大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和56年(ワ)1727号 判決

【主文】

一 被告は、原告に対し、金三五万八八〇〇円及び別表実施料相当額欄記載の各金員に対し同表遅延損害金起算日欄記載の日から各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二 原告のその余の請求を棄却する。

三 訴訟費用はこれを七〇分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

【事実】

「第二 当事者の主張

一  請求原因

1(一)  原告は次の意匠権(以下これを「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という)を有していた。

出願 昭和四二年二月二一日(意願昭四二―五二三〇)

登録 昭和四四年六月一六日(第三〇一三八六号)

意匠に係る物品 取り付け用通風器

登録意匠 別紙意匠公報図面のとおり(ただし数字は当裁判所が付した)

なお、本件意匠権には、類似一ないし六の類似意匠が附帯している。

(二)  本件意匠権は昭和五九年六月一六日存続期間満了により消滅した。

2  本件意匠の構成は次のとおりである(数字は別表意匠公報図面のそれによる)。

(1)  外周枠1は矩形状をなし、横の長さが縦の長さの約二倍弱である。

(2)  外周枠1の表面の横の長さの中央の位置に、中縦棧2が垂直に連設し、脇縦棧3・3が中縦棧2の左右に同横の長さの約四分の一の巾の間隔を隔て垂直に並列して外周枠1の表面に連設している。

(3)  中縦棧2は、その長さが外周枠1の縦の長さの約一・五倍あつて両端が外周枠1の上下外方へ均等に突出し、先細りとなり先端で円形状となし、断面においてU字状となつている。

(4)  脇縦棧3・3は、その長さが外周枠1の縦の長さの約一・三倍あって、両端が外周枠の上下外方へ均等に突出し、先細りとなり先端で円形状となし、断面においてU字状となつている。

(5)  横棧4は、外周枠1の表面の縦の長さの中央の位置に、水平に連設し、その長さが外周枠1の縦の長さの約二・二倍あつて、両端が外周枠1の左右外方へ均等に突出し、先細りとなり、先端で円形状となし、断面においてU字状となつている。

(6)  はめ込み枠5は、外周枠1の背面側に突出し、その突出の長さが外周枠1の縦の長さの約〇・一三であつて、矩形状をなし、その縦の長さが外周枠1の縦の長さの〇・九で、その横の長さがその縦の長さの二倍である。

(7)  傾斜壁6は、五個あつて、はめ込み枠5の内側に等間隔で横に並列して連設し、はめ込み枠5の背面端7から外周枠1の表面壁8に向つて下り勾配に傾斜している。

(8)  通風棧9は、傾斜壁6の底面端10と外周枠1の表面壁8との間に等間隔で並列して一六本づつ四段に連設してある。

(9)  外周枠外縁11は、外周枠1の外周に、背面側の方向へ直角に突出し、その突出長さが外周枠1の縦の長さの〇・〇五であつて、外周枠1の表面と連設する角部が円弧状に形成され、かつ、外周枠外縁11の四隅の角部も円弧状に形成されている。

(10)  外周枠内縁12は、はめ込み枠5の内側面に連設し、その角部が円孔弧状に形成されている。

3  ところで「取り付け用通風器」は、家屋の天井裏の通風換気口に取り付けられているもので、従来から基本形状として横長の矩形状をなす外周枠と、はめ込み枠と、はめ込み枠内側に傾斜壁(通称ガラリという)が数段水平に並設されているが、これは、傾斜壁で雨や雪の吹き込みを防ぎつつ各傾斜壁間の間隙を通つて天井裏へ空気が流通するためのものである。

本件意匠は、その使用状態が家屋の外壁に取り付けられるから、外周枠1と中縦棧2、脇縦棧3・3と、横棧4とが外部に露出し、最も看者の注意をひく部分であり、中縦棧2が外周枠1の中央を垂直に貫通し、外周枠1の上下両端より突出し、かつ、脇縦棧3・3より長く突出しているのでより一層看者の注意をひき装飾美を引き立て、脇縦棧3・3が中縦棧2の左右に等間隔に並設されて緊張美と平衡美を呈し、更に横棧4が外周枠1の中央を横一文字に貫通突出していて安定観を与え、これらの各棧の両端部が先細りとなり、先端が円形状となつていて流動線状の美観を呈し、その断面形状がU字状で、その表面に丸味を与え、かつ、外周枠1の角部が円弧状に形成されて全体として丸味を与え、柔和感を呈し、全体的観察において、平衡美観と安定美観と流線美観と柔和美観とそれらの調和美とを表現し増大している。本件意匠の外観的特異性はこの点にある。

4  被告は別紙物件目録一記載の取り付け用通風器(以下「イ号物件」という)、同二記載の取り付け用通風器(以下「ロ号事(ママ)件」という)を業として製造し、販売している。

5  イ号物件の意匠の構成は、本件意匠の構成(1)ないし(10)と同一で、外観的特異性が同じであるから本件意匠の類似範囲に属する。

6  ロ号物件の意匠の構成は、傾斜壁6が四個であること、通風棧9は一二本づつ三段である点が相違するほか本件意匠の構成(1)ないし(10)と同一である。

そして右相違点につき検討するに、傾斜壁6の数が本件意匠のそれが五個であるのに対し僅か一個少ないにすぎず、通風棧9の本数が本件意匠は一六本づつ四段に対し、四本少なく、かつ、一段少ないにすぎない。しかも、傾斜壁6と、通風棧9はいずれも表壁8より底面端10の方へ入り込んでいて外部より見えにくい位置にあり、看者に最も注意をひく、中縦棧2、脇縦棧3・3、横棧4の形状、位置、長さの比が本件意匠と全く同一で外観的特異性が同じであるから、本件意匠の類似範囲に属する。

7  ところで、原告は昭和五四年一〇月五日被告との間で、甲第一二号証、乙第一号証記載の実施契約(以下「本件実施契約」という。)を締結した。本件実施契約では、実施料を仕入単価の三パーセントとし、本件意匠権の販売のみの通常実施権を許諾する旨の内容となつている。

8  被告は昭和五四年以降毎年イ号物件を五万八〇四九個、ロ号物件を九万四六四三個製造販売し、昭和五四年一〇月五日(前記契約日)から昭和五九年六月一六日(本件意匠権期間満了日)までの間にイ号物件を二七万〇五〇八個、ロ号物件を四四万一〇三六個製造販売した。右数字は、被告が昭和四四年一二月から昭和四六年一一月までの間にイ号物件を一一万六〇九九個(年平均五万八〇四九個)、ロ号物件を一八万九二八六個(年平均九万四六四三個)販売した(甲第三二号証)ことから推定した。

そして、被告はイ号物件を小売単価一六〇〇円、ロ号物件を小売単価一一〇〇円と表示したカタログ(甲第一六号証)を小売業者に配布して販売しており、右各物件は金物卸売業者の取扱店に属し、一般に、金物・荒物小売業者の売上粗利益率が一九・八パーセントであり、金物卸売業者の売上粗利益率が一八・七パーセントである(甲第二五号証)から、被告の仕入単価はイ号物件が一一二五円一五銭、ロ号物件が七七三円五四銭である。

1600円÷(1+0.198)=1335円55

1335円55÷(1+0.187)=1125円15

1100円÷(1+0.198)=918円19

918円19÷(1+0.187)=773円54

9  したがつて原告は右単価に実施料率三パーセントと前記各推定数量を乗じた合計一九三六万五六三一円の実施料債権を有する。

10  被告は、本件意匠権につき、販売のみの通常実施権を有するにすぎないにもかかわらず、前記のとおりイ号、ロ号物件を製造して本件意匠権を故意又は過失により侵害した。

原告は昭和四四年一二月三〇日訴外岸本成型株式会社(以下「訴外会社」という)に対し本件意匠権の製造のみを許諾する実施契約を締結し、品名「屋切Ⅴ型」の製造の実施料を一個につき三〇円と約定し(甲第三〇号証)ており、本件意匠権の製造についての実施料は一個当り三〇円が相当である。

そうすると原告は被告の右不法行為により二一三四万六三二〇円の実施料合計額相当の損害を蒙つた。

30円×(270.508個+441.036個)=21.346.320円

よつて、原告は被告に対し、「販売」の実施料一九三六万五六三一円から受取つた実施料二〇万一一八四円を控除した一九一六万四四四七円の内金一一四九万円及び「製造」の不法行為による損害金の内金一三二九万六〇〇〇円、合計二四七八万六〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の翌日の昭和五六年三月二四日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

【理由】

一請求原因1(一)の事実(本件意匠権の存在)は当事者間に争いがない。

二<証拠>によれば、本件意匠は請求原因2の構成を有することが認められ、また、右各書証及び取り付け用通風器が家屋の外側に取り付けられ、正面から見られる物品であることによると、本件意匠の要部は、矩形状の外周枠1に、横棧4を横方向に配置し、縦方向には中央に最も長い中縦棧2を一体、左右にこれより短い脇縦棧3・3二本合計三本を外周枠1を縦方向にほぼ四等分するようにそれぞれ配置形成する点にあるものと認めるのが相当である。

三被告が業としてイ号、ロ号物件(いずれも取り付け用通風器)を製造販売していることは当事者間に争いがない。

四1 イ号物件の意匠の構成が本件意匠の構成と同一であることは当事者間に争いがなく、イ号物件の意匠は本件意匠の類似範囲に属する。

2  <証拠>によれば、ロ号物件の意匠の構成は、傾斜壁6が四個であること、通風棧9が一二本づつ三段であること及び横棧4が上より二番目の傾斜壁6の上縁の小幅の垂直壁面と一体となつている点が相違するほか、本件意匠の構成と同一であると認められる。

そしてロ号物件の意匠は本件意匠の前記要部を備えており、前記各相違はいずれもささいな点であり、これらにより類似が否定されないことは、右相違があつても類似意匠として登録された例のあること(特に類似6、前記甲第七号証)によつて明らかであるから、ロ号物件の意匠は本件意匠の類似範囲に属する。

五請求原因7の事実(原被告間の本件実施契約の存在)は当事者間に争いがない。

ところで被告は本件実施契約により製造についても本件意匠の実施許諾を受けていると主張するので以下判断する。

1  原被告間で、甲第二〇号証、甲第四号証の一、乙第一号証の各契約が結ばれたことは当事者間に争いがない。

右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、以下の事実が認められる。

(一)  原告、被告は昭和四五年一月一四日本件意匠権につき「販売」の専用実施権を許諾する契約をなし(甲第二七号証、なお右契約書で被告は一時金として三二五万円を支払うこと、実施料は大卸価格の三パーセントとすること、原告は被告に納入している訴外会社及び大和技研工業株式会社が本件意匠の実施品の製造を承認すること、期間は五年とすることが定められた。)、昭和四五年三月六日範囲を販売とする専用実施権の登録がなされた。

一方原告は昭和四四年一二月三〇日訴外会社との間で本件意匠の実施品を被告に納入するために製造することを許諾し、期間は昭和四六年一一月一五日までで更新可能とし、実施料として一個三〇円を支払う旨約している。

(二)  更に昭和四五年四月二二日原告は被告との間で追加契約書を締結し、その範囲を製造販売とする専用実施権の登録をなした。

しかし原被告間で同日付契約書を作成し、右契約書には、右追加契約の目的を原被告両者が第三者による侵害行為を確実に排除するため便宜上作成したものであり、基本契約のみに従い実施されることが明記されている。

(三)  その後原告と高橋タカミとの間で類似品をめぐり、差止請求訴訟や無効審判請求事件がおこり、それに関連して被告が実施料の減額を求めたため原被告間でも紛争がおこり、被告は本件意匠の実施品(イ号、ロ号物件)を前記下請により製造させて販売し続けたものの、実施料の支払は中止した。

(四)  原被告は昭和五四年一〇月二日従来の紛争につき和解し、過去の実施料合計として二五〇〇万円を支払うこと、今後の工業所有権の通常実施権許諾に関する契約書を作成し、この場合の頭金を一〇〇〇万円とすることを約し、昭和五四年一〇月五日被告は原告に二五〇〇万円を支払つた。

(五)  昭和五四年一〇月五日、原告代理人宮崎弘と被告(担当者打土井正二)は契約条項を話合い、次の条項の乙第一号証(甲第一二号証と附則十一条の「にもとづき処理す」が「の適用を受け」と訂正されている点を除き同じ、以下同じ)が作成された(本件実施契約)。

「 第一条 甲(原告のこと)はその所有する意匠登録第三〇一三八六号並びに実用新案登録第九八九三三九号取り付用通風器全製品の販売について通常実施権を乙(被告のこと)に対し設定する。

第二条(実施料)(イ) 乙は通常実施権の設定金壱千万円也を本契約締結と同時に甲に対し現金にて支払う。

(ロ) 乙は甲に対して、乙の定める仕入価格の三%をその仕入数量に乗じた金額をランニングロイヤリテーとして支払う。

第七条(生産と販売) 甲乙は協議し品種を定めその生産と販売を行う。生産は甲乙協議の上成型業者を指定し販売は全て乙が総発売元としてこれを行う。」

(六)  原告は昭和五五年五月二二日付で右契約書第七条の協議を被告に申入れ、更に同年一〇月七日には実施品の製造を株式会社寺岡製作所に委託し、同社から被告に販売する旨の最終案を提示したが、被告はこれを拒否した。

なお原告は前記頭金一〇〇〇万円を昭和五五年六月一三日になつてようやく受取つたが、本件実施契約第九条に定めた証紙は被告の要請にもかかわらず被告に交付していない。

(七)  被告は本件実施契約後も従来どおり訴外会社及び大和技研工業株式会社に下請させてイ号、ロ号物件を製造させこれを販売しており、右数量及び実施料を原告に報告し、右実施料を支払つている。

2 そこで、本件実施契約が被告に製造の実施権を許諾したものであるか否かにつき検討するに、右のとおり原告は従前から実施権につき製造と販売を区別して契約書を作成しており、本件実施契約では実施権は「販売」について与えられている旨の記載があり、そのほか、実施料は仕入価格を基準とし、甲乙協議の上成型業者を指定するとの条項があるなど、被告に「販売」の通常実施権を与えることを前提とした記載がみられることを考えると、本件実施契約により被告自身に製造の実施権を許諾したことを認めることはむつかしく、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

<証拠判断略>

3 したがつて、本件実施契約により製造の実施権についても許諾を受けたとする被告の前記主張は採用できない。

六また、被告は、訴外会社は原告から本件意匠権につき製造に関する実施許諾を受けており、訴外会社から納入を受けている被告の行為は侵害とはならない旨主張し、前記のとおり昭和四四年ころ原告と訴外会社の間に本件意匠権の製造に関する実施契約がなされたことがあるものの、本件で原告が損害賠償を請求している昭和五四年一〇月五日以降、原告が訴外会社に製造の実施権を許諾したことを認めるに足りる証拠はなく(なお、証人矢野侑の証言中に現在も原告と訴外会社間に実施契約が存するかのような証言があるが、原告の方で成型業者を株式会社寺岡製作所とする案を提示している事実(五1(六))に照らすと採用できない)、したがつて被告の前記主張はその前提を欠き採用できない。

七被告が原告に二〇万一一八四円の実施料を支払つたことは当事者間に争いがない。

右事実に、<証拠>を総合すると、被告は昭和五四年一〇月五日から昭和五九年六月一六日までの間、被告が下請から仕入れて販売したイ号、ロ号物件につき仕入数量、仕入価格、実施料額(仕入価格の三パーセント)を原告に報告し、右各実施料を支払つてきたことが認められる。

ところで、原告は仕入数量につき昭和四四年一二月から昭和四六年一一月までの間のイ号、ロ号物件の数量を前提として昭和五四年ないし昭和五九年の間の数量を主張し、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第三二号証によれば、昭和四四年一二月から昭和四六年一一月までの間に被告が原告主張の数のイ号、ロ号物件を販売したことが認められるが、製品のライフサイクル(一般には年がたつに従つて販売数量は下がつてくる)、社会経済の変化を考えると、右数量をそのまま約一〇年後の昭和五四年ないし昭和五九年の販売数量として認めることは困難であり、甲第三四号証(別件の原告本人尋問調書)にもイ号、ロ号物件の販売数量の供述があるが客観的な裏付けがなく、甲第一〇号証にも昭和四九年ないし昭和五三年のイ号、ロ号物件及び屋切Ⅲ型の合計の販売数量が記載されているが、前記甲第三二号証と同様の理由で採用できず、被告が原告に報告した仕入数量を超える部分について他にこれを認めるに足りる証拠はない。

更に原告は仕入価格について請求原因8で種々主張し、成立に争いのない甲第一六号証(被告カタログ、イ号物件につき一六〇〇円の表示がある)、甲第二五号証(中小企業の経営指標)を提出しているが、昭和五四年当時イ号、ロ号物件の卸価格がそれぞれ五〇〇円、四〇〇円である旨の供述があり(甲第三四号証)、また右甲第二五号証の数字が一般的な数字にすぎないことを考えると、原告の主張する仕入価格を採用することはむつかしく、被告の原告に報告した仕入価格を超える部分について他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがつて、被告が、原告に報告した仕入価格、仕入数量に基づき実施料を支払つている本件では、被告に販売に関する実施料支払の点につき債務不履行があつたものとは認められない。

八被告は下請を使つて業としてイ号、ロ号物件を製造しており、販売につき通常実施権を有していても、製造の点で本件意匠権を侵害することが否定されるものではない。

そして右侵害は過失によるものと推定され(意匠法四〇条)、被告は実施料相当の原告の蒙つた損害を賠償すべき義務がある(同法三九条二項)。

ところで、原告が被告の右製造を不法行為としてこれに因る損害賠償請求権の行使を、販売実施料の請求とは別個独立したものとして始めて明確に主張したのは、昭和五九年七月一八日付第六準備書面の陳述(同月一七日受付)によつてである(訴状請求原因九項の記載では全体を通じ、不法行為を理由とした販売に因る損害賠償の請求と解されるにすぎない。また、昭和五九年四月一〇日付請求の趣旨訂正申立書の記載でも同じく販売に因る不当利得金の返還請求となつている。)から、遅くとも昭和五六年七月一六日以前の製造分については、原告が損害及び加害者を知つた時から三年を経過しており、原告の方で中断を主張していない本件においては、被告の昭和五六年七月一六日以前の不法行為責任は時効によつて消滅しているものといわざるをえない。

そこで製造に関する実施料につき検討するに、前記のとおり原告は昭和四四年一二月三〇日訴外会社に対し本件意匠権の製造のみの実施権を一個当り三〇円の実施料で許諾し(甲第三〇号証)、また原告は訴外会社が納入した本件意匠権の実施品を被告に大卸価格の三パーセントの実施料をとつて販売の専用実施権を許諾しており(甲第二七号証)、製造について本件意匠権の実施料は一個当り三〇円をもつて相当と認められる。

そうすると実施料合計額は、<証拠>によると昭和五六年七月一七日以降昭和五九年六月一六日までの製造(下請会社からの仕入)数量は別表該当欄記載のとおり(ただし〔昭和五六年七月一六日から同年八月一五日までの報告分〕の仕入数量のうち昭和五六年七月一七日以降の分の数量は日数割により算出した。)であり、右個数に三〇円を乗じた別表実施料相当額欄記載金額、合計三五万八八〇〇円となる。

九よつて本訴請求は、三五万八八〇〇円及び別表実施料相当額欄記載の各金員につきその不法行為の日以後である同表遅延損害金起算日欄記載の日から各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があ<る。>

(潮 久郎 紙浦健二 徳永幸藏)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!