大阪地方裁判所 昭和56年(ワ)7067号 決定
【主文】
被告は、別紙記載の各文書を当裁判所に提出せよ。
【理由】
一原告らは、「被告は、関西電力株式会社、大阪瓦斯株式会社(以下、関電、大阪ガスという。)がそれぞれ電気、ガスの料金の値上げ改定を内容とする供給規定の変更を申請したところ、昭和五五年三月二一日適正な手続を踏まず、かつ適正な原価査定を行わないで、適正利潤を大幅に越えて右各事業者に過大な利潤がもたらされるような価格変更(料金値上げ改定)を認可した。よつて、右関電、大阪ガスと電気、ガスの供給契約を結んでいる原告らは、不当に高額の料金を支払わざるを得なくなり、適正価格との差額相当分の損害を被つた。」として、被告を相手に損害賠償請求の訴を提起し、この訴訟において、別紙記載の各文書につき、所持者を被告とし、同記載のとおり「証すべき事実」、「提出義務の原因」を開示して提出命令の申立をなした。
これに対し被告は、「別紙記載の各文書につき原告らのなした提出命令の申立は、証すべき事実の明示において不十分である。また、右各文書は、いずれも挙証者たる原告らの利益のために作成されたものでないし、行政機関の内部文書であつて、挙証者たる原告らと所持者たる被告との間の法律関係につき作成されたものとも解し難い。さらにこれらの文書の内容公開は、作成当初から予定されておらず、ことに物価安定政策会議特別部会議事録については関係人の秘密尊重にも背馳することになる。いずれにせよ被告においてこれらの文書を提出する義務を負うものでなく、その提出命令の申立は、却下を相当とする。」との意見を述べた。
二別紙記載の各文書を被告が所持していることは、被告も認めて争わず、これによつて証すべき事実も原告らにおいて一応明示していると解することができる。そして右各文書は、いずれも被告国の行政機関たる通商産業大臣が関電、大阪ガスの本件各供給規定の変更(料金値上げ)を認可する手続の過程において作成された文書であつて、右認可の当否に関する判断資料となる記載を包含するものと推測され、認可処分によつて間接的にせよ多少とも経済的損失を被つた電気、ガスの需要者たる挙証者の原告らと、認可処分が違法であれば原告らに対し損害賠償責任を負うべき文書所持者の被告との間の広い意味での法律関係を対象としていると解され、民事訴訟法第三一二条第三号後段の要件を具備したものというに十分である。被告の指摘する秘密保持の必要性も、右各文書に関する限り、訴訟における真実発見を犠牲にしてまでこれを認めねばならぬ事情があるとは思えない。従つて、被告は、これらの文書の提出を拒み得ないものである。
以上の理由により、本件文書提出の申立が法定の要件を具備しているものと認め、かつ、本件の訴訟における原告らの立証のため相当なものと思料し、これを認容することとして、主文のとおり決定する。
(戸根住夫 大谷種巨 木下秀樹)
【別紙】
一 文書の趣旨及び証すべき事実
(一) 関西電力料金改定申請及び認可の一件記録から
1、昭和五五年二月二一、二二日開催の本件事案についての公聴会の要約にかかる公聴会調書
これは、公聴会議事録の要約調書である。これにより、陳述人らの意見陳述の内容が不当に要約されていること、通産省が本件査定を行つた際に資料とするには不充分であつたこと、通産大臣が法一〇八条にいう広く一般の意見を聞いたことにならないことを立証する。
2、物価安定政策会議特別部会議事録(昭和五五年二月二五日)
これは、関電等の本件申請内容等についての物価安定政策会議の委員の意見及び討議の結果を明記した書面である。これにより物価安定政策会議特別部会での審議内容を明らかにし、通産省が右特別部会の討議の結果をさえ無視して本件査定を行つた事実を立証する。
3、査定報告書
これは、通産省の本件改定における査定基準たる供給規定料金算定要領により、本件申請を査定した結果を大臣及び物価問題に関する昭和五五年三月一九日の関係閣僚会議等に報告した文書である。これにより、適正な査定に基づかない報告がなされたことを立証する。
(二) 大阪ガス料金改定申請及び認可の一件記録から
1、昭和五五年二月三日開催の本件事案についての公聴会の要約にかかる公聴会調書
これは、公聴会議事録の要約調書である。これにより陳述人らの意見陳述の内容が不当に要約されていること、通産省が本件査定を行つた際に資料とするには不十分であつたこと、通産大臣が法四八条にいう広く一般の意見を聞いたことにはならないことを立証する。
2、物価安定政策会議特別部会議事録(昭和五五年二月二五日)
これは、大阪ガス等の本件申請内容等についての物価安定政策会議の委員の意見及び討議の結果を明記した書面である。これにより物価安定政策会議特別部会での審議内容を明らかに、通産省が右特別部会の討議の結果をさえ無視して本件査定を行つた事実を立証する。
3、同査定報告書
これは、通産省の本件改定における査定基準たる供給規定料金算定要領により、本件申請を査定した結果を大臣及び物価問題に関する昭和五五年三月一九日の関係閣僚会議等に報告した文書である。これにより、適正な査定に基づかない報告がなされたことを立証する。