大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)6710号 判決
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【説明】
請求の原因は、次のとおり。
「一1 原告は、原告ほか一名を被告とし、被告ほか一名を原告とする大阪地方裁判所昭和五五年(ワ)第七九三三号商標使用禁止等請求事件につき、昭和五七年一月一九日、「一 被告有限会社曽呂利は、別紙(二)(三)記載(本件における別紙(一)(二)記載に相当)の各標章を同会社の商品である和菓子・洋菓子(カステラを含む)の容器、包装紙、栞に付し、又はこれを付した右商品を販売してはならない。二 被告有限会社曽呂利は、その店舗の看板に前項の標章を付してはならない。三 被告有限会社曽呂利は、第一項の標章を付した容器、包装紙、栞を廃棄せよ。四 被告有限会社曽呂利は、同会社本店(肩書住所)における別紙(二)、(三)の(2)記載(本件における別紙(一)、(二)の(2)記載に相当)の各標章を表示した看板、同会社河東店(徳山市河東町)の建物に設けた別紙(二)記載(本件における別紙(一)記載に相当)の標章を廃棄せよ。(以下略)」との判決の言渡を受け、右判決はその後確定した(以下「本件判決」という)。
2 被告は、被告を債権者、原告を債務者として、執行力のある本件判決の正本に基づき、「債権者は第三者をして、債務者の費用で別紙(本件における別紙「授権決定添付」に相当)記載の各標章の表示を廃棄することができる。」との代替執行の申立(大阪地方裁判所昭和五七年(ヲ)第一〇〇〇八号)をし、昭和五七年六月五日その旨の授権決定を得た(以下「本件決定」という)。
二 被告は、執行官に委任して、昭和五七年七月一四日、本件決定に基づき、別紙「授権決定添付」記載の債務者の菓子容器、包装紙看板等に記載されている「(有)曽呂利」の「曽呂利」の部分をマジックインキ等で塗り潰して廃棄し代替執行を行つた(以下「本件執行」という)。」
【判旨】
一請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二そこで、本件執行が違法なもので不法行為を構成するか否かについて検討する。
1 <証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。
(一) 被告の代理人村林隆一は、本件判決の執行のため本件決定を得た上、昭和五七年七月一四日、山口地方裁判所徳山支部執行官井関達に委任して本件執行をなさしめたが、その執行の対象となつた「(有)曽呂利」の表示中に「曽呂利」の部分をマジツクインキ等で抹消することにより廃棄執行がなされたものは次のとおりである。
① 和菓子外郎の包装紙に表示されている横書きの「(有)曽呂利」
② 本外郎の箱に表示されている横書きの「(有)曽呂利」
③ 箱外郎の箱に表示されている縦書き、横書きの各「(有)曽呂利」
④ 掛紙(小)に表示されている縦書きの「(有)曽呂利」
⑤ 掛紙(大)に表示されている縦書きの「(有)曽呂利」
⑥ 掛紙(大)に表示されている縦書きの「(有)曽呂利」
⑦ カステラ一斤箱に表示されている横書きの「(有)曽呂利」
⑧ 包装紙に表示されている縦書きの「(有)曽呂利」
⑨ 看板に表示されている各横書きの「(有)曽呂利」
(二) 右①ないし⑨の「(有)曽呂利」のうち、「(有)」の部分は活字のゴシック体(①・②及び③のうち横書きのもの)、又は活字の明朝体(④ないし⑧)で表示されているか、あるいは特に一般需要者の注意を惹くことのない書体(③のうち縦書きのもの及び⑨)で表示されているのに対し、「曽呂利」の部分は、本件判決・決定の主文において廃棄の対象とされている別紙(一)(2)の「曽呂利」の標章をそのまま、あるいは縦書きにして表示している。
右のとおり認められる。
2 原告は、右で認定した(有)曽呂利の標章が原告の商号を表示するものであるから、商標法二六条一項一号に該当する旨主張するところ、右条項によつて商標権の効力の範囲外とされる自己の名称は普通に用いられる方法で表示されていることを要し、この普通に用いられる方法とは、商標中における右名称の表示態様が普通一般に行われる方法によることを要し、自己の名称といえども、特殊な態様の表示、すなわち一般の注意を惹くような字体のように特別顕著性を備えている場合には、右の普通に用いられる方法で表示されていないものとして、商標権の効力を受けるものといわなければならない。
これを本件につきみるに、前認定の事実に<証拠>によれば、原告が包装紙等に表示していた「(有)曽呂利」のうち本件執行の際抹消された「曽呂利」の部分は、一般需要者の目を惹くに足る特殊な字体で記載されているから、原告の商号が有限会社曽呂利であり、(有)が有限会社の略称であるとしても、前記「(有)曽呂利」をもつて、原告が自己の商号を普通に用いられる方法で表示したものとは認められない。
そうだとすると、被告が本件決定に基づき、前判示のとおり、「(有)曽呂利」の表示のうち「曽呂利」の部分を抹消して廃棄した本件執行について、これを違法と認めることはできない。
(金田育三 鎌田義勝 若林諒)
(別紙「授権決定添付」)
(1) 債権者の商品である和菓子、洋菓子(カステラを含む)の容器、包装紙、栞に付された別紙(一)、(二)記載の各標章の表示。
(2) 債務者本店(徳山市銀南街)における別紙(一)、(二)の(2)記載の標章を表示した看板、債務者河東店(徳山市河東町)の建物に設けた別紙(一)記載の標章の表示。