大阪地方裁判所 昭和56年(ヨ)2702号 決定 1981年7月09日
申請人
棚池正伸
外七名
右申請代理人
豊川義明
外二名
被申請人
ダイハツ労働組合
右被申請人代理人
相馬達雄
外四名
主文
被申請人は、被申請人の現行の選挙および解任規定に従つて第一九期役員選挙を行なつてはならない。
申請費用は被申請人の負担とする。
理由
一申請人らは、被申請人の昭和五五年一〇月二四日改正にかかる選挙および解任規定(以下選挙規定という)が無効であると主張して主文と同旨の仮処分命令を求めた。
二当裁判所が、右申請を認容するに至つた理由の要旨は次のとおりである。
1 被申請人はダイハツ工業株式会社の従業員で組織される労働組合であり、申請人らはその組合員である。
2 被申請人の組合規約には、組合員は組合規約に従つて組合機関の構成員の選挙権および被選挙権を有する旨定められている。
3 右選挙の細則については、組合規約に基づき中央委員会(大会に次ぐ決議機関)が選挙規定を定めているところ、同委員会は、昭和五五年一〇月二四日、右規定を改正して、三役(正副執行委員長、正副書記長)、会計監査、専門部長に立候補する者は各支部毎からそれぞれ組合員一〇名以上の推薦を得ることを要し、専従派遣役員に立候補する者は中央委員会の推薦を得ることを要することとし、右規定は同年同月一日から施行されている。
4 被申請人の第一九期役員選挙(以下本件選挙という)は、右改正された選挙規定に従つて左記日程で行なわれる予定である。
告示 昭和五六年七月二日
立候補締切 同年同月九日午後一時
投票 同年同月一七日
5 しかしながら、被申請人の支部は大阪、京都、滋賀、兵庫各府県の六か所にあることおよび推薦依頼活動が昼休憩時間のみに限定されていることを考慮すると、自己の所属する支部以外に知己の乏しい者が立候補を希望したとしても、立候補の届出に必要な数の推薦者を得ることは、著しく困難であり不可能に近いというべきである。また、中央委員会の推薦は全くその自由裁量に任せられており、非推薦とされた組合員はこれに対し異議を申立てる権利がない。
現に、申請人らはいずれも本件選挙につき立候補の届出をしながらも、右推薦を得ることができないため、被申請人から候補者として認められていない。
6 立候補にあたり右の如き推薦を必要とする合理的理由を窺わせるような事情は何ら認められない。
7 以上の事実によれば、選挙規定のうち前記改正にかかる部分は、組合員の機関運営への平等な参加権を侵害し、組合民主主義と相容れないものであつて、組合員の被選挙権を保障した組合規約にも明らかに違反するから、選挙規定のうち右改正にかかる部分は無効であると解さざるをえない。
8 してみれば、右無効な選挙規定に従つて被申請人が本件選挙を行なうことは許されない道理であるから、申請人らは組合員たる地位に基づき本件選挙の差止を請求することができるというべきであるところ、前記選挙日程に照らせば、申請人ら申請の本件仮処分をなす必要性がある。
三よつて、申請人らの本件仮処分を認容することとし、申請費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(竹原俊一 楢崎康英 二本松利忠)