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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)9760号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

<証拠>によれば、請求原因三の1(一)、(二)の事実が認められ、かつ後遺症として、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)施行令別表に定める第三級第四号に該当する胸部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができない後遺障害を残して昭和五六年八月三一日ごろ症状固定したことが認められる。

ところで、被告は、原告の後遺症状の内容及びその程度並びに原告の現症状と本件事故との因果関係につき、これを争う。しかしながら、右各証拠を総合すれば、原告は本件事故により左右胸血気胸、左第二ないし第一〇番の肋骨々折などの傷害を受けて、直ちに共立会病院で入院治療を受けたものの、入院後五日目には炎症が左肺から右肺にも変移して呼吸困難に陥り、気管切開術を受けなければならない程の重篤状態となつたこと、原告の右症状が重篤状態を脱して小康状態を保ち、治療法が後療法に移行したのは、入院後七二日を経過したころからであつて、原告が、その後リハビリを続け、機能訓練により、ある程度の原告自身の日常生活、すなわち、自身のための軽い炊事、自身の身のまわりなどが可能となつた昭和五六年八月三一日ごろに後遺症状が症状固定したと認定されたこと、症状固定時における後遺障害としては、左肋骨の変型及び肋膜と肺の癒着がみられたことから、肺活量が健康時に比較して半分以下に低下し、従つて、共立会病院担当医師は原告の後遺症状の予後を「不良」と判断していたこと、症状固定後は、自宅療養を続け、昭和五七年六月九日ごろの加古川市民病院における検査では、血中酸素濃度が80.1mmHg、血中炭酸ガス濃度が41.0Hgの数値を示し、昭和五六年一一月一八日ごろの同市民病院における肺活量の検査では、1.110mlの数値を示していたのに、昭和五八年一〇月五日の共立会病院における再診時には、原告の症状は、症状固定時に比較して、歩行能力が低下し、心臓肥大が生じており、また、同病院における昭和五八年一一月七日付診断書では、原告に慢性的癒着性肋膜炎が生じるなど悪化していたこと、昭和五九年二月二七日の大阪市大附属病院における検査結果では、血中酸素濃度が六九mmHg、血中炭酸ガス濃度が35.1mmHgの数値を示し、肺活量は九七〇ml(予測値は二三五〇ml)を、努力性肺活量は原告の性別・年齢・身長の標準値の約三八%程度の数値を示していたこと、大阪市大附属病院における肺機能格査、すなわち、血液ガス検査及び呼吸機能検査の結果によれば、原告には、休み休みでなければ歩けない程度と、話したり、着物を脱いだりするのにも息切れがする、息切れのため外出もできない程度との間に相当する、活動制限が存在し、原告自身の日常生活についても活動制限が認められ、急激な歩行などの運動がなされれば、直ちに酸素欠之状態となり、意識を喪失するなどの発作が生じ、従つて、物を持つて歩行することが困難であるのみならず、会話においても長い単語が話せない状態であることから、就労の可能性は全くないものと判断されたことが認められるというのであつて、また、症状固定時に比較して、原告の後遺症状は、担当医師の指摘したように、悪化の一途をたどつており、原告の症状を常に診察し、適切なリハビリ等の指導がなされておれば、症状固定時における症状を維持しえたとはいいうるものの、原告の症状が血気胸、肋骨々折、肋膜癒着による拘束性障害であることを考慮すれば、原告の後遺症状が好転することはほとんどありえない状態であつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。右事実によれば、共立病院において症状固定と判断した昭和五六年八月三一日ごろにおける原告の症状は、従前の治療を継続しても、症状の改善は見込めないという意味での症状固定であつて、予後の見通しは、不良とされており、そのころにおいても、原告の活動能力は、左肋骨の変型及び肋膜と肺の癒着という症状により、肺活量が健康時に比較して半分以下に低下し、後記認定の事故前に就労していた夫の仕事の補助、農業、植木の栽培は全くできないばかりか、日常の家庭の活動を補充するための炊事、洗たくなどの家事労働すら不可能であり、単に自身の身のまわり、自身のための軽い炊事程度が可能であつたにすぎなかつたというのであつて、従つて、症状固定時の原告の症状は随時介護までは要しなかつたものの、終身労務に服することができない健康状態であつたものと認められ、右症状固定時以降における原告の症状が、担当医師が判断したとおり、悪化の一途を辿つていることも認められる本件においては、原告の現症状と本件事故と相当因果関係のあることはいうにおよばず、前記認定のとおり、原告の後遺症として、少なくとも、自賠法施行令別表に定める第三級第四号に該当する程度の胸部臓器の機能に著しい障害を残したものというべきである。」

「 将来の逸失利益

前記認定の原告の職業、年収および前記認定の受傷並びに後遺障害の部位程度によれば、原告は前記後遺障害のため、その労働能力を一〇〇%喪失したものと認められるところ、原告の就労可能年数は昭和五六年九月一日から九年間と考えられるから、原告の将来の逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、一、三九九万四、一三八円(円未満切捨て)となる。」

(坂井良和)

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