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大阪地方裁判所 昭和57年(わ)759号 判決 1982年5月31日

本籍

大阪市此花区梅香一丁目九番地の一

住居

同区梅香二丁目五番一号

型枠工事請負業

阿部勇

昭和六年九月三〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤村輝子出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金一、八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は肩書住居地において、阿部工務店の名称で型枠工事請負業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、架空経費を計上し、仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年分の実際総所得金額が二、七九八万七〇七円(別紙(一)修正貸借対照表、修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年三月一三日、大阪市此花区伝法一丁目四番一六号所在の所轄此花税務署において、同税務署長に対し、同五三年分の総所得金額が九八二万七、五〇〇円でこれに対する所得税額が二二〇万一、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一、一〇五万八、二〇〇円と右申告税額との差額八八五万七、〇〇〇円を免れ、

第二  昭和五四年分の実際総所得金額が五、六六四万三、九五六円(別紙(二)修正貸借対照表、損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の総所得金額が九一四万九、〇〇〇円でこれに対する所得税額が一八四万一、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二、八八四万五、二〇〇円と右申告税額との差額二、七〇〇万三、七〇〇円を免れ、

第三  昭和五五年分の実際総所得金額が七、九五三万五、〇三九円(別紙(三)修正貸借対照表、修正損益計算書参照)、あったのにかかわらず、同五六年三月一六日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の総所得金額が一、七二八万九、三三三円でこれに対する所得税額が五四二万七、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四、四一二万八、七〇〇円と右申告税額との差額三八七〇万八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  収税官吏の被告人に対する各質問てん末書一五通

一  阿部興志勝、中村市郎右衛門の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の阿部興志勝(三通)、好岡佑一郎、恒松敏夫(二通)、真鍋恒憲、吉田敏彦に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書一〇通

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和五三年分)

一  被告人作成の昭和五三年分所得税確定申告書謄本

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和五四年分)

一  被告人作成の昭和五四年分所得税確定申告書謄本

判示第三の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和五五年分)

一  被告人作成の昭和五五年分所得税確定申告書謄本

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては、改正後の所得税法二三八条一項に、各該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条によりいずれについても軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ各罪につき情状により所得税法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一年二月及び罰金一、八〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により、全部被告人の負担とする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

別紙(一)

修正貸借対照表

事業所得

昭和53年12月31日現在

<省略>

修正損益計算書

自 昭和53年1月1日

至 昭和53年12月31日

<省略>

別紙(二)

修正貸借対照表

事業所得

昭和54年12月31日現在

<省略>

修正損益計算書

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

<省略>

別紙(三)

修正貸借対照表

事業所得

昭和55年12月31日現在

<省略>

(三)

修正損益計算書

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

<省略>

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