大阪地方裁判所 昭和57年(行ウ)62号・昭57年(行ウ)63号・昭57年(行ウ)61号・昭57年(行ウ)60号 判決
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【説明】
「第一 当事者の求める裁判
一 原告ら
(一) 被告大阪府知事が、昭和五七年五月一七日付大阪府告示第六七八号をもつてした豊中都市計画都市高速鉄道変更決定を取り消す。
(二) 被告大阪府知事が、昭和五七年五月一七日付大阪府告示第六七九号をもつてした豊中都市計画道路変更決定を取り消す。
(三) 被告豊中市が、昭和五七年五月一七日付豊中市告示第七〇号をもつてした豊中都市計画道路変更決定を取り消す。
(四) 被告豊中市が、昭和五七年五月一七日付豊中市告示第七一号をもつてした豊中都市計画公園変更決定を取り消す。
(五) 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決。
二 被告ら
主文同旨の判決。
第二 当事者の主張
一 原告ら
(本件請求の原因事実)
(一) 原告らは、豊中都市計画高速鉄道計画等(以下請求の趣旨記載の順序に従い、本件計画(一)ないし(四)という)の対象である大阪府豊中市螢池南町二丁目、同町三丁目、同市螢池中町一丁目ないし四丁目、同市螢池東町一丁目ないし四丁目等の各地区に土地又は建物を所有し、もしくは賃借権がある住民又は法人である。
(二) 被告知事は、都市計画法(以下法という)一一条、一五条、一八条、二一条等の規定により、道路あるいは都市高速鉄道等の広域的根幹的都市施設に関する都市計画を定め、又は変更する権限があり、被告市は、法一一条、一五条、一九条、二一条等の規定により、道路あるいは公園等の都市施設に関する都市計画を定め、又は変更する権限がある。
(三) 訴外大阪府は、昭和五五年八月、大阪府総合計画概案によつて、中央環状線沿いにモノレールを建設する構想を明らかにし、その実現が企画された。
このモノレール建設案は、決定されたルート案に基づいて、昭和五七年二月ころから、関係市の都市計画審議会にかけられた。
被告市では、豊中市都市計画審議会に、次の案件が豊中市長訴外下村輝雄から諮問された。
諮問番号 案件名
第四六号 豊中都市計画道路の変更について
第四七号 豊中都市計画都市高速鉄道の変更について
第四八号 豊中都市計画公園の変更について
同審議会は、同年三月一一日、条件つきで原案どおり同意する旨の答申をした。
(四) 大阪府は、同月二九日、昭和五六年度第四回大阪府都市計画地方審議会を開催したが、同審議会は、被告知事から提案された次の案件を原案どおり可決答申した。
審議番号 案件名 決定権者
第一三七八 茨木都市計画道路の
変更について 知事
第一三七九 茨木都市計画都市高
速鉄道の決定について知事
第一三八〇 吹田都市計画道路の
変更について 知事
第一三八一 吹田都市計画都市高
速鉄道の決定について知事
第一三八二 豊中都市計画道路の
変更について 知事
第一三八三 豊中都市計画道路の
変更について 市
第一三八四 豊中都市計画都市高速鉄道の変更について知事
第一三八五 豊中都市計画公園の
変更について 市
(五) 被告知事は、法一八条三項に基づき訴外建設大臣に認可申請をしたところ、同大臣は、同年五月一二日、認可をした。
被告知事は、同日、被告市に対し、法一九条一項による承認をした。
(六) 被告知事は、同月一七日、法一八条一項、二〇条一項の規定により、豊中都市計画都市高速鉄道の変更を内容とする大阪府告示第六七八号の告示(詳細は、別紙(一)のとおり)、豊中都市計画道路の変更を内容とする大阪府告示第六七九号の告示(詳細は、別紙(二)のとおり)をしたうえ縦覧に供した。
被告市は、同日、法二〇条一項の規定により、豊中都市計画道路の変更を内容とする豊中市告示第七〇号の告示(詳細は、別紙(三)のとおり)、豊中都市計画公園の変更を内容とする豊中市告示第七一号の告示(詳細は、別紙(四)のとおり)をしたうえ縦覧に供した。(以下本件各都市計面の内容変更を本件各決定という)。
(七) しかし、本件各決定は、次に述べる理由によつて違法であるから、原告らは、その取消しを求める。
1 本件各決定をする際、環境アセスメントが不十分である。
2 本件各決定は、原告らを含む大量の住民に立退きを強要するもので、不合理なルートを選定した点で、行政の裁量権の範囲を逸脱した違法がある。
3 計画どおりのモノレールが建築されると、原告らの生命、健康に重大な影響を与え、原告らは、騒音、振動、大気汚染、日照障害、電波妨害等の公害被害を被る。
(八) 結論
原告らは、モノレールの計画予定地及びその近隣に居住して生活を営む者として、本件各決定の取消しを求める。」
【判旨】
二そこで、本件各決定が、抗告訴訟の対象となる処分に該当するかどうかについて判断する。
さて、行政庁の行為が、抗告訴訟の対象となる処分といいうるためには、その行為が、私人の法律上の地位ないし権利関係に直接何らかの影響を及ぼす性質のものでなければならないと解するのが相当である。したがつて、本件各決定が、私人の法律上の地位ないし権利関係に直接何らかの影響を及ぼす性質があるかどうかによつて決まることになる。
三都市計画区域内において都市モノレールを建設するには、まず、都市計画でこれを決定することとされており(都市モノレールの整備の促進に関する法律三条)、その後、都市計画施設の整備に関する事業(法一一条一項)として、法第四章の都市計画事業の手続に則り、具体的な事業が進められることとされている(法五九条以下参照)。
さて、本件各決定は、法一一条にいう都市施設の整備に関する都市計画決定として、モノレール建設事業を予定して策定されてはいるが、本件各決定自体は、事業の施行を明らかにするものとして対外的意味を有するものの、なお、単に、都市施設に関する都市計画の基本的枠組みを、一般的抽象的に定めたものにすぎず、いわゆる特定の個人を対象としてされたものではない講学上の一般処分に属するものと解するのが相当である(最判昭和四一年二月二三日民集二〇巻二号二七一頁参照)。
このことは、本件各決定以後の手続を法に照らしてみれば明白である。すなわち、
(1) 本件各決定に関連する都市計画事業を施行するため、都市計画事業を施行しようとする者(大阪府又は被告市)が、都市計画事業の認可を受けて施行する(法五九条)。つまり、施行しようとする者が、被告市である場合には被告知事に、施行しようとする者が、大阪府である場合には、建設大臣に、法六〇条で定めるところにより、認可申請をすることになる。
(2) この申請を受理した建設大臣又は被告知事は、法六一条によつて認可し、法六二条によつて公告をする。
(3) この公告は、当該事業地内の建物所有者等に対し、法六五条の建築等の制限を課し、施行者に対し、法六六条の事業施行について周知させるための措置を講ずる義務を課すとともに法六七条の土地建物の先買権を付与する。
(4) この告示は、土地収用法二六条一項による事業認定の告示とみなされる(法六九条、七〇条一項)。そこで、以後施行者に対し、土地収用権が付与されるから、施行者は、土地収用法に規定された手続によつて、土地収用をする(ただし、法六八条、七一条、七二条、七三条に特則がある)。
(5) そこで、施行者は、法六七条の先買い、法六八条の買取請求及び土地収用法上の収用によつて、モノレールを建設するについて必要な用地を取得してそこにモノレール専用道を建設し、それとともに道路法、軌道法上の所要手続を進めてこの計画を完成させる。
このような本件各決定以前と以後との手続を通観したとき、本件各決定が、対象地域内の個々の権利者の具体的権利に直接何らかの影響を与えたとみることはできない。
四本件各決定が、その後の手続をたどつて実現されると、対象地域に属する原告らに対し、その権利変動の蓋然性が強度であることは否定できない。しかし、将来の蓋然性を理由に、本件各決定の処分性を認めることは、無理である。
五本件各決定の違法を主張する者は、後になされる収用裁決などの具体的、個別的処分を受けた段階で、当該処分に対する抗告訴訟を提起し、その訴訟の中で本件各決定の瑕疵を主張することができると解するのが相当である。したがつて、原告らに対する救済手段を欠くことにはならないし、この結論は、憲法三二条の趣旨に反しないことは、いうまでもない。
六本件各決定により、法五三条の制限があることになるが、この効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものであつて、これは、同種の制約を課す法令が制定された場合と同様である。したがつて、この効果があることから、地域内の個人に直ちに具体的権利侵害を伴う処分があつたということはできない。この制限によつて土地利用上の権利を侵害された者は、その利用を制限する行政庁の具体的処分をとらえて、抗告訴訟を提起し、その訴訟の中で本件各決定の違法を主張することができることは、前に説示したのと同じである。したがつて、この点で、救済手段を欠くことにはならない(最判昭和五七年四月二二日判例時報一〇四三号四一頁、同号四三頁参照)。
七原告らは、本件各決定によつて、環境公害が必至であるから、このことを理由に本件各決定の取消しを求める利益があると主張しているが、環境公害が必至であるからといつて、本件各決定の一般処分性が変わるものではない。原告らとしては、収用裁決があつた段階で、その処分の違法事由として、この環境公害を挙げてその取消しを求めれば足りるのである。
八このようにみてくると、原告らが取消しを求めている本件各決定は、抗告訴訟の対象となる処分には該当しないといわなければならない。そうすると、原告らの本件訴は、不適法であるから却下することとし、行訴法七条、民訴法八九条、九三条に従い、主文のとおり判決する。
(古崎慶長 孕石孟則 八木良一)