大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)104号 判決
一 原告は、被告らが共同して請求の原因4(一)ないし(三)記載のとおり新日鉄八幡に対し、原告製品(それが原告主張のイ号製品ないしロ号製品であるか被告ら主張のチ号製品であるかの点はひとまず措く)が本件実用新案権を侵害する旨の虚偽の事実を陳述・流布した旨主張するのに対し、被告らは、新日鉄八幡に対しそのような事実を陳述・流布したことは全くないとこれを否認するので、まずこの点から判断する。
1 原告代表者は、本人尋問において、(一)請求の原因4(一)の事実につき、原告の販売代理店で新日鉄八幡への納入業者である訴外有限会社原田興産(以下「原田興産」という)の代表者原田幸紀(証人原田知幸の証言によれば、昭和六〇年一一月死亡)から、被告穂谷が昭和五六年五、六月頃新日鉄八幡へ行つて原告製品は本件実用新案権を侵害する旨告げた、と聞いた旨、(二)請求の原因4(二)の事実につき、同じく右原田幸紀から、被告穂谷の弟で被告会社の従業員である西門和宏及び同じく被告会社の従業員である川の上某が昭和五六年六、七月頃新日鉄八幡へ行つて同様のことを告げた、と聞いた旨、(三)請求の原因4(三)の事実につき、同じく前記原田幸紀から、被告会社の販売代理店で新日鉄八幡への納入業者である渡辺産業の者が昭和五七年五、六月頃新日鉄八幡へ行つて原告製品は本件実用新案権を侵害しており新日鉄八幡がこれを使用すれば被告会社としては新日鉄八幡の工場操業を停止させることもできる旨告げた、と聞いた旨及び(四)自ら直接昭和五六年五、六月頃新日鉄八幡の購買部資材課の者から、被告会社が新日鉄八幡の工場現場の者に原告製品は本件実用新案権を侵害する旨告げた、と聞いた旨各供述する。
2 また、証人原田知幸も、父である原田幸紀並びに新日鉄八幡の工場現場の者及び購買部資材課の者から右1(一)と同様のことを、原田興産の従業員である福田某から右1(二)と同様のことを、新日鉄八幡の購買部資材課長から右1(三)と同様のことをそれぞれ聞いた旨証言する。
3 しかし、被告穂谷本人尋問の結果によれば、右原告代表者及び証人原田知幸の証言からも明らかなように、被告会社は新日鉄八幡へは渡辺産業を通じて製品を納入しているのであり、被告穂谷自身が新日鉄八幡へ赴くことはまずないこと、被告穂谷の弟である西門和宏は被告会社の専務取締役ではあるが荒物・雑貨の部門を担当しており研磨ブラシは担当しておらず、また川の上は被告会社の関連会社ではあるが被告会社とは別会社であるホタニ商事株式会社の従業員であつて、いずれも新日鉄八幡へ赴くようなことはないこと、更に渡辺産業にしても日本有数の大企業である新日鉄八幡に対しあれこれ指図をしたりましてや工場操業を停止させるなどといいうる立場にはないことなどからみて、原告代表者及び証人原田知幸の各供述のようなことはおよそあり得ないし事実ないというのであつて、右被告穂谷本人尋問の結果に照らすと、前記原告代表者及び証人原田知幸の各供述はいずれもたやすく措信し難い。
4 もつとも、いずれも証人原田知幸の証言により成立を認める甲第一三号証、同第二六号証の五、証人原田知幸の証言並びに原告代表者及び被告穂谷各本人尋問の結果によれば、新日鉄八幡の購買部資材課では、原田興産に原告製品の納入を発注するか否かを検討するにあたり原告製品が本件実用新案権を侵害するものでないか否かに関心を有し、原田興産及び原告に原告製品についての説明を求めるとともに、昭和五六、七年頃二回にわたつて被告穂谷を呼び本件実用新案権について説明を求めたことがあることが認められるけれども、原告代表者本人尋問の結果により成立を認める甲第二〇号証、証人原田知幸の証言並びに原告代表者及び被告穂谷各本人尋問の結果によれば、新日鉄では資材の取引先は取引に関し第三者の工業所有権を侵害しないことを新日鉄に対し保証すべき旨が内規により定められているところ、原告製品は元来昭和五四年初め頃新日鉄八幡から本件実用新案権に牴触しない新製品の開発をと勧められて試作を始めたものであり、新日鉄八幡としては当初から原告製品が本件実用新案権に牴触しないものであるか否かについて強い関心を有し、独自の見地からその点の調査検討をしていたことが認められるから、前記原、被告双方に対する事情聴取も右調査の一環としてなされたものであり、被告穂谷はただ単にこれに応じたにすぎないものと認められるのである。その際被告穂谷がなんらかの原告製品を誹謗するような言辞を弄したことは、これを認めるに足りる確たる証拠がない。
5 他に前掲原告の主張を認めるに足りる証拠はない。
二 そうすると、請求の原因4の事実はこれを認めることができないから、原告の本訴請求は、そのほかの点について判断するまでもなく理由がない。
よつて、原告の請求を棄却することとする。