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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)4323号 判決

一 請求原因1の事実(原告らが本件実用新案権を有すること)は当事者間に争いがなく、右争いのない本件考案の「実用新案登録請求の範囲」の記載、成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案公報、別添実用新案公報に同じ)によれば、本件考案の構成要件は、L字形側溝の鋳鉄製蓋である点を含め、請求原因2(一)記載のとおり分説するのが相当である(この点は被告の認めるところである。)。

二 被告が、昭和五六年一一月以降イ号製品を業として製造販売していることは当事者間に争いがなく、イ号製品を説明したものであることにつき当事者間に争いのない別紙目録の記載によればイ号製品の構成は請求原因4(一)記載のとおり分説するのが相当である。

三 そこで、イ号製品が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて考える。

1 イ号製品の構成(2)´、(4)´と構成要件(1)を対比すると、イ号製品は凸状部2を前後方向に一定間隔の下に配設しており、貫通孔5が一か所しかない点で本件考案と相違しており、このこと自体は原告の自認するところである。

しかるところ、原告らは、右イ号製品の構成(2)´、(4)´は構成要件(1)と均等であると主張するので、以下その当否について検討する。

原告らの均等の主張を肯認するためには、イ号製品の構成(2)´、(4)´が前記のとおり一見構成要件(1)を充足していないにもかかわらずそのもたらす作用効果が構成要件(1)の作用効果と同一であることがとりあえず必要である。

そこで、本件考案が構成要件(1)を採用した目的、作用効果についてみるに、前記甲第二号証によると本件公報には次のとおり記載されていることが認められる。

「上面に辷り止め用の凹凸模様と多数の通孔とを形成すると共に」(第一欄三五、三六行目)

「該凸状部相互間の基(「碁」の誤り)盤の目状空所部に、平坦底面部4を有する凹状部5と貫通孔6とを交互に配設し、且つこの蓋ブロツク本体1の周縁には、上記凸状部2の頂面3と同一の高さhの枠7を形成して第一図に示す如き模様状とする」(第二欄一〇ないし一四行目)

「鋳鉄製の蓋ブロツク本体1の上面に形成した凸状部2、凹状部5、貫通孔6並びに枠7等によつて模様化した」(第二欄三〇ないし三二行目)

また、いずれも成立に争いのない甲第三、四号証によれば、洗場床において排水溝から排水孔に水が流れるように構成し、その他は任意の模様状に形成すること、及び洗い場付浴槽載置台において各溝から排水口に向つてそれぞれ下り坂の勾配が付されていて水が流れるように構成されていることが公知であることが認められる。

右で認定の本件公報の各記載及び公知技術に弁論の全趣旨を総合すると、本件考案は、構成要件(1)を採ることにより、多数の凸状部、凹状部と多数の貫通孔を模様化して配設しすべり止めと排水の作用効果を得ることを目的としているということができる。

そこでイ号製品について右作用効果の存否を検討するに、イ号製品であることにつき争いのない検甲第一号証及び弁論の全趣旨によれば、まず貫通孔については本体前縁左側に一個設けられているのみであり、本件考案における本体全体に亘り分散配設された多数の貫通孔と比較すると排水の作用を殆んど営まずかえつて、その位置からすれば、イ号製品の貫通孔は該渡り板を路面に固定するためのアンカーボルト等を設置するためのものであること、そして、イ号製品にあつては、本体上面に落下する雨水の類の相当量を、その構成(2)´中の「本体上面周囲を囲みその中をX状となす部分3」の平滑面を伝い路面に流下させることにより排水の作用効果を得ていることが窺われる。そうするとイ号製品の構成(2)´、(4)´は本件考案の構成要件(1)とは技術思想を異にし、作用効果も相違するから右構成要件と均等ということはできない。

よつて、イ号製品は本件考案の構成要件(1)を充足しない。

2 また、原告らはイ号製品の構成(5)´(イ)(ロ)(ハ)は構成要件(3)を充足すると主張する。

そこで本件考案の構成要件(3)のもたらす作用効果についてみるに、前記甲第二号証によれば、本件公報には右構成要件における「平坦繋ぎ片」の実施例及び作用効果の説明として、「平坦繋ぎ片8、8´は第4図、第5図に示す如く断面L字形をなす側溝14に沿う如く、該下端縁15、16も亦L字形に形成すると共に、その一部に切欠部17を設けて、この切欠部を通じ排水が(「を」の誤り)自由に流通させ、且つこの平坦繋ぎ片で蓋ブロツク本体上面から加わる荷重を支える如き補強骨とする」(本件公報第二欄二三ないし二九行目)との記載、「(5)各ブロツク本体上に掛かる荷重は背面部の繋ぎ片で支持されるから、側溝の縁が破損したりすることがないこと」(本件公報第四欄七ないし九行目)との記載がなされていることが認められ、右の記載によれば、本件考案における平坦繋ぎ片は、鋳鉄製蓋相互の連結片としての機能を営む(本件考案の構成要件(4))と同時に、構成要件(3)のとおりL字形側溝に沿う如く形成することにより蓋ブロツク本体に掛かる荷重を支持する補強骨としての作用効果をも兼ね備えていることが認められる。

これに対して、イ号製品の構成(5)´(イ)(ロ)(ハ)は本体背面部に小突起、繋ぎ片、支柱を設ける構造にかかるところ、L字形側溝に設置した状態で繋ぎ片は側溝に接することはなく本体上の荷重を支える効果のないことが認められ、してみるとイ号製品は、繋ぎ片には連結作用のみをもたせ、本体上の荷重を支えるための支持片というべき支柱を右繋ぎ片とは別に独立して設ける技術を採用したものであるということができる。

そうするとイ号製品の構成(5)´(イ)(ロ)(ハ)は本件考案の構成要件(3)とは作用効果を異にするから構成要件(3)を充足しない。

3 右判示したところによれば、イ号製品は、構成要件(1)、(3)を充足せず、イ号製品の構成(2)´、(4)´が本件考案の構成要件(1)と均等なものであるともいえないから、登録出願前公知公用を理由に本件考案の技術的範囲につき限定解釈をなすべきか否かを問うまでもなく、本件考案の技術的範囲に属しないというべきである。

四 以上のとおりとすれば、被告が業としてイ号製品を製造、販売することは原告らの本件実用新案権を侵害するものではないから右侵害を前提とする原告らの本訴請求はすべて理由がない。

よつて、原告らの本訴請求をいずれも失当として棄却することとする。

〔編註その一〕本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。

1 原告らは次の実用新案権(以下これを「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有している。

考案の名称 L字形側溝の鋳鉄製蓋

出願    昭和五一年六月一二日(実願昭五一―七六八七六)

公告    昭和五五年三月二六日(実公昭五五―一三四四九)

登録    昭和五五年一二月二五日(第一三六〇〇三九号)

実用新案登録請求の範囲

「(1)上面に、頂面3が平坦面と(「を」の誤り)なす凸状部2を突出させてこれを縦横一定間隔の下に配設すると共に、該凸状部相互間の空所部に貫通孔6を配設し、且つ周縁に上記凸状部と同一の高さの枠7を設けた蓋ブロツク本体1に於ける該蓋ブロツク本体の左右両端突合わせ縁背面部に、側溝に沿う如く形成し且つ下端縁15、16に切欠部17を設けた平坦繋ぎ片8、8を一体的に設け、これと隣接の繋ぎ片とをボルト12とナツト13にて結合して連設するL字形側溝の鋳鉄製蓋。

(2) 省略」

2 本件考案の構成要件及び作用効果は次のとおりである。

(一) 構成要件

L字形側溝の鋳鉄製蓋であつて、

(1) 蓋ブロツク本体1の上面に、頂面3が平坦面をなす凸状部2を突出させてこれを縦横一定間隔の下に配設すると共に、該凸状部相互間の空所部に貫通孔6を配設し、

(2) 且つ周縁に上記凸状部と同一の高さの枠7を設け、

(3) 該蓋ブロツク本体1の左右両端突合わせ縁背面部に、側溝に沿う如く形成し且つ下端縁15、16に切欠部17を設けた平坦繋ぎ片8、8を一体的に設け、

(4) これと隣接の繋ぎ片とをボルト12とナツト13にて結合して連設すること。

(二) 作用効果

(1) 短い長さ寸法の蓋ブロツク本体をL字形側溝上に沿い連設して被覆するので、側溝自体に凹凸があつたり全長に亘り湾曲変形していてもよくこれに添い被覆し、車輛の通過時にガタガタしない。

(2) 車輛の荷重が掛かつて破壊することがあつても、その部分だけの取替えですみ交換が自由に行われる。

(3) 車輛の重量が局部的に掛かつて歪むことがあつても、これが蓋ブロツクの全長に波及しない。

(4) 蓋ブロツク本体は短寸法のものであるから、荷造りが容易であり、輸送に都合がよい。

(5) 各蓋ブロツク本体上に掛かる荷重は背面部の繋ぎ片で支持されるから、側溝の縁が破損したりすることがない。

(6) 上面の雨水等が本体の空所部を通つて貫通孔から排水される。

〔編註その二〕本件に関する目録は左のとおりである。

目録

イ号図面説明書

一 イ号図面の簡単な説明

第一図は正面図

第二図は背面図

第三図は右側面図

第四図は平面図

第五図は底面図

第六図は斜視図(1)

第七図は斜視図(2)

二 イ号図面の詳細な説明

側溝用鋳鉄製渡り板において、渡り板本体1は前後方向にゆるやかなアーチ状となし、本体上面に、上面が縄模様の、左右方向に細い帯状の直線で且つ適宜の高さをもたせた凸状部2を前後方向に一定間隔の下に配設し、その凸状部の間は、本体上面周囲を囲みその中をX状となす部分3を平滑面とする外は粗面となし、本体上面周縁に、本体上面の右平滑面から若干突出した外縁部4を設け、本体前縁左側に貫通孔5を設け、本体左右縁各下面において、その後方に右本体の後縁上面がL字形溝の上縁表面の高さに一致するよう所要の長さを有し、且つ断面をT字状として側溝ブロツク接続部の目地部分に嵌入しないよう左右方向に十分の断面巾を有するようにした支柱6、6´を、その前方に小突起7、7´を、右両者の中間に、左右方向にボルトの貫通孔9、9´を設けた適宜の形状を有する繋ぎ片8、8´を、右支柱後面と右小突起前面とがそれぞれ右本体の後縁、前縁から等距離で且つ右支柱後面から右小突起前面までの距離がU字形溝の幅員内法寸法に一致するよう配設したL字形溝、U字形溝兼用渡り板。

以上

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