大阪地方裁判所 昭和56年(ワ)7848号 中間判決
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【判旨】
一原告が本訴提起の六月前から会社の株主であり、被告が昭和五三年七月一日から会社の代表取締役の地位にあること及び原告は会社の監査役泉辰一に対し昭和五六年九月七日付同月九日到達の書面をもつて取締役たる被告に対する責任追及の訴えを提起することを請求したが、同監査役がその後三〇日内に右の訴えを提起しなかつたことはいずれも当事者間に争いがないところ、本件会社は資本の額が一億円以下の株式会社であることについても当事者間に争いがないから、監査特例法二五条により本件会社につき商法二七五条の四の適用はなく、したがつて、右の監査役に対する請求をもつて原告が商法二六七条一項所定の手続を履践したものとは認められないから、本件訴えの提起には手続欠缺の瑕疵のあつたことが明らかである。
二ところで、原告が改めて会社に対し昭和五七年一月七日付同八日到達の書をもつて取締役の責任追及の訴えの提起を請求し、その後三〇日内に会社が被告に対する訴えを提起しなかつたことは当事者間に争いがないから、以下その効果につき検討する。
商法二六七条一項、二項が、株主に代表訴訟を提起する権能を認めながらも、その訴訟提起前に書面をもつて会社に対し取締役の責任追及の訴えの提起を請求すること及び一定期間内に会社がその訴えを提起せざることを要件としたのは、一つには会社に対し会社自ら取締役の責任を追及するべき義務の懈怠を是正する機会を与えるとともに、二つには株主にも慎重な手続を踏ませることによつて濫訴の弊を防ごうとするところにその目的があるものと解される。
この観点から本件をみると、原告が本訴提起の後改めて会社に対する同法条所定の手続を履践し、その後同法条所定の期間である三〇日内に会社が被告に対する責任追及の訴えを提起していないのであるから、これにより右の二つの目的は実質的に充たされており、かつ、仮に本件訴えを不適法のものとして却下したとしても、原告は改めて直ちに本訴と同一の訴えを適法に提起することができるのであつて、これを却下する実益に乏しく、また、訴訟経済にも合致しないものといわざるをえない。
三以上から、当裁判所は、原告が本件提訴後昭和五七年一月七日付翌八日到達の書面をもつて会社に対する取締役の責任追及の訴えの提起の請求をして三〇日内に会社が右の訴えを提起しなかつたことをもつて、本件訴えの訴訟要件たる商法二六七条一項、二項についての手続上の瑕疵は治癒されたものと判断するものである。
よつて、主文のとおり中間判決する。
(潮久郎 久保内卓亞 吉田京子)