大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和55年(行ク)27号 決定 1980年9月19日

申立人

李順連

右代理人

松浦武二郎

松浦正弘

被申立人

法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

坂本由喜子

外五名

主文

本件申立をいずれも却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一申立人の申立の趣旨及び理由は、別紙(一)記載のとおりであり、被申立人の意見は、別紙(二)記載のとおりである。

二当裁判所の判断

(一)  本件記録によれば、別紙(二)の第三の一「本件在留期間更新の不許可処分に至るまでの経緯」に記載の事実関係を一応認めることができる。

(二)  主位的申立について

在留期間更新不許可処分の効力が停止されても、在留外国人が法務大臣の許可なしに本邦に在留する権利を取得するに至るものではなく、ただ不許可処分がなかつたのと同じ状態が作出されるに過ぎないことはいうまでもない。しかし出入国管理令は、在留外国人が適法な在留期間更新許可申請をした場合には、許否いずれかの処分をすることを法務大臣の義務としているのであつて、在留期間更新許可申請をした在留外国人は、その申請が権利の濫用にわたる等の特段の事情のない限り、許否いずれかの処分がなされるまでは、たとい旅券に記載された在留期間を徒過した後においても、不法残留者としての責任を問われないという意味において本邦に残留することができるものと解するのが相当であり、在留期間更新不許可処分の効力の停止は、申請人に右のような法的地位を回復させるものであるから、これを認める利益がある。しかし右の停止は、手続の続行(その意味は後記のとおり)をすべて阻止する効果を招来するものと解すべきところ、本件における主張疎明の状態においては、右の停止を許容することを相当とする必要性(行政事件訟訴法二五条二項)があるとは認められず、申立人の主位的申立は却下を免れない。

(三)  予備的申立について

在留期間更新の手続(出入国管理令四章一節二一条)と退去強制の手続(同五章一節ないし五節・二七条ないし五五条)とは、法律上別個の手続ではあるけれども、前者が不許可で終了した場合には、新らたな在留資格の取得等特段の事由がない限り、事実上必然的に後者の開始を見る筋合であるから、行政事件訴訟法二五条二項の関係では、後者は前者の続行というを妨げない。しかし後者のうち、退去強制令書の発付及び執行の手続は、その前段階に法務大臣による特別在留許可の手続が設けられ、法務大臣が広範な裁量権を行使してその許否を決することとされており(同令五〇条)、右特在許可が与えられたときは退去強制の手続は終了して、もはや退去強制令書の発付及び執行を見る余地はないのであるから(因に昭和五四年度における法務大臣に対する異議申出のうち、74.6%が特在許可を与えられている―昭和五四年における出入国管理の概況・法務省入国管理局・法曹時報三二巻七号一七七頁参照)、法務大臣の右判断権の行使を差し置いて退去強制令書の発付ないし執行を予め停止することは、出入国管理を担当する行政庁において、司法統制を潜脱するため抜き打ち的に退去強制令書の発付・執行をするおそれがある等特段の事情が認められない限り相当ではないと解すべきであり、右特段の事情については主張疎明を欠くから、申立人の予備的申立もまた却下を免れない。

(四)  よつて本件申立をいずれも却下することとし、行訴法七条、民訴法八九条に則り、主文のとおり決定する。

(乾達彦 国枝和彦 市川正巳)

別紙<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例