であることを前提とした原告の主張は失当である。

また、原告は、右のように、指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある証書をもつてなされた債権譲渡通知が同時に債務者に到達した場合には、債権譲渡の先後によつてその優劣を決すべきであると主張するが、元来、指名債権が二重に譲渡された場合の譲受人相互間の優劣は、確定日付のある通知が債務者に到達した日時の先後によつてこれを決すべきであり(最高裁判所昭和四九年三月七日判決・民集二八巻二号一七四頁)、また、指名債権の二重譲渡の場合の対抗要件として、民法四六七条二項が確定日付のある通知を必要とした趣旨は、債務者その他の利害関係人が共謀してその通知をした日時を遡らせて第三者の権利を害することを防止するところにあるのであつて、確定日付のある通知は、単に債権譲渡の前後の立証方法ではなく、あくまでも対抗要件と解すべきであるから、確定日付ある通知が債務者に同時に到達した場合には、その優劣を債権譲渡の先後により決するのは相当ではないと解すべきである。よつて、右の点に関する原告の主張は失当である。

判旨次に、指名債権が二重譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達したときには、譲受人相互間では、互いに全面的にその優先権を主張し得ない関係にあるけれども、債務者に対しては、各譲受人はそれぞれの譲受債権全額の弁済を請求することができるから(最高裁判所昭和五五年一月一一日判決。民集三四巻一号四二頁参照)、右のような場合には、公平の見地から、二重譲受人相互間において、互いに譲受債権に対する権利を全面的に否定し合うのは相当ではなく、二重譲受人の一方は、他方に対し、互いに平等の割合(譲受人が二人の場合は各二分の一の割合)で、譲受債権に対する権利を主張することができるものと解するのが相当である。

してみれば、原告は、本件二の(二)の債権については、その二分の一の割合で、被告に対抗し得る権利があるものというべきであつて、これに反する原告及び被告の主張は、いずれも失当である。

(後藤勇 千徳輝夫 小泉博嗣)

目録

番号

(一)

(二)

譲渡債権

債務者

株式会社

西友ストアー

株式会社

西友ストアー長野

株式会社

西友ストアー長野

東宝共栄企業

株式会社

金額

金一六九三万

四三三六円

金一二四万

一四七九円

金一七七万

一七八二円

金二七〇万

一二四五円

発生期間

(昭和年月日)

五五・一・二一から

五五・三・七までの

日用品雑貨代金

五五・二・一から

五五・二・二九までの

日用品雑貨代金

五五・三・一から

五五・三・七までの

日用品雑貨代金

五五・一・二一から

五五・二・二九までの

日用品雑貨代金

譲渡通知

発信日

(昭和年月日)

五五・三・七

五五・三・七

五五・三・一三

五五・三・七

譲渡通知

到達日

(昭和年月日)

五五・三・八

五五・三・九

五五・三・一四

五五・三・一〇

供託金

東京法務局府中出張所

昭和五五年度

金第一六〇六号

供託者

株式会社西友ストアー

被供託者

原告又は被告

金額

金一五五一万六九三九円

東京法務局府中出張所

昭和五五年度

金第一六〇七号

供託者

株式会社西友ストアー長野

被供託者

原告又は被告

金額

金二四〇万二三九八円

東京法務局

昭和五五年度

金第一九八〇〇号

供託者

東宝共栄企業株式会社

被供託者

原告又は被告

金額

金二七〇万一二四五円

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