大判例

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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)7487号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

3 休業損害

(一) <証拠>によれば原告は、事故当時、市ひなという芸名で、日本舞踊及び唄をおりまぜたタレントとして、テレビ、ラジオに出演するかたわら、主として舞台、クラブ出演、祝賀会のショーなどへの出演料により収入を得ていたものであるが、昭和五六年度の収入は、総合計一、九五四万円に達したこと、一般に、プロダクショソを通じたときの出演料は、一回公演で一ないし二回のステージでは一日一一万一、一一一円、二日間にわたれば二二万二、二二二円、一回公演でも三回のステージでは五割増となること、プロダクションを通じることなく、原告が直接スポンサーと交渉するときの出演料は、プロダクションを通じたときより割高となるのが通例であること、原告の昭和五六年度収入のうち、松竹芸能社において企画された昭和五六年四月八日の紅葉パラダイスにおける出演料は、一一万一、一一一円(税引き後の原告受取額は一〇万円)であつたものの、当初のとりきめと異なり、三回ステージに変更されたこともあつて、当時の松竹芸能社担当者札野個人が五万円を負担したこと、およそタレソト業を営む者の収入は、謝礼・車代・祝儀などという名目で出演料が支出され及びこれに加算されることがあり、また、原告の如く、タレント業を営むものの収入を確定するには、原告への依頼者が種々の名目で出演料を支出していることから、プロダクションを業とする者が原告に支払う出演料については、税務対策上、一定の限度で出納帳簿に記帳するが、その余は、出納帳簿に記帳しない場合もあるうえ、プロダクションを通さない依頼者においては、主催する会の性質などから、正規の支出方法を採らないこともあつて、原告の収入額を確定するためには、出演依頼者に対する反面調査では確定しえず、原告の正確なメモに基づきこれを確定する以外にないこと、原告は、舞踊を主としたタレント業を営むことから、着物、カツラ、タクシー代など相当程度の経費を要し、昭和五六年度の必要経費については、収入額の三七%(所得率にもとづく)程度はこれを要したこと、及び事故後原告が稼働しはじめたのは、昭和五七年一二月中旬ころであつたこと以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二) ところで、原告は、必要経費を一五%と主張するが、原告本人尋問の結果によるも、これを明らかにする供述はなく、右主張は採用できない。また、被告は、札野個人の支出を虚偽とし、支出者側の帳簿などに基づく裏付けのない証明書は信用できず、全体として、原告の収入の証明がないことに帰し、原告自身の確定申告書に基づく収入もしくは同年代女子平均賃金により原告の収入を認定すべきである旨主張する。しかしながら、右認定の如く、札野個人の支出には、これを正当化する理由が認められ、また、原告の職業の特殊性から、原告の収入を確定するには、依頼者への反面調査では不可能もしくは不充分であつて、原告のメモに基づくほかないことが認められる本件では、原告のメモの内容の多くを裏付ける証明書が証拠として提出されているのであるから、原告のメモを正確性のあるものとして、これに基づき、原告の収入額を確定すべきものというべきである。ところで、被告は、右の如く原告の収入を実収入で把握する場合には、所得税分は控除されるべき旨を主張するが、所得税法上、損害賠償として被害者の得た所得を一時所得として非課税とするか否かは、所得税法上の立法政策の問題であつて、国が被害者から税を徴収することをやめていることが、その分だけ加害者の負担を免れる根拠とされるべきではなく、また、不法行為制度における消極損害の算定にあたつては、まず税法以前の損害を確定し、しかるのちに、国がその立法政策にもとづき、自らの権限に基づいて被害者からこれに課税して税を徴収するか否かを決するものというべきであるから、被告の右主張は採用しない(参照最判昭和四五年七月二四日民集二四巻七号一一七七頁)。

(三) 前記認定の原告の傷害の部位、程度及び<証拠>によれば、原告は、蘇生会病院へ昭和五七年四月から八月までは月平均八日の通院であつたのに、同年九月は四日、同年一〇月は三日の通院であつたことなどの通院状況、原告の職業、前記認定の如く、原告は同年九月一六日に招待された結婚式にカツラをつけて踊つたことから症状が悪化したことなどを考慮すれば、原告の休業した、本件事故発生日から昭和五七年一二月中旬までのうち本件事故と相当因果関係にある休業期間は、本件事故より六か月後にあたる昭和五七年九月一九日ごろまでというべきである。

(四) 右にみた(一)及び(三)の事実に基づき原告の本件事故における休業損害を算定すれば、原告の休業損害は、合計六一五万五、一〇〇円となる。

(坂井良和)

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