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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)9087号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二そこで、原告の右損害について、被告らに債務不履行による賠償責任があるか否かについて判断する。

<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。

1 被告らは、もと夫婦であり、被告泉名義で宅地建物取引業の届出をし、「東洋商事」の商号で大阪府知事の免許を受け、共同して宅地建物取引業を営み、被告新子が不動産売買の仲介等を、被告泉がアパート賃貸借の仲介と事務の仕事等をそれぞれ担当していた。

2 被告新子は、知人で不動産ブローカーの林田正二から大関が本件土地の売却を希望していることを聞き、昭和五五年六月上旬ころ、原告に対し、安い土地があるから買わないかと本件土地を紹介した。原告は、建物建築販売業を営んでいて、従来も不動産の売買について被告新子の仲介を受けたことがあつたので、被告新子の案内で本件土地を現地で確認したうえ、本件土地買受について被告新子に仲介を依頼し、被告新子との間で原告の買受土地の範囲やその価格についての交渉を行つた。

3 その後原告は、被告新子との話合により、昭和五四年七月四日に取引を行うことを決め、同日、被告新子立会の上、大関との間で本件土地の売買契約を締結した。被告新子は、当日までに大関から本件土地の登記簿謄本をもらつておらず、右売買契約に際しても原告に対し、本件土地についての物件説明書、登記簿謄本を渡さず、かねて大関から聞かされていた本件土地には抵当権が設定されてはいるが、被担保債権額は一〇〇〇万円で代金決済日までには抹消できる旨を説明したので、原告は、右説明を信じ、右債権額からみても売買代金決済時に当然担保は消滅させることができるものと考えて、本件土地の登記簿謄本の呈示を要求することなく、契約締結に応じた。

4 被告新子は、昭和五五年七月五日ころ、大関から受領した本件土地の登記簿謄本を封筒に入つたまま内容を確認することなく、原告方事務所に持参して原告の使用人に交付したが、原告も右登記簿謄本を内容を点検せずに放置していた。

5 被告新子は、右売買契約締結後に大関から金員借入の申込を受け、本件土地の売買代金から確実に弁済を得られるものと考えてこれを承諾し、大関に対し総額一〇〇〇万円位を貸与した。被告新子は、昭和五五年七月一七日、原告に対し、被告新子の大関に対する貸金を回収したいので中間金一〇〇〇万円を払つてほしい、払つてくれれば代金中三〇万円を値引すると申入れたので、原告は、右売買契約では中間金支払の約定はなかつたが、いずれにせよ支払うべき金員であるし、先の説明からすると所有権移転登記時に支払う残代金として一〇〇〇万円を残しておけば抵当権を消滅させることは可能であると判断してこれを承諾し、同月一八日、被告新子立会の上、大関に対し、九七〇万円を支払い、大関から値引分三〇万円を加算した一〇〇〇万円の領収証の交付を受けた。

6 被告新子は、昭和五五年七月末ころ、原告に対し、被告新子の大関に対する貸金回収のため中間金二五〇万円を払つてほしい、払つてくれれば代金中一五万円を値引する旨申入れたので、原告は、同年八月一日、被告新子立会の上、大関に対し、二三五万円を支払い、大関から値引分一五万円を加算した二五〇万円の領収証の交付を受けた。

7 被告新子は、昭和五五年八月末ころ、原告に対し、大関より申出のあつたとおり、本件土地の近隣の水利組合の排水についての同意書をもらうについて承諾料が必要なので中間金三一〇万円を払つてほしい、払つてくれれば代金中一〇万円を値引する旨申入れたので、原告は、同月三〇日、被告新子立会の上、大関に対し、三〇〇万円を支払い、大関から値引分一〇万円を加えた三一〇万円の領収書の交付を受けた。しかし、右三〇〇万円は水利組合に対する承諾料として払われることなく、大関は他の用途にこれを費消した。

以上のとおり認められ<る。>

右事実によると、被告新子は、原告から本件土地買受についての仲介依頼を受けた宅地建物取引業者として、原告に対し、売買契約成立までの間に本件土地について登記された抵当権等担保権の種類、内容を調査し、説明すべき義務があるのにこれを怠り、売買契約締結時までに本件土地についての登記簿謄本さえも調査せず、原告に物件説明書も交付せず、担保権についても被担保債権額が一〇〇〇万円である旨の売主大関の嘘言をうのみにしてそのまま原告に説明したため原告に本件売買契約を締結させるに至つたものであるうえ、元来、売買契約では手付金を除く残代金二八五〇万円は所有権移転登記時に支払うべきものとされ、中間金支払の約定はなかつたのであるから、登記以前に原告に中間金を支払わせるためには、本件土地についての担保権の種類、内容等を十分調査し、残代金決済時に担保権をすべて消滅させて完全な所有権移転登記をなしうることを確認することが要求されるのに、この義務を怠り、これらの調査確認を一切することなく、むしろ自らの大関に対する貸金回収のため、当初の説明どおり被担保債権額が一〇〇〇万円にすぎないことを前提とし、原告に代金一部値引の利益を与えてまで早期の中間金支払を要求し、被告新子の右説明を信頼していた原告をして右代金の支払に応じさせて損害を一層拡大させたものであることが認められるから、被告新子は、原告に対し、原告が大関との右売買契約締結および代金支払によつて蒙つた損害につき、仲介契約上の債務不履行責任を負うものというべきである。

また、右事実によると、被告泉は、被告新子とともに、「東洋商事」の商号で営む宅地建物取引業の共同経営者であるから、内部的には被告ら各自別々の職務を分担していたとしても、対外的には「東洋商事」の商号を用いて仲介契約をした相手方たる原告に対し、被告新子と連帯して契約上の責任を負うべきものと解するのが相当であつて、被告泉も原告に対し、右債務不履行責任を免れないといわなければならない。

三<省略>

四ところで、前記一、二で認定した事実によると、本件売買契約締結および代金支払については、原告にも、本件土地売買契約締結に際して最も重要な抵当権の内容について被告新子の言のみを信じて登記簿謄本等の資料を要求しなかつたばかりか、契約日の翌日に被告新子から本件土地の登記簿謄本が届けられたのにこの内容を点検、確認(原告は不動産取引を業とするものであるからその内容は一見すれば明らかとなり、中間金を支払うことの危険性に気づいた筈である。)することなく、契約で定められてもいない中間金の支払に応じた点で損害の発生および拡大に関して過失があつたものというべきであり、被告新子の前記債務不履行の内容、注意義務違反の程度等と対比すると、原告の損害額算定についてしんしやくすべき過失割合は五割とするのが相当であると認められる。

そうすると、原告が被告ら各自に対して賠償を求めうる損害額は一八〇五万円の五割に当る九〇二万五〇〇〇円となる。  (山本矩夫)

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