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大阪地方裁判所 昭和56年(レ)30号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

控訴人の本件訴えは確認の利益を有するか否かについて判断する。

<証拠>を総合すれば、控訴人が目録(一)(二)(三)の各建物の敷地である本件土地の共有者の被控訴人らに対し、同土地につき控訴人が賃借権を有することの確認を求める訴えを提起したが、請求を棄却せられ、判決が確定したこと、本件土地の右共有者らが控訴人に対し、目録(二)の建物の収去及び同建物の敷地部分の明渡を求める訴えを提起し、請求認容の判決が確定したこと、本訴においても、控訴人が、目録(一)(三)の建物の敷地について、何らかの占有権原を主張するところがないことが認められ、以上の事実から控訴人が本件土地について占有権原を有しないことが推認される。従つて仮に控訴人が本件土地上に目録(一)(三)の建物を所有していたとしても、その建物の所有による土地の占有は不法占拠であり、右建物の収去義務を負う関係にある。しかし自らがある物件の所有権者であることを相手方が争つている場合には特段の事情のない限り、相手方に対し当該物件につき所有権を有することの確認を求める利益があるものと言わなければならず、土地の所有者であつてもその土地の不法占拠者に対して建物収去土地明渡の自力執行をなすことは許されず、不法占拠土地上の建物を収去するには建物所有者の承諾又は同人に対する債務名義を要するという点において、不法占拠者たる建物所有者は法律上の保護を受けることになり、かくて不法占拠者の一事をもつて直ちに確認の利益なしと言うことはできない。

また、<証拠>によると、目録(一)(三)の建物取り毀しにより動産化した物件の経済的価額は少額ではあつても零ではない。

つぎに控訴人が被控訴人申立にかかる強制執行を阻止する方法としては、民事執行法三八条の第三者異議の訴えを提起することができることは被控訴人主張のとおりであり、被控訴人が訴外会社の承諾を得たとして任意の取り毀しを計る場合には、所有権に基づき妨害予防の訴えか差止請求の訴えを提起してこれを阻止する方法もある。ところで先に述べた如く、控訴人は目録(一)(三)の建物の収去義務を負つているのであるから、仮に被控訴人が右建物の所有者が控訴人であることを前提として控訴人に対し、目録(一)(三)の建物の収去及び同建物の敷地部分の明渡を求める訴えを提起したならば、勝訴し、被控訴人は建物収去土地明渡の債務名義を得て適法に強制執行をなすことができる。従つて控訴人の本件訴えの目的が目録(一)(三)の建物の取り毀しを防ぐこと自体にあるとすれば、本件の具体的事実関係からして、本件訴えは無意味である。しかし本件訴えは建物の「違法な」取り毀しを防ぐ一つの方法となりうる点において訴訟の意味ある目的を見い出し得る。すなわち仮に目録(一)(三)の建物が控訴人の所有であるとすれば、被控訴人が訴外会社の承諾を得て(又は訴外会社に対する建物収去土地明渡の債務名義を得て)行う同建物の取り毀しは違法な行為である。被控訴人は目録(二)の建物収去及び同建物の敷地明渡の債務名義を有するが、右債務名義は明渡部分を右建物敷地部分に明白に特定しており、かかる債務名義の執行力が目録(一)(三)の建物に及ばぬことは明らかである。本件訴えにおいて仮に控訴人が勝訴すれば(請求認容となれば)、被控訴人は控訴人に対する目録(一)(三)の建物収去及び同建物の敷地部分の明渡の債務名義、又は取り毀しに対する控訴人の同意を得なければ、適法に右建物を取り毀すことができないことが明らかとなる。被控訴人が本件訴えに対する右のような裁判所の判断を無視して、違法な取り毀しに及べば、控訴人としては、所有権に基づく差止請求訴訟等(又は第三者異議の訴え)を提起せざるを得ないが、通常人であるならば、右裁判所の判断を尊重して取り毀しに対する控訴人の同意を得るべく努力するか、控訴人に対し目録(一)(三)の建物収去及び同建物の敷地部分の明渡の債務名義を得て適法な取り毀しを計ることが期待できる。また仮に本件訴えにおいて被控訴人が勝訴すれば(請求棄却となれば)、弁論の全趣旨により目録(一)(三)の建物の所有者であると主張する可能性のあるものはもはや訴外会社のみであることが認められるから、被控訴人が訴外会社の同意(又は訴外会社に対する建物収去土地明渡の債務名義)を得て目録(一)(三)の建物を取り毀すことは適法であることが明らかとなる。控訴人が既判力のある右のような裁判所の判断を無視して、被控訴人に対して所有権に基づく給付訴訟である差止請求等(又は第三者異議の訴え)を提起すれば、被控訴人としては応訴せざるを得ないが、通常人であるならば右裁判所の判断を尊重し、本件土地をめぐる両者の紛争は終局的に解決することが期待できる。右に述べた如く、本件訴えによつて被控訴人が目録(一)(三)の建物収去及び同建物の敷地の明渡の債務名義の名あて人となすべき相手方又は同建物の取り毀しを求めるべき相手方は控訴人か訴外会社かが確定され、控訴人・被控訴人間の本件紛争に直接的解決をもたらすから、他の方法を控訴人がとり得るからといつてただちに本件確認訴訟をもつて迂遠であり実益がないということもできない。

このように考えてみると本件訴えには確認の利益が肯定されるのであるが、原判決は控訴人の本件訴えを確認の利益のないことを理由に不適法として却下したものである。従つて民事訴訟法三八八条により原判決を取り消して事件を原裁判所に差し戻すべきであるから、主文のとおり判決する。

(林繁 杉山正士 生島弘康)

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